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第四十話 魔法属性クリスタルの検証

 次の日、俺たち五人は森に来ていた。といっても今日はモンスターを戦うことが主題ではなく、あることを試すために森へ来ている。


「複合属性や希少属性クリスタルの武器への付加の追加効果は誰も知らないんだよな?」


「申し訳ございません」


「いや、確認のために聞いただけだから」


 魔法属性のかかったクリスタルを武器に融合させることで、武器に特殊な効果を付加することができるのだ。今日はその効果を一つ一つ試してみる予定なのである。


 火/水/土/風/金/雷の基礎魔法の武器への付加の追加効果は、ひと通りドラゴに教えてもらったのだが、音/氷/毒の複合魔法や、光/闇の希少魔法、そして時の未確認魔法に関しては誰もその効果を知らなかった。


 なので、全魔法が使える俺がこの目でその追加効果とやらを確認してみようと思う。


 既に音/氷/毒/光/闇/時のクリスタルは作成済みだ。道具屋で素材クリスタルを買って、それに魔力を注入するだけだからな。


 ドラゴにミレーヌ大身槍を渡す。


「これでちょっと敵を殴ってくれ。殺さないように軽くダメージを与えるような感じで頼む」


 まずは、もともと付けてあった火属性を試してみる。


 ドラゴは何度もモンスターを殴るが、なかなか火を噴かない。ランク一だから発動確率が低いのかな。


 ランクというのは、最高で十まであるらしく、一つクリスタルを融合させればランク一、二つ融合させればランク二、といった具合に上がっていくらしい。


 十回目くらいで槍が火を噴いたが、聞いていたとおり、だからなんだという感じの効果に見える。


 次は火属性付加に上書きして、音属性を付加してみた。


 同じように十回目くらいで槍から音がなって、モンスターに状態異常が見られたが、使えるかといったら微妙な感じである。ないよりはマシって程度かな。雑魚モンスターを狩る時には使えるかもしれないが、別に俺たちは雑魚モンスターを狩るのに苦労しているわけでもない。


 氷属性と毒属性も上書きしてみるが、音と同じように状態異常が起こり、悪くはないがかなり使えるという感じの効果ではなかった。


「やっぱどれもいまいちだな。光と闇もあんまり期待はできなさそうだ」


 光属性を付加してみると、黄色くて何かを吸収するようなエフェクトが出てきた。


 お、吸収系か。ステータス上昇魔法から推測するとHP吸収かな?


 魔法属性のクリスタルなんていつでもいくらでも作れるから、とりあえず推測さえできてればいいや。別にHP吸収が必要なわけでもないし。


 闇属性を付加してみると、光の時と似たように黒色で何かを吸収するようなエフェクトが出てきた。こっちはMP吸収かもな。


 ……結局、ここまで俺が求めてたような属性の追加効果は一つもなかった。


 とりあえず最後はお待ちかねの時属性だ。


 既にモンスターが死んでしまっているので、新しいモンスターをセリアンに探してもらう。


 時属性クリスタルを付加したミレーヌ大身槍で、見つけたノーマルピッグ一匹をドラゴに軽く斬ってもらうと、一撃で消えてしまった。


「ドラゴ、一撃で倒しちゃだめだって言ったじゃん。クリスタルの効果を試すためにやってるんだから」


「申し訳ございません。今までどおり軽くダメージを与えたつもりだったのですが……」


「まあ、いいよ。ドラゴにだって失敗はある。次はしっかりとな」


 ドラゴに説教をしていると、セリアンが俺のローブの袖を引っ張ってくる。


「ねえ、もしかしたらうちの勘違いかもしれないけど、さっきのノーマルピッグがあっちに移動してるんだけど」


「え? 移動?」


 よく見ると、倒したはずのノーマルピッグが、アイテムもゴールドも落としていない。それに、いつもの死んだ時の消え方じゃなくて、一瞬で消えていたようにも思える。


 時属性クリスタルの効果は瞬間移動か?


 もう一度ドラゴに試してもらう。


 今度は一撃ではなかったが、何回か攻撃したあとにやはり同じように消えた。再度セリアンに聞くと同じく移動しているらしい。


 これは時属性クリスタルの追加効果は瞬間移動で確定っぽいな。


「ドラゴ、今度は移動させる場所をイメージしながらモンスターを斬ってくれ」


「承知いたしました」


 目の前にいたモンスターが十メートルくらい先に瞬間移動した。


「私のイメージ通りにモンスターを動かすことができるようです」


 こ、これは使える!


 ダメージやモンスターを効率良く倒すことだけを考えれば、他のクリスタルの方が使えるのかもしれないが、俺が欲しかった効果に見事に合致する。


 ただ、問題はこれだけじゃ全然足りないってことだ。仮にセリアンやミレーヌ、カザの武器にこの効果を付加して攻撃に参加してもらったとしても足りない。


 あと、ランク十になるとどのくらいの確率で瞬間移動するのかもわかってないしな。まあ、それは仮に発動確率二割三割あたりでもそこまで問題はないんだが。


 ……結局、俺の力を使うしかないか。


 考えうる限り最悪から二番目の策だが、こればっかりはしょうがない。


 はっきり言って、タラシア都市やジェニファーにそこまでしてやる義理もないんだけど、うまくいけば、俺一人が犠牲になることでこの国全体がよくなるかもしれないしな。最終的にそこまで行くにはかなり長い道のりになりそうだが……。


 俺が黙りこくっていたせいか、ドラゴが質問してくる。


「ご主人様……、いかがなさいましたでしょうか?」


「ああ、うん。ただ考え事をしてただけ」


 ミレーヌも聞いてくる。


「何を考えてたのよ。別にあたしたちに教えてくれてもいいでしょ」


「説明するのも面倒くさいし、どうせすぐにわかることだ。ドラゴお疲れ様。ロンギヌスに持ち替えていいぞ。ミレーヌもミレーヌ大身槍があったおかげで実験がはかどった。今からは普通の狩りに戻ろう」


 そう言って、俺たちは今までどおりモンスターを倒していく。


 セリアンは完全にではないにしても、少しだけ俺の思惑に気づいていたようであったけど黙っていたようである。


 他の三人は俺が何を考えているのかは全然分からなかったみたいだが、別に一から十まで説明してやる必要もないだろう。


 その日は実験のせいで時間もあまりなかったので、今日の宿代くらいしか稼げなかったが、それ以上の大きな収穫があったから全く問題ない。

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