私の唇を潤すもの
乾く。
この季節になると、どうしても空気が乾燥して、私の唇を巻き込む。
だから、リップクリームはこの季節の必需品。
私の唇を潤すものは、リップクリーム。
「はるか?」
同じクラスの要が、左手に日誌を持って、教室に入ってきた。
私は、黒板を消している手を止めた。
「な……なに?」
私の顔はりんごのように赤くなり、心臓は大暴れ。
付き合い始めて、もう3ヵ月は経つ。しかし、私はその生活に慣れない。
お互いの気持ちを知ってしまったから。
言いたいことはたくさんあるのに、なかなか言えない。
「はるか?」
いつのまにか要の顔が、私の顔の真前にあった。
「ひゃうっっ!!」
私は奇声をあげた。
その拍子に、黒板消しを床に落としてしまった。
白い粉が舞う。
「週番の日誌書きおわったんだけど、もう帰れる?」
そうだ、今日は要と週番だった。
「はるか最近ヘンだよ?」
要の眉間にしわが寄った。
私は、そんなことないよと冷静を装った。
「俺に何か言いたいことがあるんじゃない?」
言いたいことは、山ほどあるんだよ。
だけど、私の喉は、それを通してくれない。
少しの間、気まずい沈黙が流れた。
「だって・・・」
言い終わるか終わらないかのタイミングで、私の唇は、要の唇によってふさがれた。
乾いた唇が、潤っていくように感じた。私の錯覚かな?
お互いの影が離れると、要はにっこり笑って、私を抱きしめた。
私の唇を潤すものは、要になった。
「はるか、リップクリーム貸して」
「え?はい」
ポケットからリップクリームを出して、それを要に渡す。
すると、要は自分の唇に、それを塗った。
「なにしてんの?」
私は怪訝そうな顔で聞く。
「こうするの」
要はにっこり笑った後、また唇を重ねた。
ああ・・・心臓の鼓動が、要にも聞こえてしまいそうだ。
唇を離すと、要は
「はるか〜唇乾燥してたよ。ガッサガサ」
けらけらと笑い出した。
私は、これでもかと言うくらい、目を見開いた。
自分も唇が乾燥しやすい体質なので、リップクリームは必需品ですね。
しかし、この展開は少々強引なのではないかと思いつつ、何とか書き終えました。
ビシバシ評価よろしくお願いします。