Cuuuute!!
チクタク、チクタク、…
時計の針が無情にも留まらず動き続ける。
まぁ、例えとまっちゃってもそれは故障であって、お隣りの大橋さんとか、向かいの小林さん、はたまた地球の裏側のデニスさん家では時計は動いているはずなのだ。
それにしても、だ……。
ぎゅっと、クタクタになったクマの縫いぐるみを抱きしめつつ、時計に目をやった。
(もうすぐ23:30…)
後30分で今日が終わる――……。
(やっぱりあいつはわかってない…)
6歳の時から大事な大事なクマに顔を埋めて、必死に目から溢れ出る物を堪えた。
(いや、決して涙とかじゃないから、うん。ただの汗だし)
あの時…
4日前の話………。
『え?なんて?』
『だからー、明後日から泊まりの遠征!いいだろう』
にこりと笑うユキに智菜は何にも笑えなかった。
ただ嬉しそうなユキがくやしくて悔しくて。
『馬鹿ユキ!レギュラーでもないくせに浮かれるなっ』
ふんっとそっぽを向いた。
『はぁ?なんで怒ってるんだよ』
訳わかんねぇ。
と、眉を潜めるユキ。
そんなユキに憎さがさらに倍増した。
『俺今回からレギュラーなんだけど』
『……』
『しかも1番でファースト』
『…………』
『小さい頃から応援してくれてただろ?智菜は喜んでくれねぇーの?』
(……わかってる)
野球の名門校に入ってからずっと補欠で、ずっと影で努力して、やっと手に入れたチャンスのはずだ。
(どれだけユキがうれしいのかも、わかってる)
『……いってらっしゃい』
やっぱり最後にはむくれながら、見送るのだ。
『土産買ってくるからな』
ユキは嬉しそうに笑って旅だった。
ーーーーーー………。
(こんな事ならケンちゃんとか三谷君とかのデートの誘い受ければ良かったなぁ…)
今日は皆がいろいろ誘ってくれた。
ボーリング、カラオケ、映画。
だけどなんとなく違うと思ってしまったから、結局全部断った。
きっとあいつはあたしが今どんな気持ちで今を迎えてるかなんて知らないんだ。
―――やっぱり、むかつく。
ずっと、幼なじみやってきたくせに。
ずっと一緒にいたくせに。
そりゃぁ野球が大事な事だってわかってる。
(…あいつの事ぐらいわかるし)
それでもわかってるのはあたしだけ。
あいつはちっともあたしの事わかってない。
なのに、心のどこかでもしかしたら。なんて、期待してしまっている自分に腹がたつ。
そんな小さな希望ですら叶えてくれないあいつにも腹がたつ。
チクタク、チクタク…
後――……15分。
ガタガタ……っっ
(――え?)
窓の動く音がして、勢いよく振り返った。もしかしたらって。
だけどただの風の仕業。
「――馬鹿っ!」
思わずクマをベットへ投げた。
悔しくて、俯く。
もしかしたら、あいつが来たのかと思ったのに。
いつもみたく、ひょっこり窓を開けて入って来たと思ったのに。
じわり。
微かに視界が歪んだ。
ベットに近づいて、クマを再び抱き抱える。
投げるなんてどうかしてた。
(もういいや、後5分。クマと一緒に過ごすから…)
顔をクマに埋めてその時を待つ。
クマからは、なんだか懐かしい匂いがした。
「…………お前、本当にそのクマ好きだよな」
残り3分。
(嘘………)
まさかの出来事。
よいしょっと、ベットに腰を下ろす姿は紛れも無くあいつの姿で、膝の上に肘を付けながら、呆れた顔でこっちを見下ろしていた。
「ユキ…なんで?」
ありえない、と…目を疑う。
いざ現実におこると、信じることが出来なかった。
近寄る事も出来ずに、その場でぎゅっとクマを抱きしめる。
ユキはふっと、口元に笑みを浮かべた。
「誰かさんが泣いてるかと思って」
「な、いてるわけないじゃんっ」
(智菜の目真っ赤だけどな…)
睨み付けるようにユキをみた。
それなのに、だ。
ユキは心底嬉しそうに笑ってこっちに歩み寄って来た。
月明かりを背にしたユキはなんだかユキじゃないようで。
智菜はその場に固まった。
「俺が忘れると思った?」
「……っ、だって…」
「大事な、智菜の誕生日忘れる訳ないじゃん。お前祝らないとすっげぇ怒るし」
「うるさいっ…」
ポロポロ流れてくるものはきっときのせいだ。
(こんな奴に嬉しくて泣いてるなんてありえない)
だけど、ユキは少し困った様に笑いながら智菜の頬を流れる物を野球部らしくない細い綺麗な指ですっと、すくった。
残り1分…。
「今日、なにしてた?」
「………」
「ケンたちの誘い断って一人だったわけ?」
何故それをしっているんだと思いながら、
「一人で居たかったのよ」
強がりを言ってみせる。
ユキは何にもわかってない…。
――残り、30秒 。
「かわいそうな奴。
誕生日に一人なのかよ」
「っ、うるさいっ…」
からかうような、口調のユキをキッと睨んだが、その目は予想外にも穏やかで。
(なん、で……?)
不覚にも心臓が大きく高鳴った。
……残り10秒。
「そんなに俺に祝って欲しいならさ、俺と付き合えば…?」
(……付きあう…?)
その何気なしにつぶやかれた言葉に目を見開けば、ユキの顔が近くに迫って来てて。
「――んっ」
自然と瞼が下りていた。
優しく、重なるだけの唇。
だけど、それはずっと智菜が求めていた物で。身体中が熱くなる。
想像よりもカサカサしていた唇に、よけいにときめかされた。
残り、1秒。
「好きだよ。お誕生日おめでとーっ」
「えっ!?ちょっ…やぁっ」
ジャスト、00時。
再び強引に合わさった唇は、深く深く重なり合う。
(な、に、これ…)
次第にふわふわして来て、気持ちよくて。
知らぬ間に慣れないながらもユキを求めた。
キスの合間に、「ふぁっ」と夢中になって酸素を求める智菜に、愛おしそうにユキが微笑んでいたなんて智菜は知らない。
「はぁ、……もう、ダメ」
なれないキスで、意識が朦朧として来た智菜がユキの胸の上に身体を預ける。
そんな智菜に満足げに微笑んだユキ。
「やばいな。智菜とのキス、ハマりそう」
ケラケラと笑うユキに顔を真っ赤にさせた智菜。
またされたあげく、誕生日に贈られたのがコレ。
ゆっくりと、ユキが智菜の頭を撫でる。
「……なぁ、智菜。返事は?」
強引に迫ってきたくせに、今更不安げに答えを求めて来たユキに何故か愛しさが込み上げた。
(…こんな誕生日もありかもね)
知らぬ間に、口の端が上がった。
「ねぇ、ユキ」
「………何だよ」
(緊張してるんだから早く返事くれよ………)
「返事、ユキの誕生日でもいい?」
「はぁ?ふざけんなっ!!」
―――今年は忘れられない誕生日になったよ。
―――………
――……
「え!帰っちゃうの?」
「だって、明日まだ 遠征の続きあるし」
「続きって…どうやって来たの?」
「ん?タクシー。帰りもだな。智菜の誕生日間に合わせるのに必死だったから無断で抜けてきたし、早くかえらないと」
「そっか……」
なにやら俯いてしまった智菜。
心配になって、「智菜?」と、声をかけた。
すると、
―――ぎゅっ。
「智菜!?」
「早く…帰ってきて、ね?」
恥ずかしそうにユキの腰に腕を回す智菜。
(こいつ実はツンデレ…!?)
真っ赤になった顔を智菜にばれないように手で覆う。
(本当、ケンとかに釣られてなくてよかった…)
実は気が気でなかった内心。
ポンポンと、その頭を撫でながら、ふと、クマの縫いぐるみに目が留まった。
(俺が6歳の頃にあげた奴だし…)
大事に大事にしているクマはもとはといえばユキが初めてあげた誕生日プレゼント。
(本当、可愛い奴……)
愛おしい幼なじみを優しく抱きしめた。
END
アトガキですm(_ _)m
ここまで読んでくださったみなさん、そう貴方です!!
ほんとーにっっ、ありがとうございました☆★
わけのわからないタイトルを目にしてとりあえず読んでくださった方もいるかと思います。あれは、cuteを勢いよく叫んだ感じです((笑
主人公の女の子は中々素直になれないツンデレなコで、対するユキ君は大人っぽい対応もしつつ、ちゃっかりヤキモチ焼きな男子を目指しましが…皆さんはお楽しみ頂きたでしょうか?(T ^ T)
この二人は割と好きなキャラでして、またいつか書くかもしれません(^-^)
その時は是非お付き合いくださいm(_ _)m




