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第三十二話 不調の原因

 ミレーヌたちが自分の部屋に戻ったあと、セリアンがドラゴに話しかけた。


「今日は昨日に比べて自慢の槍が唸りをあげてたね。あれが本来の力なの? 昨日調子が悪かった原因は何?」


 原因は昨日はまだ移動の疲れが残ってたからだろう。


 ていうか、なんかセリアンの口調が微妙にキツい気がする。最初に会った時ほどじゃないし、俺のただの思い過ごしかもしれんが。


「いえ、昨日も今日もさほど違いはなかったと思いますが」


「いや、とぼけてるのか本当に気づいてないのか知らないけど……。原因は思い当たらないの?」


「そりゃ――」


「ちょっと主は黙ってて。今はうちとドラゴが話をしてるから」


 俺も何か言おうとしたら黙れ小僧と言われました。俺は二人の主人のソラです。


 しかも、やっぱりセリアンちょっと怒ってる? 怒ってる意味が全くわからんのだが。


 学級会でも俺に発言権はなかったから、まあこういうのは慣れてるけど。なんなら投票権や生存権すらないまである。


 ドラゴがセリアンの質問に答えた。


「思い当たることですか? 全くないですね。そもそも昨日調子が悪かったとも思えませんし」


「嘘ね」


 セリアンがチラッと俺の方を見る。お前は喋るなって意味だろうか。


 ていうか、疲れてて動きが鈍かったことくらい別にいいじゃん。それ以外に原因があったとしても、ドラゴだって機械じゃないんだからそういうこともあるだろう。


 一応静観するけど、喧嘩になるなよマジで。召喚獣同士のキャットファイトなんて見たくないし、具合が悪くなる。


 ドッグファイトならゲームでよくやってたけど。特にリモコン型コントローラを操縦桿に見立てて操作する、フライトシミュレーションゲームはゲーム性が最高だった。合間合間に入ってくるアニメのストーリーは飛ばしたから全く覚えてないが。


 続編が出なかったってことは売れなかったんだろうな……。好きなゲームが売れてないのは地味に悲しい。


 俺がそんな現実逃避をしている間に二人の話が進んでいく。


「ドラゴ、あんた、あくまで理由を言わないつもりなら、うちが言っちゃうけどいいの? こういうのは、今後のためにもはっきりさせといた方がお互いのためだと思うけど?」


 セリアンが何を言っているのかよくわからない。


 あ! そうか。ドラゴは昨日は生理で調子が悪かったんだな。そういう話はたしかに堂々と言える話でもないし、もしかしたら俺は退室した方がいいのかもしれない。


 俺は部屋を出ていこうとする。


「主、どこに行くの? トイレなら我慢して。大事な話だからとにかくそこに座ってて」


 今度は呼び止められた。発言権はないけど、ここにはいなきゃいけないらしい。


「私はセリアンの言っている意味が全くわかりません。昨日、私が足手まといで邪魔だったのであればそれは謝ります」


 ドラゴも俺と同じ気持ちらしい。それに別に邪魔じゃなかっただろ。むしろいい連携プレーを見せてもらったしな。俺は完全にいらない子だったから責められるべきは俺の方だ。


「そんなことを言ってるんじゃない。じゃあうちが全部言っちゃうけど…………」


 セリアンが大きな溜めを作って、俺を指さす。


「ドラゴは主のことが好きでしょ。いや、大大大好きで愛していると言ってもいい」


 へ? ドラゴが俺のことを好き? いや、そらキスしたし、風呂にも一緒に入ってるし、同じベッドで寝てるから、多分嫌われてはいないだろうし、好かれてるのかもしれないけど。ドラゴが俺のことを愛してる?


 まだセリアンの話は続く。


「しかも、召喚獣っていう立場だから、主にその想いを伝えたらいけないとも思ってる」


 その瞬間、ドラゴは愛用の槍をも手離して、走って部屋を出ていった。


 槍がテーブルに当たって、ゴンッという低い音が鳴る。


 俺がドラゴの方を向いた時には背中しか見えず、顔は見えなかったが、どんな顔をしていたのだろうか。


 しかし、ドラゴが俺のことを愛してる?


 おそらく、セリアンの言っていることが図星だったから、ドラゴはこの場から逃げ出したのだろう。


 俺もドラゴのことは大好きだ。愛してると言っても過言ではない。


 だが、経験値の足りない俺はこういう時にどう動いていいのか全くわからない。


 硬直している俺にセリアンが発破をかける。


「何やってんの! 普通こういう時は追いかけるもんでしょ!」


 そう言われて、俺はドラゴを追いかける。


 ドラゴは俺より足が速いし、空を飛んで逃げられれば絶対に追いつくことはできない。


 しかし、ドラゴはすぐに見つかった。


「ドラゴ、とりあえず部屋に戻ろう。ここは人の目もあるし、それに俺もドラゴに言いたいことがある」


「はい……」


 いつもの返事ではなく、今までに聞いたこともないような、か細い声で返事をされたが、俺は無理矢理ドラゴを引っ張って部屋に戻った。

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