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第三十話 お見舞い

 防具屋に入る前に残りゴールドを確認しておく。約三千五百ゴールドである。


 やっぱり死んだら所持ゴールドが半分になるみたいだな。ミノタウロスが落とした五千ゴールドとパルア洞窟内で稼いだゴールド、クエスト報酬とノーマルホースが落としたゴールドから、宿屋代と新たに買った装備代を引いたらだいたい七千ゴールドくらいはあったはずだ。


 まあ、生き返る代償としてはポピュラーだし、死ぬよりはマシだが手持ちのゴールドが少ない。


 今日のスイートルーム代の五百ゴールドと、明日稼げるであろうゴールドを計算したらそんなに無駄遣いはできない。普通、モンスターが強くなったら、貰えるゴールドも劇的に上がるはずなのに、無駄に厳しすぎるだろこの世界。


 予算は白雪のローブと同じ千ゴールドってところかな。白雪のローブがあれば、また買ってもいい。


 防具屋に入ってローブのコーナーへ行くと、白雪のローブが置いてあった。これにしようと思ったのだが、ある別のローブが目に入った。


『ホワイトナイトローブ 三千ゴールド』


 騎士用なのか魔法使い用なのかはっきりしない名前のローブだ。


 でも、一応ローブって書いてあるから多分魔法使い用なのだろう。


 よく触ってみてみると、重さはそれほど感じないのだが、ただのローブではなく鉄線のようなものが編みこまれている。魔力増加だけでなく、通常攻撃への防御力も兼ね備えているのかもしれない。


 しかし高い。明らかに予算オーバーだし、所持ゴールドが今日の宿代をギリギリ払えるレベルになってしまう。


 ただ、俺はこんなことで日和るような男ではないのだ。計画性がないとも言う。


「ホワイトナイトローブを一つ」


 勢いに任せて買ってしまった。色やデザインも綺麗だし、性能も高そうだからまあいいか。


 それに、ホワイトナイトという名前がかっこいい。もし、ドラゴたちが買収されそうになったら俺が守る。そんな機会はないだろうが。


 ドラゴとセリアンは俺の無駄遣いに対して口出しはしてこない。別に主人の決めることだしー、って感じなのかな。


 昨日行った宿屋ヘ行くと、一階にカザがいた。俺たちを待っていたのだという。ミレーヌは寝込んでいるそうだ。


「お嬢様からソラ様へ伝言です。明日も九時半に待ち合わせね。明日もあたしが駄目そうならカザをよこすから。だそうです」


「わかった。ご苦労だったなカザ。もうミレーヌのところに戻っていいぞ」


 そう言ったのだが、カザはもじもじしていて動かない。


「カザ、他に何かあるのか?」


「あの……、もしソラ様がよろしければ、お嬢様のお見舞いをしてもらえませんか? お嬢様のお顔を見ていただけるだけでよろしいので……」


「まあ、別にいいけど。俺らが行ってミレーヌが起きちゃったり症状が悪化したりしないのか?」


 そもそも、俺はお見舞いなんて行ったことがない。果物とか持っていくべきなんだろうか。そこまでする必要もないか。


 俺が中華料理屋で食べた麻婆豆腐のせいで、急性胃腸炎になり四日ほど入院した時は、誰一人としてお見舞いに来ないどころか、俺が入院したことすら誰も知らなかった。まあそれはいい。


「それは大丈夫だと思います。ではこちらへ」


 ミレーヌたちが泊まっている部屋へ行く。中ではミレーヌがベッドの上で体を半分だけ起こしていた。


「よう。大丈夫か?」


「ん……、ソラ? あれ、今何時?」


「寝ぼけてんのか? まだ、夜の七時すぎくらいだ。様子はどうかと思って見にきたんだよ」


「まだちょっとお腹に違和感はあるけど、昼みたいに痛みはないから大丈夫。明日は普通に行けそうよ」


 実は俺にはちょっとだけ心配ごとがあった。ケンタウロスみたいなモンスターが出てきたら即座にワープで逃げればいいが、ノーマルホースレベルのモンスターをミレーヌたちが倒せるのだろうか。


 ドラゴとセリアンのコンビだったから今日は普通に倒せたが、ミレーヌとカザだと、歯が立たないどころか、殺されてしまう可能性もあるかもしれない。


 そんな危険な場所に連れていっていいものか。むしろ、今日ミレーヌが体調不良で森に行けなかったのは不幸中の幸いだった気もする。


「ちょっと、見舞いに来たってのに、まただんまり?」


「ああ、すまん。また考え事をしてた。ここらへんのモンスターは強いみたいだけど、大丈夫か?」


「たしかこの周辺の浅い森に出るのは、ノーマルホースとかノーマルビーとかノーマルピッグでしょ。五人でかかれば大丈夫よ。死にゃしないわ」


 なんか、この大丈夫にはまるで信頼が置けない。万が一でもミレーヌに死なれると困る。


 そんなことを考えていると、セリアンが話に入ってくる。


「速いだけとか攻撃が強いだけとかいうモンスターが多いし、相手の弱い部分をつけばどうにかなるよ。それに、少なくとも相手がボスじゃない限りは一発二発の攻撃で死んだりはしないはず」


 セリアンの戦闘能力とミレーヌたちの戦闘能力には結構な違いがあるから鵜呑みにはできないが、セリアンが言うなら間違いないのかもしれんな。


「ケンタウロスの矢であっけなく死んだ今日の俺みたいにか」


「は?! 死んだってどういうこと?!」


 ミレーヌがでかい声をあげる。病人なのに、また腹が痛くなっても知らんぞ。


「ミレーヌとカザには話してなかったかもしれんが、俺は死んでも生き返る。先に言っておくが、だからといって俺は召喚獣じゃないぞ。今日、森でケンタウロスに会って一瞬で殺されたんだよ。でも、生き返った」


「では、ソラ様は召喚獣ではないのに生き返れるということですか? しかも一日経たずに」


「デタラメなやつね。普通じゃないとは思ってたけど……、ここまでとは思わなかったわ。嘘でもないみたいだし」


 カザは驚いた顔をして、ミレーヌは呆れた顔をしているが、普通に信じてくれたようだ。


「だからこっちはミレーヌがケンタウロスに殺されないか不安なんだよ。いざとなったら、ワープで即逃げるようにはするが」


「ケンタウロスなんて森の奥深くにある、なんとかって場所にしか現れないはずだし別に大丈夫でしょ。どこかは忘れちゃったけど」


「いや、今日は森の中で普通に遭遇した。そう深い場所でもなかったはずだ」


「変ね。普通ボスモンスターは特定の場所から出てこないはずよ。そうやって自分の居場所を確保して、強大な力を蓄えてるからボスって言われてるんだし」


 今まで喋っていなかったドラゴが話し出す。


「ですが、ケンタウロスが現れたのは事実です。慎重になるに越したことはないかと思われます」


 そのあともいろいろと話し合ったが、結局ケンタウロスが森の中に現れた理由はわからず、明日どうするかの結論も曖昧なまま持ち越しになった。とりあえず、セリアンがやばいと告げたら、周りに人がいようとワープを使って逃げるということだけは確認した。


 運が悪けりゃ赤の他人をワープの巻き添えにするかもしれんが、そんなことも言ってられない。命が一番大事だからな。


 自分らの部屋に戻ると、その夜はドラゴと一緒に風呂に入って、ドラゴの翼のマッサージをし、ドラゴと一緒のベッドに寝た。


 セリアンは怪訝そうな目で俺らを見ていたが、まあいいだろう。

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