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第三十四話 夢夢夢夢

登場人物紹介


ソラ・サン : この物語の主人公。死んでも生き返る、魔法を全て使える、召喚獣を複数持てる、という能力を持つ。一人称は俺。


ドラゴ : ソラが最初に見つけた召喚獣。竜人族と呼ばれる人種で、槍での戦闘能力は非常に高い。一人称は私。


セリアン : ソラの二番目の召喚獣。獣人族、別称セリアンスロピィのシルバーウルフ。武器は銃。一人称はうち。


ミレーヌ・スミス : 鍛冶職人のエルフ。成り行きでソラたちと一緒に冒険することになった。一人称はあたし。


カザ : ミレーヌの召喚獣。小人族、別称ドワーフ。割と影が薄いが重要な役割を担うことも。一人称はボク。


夢のお姉さん : 夢の中で定期的にソラにちょっかいを出してくる。姿は見えず声だけであり、名前もはっきりしていない。

 ……またか……。ほんと勘弁してくれ……。


 しかも今回も寝てる時じゃなくて、普通に生活してる時だし。


 一般人から手紙を受け取った瞬間、この夢の世界に入れるとかどういう神経してるんだ。


「おは~。おは~」


 今回は今まで以上にだいぶノリが軽いな。しかも古いし、俺は山ちゃんの方派だ。


「あの手紙はなんなんだ?」


「さあね。仮に知ってたとしても教えないけど」


 こういう物言いをするってことは本当に知らないっぽいな。


「差出人は誰なんだ?」


「それも知らない」


 役に立たないやつめ。とりあえず本を開いてヘルプを読んでみるが、手紙を貰った時の対処法などは当然書かれていないし、差出人に関する情報も載っていない。こっちも肝心な時には役に立たないんだな。最初から読んでなかったけど、読まなくて正解だったかもしれない。


 だいたい、今時の説明書ってのは読まなくてもどうにかなるようにできてるからな。ゲーム然り、電化製品然り、携帯電話然り。


 そんなことを考えていると、声だけのお姉さんが話しかけてくる。


「もう、過去のことは振り返らずにどんどん先へ先へと進んでいく癖がついてるね。いい傾向かも」


「俺は過去は振り返らない男だからな。……いや、ただなんとなく言ってみたかっただけ。それに、俺とドラゴの関係もちゃんとしたしな。良いのか悪いのかはまだわからんが」


「今後もハーレム要員を増やしてウハウハってわけね」


「いや、そういうわけじゃねーよ。それも全く期待してないって言ったら嘘になるけど」


「ところで、ドラゴで思い出したけど、召喚獣について深く考えたことはある?」


 どういう意味だ? ドラゴやセリアンについてなら結構深く考えてるつもりだが。


「うーん、そういう意味じゃなくて……。じゃあ召喚獣って何?」


 召喚獣は召喚獣だろ。それ以上でもそれ以下でもない。


「なんか話が伝わらないなー。理解力もうちょっとつけてよ。話の裏を読む力をさ。やればできるよ」


 うるせえよ。ほっとけ。


 高校の時の三者面談で「やればできるんだけどねえ……」って担任に言われてから、内心ブチギレて、死ぬほど勉強して、やればできることを証明してやったことが思いだされる。


 担任の鼻を明かすことに成功した俺はそれで満足し、そのあと一時的に上がった成績が嘘のように下降して行ったのだがそれはまた後の話。


 あいつは友達がいないから勉強しかやることがない、って影で言われてるのを知って勉強を止めたわけじゃない。自主的に止めたのだ。もっと悪いが。


「召喚獣ってどこから来てどこへ行くのだと思う? なぜ存在するのだと思う?」


 なんだ? 自己啓発セミナーの次は哲学か? 俺はニーチェの善悪の彼岸を、一ページ目で閉じた男だぞ。何言ってんだこいつ、日本語でおk、としか思わなかった。もちろん、原本じゃなく翻訳本だ。


「じゃあ、もっと単純に聞くけど、ドラゴはなんであんたの召喚獣になったの?」


「俺がドラゴの魂らしきものに触ったからだろ」


「そうね。ちなみに、あの世界では普通十五歳になると自動的に召喚獣が召喚できるようになる。でも、あなたの選んだボーナス補正の裏ボーナス補正で、あなただけは最初は召喚獣がゼロ匹だけど、魂を触ることで召喚獣が増えていくシステムになっているの」


 へー、そうだったのか。そういえば、他のやつがどういう仕組で召喚獣を持ってるのかなんて考えたこともなかったな。


「最初に召喚獣はその人物の分身と言っても過言じゃない、って言ったけど、召喚獣はその人が望むような外見や性格を持って現れることが多いのよ」


 ドラゴが俺好みだったのはそのおかげか。セリアンもドラゴほどじゃないけど、俺好みだしな。


 ……てことは今後出てくる召喚獣も、巨乳な女の子ばっかりになる可能性が高いってことか!


「まあ、否定はしないけど、普通に貧乳の子が出てくる可能性もあるからね。……ってそういうことを言いたいんじゃなくて、人の意識が召喚獣の外見や性格に影響を与えるってことがどういうことを意味しているのかわかる?」


「うーん……。お前が言いたいのは、召喚獣は人によって作られた存在ってことか?」


「そういうこと。人と同じ形、同じ思考を持ちながら、人によって作られた存在。それが召喚獣。セリアンが最初、自分を召喚獣じゃなくしてなんて言ってたけど、それは無理」


 人間だって、自分の意思でこの世に生まれくるわけじゃなく、親という他人、いや他人は言いすぎか、親という他の人間の意思によってこの世に生まれてくる。もちろん、できちゃった婚で生まれてくる人間もたくさんいるが。


 とにかく、そういう面だけを見てみれば人間だって召喚獣だってさほど大差はない。生まれてこなきゃよかったとか、産まなきゃよかったのになんて思う子供は少なくない。というか、そういう思いをするのが通過儀礼みたいなもんでもある。


「たしかに、そういう意味では変わらないけど、召喚獣はもっと都合のいいように人間に作られた、あなたの世界でいう機械みたいなものなの」


 超高性能アンドロイドみたいな感じか。


 未来で、人間とほとんど区別がつかない超高性能アンドロイドが開発されたとしたら、その時は人間が滅ぶ時だろうと俺は思っている。


 なぜかって? そりゃ煩わしい人間と関わるのを止めて、自分にとって都合のいいアンドロイドとだけ関わるようになり、最終的にほとんどの人類が子どもを産まなくなるからだ。


 まあ、実際はそこまで絶望的な状況に陥る前に、人工授精などの技術で人類が滅びないような対策は打たれるだろうが。


「そういう小説か漫画でも書いてみたら? 案外売れるかもよ」


 どう考えても売れねえだろ。それに、大事なのはそういう設定じゃなくて、起承転結の承の部分の長さと面白さだ。起と結の部分しか思い浮かばない俺には無理。あと、絵が壊滅的に下手だしな。


「まあ、それは余談だとして、私が一から十まで言わなくてもいいってことがわかってよかったわ。あなたを選んでよかった。これからも異世界ライフを楽しんでね。周りに女の子ばっかりみたいだし、結構楽しいでしょ?」


「今はまだいいけど、女だらけの中に男が俺一人になったら、女子高に男が一人紛れ込んじゃった的な感じになって、確実に居心地が悪くなる気がするんだけどな」


「それを楽しめるかどうかはあなたの努力次第。じゃあまたね」


 そう言われて、俺はこの夢の中から異世界へと戻される。


 前ほど元いた世界に帰りたいと思わなくなったのも事実だ。まだ数日しか異世界にいないが、それでもドラゴたちと別れるのは寂しい。かといって、ずっとこのままってのもどうかとは思うが。

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