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第七話 クエスト案内所

 次の日、鳥の声で朝目覚めるとベッドには俺だけが寝ていて、ドラゴは床に座って木の槍の手入れをしていた。いわゆる朝チュンってやつである。いや全然違う。


「おはよう。昨日は眠れたか? ていうかドラゴはどこで寝た?」


「おはようございますご主人様。昨日はドアに寄りかかって座って寝ました。木窓の下と迷ったのですが、危険性が大きいのはドアの方だと思いまして」


「ベッドで俺と一緒に寝ろよー。危険性が~じゃねえよ。座ったまま寝るとかどこの武士だよ」


 俺はベッドを両手で強めにバンバン叩く。ベッドバンバン。


「ご主人様が寝ていらっしゃる一人用のベッドに私が寝てはいけないと思いまして。申し訳ございません」


 はっきり言って体中がめちゃくちゃ痛い。昨日慣れない運動しすぎたせいか、ベッドが木でできた粗末なものであったせいかはわからない。おそらく両方だろう。


「今日はドラゴがベッドで寝なかったせいで俺の体調が悪い。昨日より一層励むように」


「承知いたしました」


 朝食を食べたあと、俺たちはすぐに宿を出発する。


 こんな村とはおさらばだ。


「ドラゴ、この付近にこの村より大きな町はあるか? 村じゃなくて町な」


「ここから北西に進んだところに町がございます。向かいますか?」


「ああ、そうしてくれ」


 この村は最初にいた森から東にあると聞いた。そこから北西ってことは大体あの森の北側に町があったのか。


 最初から町と指定すればよかった。完全に後の祭りであるが、まあこの世界の村の実態を知れただけでも経験になるってもんだ。


 大学生が飲食店でアルバイトをして心を折られるのと同じだと考えればいい。俺はバッキバキに折られた。あのバイトリーダーめ。自転車で通勤してたからって交通費なしにするなんて酷すぎる。いや、交通費貰いながら自転車通勤するのはダメだってのはわかってるけどね。


 ドラゴに乗っているとあっという間に町へと着く。


 この町はロレム町という名前だそうだ。


 地面が土だったイニシウム村と違って、地面が石畳で埋め尽くされている。


 城壁らしきものはないが、人がたくさんいて町自体が活気づいていた。


 町見学はこのくらいにしておいて、ゴールドがないのでさっそく町周辺の森へと出かける。


「なんか俺の中で森がゴールド稼ぎの場所になってるな……。これでいいんだろうか」


「森でモンスターを狩ることは人々の安全にもつながるのでいいことなのではないでしょうか。他にはクエスト案内所でクエストを受注し、課題を達成してゴールドをもらうという方法もございますが」


 クエスト! なぜ今の今まで気づかなかったのだろう。本にもクエストって欄があったじゃないか。このばかちんがぁ~!


「よし! 町に戻ってクエストを受けにいくぞ」


 再度町に戻ってクエスト案内所を探す。


 クエスト案内所の看板は∨のマークであった。もう少し正確に言うと、チェックボックスをチェックした時のマークである。


 中に入ると、内装は主に木でできていて、横に長いカウンターと長椅子が数個あり、窓口らしきところにおじさんやおばさんが座っていた。


 雰囲気的には市役所や銀行、郵便局の一階といった感じである。


 とりあえず何をすればいいのかわからないので、窓口にいるおばちゃんに話しかけてみる。


「あの、クエストを受けたいんですけど」


 敬語になる。このお役所っぽい雰囲気に飲まれているのかもしれない。


「クエスト受注希望者の方ですね。もしかしてクエストを受注なさるのは初めてでしょうか?」


 こんなところでつまらない嘘をついても意味がないので素直に答えた。


「はい、初めてです」


「クエストにはさまざまな種類のものがあります。それを受注していただく際に制限などはありません。また、クエストを失敗してもペナルティはありません。その代わりと言ってはなんですが、クエストの課題達成は早い者勝ちとなっております。仮に課題を達成した場合であっても、他の方がそれ以前に達成していれば、そのクエストは失敗となります」


 誰でもいいから一番早くクエストを達成した人の勝ちってことか。


「わかりました。できればこの周辺のモンスター討伐に関わるクエストがいいんですけど」


「それでしたらモンスタードロップアイテムクエストになります。この周辺ですと、ウィークラット/ウィークラビット/ウィークキャタピラー/ウィークスネーク/ウィークバット/ウィークモールといったモンスターがいます。一番簡単なものはやはりウィークラットの皮でしょうか。十個持ってきてもらえば、ほぼいつでもクエスト達成できるかと思われます」


「十個か。微妙な数だな」


 四つしか持っていないヘッポコなくせになんとなくかっこつけてしまう。


「同じウィークラットでもウィークラットの尾でしたら一つから取引させていただいております。こちらは先ほど紹介したクエストとは違って、常時クエスト依頼があるわけではないですが」


「ウィークラットの尾というのはどうやったら手に入るんですか?」


「部位破壊を行なって倒せば落とすそうです。ただウィークラットの尾を切り落とすには、素早く後ろに回りこまなければならず、難しいと聞いています」


 部位破壊なんてものがあったのか。今度からモンスターを見つけたらちゃんと観察して、いろいろな攻撃を加える必要がありそうだな。


 ただ魔法ではそんな器用なこともできないからドラゴ頼みになるが……。結局俺はいらない子か……。


「クエストの受注ってのは、クエスト課題を事前に達成してからクエストを受注して、即クエスト課題を達成してもいいんですか?」


「もちろん構いません。むしろそちらのやり方を主流にされている方もたくさんいらっしゃいます」


 とにかくいろんなモンスターをなるべく部位破壊で倒して、いろんなアイテムをたくさん貯めてから、ここに来たほうが良さそうだな。クエスト内容を聞いてからクエストを受けて、アイテムを集めてたんじゃおそらく遅い。


「ここは何時から何時までやってるんですか?」


「二十四時間営業ですので時間は心配しないでください」


「クエストの報酬ってのはどんな感じなんですか?」


「クエストによってさまざまですが、ほとんどの場合はアイテムやゴールドになります」


「いろいろとありがとうございました。また来ます」


 もう聞くことはなさそうなのでクエスト案内所を出る。


「一言も喋ってなかったが話は聞いてたな? とりあえず森へ行ってモンスターを討伐するぞ。部位破壊できそうだったら部位破壊を優先してから倒すんだ」


「承知いたしました」


 俺は欲にかられて目が曇り、この時ドラゴのことをちゃんと見ていなかったことを後で後悔することになる。


 ドラゴが今までに見せたことがない不安そうな顔をしていたことすら、気にもとめていなかった。

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