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■第41話 高地探索編 出発式と師匠の手紙

小さな冒険者たちの新たな出発

師匠の愛情込もった心配の言葉

未知の世界へ踏み出す勇気ある一歩


■出発の朝

 朝陽が山頂を照らし、リトルさくやたちが次々とテントから這い出してくる。寝癖で髪がボサボサの子、まだ半分寝ぼけてふらついている子、既に元気いっぱいで駆け回っている子——150人それぞれがバラバラなペースで朝の準備を始めた。

「誰や、私の靴下片方持ってったん」 「それ、昨日洗濯物と一緒に飛ばされたやつちゃう?」 「マジで?裸足で探索するん?」

 拠点のあちこちで小さな騒動が起きている。忘れ物探し、装備品の最終調整、地図の確認。それぞれが役割を持ちながら、どこかぎこちなく準備を進める姿は、大企業の新人研修を思わせた。

 みけが一人の荷物を覗き込んでいる。

「みけちゃん、何チェックしてるん?」 「完全に品質管理やな」 「猫の方が責任感あるって、どうなん?」

 荷物から魚の缶詰を見つけたみけが、じっと見つめている。

「それはあかん、みけちゃん」 「探索の非常食やで」 「でも、その目は『ちょっとくらいええやろ』って言ってるな」

 オオワシの親子が岩から見下ろし、くろが高い場所で全体を監視。しろは相変わらず特等席で日向ぼっこ。完全に管理職の配置だった。

「私ら、猫に監督されて探索に行くんか」 「でも、なんか安心する」


■全員集合と最後の混乱

 集合の号令がかかるが、まだ準備に手間取っている者が続出。

「あと5分待って!」 「コンパスの調子が悪い!」 「誰か予備持ってない?」 「私の水筒、なんか変な音するんやけど」

 リーダー格の一人が頭を抱えている。

「みんな、時間管理できてへんな」 「でも、これも含めて私らやろ」 「完璧やったら、逆に怖いわ」

 ようやく全員が集まったとき、一人が重大な発見をする。

「あの……地図、逆さまに持ってた」 「どのくらい?」 「ずっと」

 どっと笑いが起こる。緊張していた空気が一気に和らいだ。

「まあ、こんなもんやろ」 「完璧な探索隊なんて、つまらん」


■師匠からの手紙

 静寂が戻り、リーダー格の一人が師匠からの手紙を開く。みんなが息を潜めて聞く。きっと励ましの言葉、心温まるメッセージが書かれているはずだった。

「全員、気をつけて行ってきてください。食べられないように、無事に帰ってきてください」

 シーン。

「……え?」 「食べられないように?」 「なんで食べられる前提なん?」

 一瞬の沈黙の後、ざわめきが広がる。

「師匠、何を知ってるん?」 「具体的すぎて怖いわ」 「『気をつけて』やなくて『食べられんように』って」 「リアルすぎやろ」

 一人が涙目になっている。師匠からの愛情が、妙にストレートすぎて心に響いたのだ。

「泣くなって」 「でも、師匠らしいな」 「心配の仕方が独特や」

 別の一人が手紙を覗き込む。

「他に何か書いてない?」 「『P.S. 特に夜は気をつけなさい』って書いてある」 「ますます怖いやん」

 しかし、その具体的すぎる心配の言葉に、みんなの心は温かくなっていた。師匠なりの愛情表現だと分かるからだ。

「でも、ちゃんと帰ってこいってことやろ」 「そやな、必ず帰ろな」 「食べられんように」

 最後の言葉で、またみんなが笑った。もう合言葉になっていた。


■出発準備の現実

 100名の探索部隊の最終装備チェックが始まる。理想的にはスムーズに進むはずだったが、現実は違った。

「水筒の蓋、どこ行った?」 「地図、破れてる」 「非常食、なんか減ってない?」 「コンパス、北がどっち向いてるか分からん」

 準備不足、装備の不具合、個人的なトラブル。完璧にはほど遠い状況だが、誰も慌てていない。むしろ、この混乱すら楽しんでいるように見える。

「まあ、こんなもんやろ」 「完璧やったら逆に不安や」 「トラブルも含めて冒険や」

 みけが再び荷物チェックをしている。今度は別の人の荷物から、またしても何かを発見したようだ。

「みけちゃん、そんなに心配せんでも」 「でも、チェックしてもらった方が安心やな」 「猫の品質保証付きや」

 爆音社長の声が無線から響く。

「おーい、準備はどうや?」 「社長、猫が最終検査してくれてる」 「それは頼もしい。合格したら出発やな」

 みけが満足そうに鳴く。どうやら検査合格らしい。

「みけちゃんのお墨付きもらった」 「これで安心や」


■出発と現実の洗礼

 ようやく整列が完了。しかし、歩き始めて10分で最初の問題が発生する。

「あの……道、合ってる?」 「地図では真っ直ぐやけど」 「なんか、ぐるぐる回ってない?」

 地図読みを担当していた一人が、困った顔をしている。

「あー、やっぱり地図逆さまやった」 「最初からやり直しや」

 しかし、誰も文句を言わない。むしろ、この状況を楽しんでいる。

「まあ、冒険やからな」 「最初から順調やったら、つまらん」 「トラブルがあってこその探索や」

 後方支援組が手を振って見送る中、猫たちもそれぞれの方法で別れを惜しんでいる。みけは監督官らしく最後まで見届け、くろは警備主任として周辺を警戒し、しろは「ま、頑張って」という感じで軽く鳴く。

「猫たちの方がプロやな」 「私らも見習わんと」

 オオワシの親子が空で一声鳴く。まるで「気をつけて行けよ」と言っているようだった。

「見送ってくれてるな」 「ありがたいわ」

■サバンナへの第一歩

 探索隊がようやく正しい方向に歩き出す。振り返ると、拠点が少しずつ小さくなっていく。

 サバンナの金色の草が風に揺れ、地平線の向こうにジャングルの影が見える。美しい光景だが、同時に未知の不安も感じさせる。

「きれいやなあ」 「でも、何がおるか分からんな」 「師匠の『食べられんように』が現実味帯びてきた」

 一人がふと立ち止まる。

「あの……もう拠点見えへんくなった」 「まだ500メートルも歩いてへんで」 「でも、なんかもう遠い世界に来た気分」

 確かに、山頂の拠点は霞んで見える。猫たちの姿ももう見えない。急に心細くなったのか、歩くペースが落ちる。

「大丈夫や、みんなでおるし」 「そやな、100人もおったら何とかなる」 「でも、何に食べられるんやろな」

 師匠の言葉が頭から離れない。具体的すぎる警告が、かえって想像を掻き立てる。

「大型の動物とか?」 「肉食獣?」 「それとも、もっと変なもん?」

 想像は膨らむ一方だが、足は止まらない。未知への好奇心が恐怖を上回っていた。

「まあ、行ってみな分からん」 「そやな、考えても仕方ない」 「食べられたら、その時や」

 最後の発言で、みんなが笑った。


■新たな世界への歩み

 歩きながら、一人一人が自分なりの感慨に浸っている。

「こんなに遠くまで来るなんて、思ってもみんかった」 「山登りから始まって、今度は探索か」 「私らって、けっこうすごいことしてるんちゃう?」

 確かに、小さな体でここまで来たのは驚くべきことだった。しかし、当の本人たちはそれを当然のように受け止めている。

「でも、まだ始まったばかりや」 「本番はこれからやろ」 「サバンナの向こうに何があるか」

 地平線の向こうに見えるジャングルが、だんだん大きくなってくる。緑の壁のような存在感で、未知の世界への入り口を示している。

「あ

そこまで行くんかな」 「地図では、その先にも道があるみたい」 「どんな世界が待ってるんやろ」

 期待と不安が入り混じった気持ちで、探索隊は歩き続ける。師匠の「食べられないように」という言葉を合言葉に、みんなで力を合わせて未知の世界に挑んでいく。

 小さな体に大きな夢を抱いて、新たな冒険の第一歩を踏み出したリトルさくやたち。彼女たちの前に広がるサバンナは、美しくもあり、危険でもあった。しかし、それこそが冒険の醍醐味。

 金色の草原を踏みしめながら、150人の小さな探索隊は、確実に新しい世界へと向かっていた。



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