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ディヴァイン・アーカイブ~罪の影を斬り、黎明を呼ぶ者~  作者: するめ
第1章 魔術戦争編

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19/21

第19話 魔術戦争

昨日からの連続投稿!!!


第19話投稿いたしました。

地下鉄のプラットホームに焦げた空気の匂いが漂う中、獅子堂さんが耳元のインカムを操作した。


「蛍、聞こえるか。地下の化物共は片付けたぜ。……ああ、新人と引っ付いてる嬢ちゃんも無事だ」

『……了解した。よくやった獅子堂、黎』


インカム越しに響く、蛍隊長の声。その冷徹な声にほんの僅かだけ労いの色が混じった気がして、俺はホッと息を吐き出した。だが、隊長の言葉はそこで終わらなかった。


『だが、息をつく暇はないわよ。商業・居住区第5エリアで、異形同士が大規模な衝突を起こしている。灰原小隊、獅子堂大隊が付近にて戦闘中。至急、合流して援護に向かいなさい』

「ちょ、ちょっと待ってくれ、隊長。異形同士が対立している?あちらがタイミングを合わせて襲ってきているのに?なぜかは分かっているのか?」

『……理由は不明。現場の、のどかから報告よ。奴らは示し合わせたようにテロを仕掛け、そして今、争いを始めている』


蛍隊長の言葉には、いつもの冷徹さに加えて、未知の事態に対する忌々しさが混じっていた。


『獅子堂大隊長、聞こえるわね? 現場の指揮はあなたに預けるわ。黎、ヴィヴィ、先行している獅狼たちと合流しなさい』

「獅子堂、了解した」


通信を切った獅子堂さんが、肩に担いだ避雷針を揺らして俺を振り返る。


「行くぞ、黎、ヴィヴィ!だ仕事は終わってねぇらしい」

「はいッ!」


俺の返事と同時に、獅子堂さんは巨体からは想像もつかない速度で、崩れかけた地下鉄の非常階段を駆け上がっていった。地上へ飛び出した俺たちは、瓦礫の山となった大通りを避け、ビルの壁面を駆け上がった。


獅子堂は全身に雷を纏わせ、推進力でビルからビルへと爆発的な跳躍を繰り返す。俺も背中の銀の流体を瞬時に変形させ、ワイヤーとベクトル操作の魔術刻印を組み合わせて、屋根から屋根へと飛び移りながら加速した。


(異形同士が、大規模な衝突を起こしている……?)


風を切り裂きながら、俺は頭の中で蛍隊長の言葉を反芻していた。


異形とは、人間が理不尽に変えられた成れの果て。先ほどの地下鉄の襲撃を見る限り、間違いなく何者かが意図的に生み出し、タイミングを合わせて俺たち防衛局を襲わせてきたはずだ。


それなのに、なぜ急に同士討ちなんて始める?

目的の統一されていない無秩序な暴走? いや、それではタイミングを合わせてテロを仕掛けてきたことと矛盾する。


(まるで、誰かが意図的にここで殺し合えと盤面をコントロールしているみたいじゃないか……)


「ヴィヴィ、今の俺の魔力残量は?」


走りながら肩の上に声をかけると、ヴィヴィが少し心配そうな声を出した。


『さっきの大技で結構持っていかれたけど……あれ?結構回復してる、これならあと数分で全開まで回復するよ!!』

「は?」


俺は階段を駆け上がりながら、思わず間抜けな声を漏らした。

さっきの『擬似・避雷針』の構築と慈雷葬は、並の局員なら干からびて死んでもおかしくないほどの異常な魔力消費だったはずだ。いくら俺でも、そんな短時間で回復するはずがない。


『ちょっと待って黎、これ黎の回復力がすごいだけじゃない! 空気が、周りの空気がおかしいんだよ!』


ヴィヴィの言葉に、俺は意識を周囲の空間へと向ける。


「なんだこれ……魔力濃度が、異常に高い……?」

『うん! 地上から降りてくる大気中の魔力が、ありえないくらい飽和してる!』


嫌な悪寒が胸の奥で膨れ上がる。大気中の魔力が息苦しいほどに濃密になるなんて、一体何が起きているんだ。


「もうすぐ着くぜ、黎、ヴィヴィ」


先行していた獅子堂さんが、あるビルの屋上の縁で足を止めた。

俺もその隣に降り立ち、眼下の光景を見下ろした。そこには――俺の常識と覚悟を容易く超える、狂気の地獄絵図が広がっていた。


「……なんだ、これ」


咆哮と、肉が弾ける悍ましい音が響き渡る。

街の交差点を中心に血みどろの殺し合いを演じていたのは、かつて人間だったであろう化物たちの戦いであった。


ただひたすらに周りのいる生物を喰い破ることだけに狂奔する異形たち。

そして俺は、大気を満たしている異常な魔力濃度の正体に気がついた。


「ヴィヴィ、あいつらの死骸を視ろ……魔力が、消えてない」


通常、生物が絶命すれば、その内包している魔力は霧散して消滅する。

だが、あの交差点で殺し合って死んだ無数の化物たちの死骸からは、消えるはずの魔力が延々と濃密なエネルギーとして空気中へと放出され続けていたのだ。


『待って黎!この魔力ゆっくりだけど下に流れて行ってる』


死体から吐き出された莫大な魔力は、ゆっくりと普通なら気付かれないような速度で、アスファルトの底へ――吸い込まれていた。


ただの自然現象じゃない。誰かが意図的に魔力を集めている。

俺は咄嗟に耳元のインカムのスイッチを叩いた。


「隊長! 聞こえるか! 現場の魔力の流れが明らかにおかしい!」

『……どういうこと? 簡潔に報告しなさい』

「殺し合って死んだ化物たちの魔力が、霧散せずに空気中に放出され続けてる! しかもそれが、全部この交差点の下に向かって吸い込まれていってるんだ!」

『……地下へ?』


インカム越しに、蛍隊長が息を呑む気配がした。


『まさか……オペレーター! 第5エリアの深層魔力波長を計測して!』


通信の向こうで、蛍隊長が司令室のスタッフに鋭く指示を飛ばす声が響く。

数秒の緊迫した沈黙。そして、凄まじい勢いでキーボードが叩かれる音の直後――オペレーターの悲鳴にも似た声が聞こえた。


『隊長……交差点の地下深く、およそ500キロ地点に2つの超巨大な魔力反応があります!!しかもどんどん大きくなっていってる!?』


その報告を聞いた瞬間、いつもは絶対零度の氷のような蛍隊長が、ギリッと奥歯を強く噛み締める音が鼓膜を打った。


『全隊、直ちに攻撃を中止しなさい!! 敵を殺してはダメよ!』


「あァ!?」


隣にいた獅子堂さんが、信じられないものを見るような顔でインカムに怒鳴り返す。


「無茶言うな蛍! 俺たち大隊の連中も獅狼も、ど真ん中で巻き込まれてんだぞ! ほっといてもあいつら勝手に殺し合ってやがるし、俺の雷でまとめて焼き払った方が――」


『違うのよ獅子堂! 黎の報告で分かったわ! ……この交差点の地下には、神話にある外からの侵略してきた神たち、クトゥレヴィアとハリストゥールがそこに眠っていたのよ!!それが今回の大規模なテロとこの霧散しない魔力により起き始めている!!』


蛍隊長の声には、かつてないほどの戦慄と焦燥が滲んでいた。


『テロの真の狙いは神たちの復活! おそらく一定時間内に死者を大量に出すことで神を完全なる姿で顕現をさせること!!これ以上の死者を出すな!!』


通信が切れ、重苦しい静寂が屋上に降りた。

眼下からは、相変わらず獣たちの咆哮と、肉が砕ける悍ましい音が響き続けている。


「これ以上の死者を出すな、だと……?」


獅子堂さんが、ギリッと奥歯を鳴らした。

無理だ。そんなことは不可能に決まっている。


「隊長! やっと来てくれたんですか!!」


眼下の激戦の渦中。前衛で巨大な盾型デバイスを構えていた大隊の局員が、屋上に立つ獅子堂さんに気づき、血を吐くような声を張り上げた。


「行くぞ、黎!気絶させるか止めるんだ!!」

「了解ッ」


獅子堂が屋上の縁を蹴り飛ばし、交差点へと落下している。俺もその背中を追い、今出せる最高速度で飛び降りる。


「退けェ!!お前らァ!!!」


獅子堂の怒号と共に彼の避雷針から雷が走る。

しかし、それは先ほど見せたような神々しいまでの光ではなく、戦場全体にまで伸びる雷の檻を彷彿とさせる雷を放った。


俺はそれに合わせるように、自身の流体で槍を形作る。

ただ刺さるだけの槍ではない。深く地殻にまで食い込み決して壊れない強靭な楔。


「ヴィヴィ!【広域雷伝導】と【範囲指定】、【超硬度固定】を頼む」

『おっけー!!着弾地点もこっちで計測しとくね!』


肩の上のヴィヴィの声と同時、右腕から形成された無骨で巨大な銀の杭に、シアン色の怪しい輝きが幾何学模様を描きながら駆け巡る。


ヴィヴィが演算した着弾地点――大隊の陣形のど真ん中、一番効果的に雷を拡散できるポイントへ向けて、俺は全体重と重力を乗せて銀の杭を投げつけた。


アスファルトを砕き、槍が深くまで突き刺さる。獅子堂が放った巨大な檻を基本に俺の槍の『広域雷伝導』が発動する。


強烈な電撃に全身を痙攣させ、次々とその場に崩れ落ちる。絶命させるほどの威力はない。だが、神経を強制的にショートさせ、完全に動きを封じる広範囲麻痺攻撃だ。


焦げた空気が立ち込めた瞬間、俺と獅子堂が着地した。獅狼たちと大隊が麻痺しないように、着地と同時に一定範囲だけ無効化する。


「……ッ、獅子堂大隊長!黎!」


血まみれで大剣のデバイスを構え、防衛線を張っていた獅狼が驚きの声を上げる。


「無事か、獅狼……いや無事なツラじゃねぇな」


「大隊長、黎……助かりました。でも、あいつら急に俺たちを無視して殺し合いを始めて、その余波がデカすぎて……!」


獅狼が息を切らしながら現状を報告しようとする。だが、獅子堂さんがそれを片手で制した。


「状況は分かってる。お前ら、さっきの通達は聞いたか!?どうやら敵さんは市民が死んでも、俺らが死んでも、自分たちが死んでもかまわねぇらしい!今回のテロも、いや、もうこれはテロと呼ぶべきじゃねぇな』


獅子堂は一つ大きく空気を吐き出し、鋭い眼光で周囲の絶望的な地獄絵図を睨みつけた。


「奴らは自分たちの魔術で神を顕現するための戦争を仕掛けてきやがったんだ。これは()()()()と呼ぶべき事態だ」


「……ええ、蛍隊長からの全部隊通信、聞いてました。『これ以上の死者を出すな』って。けど、無茶苦茶ですよ!」


獅狼が、血走った目で周囲の倒れ伏す化物たちを睨む。


「あいつら、俺たちが手を出さなくても勝手に共食いしてるんです! 大隊長と黎の雷で今は止まってますけど、麻痺が解けたらまた殺し合いを始めちまう……俺たちが何もしなくても、地下のエネルギーは溜まっていく!こんなのどうしろっていうんだ!!」

「ああ、完全に盤面を支配されちまってる」


獅子堂さんが忌々しげに、地中へと吸い込まれていく魔力の奔流を見据えた。


「敵さんが用意した盤面の上で大人しく負けを待ってやる義理はねぇ」


獅子堂さんは不敵に口角を上げ、巨大な避雷針を肩に担ぎ直した。


「盤面を支配されてんなら、盤面ごとぶち壊すぞ!!」

初めて章タイトルのワードが出ましたね、こういうの大好き

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