■第74話 西のトンネル掘削編 静かなる巨獣と新たな発見
トンネル掘削機が本格始動し、思わぬ鉱石の発見や地下水脈との遭遇など、プロジェクトは新たな展開を迎える。師匠の鉄道構想も明かされ、海への期待も高まる中、小さな心の動きも描かれる。
■ 静かなる巨獣の始動
西の拠点に据えられたトンネルボーリングマシン——その威容は、間近で見ると圧倒的だった。鋼鉄の塊でありながら、どこか生き物のような存在感を放っている。朝の光を受けて鈍く光る機体は、まるで眠っている龍のようだった。
そのうちの1台が、ついに静かに動き出した。30センチのさくやはそばに立っていたが、操作する場面はほとんどない。最新マシンは高度な自動制御により、岩を滑るように削り取っていく。まるで熱いナイフがバターを切るように、スムーズで美しい動きだった。
掘削された土砂は、計画的に谷や窪地に運ばれて地形改良に活用される。無駄になるものは何一つない——師匠らしい完璧な設計だった。
「すごいなあ……」
さくやは思わず呟く。機械の力によって、少しずつ、でも確実に山が穿たれていく様子は、まさに現代の魔法のようだった。30センチの身体から見上げる巨大な機械は、本当に龍のように見える。
■ 思わぬ発見
掘削が進むにつれ、思いがけない発見があった。鉱石が次々と発掘されたのだ。種類ごとに丁寧に分類され、巨大倉庫へと搬入されていく。
「これは銅鉱石、こっちは鉄鉱石……」
専門知識を持つ黒スーツの男性が、的確に分類していく。マダムの人脈は、本当に幅広いのだと改めて実感する。
大きな岩塊だけは、師匠の特別な指示により仮置き場に積み上げられた。その理由を聞くと、師匠は微笑みながら答えた。
「後で、何かに使えるかもしれないからね」
師匠の頭の中には、きっと壮大な構想が描かれているのだろう。さくやにとって巨大な岩も、師匠にはきっと何かの材料に見えているのかもしれない。
■ 200人の連携
配置された200人のさくやたちは、運搬と転用先の計画に追われていた。朝早くから夕方まで、休むことなく働き続ける小さな姿は、見ていて頭が下がる思いだった。それぞれが自分の役割を理解し、チームワーク良く作業を進めている。
やがて、1台目から少し離れた場所で、2台目のマシンが稼働を開始した。両マシンは並行して掘り進める計画だ。轟音……ではなく、驚くほど静かな音で、着実に岩山を貫いていく。
「爆音社長が作ったマシンなのに、こんなに静かなんて」
さくやは不思議に思ったが、それこそが爆音社長の技術力の証明なのだろう。名前とは裏腹に、繊細な技術も持っているのだ。
■ 水との戦い
掘削が進むと、予想していた通り地下水脈が二箇所とも分断され、水がしとしとと湧き出してきた。しかし、これも想定内だった。
トンネルには大きな水路が構築され、支保工には排水用の樋が設置される。湧き出た水は仮設ろ過池に一時的に貯水され、その後ゆるやかに湖へと導かれた。
「無駄なく、美しく」——師匠の設計思想が、ここでも発揮されている。
水の流れる音が、トンネルの中に心地よく響いていた。30センチのさくやにとって、この水路を歩くのもちょっとした冒険のようで楽しい。
■ 同時貫通への野望
1ヵ月が過ぎた頃、両マシンのスピードが微調整され、同時貫通に向けた最終段階に入った。これは爆音社長の「せっかくだから派手にやろう」という希望によるものだった。
「計算上は完璧や。でも、実際にやってみな分からん部分もある」
爆音社長の瞳は、挑戦への情熱で輝いている。
「成功したら、きっと素晴らしい瞬間になるで」
その言葉に、さくやたちも期待で胸を膨らませた。同時貫通なんて、まるで映画のような場面になりそうだ。
■ 新たな構想
掘削が約3分の2に達したある日、師匠は拠点の広場に200人のさくやたちと爆音社長を呼び集めた。夕方の柔らかい日差しの中、師匠の表情はいつもより真剣だった。
「トンネルの1本は鉄道専用にしたい」
その言葉に、全員が息を呑む。
「同時に駅の建設にも着手する。追加で100人を召集してくれ」
全員がびくっとする。既に各拠点は人手が限界に達していることを、みんな知っていたからだ。
緊急の調整会議が開かれ、その結果、北拠点から50人が異動可能となった。しかし、まだ50人足りない。
■ ジュウベェたちの成長
「研修所にジュウベェがいっぱいいるな」
師匠がぽつりとつぶやく。
「鉄道を使って移動しているし、随分詳しくなった気がする」
その言葉の意味を理解する暇もなく、東の村からジュウベェ100人が整然と隊列を組み、西の拠点に到着した。
彼らの行進は見事だった。小さな体でありながら、規律正しく、誇らしげに歩いてくる。
「みんな、立派に成長したなあ」
さくやは感慨深く見守った。同じ30センチの仲間たちが、こんなに頼もしく見えるなんて。
■ 再編された布陣
各拠点の人員状況は大きく変化した:
南西拠点&駅:100人(変動なし) 物資供給の要として、引き続き重要な役割を担う。
東の村:100人 → 50人 温泉宿の運営は継続。「笑顔は無料です」の精神は変わらない。
北拠点:100人 → 50人 美しい斜張橋の維持管理と、霧の中の神秘的な雰囲気を保持。
高地拠点:200人(維持) ゴリラ一家との共生と、「金っぽい何か」の発掘調査継続。
湖の物資運搬:100人(維持) 夜間物流の心臓部として、変わらず重要な任務。
農園&ジャム工房&花畑:50人(維持) ʕ•ᴥ•ʔ マーク入りジャムの生産は順調に継続。
街のパトロール:100人(維持) 「ピカピカ部隊!」として、街の美化に貢献。
師匠のオフィス:100人(JD3人、OL含む) 増員により、さらに効率的な運営が可能に。
師匠の家:0人 老紳士とおばちゃんが常駐し、温かな家庭の雰囲気を維持。
西の拠点:200人 → 250人 ジュウベェ100人の加勢により、鉄道建設も本格化。
■ 海への予感
「トンネルの先、断崖絶壁やったらどうする?」
爆音社長がにやりと訊く。
「それはそれで面白いかな」
「きっと海がある。地下水脈の塩分濃度が高かったからね」
師匠の答えに、爆音社長は驚きを隠せない。
「……あんたの予想って、だいたい当たるから怖いわ」
「海に港町でも作るつもりなん?」
「そうだよ」
「ほんまかい!怖いわ!」
「次は船かいな?」
「うん。小さきものたちが乗れる、いろんな船を作ろう」
その会話を聞いて、さくやは目を輝かせた。海!船!新しい世界への扉がまた一つ開かれようとしている。30センチの身体で船に乗るなんて、想像しただけでわくわくする。
■ 失われゆくものへの想い
「トンネルはあと半月くらいで貫通やな。ジュウベェも鉄道好きで助かる」
「そうだね。小さなものは、我々が失いつつある"何か"を全部持っている気がするよ」
師匠の言葉には、深い思いが込められていた。
「わははっ、せやな」
爆音社長も、その意味を理解しているようだった。
■ 美女5人の誘い
「そうだ、JDたちとOLと今夜、食事会やけど——師匠もどう?」
「女子会に参加?……やめておくよ」
「何言うてんの、JD3人にOLに私やで?美女5人に囲まれるチャンスやん」
師匠は苦笑いながら答える。
「いや、毎日、小さな女子1000人に囲まれているからね。十分幸せだよ」
「美女じゃねぇけど1000人な、わはは!」
「そうだよ」
■ 隠れた涙
その様子を、影からじっと見つめる者がひとりいた。こっそりストーキングしていたさくやは、師匠の最後の言葉を聞いて、ちょっぴり涙をこらえた。
師匠は、小さきものたちを本当に愛してくれている。その事実が嬉しくて、でも同時に、自分だけが特別ではないという現実も受け入れなければならない。
複雑な気持ちを抱えながら、さくやは静かにその場を離れた。明日もまた、師匠のために頑張ろう。みんなで一緒に、新しい世界を見に行こう——。
そんな決意を胸に、小さな影は夜の闇に溶けていった。30センチの身体に宿る大きな愛情と、少しの切なさを抱えながら。
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