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第二幕

街を抜けるとそこには森があった。

街の出口にも立て看板があったが、この森を抜けないと次の街に行けないらしい。

聞き込みをしたせいか、日はだいぶ傾いていた。

とにかく、龍河は急いだ。

森の中はひどく静かだった。

龍河は完全に日が落ちるまでにここからを出たかった。

野宿するにはなにか危険な気がした。

(…何かいるのか?)

何か気配を感じた、この森で。

龍河は警戒しながら進んだ。

ガサッ、

音がした瞬間、何かかが龍河の上に降ってきた。

複数の刃が襲い掛かってきたのだ。

龍河は刀を抜き、一本の刃で複数の刃を受けた。

龍河はその刃を振り払った。

すると、複数の刃を持った何かは宙を舞い、着地した。

「あらぁ~、街で見た時はよく顔が見えなかったけど、こうやって見ると結構二枚目ね…アタシの好みかも。」

龍河を襲ったのは街で龍河を影で見ていた女だったのだ。

女は長い薄紅色の髪をしていて、両側で髪を結んでいた。

まるでくの一の格好をしていた。

女の両手には刀の刃が何枚もついた掻き爪ような武器をつけていた。

「何者だ?」

「誰だっていいじゃない。ちょっとあんたに用があんのっ。」

「俺は貴様に用はない。」

「冷たいなぁ~。すぐ終わるから待ってよ。」

そう言うと、女は低い姿勢で構え、

「あんたのその刀、高く売れそうだから、頂くよ。」

そう言って女は地を蹴り、物凄い速さで斬りかかってきた。

(追い剥ぎか…。)

龍河は構え直し、再び刃を受けた。

互いの刃が衝突し、火花を散らす。

龍河は女の攻撃を弾き、今度は斬りかかる。

女は龍河の攻撃を受けきれず、派手に吹き飛ばされた。

後ろにあった大木に背中を打ちつけた。

「痛ッ!」

そう声を漏らした瞬間、女の頬を掠め、弾丸の如く刃が大木を突いた。

「用がないと言ったとはずだ。次はその首を貫くぞ。」

そう言って、刀を引き抜き、鞘に収めた。

女はその場に崩れ落ちた。

あまりにも一瞬だったからだ。

しかし、女は震える足をおさえ、再び立ち上がった。

「あんた、強いのね。」

「?」

「不意打ちをしたのは謝るわ。でもあんたを襲ったのは本当は追い剥ぎの目的なんかじゃない。}

そして呼吸を整え、言った。

「頼みがあるの、今の不意打ちはあんたの力量を量るためだったの。」

「だから何だ。」

はき捨てるように龍河は言った。

「さっきあんた、街で極道とやりあったでしょ?」

「それが何だと言うのだ。」

「アタシもその極道の一員だったの、でも…。」

女の目つきが変わった。

「潰したいの。秋川組を。」

「何故?」

龍河は少し興味を持った。

「アタシは生まれてから両親がすぐこの世からいなくなったの…。」

「…!?」

「仕事なんてもらえなかったし、生きてく術が無かったの…でも。」

女は続けた。

「その組に拾われたの、アタシ女のくせに身体能力良くてさ、そこを見込んでいろんな修行をされたの。」

女は悲しそうな目で言った。

「最初の仕事が、人を殺すことだったの…それから、盗みとか、他の組との喧嘩とか、いろんなことに使われたわ…」

女はいつの間にか涙を流していた。

「そんな生活嫌だった…耐えられなかったの、だから抜け出してきたんだけどさ、追っ手がいるの。あいつはまだアタシを使う気でいるんだ…」

女は涙を拭って言った。

「お願いだよ!手伝ってくれよ!アタシ一人じゃどうにもできない…。」

龍河はただ黙って聞いていた。

そして女に背を向け言った。

「好きにしろ。」

女は唖然としていた。

「手伝って…くれるのかい?」

「名乗れ。

そして女は、ハッとするような笑みで言った。

岡山 雛叉(おかやま ひなさ)って言うんだ。よろしくね。」

「檜山 龍河だ。」

続けて龍河は名乗った。

すると雛叉は恥ずかしそうに言った。

「あの…リュウって呼んでいい?そっちのほうが呼びやすいからさ。」

「…好きにしろ。」

こうして新たに旅が始まった。

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