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ディヴァイン・アーカイブ~罪の影を斬り、黎明を呼ぶ者~  作者: するめ
第1章 魔術戦争編

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17/23

第17話 轟く雷光

お待たせしました、第17話更新です。

「……冗談だろ」

『なに、この数……』


非常灯の微かな赤に照らされたプラットホーム。線路、ベンチ、階段の影、そして天井の配管にまで、その異形どもはひしめき合っていた。

大通りにいた連中よりもさらに変異が進んでいるのか、滴り落ちる粘液がコンクリートを焼くような不気味な音を立てている。


「ヴィヴィ、大鎌に【振動エネルギー変換】と【流体圧変換】の魔術刻印を頼む! 立ち止まれば一瞬で呑まれるぞ!」

『分かった!!』


俺は即座に右腕へ銀の流体を集束させ、己の背丈ほどもある長大な大鎌のデバイスを生成する。

そこへ、肩に飛び乗ったヴィヴィから膨大な魔力が流れ込んだ。シアン色の光が刀身を駆け巡り【振動エネルギー変換】と【流体圧変換】の魔術刻印が、一瞬にして刃の表面に焼き付けられる。


俺は背中のベクトル操作を起動し、群れのど真ん中へと突っ込む。

先手必勝。囲まれる前に、機動力を活かして数を減らす。


それを合図に群れもこちらに向かってダムが崩壊したかのようになだれ込む。


巨大な蟹の鋏が俺の胴体を両断しようと迫る。俺はその軌道を大鎌の柄で逸らしながら、ガラ空きになった敵の装甲へ、ヴィヴィの魔術が刻まれた大鎌を滑り込ませた。


「ギ、ギャアァァァッ!!」


振る瞬間に合わせて流体圧変換を起動し、黒い斬撃が前方に飛ぶ。圧縮時間が短いからか、そこまで遠くにまでは飛ばない。


だが、これだけ密集した群れの中ではそれで十分。放たれた黒い斬撃は、目の前の分厚い装甲を紙切れのように引き裂き、背後にいた数体の異形をも巻き込んで黒い粘液の飛沫へと変える。


しかし、倒れた仲間の骸を踏み越え、即座に後続が三体、四体と飛び掛かってきた。


「邪魔だッ!」


大鎌の柄を軸に独楽のように回転させ、全方位を薙ぎ払う。シアン色の光跡を残す大鎌の刃が、コンクリートの柱ごと敵の肉を断ち切る。


だが、死体の山を踏み台にして、新たに三体の異形が俺の胸元をめがけて同時に跳びかかってきた。


「そうくるなら――!」


俺は正面から迎撃せず、半歩だけ横へスライドして先頭の一体の鋭い爪を躱す。

すれ違う一瞬。空中で体勢を変えられないそいつの首の関節部に、大鎌の湾曲した内刃を背後からガッチリと引っ掛けた。


「飛んでけッ!」


敵の突進力と己のベクトル操作を合わせ、独楽のように身体を半回転させながら、引っ掛けた巨体を後続が密集する群れの中心へ向けて放り投げる。

凄まじい勢いで投げ出された巨体が、密集していた周囲の異形どもをボウリングのピンのように撥ね飛ばし、数十体を巻き込んで陣形を完全に崩壊させた。


「ギチチッ!?」


肉と甲殻がひしゃげる不快な音と共に、巻き込まれた数十体の異形が折り重なるようにして転倒する。


『圧力、全開!』


ヴィヴィの合図で、大鎌の刃に圧縮されていた流体圧が限界に達する。

俺は投げ飛ばした回転の勢いを殺すことなく、己の背丈ほどある大鎌で全方位を薙ぎ払うようにフルスイングした。


超振動の刃が手前の数体を滑らかに両断する。さらに刃の軌跡から円状に放たれた高圧の黒い斬撃が、周囲で体勢を崩していた数十体もの異形をまとめて真っ二つに切り裂いた。


断ち切られた無数の巨体からドス黒い体液が爆発的に吹き飛び、プラットホームに凄惨な血の雨となって降り注ぐ。


降り注ぐドス黒い雨を突き破り、奥の暗がりから新たな異形の群れが四方八方から押し寄せてきた。今しがた倒したばかりの死骸すら、狂乱する後続の群れに無造作に踏み荒らされ、瞬時に呑み込まれていく。


ひしめき合う分厚い甲殻、飛び交う粘液、うねる無数の触手。それはもはや個体の群れではなく、俺を飲み込まんと迫る巨大な津波だった。


(このままここにいれば、呑まれる……!)


「ヴィヴィ、ワイヤー銃だ!!」

『もうできてるよ!!』


左手に銃型デバイスを生成して天井の配管へワイヤーを撃ち込んだ。強引に身体を上方へ引き上げ、群れの頭上に飛ぶ。


眼下では、俺の残像に向かって無数の触手や刃が空を切り、互いに激突してドス黒い血と火花を散らしていた。


そのままワイヤーを支点にスイングし、放置されたままの地下鉄の車両の屋根へと着地する。


ふと、スラム街で蛍に拾われた日のことを思い出した。


『こいつは水と圧のバケモノだ! 物理は通らねえが、熱には脆い!!』


(もし、こいつらがあの時の奴と同じところから作られたなら……)


俺は大鎌を融解させ、機関銃型のデバイスを生成する。


「 【雷魔力弾生成】、【爆発エネルギー変換】の刻印を頼む!」

『了解!一気に掃除しちゃうよ!』


肩の上のヴィヴィがシアン色の瞳を怪しく輝かせると、練り上げられた魔力が機関銃の機関部へと流れ込んでいく。過剰なまでに圧縮された魔力が銃身にバチバチと紫電を纏わせ、熱を帯びて咆哮を上げた。


深海系の異形どもは、その見た目からするに装甲の内側に大量の水分と粘液を蓄えているはずだ。物理的な攻撃で削りきれないなら、その性質を逆手に取って内側から焼き切れるはずだ。


俺は眼下にひしめく異形の群れに向け、躊躇なく引き金を引いた。放たれたのは、雷属性を付与された魔力弾の豪雨。


弾丸の一発一発に【爆発エネルギー変換】魔術が込められており、着弾するたびに強烈な紫電の爆風が巻き起こる。


「よし!これなら効くんだな!!」


俺の読み通り、水分を多く含む深海系の異形どもは雷撃をその身に深く通し、悲鳴を上げる間もなく感電。装甲の内側から爆ぜ、肉片へと変わって黒い粘液を四方八方に撒き散らした。


「ギィィ!!」


ギギギッ……と錆びた鉄板を引っ掻く不快な音を立てながら、背後の死角から新たな異形が這いずりながら屋根へとにじり寄ってくる。


俺は振り返りざまに機関銃の銃床を思い切り顔面に叩きつけ、怯んだ隙にゼロ距離で紫電の弾丸を数発ブチ込んだ。

頭部が内部から爆ぜ、ぐらりと車両の下へ落ちていく。


だが、休む間もなく次の個体が車両の連結部から這い上がってこようとしていた。


「ハァッ……ハァッ……!」


(ここまで何分たった?……いや、数十秒もたっていないのか……?)


肺が焼けるように熱い。大掛かりなデバイスの連続生成と、ヴィヴィの全力の魔術刻印。いつもならすぐ回復するはずの疲労だが、襲ってくる緊張が回復する暇を与えてくれない。


(……一瞬でいい、息を整える隙が欲しい)


俺は機関銃で牽制の弾幕を張りながら、ワイヤーを使って車両の屋根からホームの端、壁際の薄暗いエリアへと飛び降りた。


着地した先、非常灯の影になる場所に、一体の小柄な異形がうずくまっていた。


そいつは他の個体のように狂乱して襲いかかってこない。

装甲も薄く、武器に変異した腕もひどく歪で、ガタガタと小刻みに震えながら壁の隅に丸まっている。


(……こいつを始末して、壁を背にすれば少しは警戒範囲を狭くできる…)


俺は機関銃を融解させ、近接用のナイフを生成する。足音を殺して肉薄し、その異形の首筋に刃を振り下ろそうとした、その瞬間――。


「……ひぃっ……!やだ、こわい……たすけて……!」


ノイズ混じりの咆哮ではない。

かすれた、しかしはっきりと意味を持った言葉が、暗い地下に反響した。


「――――ッ!?」


ピタリ、と。

俺の腕が、凍りついた。

ナイフの刃が、異形の首筋のわずか数センチ手前で止まる。


「……は?」


壁際でうずくまっていた異形が、怯えきった様子でゆっくりと顔を上げた。

顔の右半分は醜い鱗に覆われ、目は赤く濁っている。だが、変異しきれていない左半分は――恐怖に歪み、大粒の涙をボロボロとこぼす、齢10歳に行くかどうかの女の子の顔だった。


「…おねがい、……殺さないで……っ」


彼女は異形と化した腕で頭を庇い、必死に命乞いをしている。


「あんた、人間だった……のか………?」

『もしかして………今回の異形って全員……!!』


その言葉が、俺の脳で激しく殴りつけた。

こいつらは、確かに人間だったのだ。


じゃあ、俺が今まで何の躊躇いもなく、ただのバケモノだと思って斬り捨ててきた奴らは……?

俺の雷撃で内側から爆ぜていったあいつらの中にも、まだ人間としての心が残っていたとしたら――?


「あ……あぁ……」


手からスッと力が抜け、生成していたナイフがドロリと形を失う。


スラムで()()はいくつも見てきた。

道端で()()を見ることもあれば、暗い路地裏で見ることもあった。

俺にとって()()は身近なものだったはずなのに………今、自分が()()をもたらしているという事実に、俺の思考は真っ白に染まってしまった。


戦場で最も見せてはいけない致命的な隙。


「ガアァァァッ!!」

『黎、危ないッ!!』


ヴィヴィの悲鳴。

我に返った時には、女の子だった異形が理性を完全に失い、鱗に覆われた腕を振り下ろしていた。

避けるには遅すぎる。ヴィヴィに防御の魔術を頼む時間もない。

ここで大きな一撃を食らえば、瞬く間に周りの異形達に押しつぶされ死んでしまうだろう。


(――やられる!)


俺が死を覚悟した、その時。


地下鉄のトンネルの奥――暗闇の中から、鼓膜を破るような轟音と共に、極大の雷光が撃ち込まれた。

光は俺の真横をすり抜け、俺に襲い掛かろうとしていた異形の上半身を、チリ一つ残さず蒸発させた。


「……なっ」


直後、強烈な熱波と爆風がホームを吹き荒れ、群がっていた異形どもが次々と薙ぎ払われていく。

焦げたオゾンの匂いと粉塵の向こうから、一つの影がゆっくりと歩いてくる。


「単独でよく持ち堪えたな、灰原んとこの新人!」


重い足音。そして、腹の底から響くような豪快な笑い声。

現れたのは、防衛局の制服の袖を荒々しく捲り上げ、歴戦の傷跡を晒した巨漢だった。無精髭を生やし、猛獣の(たてがみ)を思わせる逆立った髪をなびかせている。


右手に握られた、身の丈を超える三叉の矛からは、バチバチと威圧的な青白い雷が溢れ出ている。


「あ、あなたは……」

「獅子堂大隊隊長、獅子堂 大牙(ししどう たいが)。灰原小隊・隊長の要請にて参上した!!」

大鎌ってかっこいいよね………

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