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第三十一話 クエスト案内所の裏話

 次の日、ミレーヌの体調は回復しており、俺たちは五人で森へと向かった。


 念のため、昨日行った森とは別の方角にある森へ行き、そこでモンスター狩りをする。


 現在、ほぼ一文無しなので、最低でも今日の宿代くらいは稼ぎたいところだ。


 分け前は前の時と同じようにトドメを刺したもの勝ちにしてもよかったが、せっかく仲間になったんだし、俺はアイテムやゴールドを本に収納するので、きっちり二等分とまでは言わないまでも、大体同じくらいになるように分けようかと俺は提案した。


 すると、ミレーヌが、


「じゃあ、五人いるから五等分で。あたしたちはそのうち二人分を貰うわ。ドロップアイテムやゴールドは全部ソラが管理してよ」


 と、言ってきたので、結局そのような分け方になった。まあ、わずらわしさもないし、平等という観点からいっても妥当な案だろう。


 ドラゴの動きは昨日より冴え渡っており、例えば昨日倒したノーマルホースであれば、動きを止めるだけでなく、足を切断した直後に首を刎ねるというような目にも留まらぬ速さでバッタバッタと倒していった。


 キレッキレである。やっぱり昨日はまだ疲れが少し残ってたんだな。ドラゴキレさせたら大したもんだよ。


 ミレーヌとカザも、ノーマルビーの毒攻撃を受けないように、比較的防御や回避に徹しながら、ドラゴが攻撃しやすいように囮役としても活躍していた。攻撃力がイマイチでも、こうやって味方との連携プレイを見せれば十分な戦力になるものだ。


 俺とセリアンの遠距離攻撃組はというと、間違っても味方に攻撃を当ててはいけないので、かなり慎重になりながらも、動きの遅いノーマルピッグを中心に、遠くから魔法や銃で狙い撃ちにしていった。


 近距離のミレーヌとカザ、近中距離のドラゴ、中遠距離の俺とセリアンで、なかなかバランスの取れたパーティなのではないだろうか。


 夕日が射すころには、多数のドロップアイテムと、ロレム町でミレーヌたちと稼いでいた時よりも多くのゴールドが手に入った。セリアンの広範囲かつ正確なモンスター探知能力が大きく役に立った結果でもあろう。


 今日の宿代くらいはと思っていたが、それを大きく超える十分な成果である。


 この調子なら、ミレーヌの来年の税金代もすぐに払えるはずだ。


 ……そういえば、ミレーヌは二万五千ゴールド貯まったらどうするんだろうな。まあ、どうするのかはミレーヌたちが決めることか。


 それに、森の場所を変えたのが功を奏したのか、ケンタウロスや他のボスらしきモンスターには一度も遭遇しなかった。


 俺たちは都市に戻ると、まずはクエスト案内所へ行きアイテムをクエスト報酬に替える。


 この都市周辺に出るモンスターのドロップアイテムだけでなく、ウィークラットの尾なども買い取ってもらえた。しかも、ロレム町よりも数多くのクエスト依頼があり、結構な報酬になった。


 これでドラゴやセリアンの高級な防具なんかも買えるかもしれないな。明日、また買い物でも行ってみるか。綺麗な服を買うのもいいかもしれない。かわいい女の子がかわいい服を着ていたらかわいさ百倍だからな。


 いやまあ、今のままでもドラゴとセリアンは十分かわいいんだけど。着衣派の俺としては服あってのかわいい女の子であり、かわいい女の子あっての服なのだ。これだけは譲れない。絶対に譲れないものがそこにはある。


 でも、俺の服のセンスとか完全にゼロだから、またドラゴたちに選んでもらうことになるんだろな。今後はそういうところも少しは磨いた方がいいのかもしれない。


 ちょっと服のことに夢中になりすぎてしまった。


 そういえば、ロレム町とタラシア都市で同じクエストの依頼数が違うってことは、それぞれの場所にあるクエスト案内所は、クエスト依頼を共有してないのかな?


 ちょっと疑問に思ったので、そこらへんを聞いてみる。


「クエスト案内所ってのは他の町とクエスト依頼を共有してないの?」


「基本的に他の町とのクエスト依頼の共有はしておりません。連絡を取り合うために手紙を送るだけでも相当な費用がかかりますし、こちらで達成された依頼が別の場所でも達成されると面倒なことになりますので」


 なるほどな。別に、何か特殊な力を使って情報を共有できるわけではないから、わざわざコストがかかるようなことはしないってことか。


「ただし、都市内では多少費用がかかっても、なるべく情報を共有するようにしております。狭い町ですと一箇所しかクエスト案内所がないところも多いですが、この都市では複数の場所にクエスト案内所がありますから」


 まあ、そのくらいのサービスはやるってことか。でも、クエスト達成が被ったりしたらどうするんだろ。


「クエスト達成が別のところでほぼ同時に起こったらどうなるの?」


「その場合は、原則早い者勝ちとなっておりますので、報酬は払われないか返していただくことになります。報酬を返していただくこともできないような時が稀にありますが、その場合はこちらで二重処理分の損金を受け持ちます。もちろんそのようなことが起こらないように、クエストの大量処理や高額クエストの処理の際には、時間をある程度かけさせてもらっておりますが」


 ロレム町には一つしかクエスト案内所がなかったけど、ボスモンスター討伐クエストの達成条件がめんどくさかったのはそういう側面もあったのかもしれんな。一応、いろいろと考えられてるわけだ。裏で走りまわってる人間や召喚獣が何人もいるのかと思うと不憫でならないが、まあそれも仕事だからしょうがない。


「また、基本的には他の町とのクエスト依頼の共有はしていないと先に説明いたしましたが、一部の長期間依頼が達成されていないクエストに関しては共有することもございます」


 そういうクエストはどこでもいいから早く誰かに達成してほしいんだろうしな。


「丁寧で詳しい説明をどうもありがとう。クエスト案内所についていろいろと理解が深まった」


 そう言って、俺はクエスト案内所をあとにする。


 俺が一聞いたら十答えてくれるのでありがたい。しかも、どっかの声だけしかしない誰かさんとは違って、無駄話は一切ないし。


 宿屋に入って、俺たちは俺の部屋で今日の報酬を山分けにする。ミレーヌはほくほく顔になっていた。税金代を貯めなきゃいけないのもあるんだろうけど、ミレーヌは基本的にゴールドが好きなんだろうな……。


 また一つエルフへの幻想が崩れた瞬間であった。

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