第三十九話 すりすり、もふもふ
「あいつの話どう思う?」
俺はみんなの意見を聞いてみることにした。なんか一人では処理できない問題になっているからな。
「私はご主人様のお考えに従うつもりです。あえて私の意見を言わせてもらうと、ご主人様の誉れが高くなるのであれば、お話をお受けしてもよろしいのではないかと思っております」
「あたしはちょっと反対ね。おいしい話には裏があるってよく言うじゃない。なんか怪しくない? それにソラにはバレたら困ることもいろいろとあるし」
「うちは正直なところどっちでもいい。待遇云々じゃなく、主が興味を持ってるのならあの人の部下になればいいし、そうでないのなら断ればいい。断って闇討ちされそうになっても返り討ちにすればいいだけ」
「ボクはお嬢様の意見に反対するようで悪いですが、あの方を信用していいのではないかと考えてます。とても熱心な方ですし、ソラ様に悪いことをなさるようにも見えませんでした」
それぞれの意見は違うし、多数決で決めるような話じゃないけど、全体的にジェニファーの話に乗ってみてもいいんじゃないのって感じか。
まあ俺も一応、前に挙げたうちのいくつかの問題は解決できそうではある。
でも、大きな問題が一つ残ってるんだよなあ……。
「うーん……ありがとう。どうしようか……」
俺が悩んでいるとセリアンが俺に話しかけてきた。
「最初は絶対断るって感じだったのに、今悩んでるってことは気持ちが傾きかけてる証拠じゃないの?」
たしかにそうかもしれない。まあ、結論は先送りにするか。ジェニファーもいうほど急いでるって感じじゃなかったしな。
ただ、俺たちの雰囲気的に早めに決着をつけるべき問題なのはわかってるけどね。
俺たちはいつものように、それぞれの部屋に戻り、いつものように風呂に入り、飯を食べ、寝る準備をする。
ただ、今日は馬車に乗っている時に思いついたのだが、二つのベッドをくっつけて両手に花状態で寝ようと思う。
真ん中が少しへこんでいて、俺だけ若干寝にくいのはご愛嬌だ。
「ドラゴとセリアン、ちょっと二つのベッドを動かして一つのベッドにしてみてくれ」
「承知いたしました」
「わかった」
「今日は三人一緒に寝ようと思う。俺が真ん中で、俺の右がドラゴ、俺の左がセリアンな」
ドラゴは無表情で、セリアンははいはいといった様子で俺の指示に従ってベッドに横になる。
俺はドラゴとセリアンの両方を片手で抱きかかえ仰向けの状態になって寝る。二人は俺の方を向いて横になっている格好だ。
いやー、巨乳美女二人をはべらせて寝るなんてこんな贅沢はないな。
ちょっとドラゴにいたずらをしてみる。
背中を触ってみた。
風呂とかではいつも触っているが、こうやって寝る時に露骨に触れるのは初めてだ。
すりすり、さわさわ。
「んっあっんんぅ」
セリアンに聞かれてはいけないと思っているのか、ドラゴは声をかみ殺している。拒否もしないし、これはもっと触ってもいいのかな?
左手ではセリアンの頭を撫でる。こっちも気持ちよさそうにしてるから大丈夫だろう。
セリアンからも「はにゃぁん」という喘ぎ声が聞こえる。よく観察すると耳を触られるのに弱いようだ。もっと耳を重点的にもふもふしてみよう。
もふもふ、もふもふ。
「ちょっと主、こういうことをするためにベッドを一つにしたの?」
「嫌か?」
「嫌じゃないけど……。耳だけね。これ以上変なところ触らないで」
ドラゴも何か言ってくる。
「ご、しゅ、人様。そろそろ、お眠りになられた方がよろし、いかと思、われますが」
ドラゴの声を無視して、その後もドラゴとセリアンを触り続ける。
すりすり、もふもふ。さわさわ、もふもふ。
二人同時にだと結構忙しいな。楽しさは二倍以上だが。早くこうやって寝ることに気づけばよかった。
セリアンの耳を甘噛みしてみる。
はむっ。
「ひゃうっ」
「ちょっと、噛まないでよ」
「甘噛みだから大丈夫だ」
「何も大丈夫じゃない!」
セリアンの声は無視してはむはむする。
はむはむ、はむはむ。
ドラゴの方にも似たようなことをしようとするが、ドラゴの耳はセリアンと違って俺のと変わらない。
というか人間と竜人の外見の違いが、ここまでスキンシップをとってるのに竜の翼以外未だによくわからないんだよな。
人の状態だと明確な違いはないんだろうか……。まあ、そんなことはどうでもいいや。
はむはむ、はむはむ。
「ご主人様は耳を咥えられるのがお好きなのですか?」
ドラゴに冷静に真顔でそう言われて、ちょっと恥ずかしくなってきた……。ドラゴは耳が弱点ではないらしい。
まあ、もう十二分に堪能したことだし、そろそろ本当に寝よう。夜ふかししてもいいことなんてないからな。ロングスリーパーの俺はできれば十時間は寝たい。
「おやすみ、ドラゴ、セリアン」
俺はそう言って目を閉じて眠りについた。
「おやすみなさいませご主人様」
「おやすみー」




