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第二十九話 当たり前のこと

 目を覚ますと、俺はどこかの教会の祭壇の上に寝ていた。ドラゴとセリアンの姿は見当たらない。


 まだ、頭と首と心臓に些細な違和感があるが、前とは違い意識ははっきりしていて、眠たくもなかった。生き返ることに慣れてしまったんだろうか。いや、いくらなんでも二回目で慣れるってことは多分ないだろう。


 前回は疲労困憊状態で生き返ったからあんな感じになったのかもしれないな。今回は瞬殺されたし……。


 ステンドグラスからうっすらと感じる外の様子からして、そんなに時間は経っていないようだ。


 とにかく起き上がって本を見てみる。ドラゴとセリアンの名前が書かれているが、今回は文字が灰色になっていない。


 普通に召喚できるのだろうか。


「ドラゴ召喚!」


 目の前にドラゴが現れる。


「セリアン召喚!」


 同じようにセリアンも現れる。


「ご主人様!」


「主!」


 そういって二人が駆け寄って抱きついてきた。


 う、嬉しいけど、ちょっと待って。苦しいし、巨乳二人の胸がガンガン当たる。いい匂いもするけど、もう何がなんだかわからない。


「ちょ、ちょっと待って二人とも。いったん落ち着いて離れて」


 俺がそう言うとやっと離してくれた。よく見ると二人とも涙を浮かべている。


 俺、ドラゴを泣かせたの何回目だよ……。いくらなんでもハイペースすぎるぞ。


「また、ご主人様を死なせてしまいました。本当に申し訳ありません。私の実力不足が招いた結果です。今後とも精進いたしますのでどうかお許しください」


「いや、全くドラゴのせいじゃないから。完全に俺のせい。俺が敵の実力を見誤ったんだよ。ワープでいつでも逃げられるだろうっていう慢心が俺の中にあった。セリアンが忠告してくれたとおりにすぐに逃げればこんなことにはならなかったはずだ」


「そうよ! 主が死んだと思って心配したんだから!」


「心配かけて悪かったな。ただ、セリアンに言ってなかったことがあったが、俺は死んでも生き返る。実際のところ、死んでないというよりは、ケンタウロスに殺されて俺は生き返ったんだ」


「は? 主は召喚者なのに召喚獣みたいに生き返るの? それも特例ってやつ?」


「ああそうだ。しかも、俺が死んでもお前たちは死なない。だから、俺の死に関してはそんなに心配しなくていい」


「心配するに決まってるでしょ! 主はドラゴやうちが生き返るからって死ぬ心配をしないわけ? 前に、死んでもいいなんて気持ちでモンスターと戦うな、ってうちに言ったじゃない!」


 たしかに言われてみればそうだ。俺がドラゴやセリアン、それにミレーヌやカザのことを心配するように、ドラゴたちも俺のことを心配してくれているのだろう。


 そんな当たり前のことも俺はわかってなかったんだな……。


 トモダチナラアタリマエー! っていう言葉の意味がわからなかったが、今ではわかる気がする。


「ご主人様、私は……」


 ドラゴが何か言いかけるが、途中で話すのを止めてしまった。なんて言いたかったんだろ。


 いくら待っても続きを言わないので俺から話しかける。


「ドラゴも俺のことを心配してくれてたんだよな。ごめん」


「いえ、もちろん私も心配していましたが、ご主人様が謝られるようなことは一つもございません」


「で、主はこれからどうするつもり? そもそもまともに動けるの?」


「ああ大丈夫だ。前に死んだ時は復活したあと一日中寝てたんだが、今回はそんな感じは全くない。生き返るのに耐性がついたからか、疲れてない時に一瞬で殺されたからかはわからないけどな。とりあえず、今日はモンスターと戦うのはもう止めて、そのへんをぶらぶらするか宿屋へ行こう」


 そう言って教会をあとにしようとするが、いきなりセリアンが叫ぶ。


「あー! 主、後ろ! 後ろ!」


 おい、俺は大御所お笑い芸人じゃねーぞ。


 後ろを振り返ってもドラゴとセリアンしかいない。ここまでテンプレだ。


「その後ろじゃなくて背中。てか、よく見たら前も」


 頑張って背中を見てみると、俺のお気に入りの白雪のローブにぽっかりと穴が開いていた。前も心臓のあたりが同じようになっている。


「なんじゃぁ~、こりゃぁ~」


 ジーパンははいていないが、思わず俺も叫んでしまった。


 おそらく、ケンタウロスに弓で殺された時にできた穴だろう。俺のお気に入りのローブを潰しやがって。絶対に許さない。絶対にだ!


 しかし、さすがの俺も馬鹿ではない。今、怒りに任せてケンタウロスを倒しに行こうとしても、返り討ちに会うだけだろう。


 あの腐れモンスターめ。いつか殺してやる。大人のいつかはいつまで経っても来ないものだが、この恨みは近いうちに果たさなきゃならん。


 リベンジします。プロ初完封で。


 ローブのフードを被っていなかったので被害は最小限に抑えられたんだろうが、もうこのローブは使い物にならないだろう。修復して直せれば一番いいんだろうが、一度壊れた防具を無理矢理繕って、ローブの効果がどうなるのかもわからない。


「ドラゴ、セリアン、防具屋に行くぞ」


 平静を取り戻した俺は、とりあえず、代わりのローブを防具屋に買いに行くことにした。


「承知いたしました」


「わかった」

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