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第二十八話 ケンタウロス

 俺とドラゴとセリアンは近くの森に着いて、さっそくモンスターとの戦闘態勢に入る。


「ドラゴ、この近くにモンスターはいるか?」


「はい。一匹いるようですが、私よりセリアンに聞いた方が確実かと思われます」


 そうだった。獣人族は竜人族よりモンスター探知能力が優れてる、って前にドラゴが言ってたっけ。


「ノーマルホースが近くに一匹いるね。それ以外は見当たらない」


 ……ノーマルホースって普通の馬ですか? おそらく、ウィーク○○シリーズの上位版なんだろうけどさ。


 まあ、ちょっとは強いんだろうけど多分大丈夫だろ。所詮雑魚は雑魚だ。


 それよりも心配だったのが俺のレベルに関することである。Lvが二十に上がってからどれだけパルア洞窟内で雑魚を狩っていても、今までガンガン上がっていたレベルが全く上がらなくなっていた。


 ミノタウロスを倒した時にLv二十一に上がったが、万が一、これからはボスを倒さないとレベルが上がらないなんてことになっていると、正直かなり危険な状況に追い込まれる。


 今、覚えてる魔法なんてほんの数種類だけで、そこまで役に立っていないのが現状だ。これ以上ドラゴ頼みだと、またいつ、この前みたいなことが起こるかわからないし、俺の主人としての尊厳も失われかねない。


 多分ないと信じたいが、もしドラゴが俺に愛想を尽かして俺を見放したら、戦闘的な意味でも精神的な意味でも俺は死んでしまう。俺は死んでも生き返るのだが、偉い人が死に至る病は絶望であると言っていたように、絶望によって死んでしまうだろう。


 俺はなんとしてもレベルを上げて、新たな魔法を習得しなければならない。


 とかなんとか考えている間に、目の前にノーマルホースらしきモンスターが現れた。


 さっき、タラシア都市内で馬を見たが、それに比べて明らかにでかいし、顔も動きも奇抜でどう見ても普通の馬ではない。誰だよノーマルホースって名前だから普通の馬じゃね、とか馬鹿丸出しなことを言ってたやつは。


 ノーマルホースは俺たちの目の前に現れたかと思うと、周りの木々を利用しながら素早くトリッキーな移動をし始めた。でかい図体のくせに、今まで見たどんなモンスターよりも、速くてつかみどころのない動きだ。


 ドラゴがいつものように突進していって、横なぎ攻撃を仕掛けるが当たらない。ドラゴが攻撃を外したところなんて初めて見た。雑魚だと高をくくっていたが、こいつマジでやばいんじゃないのか。最悪ワープで逃げよう。


 俺よりちょっと離れたところにいるセリアンは、銃を構えたまま銅像のように動かない。息すら止めているように見える。別に緊張で手が震えているとかではないみたいだが、照準が定まらず攻撃しあぐねてるのだろうか。


 すると、地面から電撃が流れてきて俺はそれをまともに食らってしまう。白雪のローブのおかげか、かなりの衝撃はあれどそこまでダメージは受けていないようだが、これが何発も続くとさすがにまずい。


 ノーマルホースは雷魔法攻撃も使えるのか。しかも俺を的確に狙ってくるってことは、召喚獣よりもその主人を攻撃した方が効率がいいってこともわかっていて、俺が主人だってことも理解していることになる。


 逃げるか。そう考えていた時に、ドラゴがノーマルホースの腹のあたりを突きで捉える。


 次の瞬間、ドンッ! と大きな音がなり、ノーマルホースが爆発した。ちなみに、振り向いてはいない。


 何が起こったのかわからなかったが、ドラゴが心配だ。


 よく見ると、ドラゴは突きを放った瞬間後ろに引いていたようで、爆発には巻き込まれず全く問題なさそうだった。


 ノーマルホースは消滅し、アイテムとゴールドを落とす。


「主が魔法を一発くらったけど、まあ楽勝だったね」


 そうセリアンが言う。あの爆発はセリアンの銃での攻撃か。しかし、ドラゴの槍での攻撃があったとはいえ、一撃で仕留められる攻撃力があるんだな。めちゃくちゃ音もでかかったし、一撃必殺って感じでかっこいい。火薬の匂いがそこら中に充満している。


 でも、火縄銃って威力は低いんじゃなかったっけ? 低いのは命中率だっけ? よくわからんが、あとでそこらへんをセリアンに聞いてみよう。


「私がノーマルホースの動きを止めるのに手間取ってしまい申し訳ありませんでした」


「いやいや、ノーマルホースをあんなに早く刺せる槍使いなんて滅多にいないよ。ノーマルホースみたいな動きの素早いモンスターだと、一瞬でも動きを止めてもらわないと、うちの出番はないからね」


 どうやら、ドラゴとセリアンは阿吽の呼吸でノーマルホース対策を行っていたようだ。


 ……やっぱり俺、完全にいらない子やん……。


 そのあと、ドラゴとセリアンで数匹のモンスターを倒すと、俺のレベルは二十二に上がっていた。


 Lv二十を超えると、ウィーク○○系の弱いモンスターをいくら倒してもレベルが上がらない仕様になっているんだろうか。とにかく、ノーマル○○系のモンスターを倒せば、まだレベルが上がりそうなのでほっとした。


 ちなみに、あれだけ強いモンスターだったのに、ゴールドの方は思ったより落とさなかった。ゴールド稼ぎだけを目的にするならウィーク○○系をたくさん倒した方が効率がいいかもしれない。


 セリアンは敵が近くから攻撃してくる時には、素早い身のこなしで避けて至近距離から銃をぶっ放し、敵が遠くにいる時にはジッと動かず、狙いが定まった瞬間に銃で攻撃するというスタイルで、ほとんど攻撃を食らわずにモンスターを倒していった。


 ただ、銃の性質のせいなのか連発はできないみたいなので、大勢のモンスターに囲まれた時にはドラゴのようにはいかないようだが、遠近どちらでも攻撃ができるというのはドラゴにはない攻撃方法である。もし、連発できる銃があればさらに強くなりそうだな。


 そんな感じで順調に狩りを行なっていたのだが、いきなりセリアンが今までに聞いたこともないような大声で叫ぶ。


「主! ケンタウロスがきた! ドラゴとうちで止めるから主は早く逃げて! 早く!」


 ケンタウロス? 上半身が人間で下半身が馬のやつか?


 そんなことを考えてるうちに、猛然とこちらに走ってくるモンスターが見える。あれがケンタウロスなのだろうか。


 俺だけ戦闘で役立たずになるわけにはいかない。俺だってドラゴやセリアンを守らなくてはならないのだ。このケンタウロスってやつも、ミノタウロスを倒せた俺たちならどうにか倒せるだろう。それに、もし死にそうになったらワープを使えばいい。


 俺がセリアンの声を無視してその場にどとまっていると、ケンタウロスはノーマルホース以上に素早い動きをしながら、弓を引いていた。


「ご主人様!」


「主!」


 二人が叫びながら俺の方に向かってくる。


 ケンタウロスの手元にすでに矢はなく、三本の矢が俺の頭蓋骨と首と心臓を通り抜けていった。


 それがわかったのは矢が俺の体を通り抜けていったあとで、俺は一瞬何が起こったのかわからなかった。


 今までに味わったことのない激しい痛みが全身に走り、それと同時に力が抜けていく。あとなぜか体もビリビリする。


 俺の脳みそや血液が飛び散り、目の前が真っ暗になった。

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