恋
書き途中ですっ
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-Naoya side-
俺は水城直也。
中学2年生で…俺には好きな奴がいる。
名前は…植村絢。
俺が1年の頃から想ってた…奴。
好きすぎて嫌いなんだよ。
この気持ち、分かるかよ?
ある意味手の届かない存在。
俺の、理想。
俺がこんなに想いを寄せた奴はコイツが初めてだった。
普段からそんなに喋る方じゃない俺は、ただ遠くから見つめてるだけで充分だった。
女友達と仲良く喋りながら廊下を歩くアイツの姿を。
放課後の居残りを誰にも押し付けずに一人で抱え込むアイツの姿を。
先生に呼び出し喰らって事情を必死に説明してるアイツの姿を。
何気なく見つめるだけで俺は満足だったんだ。
だから、この気持ちを伝えようなんて考えたこともなかった・・・
クラスの違うアイツの姿を見る事ができるのは休み時間だけで、俺はその度に廊下に出てはアイツの姿を探した。
ある意味自分はストーカーなんじゃないかって、悲しくなったりもした。
でも、それだけ俺のアイツに対する気持ちは確実に大きくなっていったんだ・・・
今日もアイツは一番仲の良い友達と楽しそうに喋りながら俺のクラスの前を通る。
話しかけたりはしない。
俺はただ、男友達と仲良く喋ってる‘‘フリ’’をするだけ。
実際話なんか聞いたりしない。
っつーか聞けねぇ。
んな事してる暇あるかよ。
やっぱり俺には手の届かない存在なんだ。
遠い存在。
近くなくて良い。
俺の気持ちは伝わらなくても構わない。
ただ、俺だけの心の中に秘めておきたい。
この時までは、そう思っていた。
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-Aya side-
私が密かに心を寄せている男子がいる。
名前は…水城直也。
気持ちは…伝えないって決めたけど。
あなたの事が好きです。
その気持ちは小さくなることはなかったの。
むしろ、大きくなるばかりで。
もう抑えきれないんだっ・・・
「歩美ぃーっ!!遊びに行こっ!!」
こうやっていつも仲良しの歩美を誘っては休み時間に廊下を意味なく歩く。
ホントは意味がある。
「えー?またー?意味ないじゃんっ、やめようよー」
【あの人】に会いたいの。
「良いじゃんっ!意味ないから良いのーっ!!」
そうやって歩美の手を無理矢理ひいて廊下に出ると、今日もいてくれた。
【あの人】がいる。
楽しそうに仲の良い男の子と喋ってる。
その前を通り過ぎるのが私の日課。
通り過ぎるだけで良いの。
通り過ぎて、姿を見るだけで大満足なの。
願わくばもう少しだけ、もう少しだけ近づきたい…
私には、手の届かない存在。
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-Naoya side-
気持ちは伝えない、って決めたのに…
その考えを180°ひっくり返したような出来事が起こったのはある冬の日だった。
その日も俺は最初の休み時間、廊下に出ていつものようにアイツの姿を探していた。
アイツより身長の高い俺は少し見渡せばアイツの姿を探せる。
でも…。
今日は見当たらないんだよ。
「おーい、皆藤いる?」
とりあえずアイツのクラスにいる知り合いを呼ぶ。
「どした?水城」
「えーっと・・・んと・・・あー・・・」
教室を見渡す限り植村の姿は見えねー
「んだよ、早く言えよ」
でも、あいつなら・・・
「杉田いる?」
「は?杉田って杉田歩美?」
「ぉ、おぅ」
「あ、水城お前、杉田と付き合ってんの?」
「なわけねーだろ、さっさと呼べ。」
「あいよー」
勘違いもいい加減にしろよ…
俺の好きな奴はな…
「…ろ?水城!!」
「ほぁい!?」
「何ボーっとしてるの?」
「わ、わりぃ」
「で?どうしたの?廊下寒いんだけどっ」
・・・どうやって話を切り出そう…
「そ、そういえばいつも一緒にいる奴は?」
「は?あー…絢?」
「あー、うん、そう。」
「今日はね、発熱で学校欠席だよー」
「へー、そうなんだぁー…まぁ、どーでもいいけど」
「あっそ。で?用は?」
あ、忘れてた・・・
「えーっと・・・お前、去年何組だった?」
…何聞いてんだ、俺
「は?何それ?どうでもいいよそっちの方がっ!!」
そうですよねーはい。。。
「わ、わりぃ。本当の用件忘れちまったしもうすぐ授業始まるから俺帰るわ・・・」
「あっそ」
はぁ…超緊張したんですけどっ
学校欠席か…
アイツ、大丈夫かな…
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-Aya side-
どうしちゃったんだろ、私。
あんなに風邪とは無縁だったのになー
お母さんも心配し過ぎだよっ
これくらい平気なのに。
暇だな…
あぁ、学校行きたいっ
行って【あの人】に会いたい。
姿を見るだけでいい。
あ、もうこんな時間…
そろそろ学校も終わって【あの人】も帰ってくる時間。
出掛けちゃおうかな…
「お母さん、ちょっと出掛けてくるっ」
「絢!風邪ひいてるんだから家にいなさい!」
「ちょっとだけだから!!」
行く宛てなんて無い。
学校に行ったら先生に見つかっちゃうでしょう?
だからと言って【あの人】の居場所なんて分からない。
結局私は【あの人】の事を何も知らない。
遠い存在に恋して、恋に恋して…
私ってバカだなって思いながら家を飛び出した。
好きすぎて嫌いなの。
この気持ち、分かる?
ある意味手の届かない存在。
私の、理想。
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-Naoya side-
はぁ…つまんねぇ。
面白くねぇよ。
一人で下校しながら思う。
あれから俺は休み時間一度も廊下に出なかった。
友達につけた理由は・・・寒いから。
普段暑がりで学ラン脱いでるような奴が何を言うか。
理由を言うのまで焦ってるよ。
俺、どんだけアイツの事好きなんだよ。
俺、ほんっとバカだな。
家に着いた時、辺りはもう暗くなりかけていた。
冬か…陽が落ちるのも早いんだな…
暇だ。
今日は何もなかった。
つまんねー
あぁっ、もうなんかイライラするっ
自分に対しての怒りか?
それとも…
憂さ晴らしにどこかへ出掛けよう
…近くの本屋でも行くか
知り合いの一人や二人いねぇかな
一発殴ってやりたいくらいだ…
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-Aya side-
どこへ行こう…
行く場所…
公園?
寒いよ…
お店?
そうだよね…
誰かの家に行ったら風邪うつしちゃうかもしれないし…
楽しいお店…
本屋さん・・・?
お金持ってないけど、本屋さんで立ち読みでもしてようかな…
暇になったら帰るよ…きっと。
「着いたぁ…」
意外と遠かったよ…
元気な時だったら余裕なのに、風邪ってこんなに体力奪われちゃうんだね…
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-Naoya side-
うぅー寒いっ…
冬ってこんなに寒かったか?
今日で一気に冬が嫌いになった。
さすが店の中は暖かいけどなー
ッと…
誰もいねぇか…
さて、何立ち読みすっかなー?
「…え」
いや、あの、俺の見間違いか?
いやいやいや…
俺が見間違うはずがない。
だって俺毎日見てたんだぜ?
あれは…確実に…間違いなく…
アイツだ。
どうしてここにいるんだよ?
お前学校欠席したんじゃねぇのか?
風邪大丈夫なのかよ?
しかも何でここにいるんだよ?
お前の家からそんなに近くないだろ?
頭の中がはてなだらけだ…
話しかけるべきか?
いや、アイツ友達と一緒か?
一人っぽい?
どうなんだ?
アイツが読んでるのは…ケータイ小説?
普通の女とそういうところは一緒なんだな…(笑)
マスクもしてねぇし…アイツ仮病だったのか?
「ケホッ・・・」
咳してる…
やっぱり仮病じゃねぇのか…
大丈夫かな…
って…俺何見つめてんだよ…
これじゃぁ本物のストーカーだろ…
決めなきゃな。
話しかけるか、気づかぬフリを続けるか。。。
「ケホッ、コホッ…」
んぁ?
なんかアイツの様子が変…
ちょっと近づいてみるか?
あれ?
アイツ本読んでるのか?
なんか目が泳いでるような…
話しかけるなら今しか無い。
「あの…」
((フラァッ))
「…!?植村っ!?」
…っ、危ねーよ…
って…この体勢…ヤバくね?
俺に植村がもたれかかってる体勢…
ちょっと…俺どうすればいい!?
つーか植村倒れた?
「植村っ!?おい、植村!しっかりしろっ!」
…体超熱いんですけど。
凄い熱だ、コイツ。
無理してここまで来たのか?
「植村?聞こえるか?植村っ」
…はぁ、とりあえずココを動かなきゃな。
俺は植村の体勢を変えようと試みた。
このままじゃ俺自身も動けねぇから。
…どうしよう。
仕方ない…
負ぶるしかないか。。。
「よいしょっ、と」
…うわ。
ココ本屋だよな…
超恥ずかしいんですけど
とりあえず俺は店の奥にあるゲームコーナーに設置された椅子に植村を座らせると、俺も横に座った。
「植村、聞こえるか?」
「んんッ…」
「大丈夫か?」
「…水城?」
「おぅ。」
「どうして、ココに?」
「偶然…だけど。ところでお前大丈夫か?凄い熱だぞ…」
「迷惑…ごめんっ…」
単語を並べるだけのアイツに戸惑う俺。
会話が続かねー…
「家は?」
「帰る…」
「送って行こうか?」
「だいじょぶ…」
自力で立ち上がったアイツは、フラフラしながら前へと進んだ。
・・・見ていて危なっかしい。
「植村!!」
「・・・え?」
「ちょっと待て」
もうこうなったら強硬手段だっ
…お前だからやるんだぞ?
「ひぇっ!?」
俺はアイツの手をとり店の外へ連れ出した。
「何っ…?」
「そんな体なの知ってて一人で帰らせる奴がいるか、バカ」
「…大丈夫」
「大丈夫じゃないから言ってんだ」
どうしようか悩んだ。
「植村、寒いか?」
「うん…ちょっと。」
「これ、着とけ」
俺のダウンコートを肩にかける。
…ダボダボだ。
相変わらずチビだな、お前。
「暖かい・・・」
「良いか?よしっ、ほら」
「えっ・・・?」
「お前、まともに歩けてないから。ほら、背中。早く乗って。しゃがんでるの意外と辛い」
「え、、、でも…私、重いよ?」
「さっきもしたから。大丈夫。重くない」
弱ってるアイツは一段と可愛かった。
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-Aya side-
頭がクラクラして視界がグルグルする。
まともに歩けてない。。。
確かにそうかもしれない。
大好きな【あの人】が目の前にいるのに、
その感覚を楽しむ事もできないほど
今の私に余裕はない。
すっごく恥ずかしくて嫌だったけど、仕方がないからそっと背中に乗る。
今までのクラクラした感覚が【あの人】の温もりで消えていく。
フっと足が宙に浮く感じがして、【あの人】は立ち上がった。
ダウンコートを脱いだから薄着なのに【あの人】は私よりも温かくて。
大好きな【あの人】の香りにつつまれながら私はいつの間にか【あの人】の背中で寝てしまっていた。
「…んんっ」
あれ、ココどこ?
見えるのは白い天井。
私、今ベッドで寝てる?
でも、自分の家じゃない。
そっと横を見ると、ベッドに突っ伏せて寝てしまっている【あの人】の姿。
…そっか。
私【あの人】に背負われてココまで来て…
疲れさせちゃったんだ。
辺りを見渡すと、勉強机があったので、ここは【あの人】の家なんだってことが分かった。
「ん…あ、植村、起きたか?」
「あ…うん。ごめんね」
「あー、全然良いけど、大丈夫か?」
「うん、大丈夫っ。えっと…」
「あぁ、ごめん。植村の家分かんなかったからとりあえず近いし俺の家に連れてきちゃった。」
「あ、うん・・・」
「まだ辛いなら寝てても良いぞ?」
「大丈夫…帰るよ」
「おぅ、そっか」
意外と片付いている部屋に驚いた。
やっぱり好きだよ…
今なら勢いで言えちゃう気がする。
「あの・・・さ」
「ん?どした?やっぱり辛いか?」
「ううん、そうじゃなくて!」
「ん?」
「…なの」
「は?」
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-Naoya side-
聞こえない。
何て言ってる?
「…なのっ!!」
「…ごめん。聞こえない」
「…もういいよっ」
はぁ…顔が真っ赤だ。
また熱あがったんじゃないか?
「植村、顔赤い。顔貸して?」
俺はアイツの額と自分の額にそれぞれ手をあてて、熱さを比べた。
アイツとの距離が近くなる。
「やっぱり熱い」
今なら言える気がして。
「そんなことないよっ・・・」
伝えないって決めたけど。
「もう少しでいいからさ、寝てけよ」
言葉にしたくなった。
「いいよ、帰る」
気持ちを伝えたい。
「…帰るなよ。」
「へ?」
「帰ってほしくねぇんだよ!」
「…どうしたの、急に?」
「俺、植村の事が好きなんだよ…」
「え…」
そうだよな、迷惑だよな…
「ごめん、今の忘れ…「私も好き」
え・・・?
今何て・・・?
「私も、水城の事が好き」
ちょ、ちょっと待て…
「どういう意味?」
「そのままの意味だよ…」
「・・・?」
「ずっと、好きでした。」
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-Aya side-
伝えちゃった、この気持ち。
…でも。
両、想い?
「…そんな」
先に口を開いたのは【あの人】。
「…本気か?」
「当たり前だよ。」
今なら素直になれる気がする。
「…俺も、本気。」
大丈夫、きっと、大丈夫。
「私だって、そうだよ。ずっと、好きだった。」
想いは必ず届くはず。
「…俺と一緒にいてください」
大好きな【あの人】がくれた言葉。
一言一言がココロに響く。
私の大好きな【あの人】は
私の目をきちんと見て大事そうに言葉を発したんだ。
今なら素直になれるよ。
きっと。
「・・・ありがとう」
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-Naoya side-
アイツは俺の言葉に顔を赤くして俯いた。
その顔があまりに可愛くて。
そんなアイツがあまりに愛おしくて。
思わず感情を抑えきれなくなった俺は、
chu-☆
「んなっ…///」
俺のファーストキスを奪ったのはアイツ。
そうじゃなきゃな。
俺の理想の人。
「いつから?」
今、そんな行動をしたばっかりなのに平然としていられる自分に驚く。
そうだよな…。
それほどアイツの事を想ってるんだ。
「…1年生の…時。」
顔を真っ赤にして呟くアイツを俺はただ見つめていた。
少し前までは手の届かない存在だった。
見ているだけで充分な、憧れの存在。
…それが。
こんなにも近くにいる。
それだけで俺は幸せ。
「おい、また熱上がったんじゃないか?」
そっとアイツの額に唇をあてる。
「ちょっ…どこで熱測って…」
語尾が小さくて聞き取りにくい。
「聞こえねーよ」
俺は、幸せ者なんだ。
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-Aya side-
バカだよ。
そんな事したら熱上がっちゃうじゃん。。。
私のファーストキス…奪ったのは【あの人】。
だから、私は一生離れないって誓ったんだ。
その時の決意は決して揺らがない。
大好きな、【あの人】へ。
「直…也?」
「ん??どうした??」
「私、帰る」
「え??あ、あぁ。」
家まで送ると言った直也の言葉に甘えて、そっと手を繋ぐ。
冷たい冬の風が心地良いくらいに思えたんだ。
だって…
私のココロは、温かくて優しい気持ちで溢れていたから…
大好きです、
もう離したくなんかない、私の幸せ。
ずっと耐えてきたんだよ??
【あの人】が見ていたのは私なんかじゃないって…そう思っていたのだから。
毎日遠くから眺めるだけで楽しかった。
毎日声が聞こえるだけで嬉しかった。
毎日すれ違うだけでどんどん好きになった。
やっぱり私には【あの人】しかいないんだ。
絶対に離さない。
そう、決めたのに…
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-Naoya side-
やっとつかんだ俺の幸せ。
大好きなアイツに気持ちを伝えた。
俺の気持ちは、いつだって自分に正直だ。
アイツが笑っていたら俺も楽しくなる。
アイツが泣いていたら俺が涙を拭ってやる。
アイツが拗ねていたら俺がいくらでも構ってやる。
どんどんアイツが輝いて見える。
俺よりずっと小さくてか弱い手を離したらもう、失くしてしまいそうで。
俺はその小さい手を少しだけ強く握った。
アイツは今日から俺のものだ。
そう思っていたのに…
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-Aya side-
決めたのに。
人の気持ちって、そんなに簡単に変わってしまうものなの??
私は不思議でならなかった。
あれから丁度1カ月が経ったんだ。
大好きな【あの人】の為に私は…
そう、大好きな…