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第三十五話 目上から目下への手紙

 宿屋の主人に心配そうな顔をされる。


 どうやら俺はまた少しの間ぼうっとしていたようだ。


 もう一度言うが、あいつにはせめて俺が寝てる時に出てこいと言いたい。


 俺の名前はソラ・サン。俺は召喚獣のドラゴとセリアン、それにミレーヌとその召喚獣カザと共に、モンスターを狩りながらその日暮らしをしている。


 とりあえず部屋に戻って渡された封筒の中身を確かめてみよう。


 それにしてもこの手紙はかっこいい。まず、紙がほどよく白く高級感が漂っていて、赤い蝋に何か紋章のようなものが押されている。


 表には横書きで『ソラ・サン様へ』と書かれていて、裏には隅の方に『ジェニファー・スチュアート』と書かれている。両方とも綺麗な字で書かれた日本語だ。少なくとも俺にはそう見える。


 とにかくこの封筒を開けてみるか。


 中には二つ折りにされた紙が一枚と、小さなカードのような紙が一枚入っていた。両方ともただの紙で特に変わった点はないようである。


 その中の一枚の、二つ折りにされた手紙の文章を読んでみる。


『突然の手紙失礼します

私はタラシア都市で公務に携わっている、ジェニファー・スチュアートというものです

あなたにある用件を伝えたくこの手紙を送りました

明日の朝、使いの者をよこしますので、その者に従って私の家に来てください

あなた様のご健闘をお祈りしております』


 シンプルで一見丁寧な内容だが、どことなく上から目線なのが伝わってくる嫌な手紙だ。


 手紙なんて年賀状すら貰ったことがないけど、雰囲気的にあまり気持ちいいものではない。


 しかも、簡単に言えば召集令状である。お上がお前を呼んでるから、とにかく来いというやつだ。


 無視しようかとも思ったが、使いの者をよこすと書いてあるので、おそらく問答無用で連れていかれるのだろう。


 それに、俺はもうちょっとこの都市に滞在したいと思っているし、タラシア都市側と問題も起こしたくない。おとなしく従って、何か言われたらへーへー言ってりゃいいだろう。


 そもそも用件ってなんなんだろうな。はっきり言って面倒なことには巻きこまれたくないわ。


 俺は静かに暮らしたいだけなのだ。いや、俺は人殺しじゃないよ。


 今、俺の部屋にはドラゴ、ミレーヌ、カザ、セリアンと俺の仲間が勢ぞろいしている。


「なんて書いてあるの? あたしも読みたいんだけど」


 そう言って、ミレーヌが俺の後ろから手紙を覗き込む。


 反対側からはセリアンが同じように手紙を覗き込んでいた。


 二人の豊満な胸が俺の体にぷにぷに当たって気持ちよく、いい匂いもする。ただ、これを言ったら何を言われるかわからないから黙っておこう。


「ふーん、要はこの都市の偉い人からの呼び出しね。明日の朝に迎えに来るって書いてあるけど、ソラ、何かしでかした?」


「いや、心当たりは全くない。とにかく面倒なことにならないように気をつけるしかないな」


 俺に宛てられた手紙を覗きこみもせず、行儀よく座っていたドラゴが俺に話しかける。


「ご主人様はこの都市の偉い方に呼び出されたのですか? もしかすると大変名誉なことなのではないでしょうか」


 俺やミレーヌと違って、ドラゴはポジティブシンキングだった。まあ、手紙の細かい内容を読んでいないせいもあるかもしれないが。


「どうなんだろうな。ただ、そっちの意味でも全く心当たりはないからな。とにかく、細かい用件の内容が書いていない以上、出たとこ勝負って感じになると思う」


 そして、セリアンが俺に疑問を投げかける。


「主、これってうちらも行っていいのかな?」


「なんだ、行きたいのか? 一人で来いとは書いてないから別に大丈夫なんじゃないか。だめならその使いの者ってやつが拒否するだろうし」


「いや、ほら万が一ってこともあるし、護衛はいた方がいいでしょ。さすがにそんな物騒なことをするような手紙には見えないけどさ」


 それを聞いてドラゴも賛同する。


「でしたら、私もご主人様と共に参ります」


「はいはーい。みんなが行くならあたしたちも行くわ。ね、カザも行きたいでしょ?」


「ボクはお嬢様についていくだけです」


 ミレーヌとカザまで行きたいと言い出した。


 もし、万が一のことがあるならミレーヌは連れて行きたくないんだがなあ。知らないやつらの目の前でワープを使うわけにもいかないし……。でも、そんな状況に追い込まれるってことは、即刻この都市を出なきゃいけないわけだから、時魔法を見られてもしょうがないか。


「じゃあ、みんなで行くか。でも、俺一人で来いって言われたら全員待機な」


「承知いたしました」


「わかった」


「言われなくてもわかってるわよ」


「はい」


 三者三様ならぬ四者四様の返事が返ってくる。


 そのあと、ミレーヌとカザは自分たちの部屋に戻り、俺たちもいつものように寝た。


 最初、ドラゴと一緒に寝ようとしたが、ドラゴに「今日はセリアンと一緒に寝た方がよろしいのではないでしょうか」と言われたのでセリアンと寝た。セリアンは若干不服そうだったけど、まあいうほど嫌がってもいないみたいなので問題ないわけだが。

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