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第十三話 スモールライト

「ミレーヌ、鍛冶職人ってのはモンスター討伐に出かけたりするものなのか?」


「ソラ、鍛冶職人だけでなく職人全体のことを馬鹿にしてるでしょ。たしかに家に引きこもったままの職人もいるけど、そんなやつは馬鹿か天才か、老人だけよ」


「ミレーヌ、エルフってのはモンスター討伐に出かけたりするものなのか?」


「エルフは基本的には外に出たりしないわ。私にみたいなのもいるけど少数ね」


 俺はこの世界に対する知識がほとんどないので、コピペ会話でミレーヌにいろいろなことを聞く。こちらからなんと話を切り出していいかわからないから、コピペ会話で質問するのだ。コピペ会話はお見合いでも使えるだろう。ただ、今日日お見合いなんてほとんどないし、俺もするつもりは全くないから使いどころは一切ない。


 少し後ろの方では、ドラゴとカザが仲良く話をしていた。


「お嬢様たち、本当に仲がよろしいようですね。ソラ様もお嬢様に興味津々なようですし」


「これからパーティを組む者同士、仲が良いのは好ましいことです」


 なんか召喚獣二人が変な勘違いをしているようだが、二人の楽しげな会話に水を差すのも気が引けた。


 だが、ここはもう森の中だ。ドラゴにモンスター探索を頼む。


 モンスターを一匹見つけた。


 デモンストレーション替わりにドラゴに命令し、ドラゴは一撃でモンスターを倒す。


「あたしがつくった槍もいい使い手に恵まれたようね」


「ミレーヌ様の魂のこもった力作ですので、使い勝手がよろしいようです」


 お互いに褒め合い、ミレーヌは軽く頬を赤くしていた。


 か、かわいいところもあるじゃねーか。てか、エルフって聞いたら余計かわいく見えてくる。ちゃんと見たら、よく聞くエルフの特徴として、耳もとがってるしな。


 ここでちょっと問題が発生した。お金とアイテムをどうやって本にしまおう。こそこそやってたらいつかはバレる。それに、そんなことで神経をすり減らしたくない。


 結局、本は魔導書、本やお金やアイテムが消えるのは魔法だということにして、今までどおり堂々とすることにした。どうやらドラゴもそういう風な感じで認識していたらしい。


「次はお前らの実力を見せろよ」


「言われなくてもわかってるわよ」


 敵はウィークラビット二匹。


 一匹をミレーヌが、もう一匹をカザが担当するらしい。


 ミレーヌは短剣、カザは片手斧に盾を装備している。ミレーヌが盾を装備していないのは短剣で攻撃する時に邪魔だからだろうか。


 まず、カザがウィークラビットの脳天めがけて小さな斧を振りおろす。しかし、その攻撃は外れた。ウィークラビットは攻撃を躱したと同時にカザに体当たりをしかけるが、カザは盾で軽くいなす。モンスターを倒すまで、もうちょっと時間がかかりそうだ。


 ミレーヌの方はというと、短剣でウィークラビットを何度も攻撃するが、なかなか致命傷にはいたらない。しかしダメージはしっかり与えており、あと一撃くらいかなというところで、懐からもう一本短剣を取り出し、素早い二段攻撃でウィークラビットの耳を切り落とす。そしてトドメを刺した。


 部位破壊、部位破壊……。俺はあることを思い出すが、今はその時ではない。


 カザの方も戦闘が終わっていた。どうやら大きなダメージを受けることもなく無事に倒したようだ。


「ミレーヌは短剣二刀流といったところか。カザは片手斧と盾で戦うスタイルだな。」


「そうだけど、何もしてないあんたがなんでそんなに偉そうなのよ。あんたも早く魔法を見せなさいよね」


「どっちの武器もミレーヌがつくった武器?」


「ええそうよ。って、あんたあたしの話聞いてる? 会話が成り立ってないんだけど」


「ああ魔法な。次見せてやるよ」


 実は、俺はどうしようか迷っていた。基礎魔法は一人二種類までしか使えない、というのはよく知られていることらしいし、どの魔法を使うべきなんだろうか。


 ちなみに、基礎魔法というのは火/水/土/風/金/雷の六種類の魔法のことである。


 最初のころに俺がよく使っていた火魔法は使うとして、もう一つはどれにしよう。


 今までの戦闘でなんとなく感じていたことだが、火と水を同時に使うとあんまり効果的じゃない気がするんだよな。火魔法を水魔法が邪魔してるのかもしれない。


 逆に、火魔法と土魔法を一緒に使うと、なんか威力が上がってる気がする。これも相性の問題なんだろうか。


 よし、火と土を使おう。


 ドラゴにモンスターの位置を聞くと、近くに二匹いるらしい。急いでそこへ走る。


 そこには、ウィークキャタピラーとウィークスネークが一匹ずついた。俺は冷静に魔法を唱える。


「スモールファイヤー。スモールソイル」


 スモールファイヤーがウィークキャタピラーに当たり一発で倒れるが、スモールソイルはウィークスネークに当たるも一発では倒れなかった。


 むしろ、勢いよくこちらに向かってくる。もう一度ウィークスネークにスモールソイルをぶつけて倒したが、モンスター一匹に魔法二発もかかるとは……。ちょっとかっこ悪いところを見せてしまった。


 案の定、ミレーヌにダメ出しをされる。


「ねえ、なんで毒属性のウィークスネークにわざわざ土魔法を唱えたの? あと、光魔法か闇魔法は見せてくれないの?」


 ミレーヌがなんかジト目でこちらを睨んでくる。


 毒属性のウィークスネークに土魔法は相性が悪かったのか。そもそもウィークスネークが毒属性ってことすら知らなかったけど。


 それに光魔法か闇魔法を使ってもいいのか? よくわからん。とにかくミレーヌはそれなりに魔法に詳しいようだ。


「まあ、ただの試し打ちみたいなもんだからな。てか使える魔法は基礎魔法二種類と複合魔法一種類だけだろ? だから基礎魔法が二種類使えるやつは、光魔法や闇魔法なんて使えないんじゃないのか?」


 ミレーヌが俺を小馬鹿にしたような顔になる。


「やっぱり魔導師だなんて嘘っぱちじゃない。ソラ、あんた普通の魔法使いでしょ。魔導師なら基礎魔法や複合魔法の他に、希少魔法のどちらかを使えるはず。そんなことすら知らないってことは魔導師じゃないわね。まあ、魔法使いも数は少ないんだし、わざわざ嘘をついてまで、俺は魔導師だーなんてホラを吹く理由が全然わかんないんだけど」


 そういうことか。俺はレベルが上がって光魔法と闇魔法を使えるようになったから、職業が魔導師になってたんだな。それに俺の推測どおり、光と闇が希少魔法らしい。


「ふっふっふ、そこまで言うのなら俺の希少魔法を見せてやろう」


 ミレーヌは呆れた顔で俺を見ている。


「また小芝居? どうせ使えないんでしょ」


 問題は光と闇のどちらを見せるかだ。ミレーヌの話的に、普通はどちらか一種類だけを使えるみたいだからな。


 闇や黒もかっこいいけど、俺は光や白ってのが大好きなのだ。


 カードゲームでもそういうカードを好んで使う。二つデッキをつくって一人二役でカード対戦するのもなかなか楽しいんだぞ。相手の手札がわかっててもゲームとして成立してれば面白いんだよ! 白天使デッキが俺で、黒傭兵デッキが仮想敵だ。


 少し歩くとウィークラット一匹に遭遇した。


 こいつに光魔法をお見舞いしてやる。


「スモールライトおおおおおおお!!!」


 断っておくが、対象物が小さくなる魔法ではない。


 あたり一面に光が放たれ森の中が明るくなる。また、モンスターの目が開かなくなり、あたりをうろうろしている。


 状態異常っぽく言うと、暗闇/混乱といったところか。


 ドラゴたちには事前に目を閉じろと言ってあるので大丈夫だ。俺も発動した瞬間は目を閉じた。


 もう目を開けていいぞというと、俺たちがいる場所らへんだけが明るくなっていて、モンスターに暗闇/混乱らしき状態異常効果が出ているので、ミレーヌには信用してもらえたようだ。


 ミレーヌは実際に見たことはないが、この魔法については聞いたことがあったらしい。


 攻撃するのがめんどくさいのと部位破壊をしたいので、トドメはドラゴに刺してもらう。


「疑って馬鹿にしてごめんなさい。ソラは本当に魔導師だったのね……。でもなんで知らないふりをしてたのよ! また、あたしをおちょくってたのっ!?」


 しおらしくなったと思ったら二言目にはこの態度か。本当のことを言ってもよかったが、また面倒なことになりそうだったので、否定も肯定もしない。


「さあ、どうだろうな」


 お互いの実力のお披露目会が終わったところで、四人で普通にモンスターを倒していく。


 お金やアイテムはトドメを刺した人のものという約束にした。


 一般的には最後にみんなで山分けという形が普通らしいが、俺は獲得したアイテムを本に入れるので、山分けするにはどれが今日の戦利品かわかりにくく面倒だからな。


 トドメを刺した者勝ちにすると普通は連携がうまくとれないらしいが、思った以上に連携はとれていた。


 はっきり言って、ドラゴがいる分、俺たちとミレーヌたちとの間では結構な実力差があったが、俺たちは獲物の横取りなどはせず、相手に合わせるようにしていたのでそれが功を奏したのだろう。


 ドラゴは一昨日よりも生き生きとしていた。糞みたいな木の槍から、ミレーヌのつくったまともな槍に武器が変わったから当然か。


 森のそんなに深くないところで狩っていたため、一昨日ほどの報酬は入らなかったが、命を賭けていない狩りにしては十分な報酬が手に入った。もちろん、ちゃんと休憩もいれつつ戦ってたしね。


「暗くなってきたからそろそろ町に戻ろう」


「そうね」


「承知いたしました」


「はい」


「ドラゴ、三人運べるか?」


「大丈夫です」


 前に大丈夫だと言って、全然大丈夫ではなかったことが思いだされるが、自分の状態に関して俺に気を使わず、本当のことを言ってくれと話をしたので本当に大丈夫なんだろう。


「しっかり私の体につかまっていてください。よろしいですか?」


 そう言って、さっき背中から生やした竜の翼をはためかせる。


「ひゃうっ!」


 なんか聞いたことのない喘ぎ声が聞こえてきた。幻聴か?


「申し訳ございませんが、私の翼にはできるだけ触れないようにしていただけないでしょうか。最悪飛べなくなる恐れがございます」


 さっきのかわいらしい悲鳴はドラゴの悲鳴だったのか。三人乗りだと窮屈で、ちょっと翼に捕まろうとしちゃったからな。


 しかしいいことを聞いた。ドラゴは翼を触られるのに弱いのか。

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