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第二十二話 新しい召喚獣

 あれ? 俺は獣人の魂を求めて洞窟まで行こうとしてたはずだが、ドラゴの話によると、少しの間立ち止まって目をつぶっていたそうだ。軽い立ちくらみみたいなものだったのかな。


 あいつ、せめて俺が寝てる時に出てこいよ。もし、俺が今モンスターと戦ってたら死んでたかもしれないってのに……。


 まあ、俺は死んでも生き返るんだけどね。


 俺はソラ・サンという魔導師。隣にいるのは俺の召喚獣で竜人族のドラゴ。


 今、俺たちはパルア洞窟最深部にあるはずの獣人の魂を求めて奔走中である。


 魔導師というだけあってワープが使えるのだが、いかんせん使い勝手がよくない。


 自分の半径十メートル以内の人間と召喚獣を全て巻き添えにするので、なるべくこの魔法を他人に知られたくない俺としては、人気のないところで使いたい。


 中指と人差し指をデコにあてて、自分と手をつないでる人間だけ瞬間移動できたらいいのに……。そうなったら宇宙人に教えてもらうことになるけど。


 とりあえず宿屋から外に出ると、俺を乗せて空を飛ぶことができるドラゴに乗って町の外へと出ていく。見渡しのいい場所で周りに人がいないことを確認し、洞窟最深部へとワープした。


「ご主人様、ここへ何の御用なのでしょうか? もうミノタウロスは倒したのでいないはずですが」


「ああ、ドラゴに言ってなかったな。俺の新しい召喚獣がここにいるようなんだ。そのためにここに来た」


 そんな俺の言葉を聞いて、ドラゴは今までに見せたことのない悲しそうな表情を見せる。


「……私はお役御免ということなのでしょうか……。本来、召喚獣は変えることはできないと聞いております。しかし、魔法を全て使うことができるご主人様であれば召喚獣を変えられる、というわけですね」


「いや、そうじゃなくてだな――」


「ご主人様は私のどこにご不満があったのでしょうか。いえ、それに自分で気づかない時点で、私にはご主人様の召喚獣である資格がなかったのだということですね……。今までありがとうございました……。そして、足らぬ召喚獣で申し訳ありませんでした……。さようならご主人様……」


 あー、なんか壮絶な勘違いをしてるし、しかもまた泣いてる。ほんと泣かないでくれよ。こっちの心が痛むから。普段仏頂面なドラゴに泣かれると、余計くるものがあるわ。


 俺はドラゴの涙を手で拭い、その手で両肩を持って、強い語調でドラゴに話しかける。


「俺がドラゴを捨てるわけがないだろ! 俺はそんなことは絶対にしない!」


「ですが、新しい召喚獣と……」


「だから、ドラゴともう一人召喚獣を持つんだよ。普通は一人につき一人の召喚獣しか持てないらしいが、俺は特別に召喚獣を何人も持つことができる。仲間が増えるだけだ。ドラゴは今までどおりしててくれ」


 やっと意味を理解し、泣き止むドラゴ。


「すいません、取り乱しました」


 どこのお笑いトリオだよ。


 まあ、これから俺と俺の召喚獣でトリオが結成されるわけだが、さて、どんな召喚獣なのか楽しみだ。ドラゴみたいに美人で従順で強い召喚獣だといいな。あと、ドラゴとも仲良くなってほしい。


 しかし、ドラゴと一緒にミノタウロスがいた部屋を探しても、獣人の魂はなかなか見つからない。まさか本当に消えてるってことはないよな。


 それか、俺たちがいない間に、どこか別の場所に移動してしまったのかも……。この洞窟内だけでも結構広いのに、もし洞窟の外に出ていたら探すのは絶対に無理だ。砂漠の中でコンタクトをなんたらである。


「スモールライト」


 一抹の不安を抱きながらも、光魔法で周辺を明るくする。それでも見つからない。やはり、時間が経ったから消えたのか? それとも、どこか別の場所に行ったのか? 両方とも可能性は十分にありえる。


「ドラゴ、獣人の魂は見つかったか?」


「いえ、それらしきものはどこにもありません」


 俺はドラゴの方に寄っていく。ドラゴの目線の先あたりにピカピカ光るものを見つけた。


 よく見てみると、色違いだがドラゴを初めて見つけた時のような銀色の魂らしきものが浮いている。暗い時は闇に紛れて見えなかったんだろう。


 ただ、ドラゴは明るくなっても見えていないってことになる。召喚獣には見えないのかな?


「お、いた。それだそれ」


 ドラゴの時と同じように触ってみる。


 あの時と同じように光と魔方陣が表れて一人の召喚獣が召喚された。


 髪の毛は銀髪で、肌は黒や褐色とまでは言わないが微妙に黒めの肌色。顔もかなりの美少女といった感じだ。身長は低くはないが、ドラゴほど高くもない。


 そしてなんといっても犬耳が生えている。猫耳も嫌いではないが、犬耳スキー派の俺にとっては朗報である。あと巨乳。ドラゴの時と同じように服は着ていて靴もはいていた。


「チッ」


 俺やドラゴの舌打ちではない。


 舌打ちっぽいものが犬耳娘から聞こえてきたようだけど、多分気のせいだろうな。


 俺の初対面の人にできる精一杯のあいさつをしてみる。


「よろしく」


「………………」


 無視された!


 だから人間ってのは嫌いなんだよ! 今までわいわい騒いでたくせに俺が話しかけるとしーんと静まり返ったり、俺は何もしてないのにクスクス笑い始めたり!


 美少女に無視されたことで、過去のトラウマが蘇って俺の黒い部分がはみ出る。


 しかし、今の俺はめげない。ドラゴとだってミレーヌとだってカザとだって仲良くなれたんだ。それだけが俺の心の支えだった。

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