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第二十一話 チームリーダー!

 研修三日目です。

 情報量が多すぎます。

 宮廷道化師のライモ様の付き人はスパダリな青年ダニエルさん。

 女王の側近、三官女様たちは国の柱となっておられ、有能で個性も顔面も強い。

 アイラ女王様にあられましては、夫のライモ様を溺愛。

 そして宰相様は、魔王と呼ばれていますが、子離れできないライモ様の養父。


 三日目は、十六あるメイドチームのチームリーダーとの顔合わせ、仕事の見学です。


 まずは清掃チームのリーダー、ハイターさん。


「掃除とは筋トレです。私は常に重曹を背負って歩いています。重曹はすべての汚れを解決するっ!」


 白いリュックサックを背負っているハイターさんは、ガタイの良い女性です。

 ふんわり丸いパフスリーブ、筋肉隆々としたたくましい腕、広い肩幅です。しかしお顔立ちは優しく、茶色の丸い目と丸いお鼻が可愛らしい。ショートカットで三角巾、スカートは膝下丈、足のふくらはぎの筋肉もご立派です。


「どうも、新人さん。おじいさんがメイドなんて驚いたかね。私の長い洗濯屋の技術をお城に伝授したくてメイドになったんだよ。どんなシミも落とすさ。心のシミ以外は取れる」


 柔らかく笑ってそうおっしゃるのは、洗濯チームリーダーのミヨシさんです。目の細い小柄なおじいさんで、白いシャツに装飾のない白いエプロン、ゆったりとした黒いズボンです。頭には白いキャスケットを被っています。


 メンテナンスチームのリーダーは小柄な青年です。


「おいらはどんな狭い場所も行けるんだぜ。すべての配管を任せてくれ。水道の詰まりで国が行き詰まるようなことにはさせないぜ。火の元にはくれぐれも注意してくれよな」


 やんちゃそうな猫目に、つんと尖った鼻、短いとげとげの赤毛で、黒いシャツにショートパンツ。ショートエプロンの胸元にはクローバーのバッジをつけてらっしゃいます。


「ん、これか。これはリーダーの印だよ。みんなそれぞれ、好きなモチーフのバッジをつけているんだ」


 パッシィさんが教えてくれました。なるほど、そういえばみんな帽子かエプロンにバッジをつけていました。ハイターさんは胸元に拳のバッジ、ミヨシさんは白い花のバッジでした。


「ごめんねー! 急いでるから、さっと自己紹介するね。私はハヤカ、俊足の速達専門だよ! じゃあまたね!」


 伝達チームのリーダー、若い女性のハヤカさんは風のように走っていきました。ミニスカートにドロワーズ、ニーハイソックスにブーツ。髪の毛はショートボブ、レースのヘッドドレスには赤いリボン、たくさんフリルがついたショートエプロンです。バッジは切手。


「新人さん、何か困ったことがあったら私に相談するんだよ。なーんでも聞いてあげるからね」


 ニコニコと笑うマリーさんは、ふくよかな優しそうなおばさんです。栗色の髪をお団子にしてフリルのカチューシャをつけ、ロングワンピースに胸元は繊細なレースのエプロンです。バッジは赤いハートマーク。


「私たちの仕事は精神の手当て。傷ついたり、しんどくなったら、すぐに話してくださいね。今は仕事に慣れるため、ストレスが溜まりやすいですから、気をつけてくださいね」


 ハキハキと話すリネットさんは、頼りになりそうなお姉さん。銀縁のメガネに肩までの黒髪、フリルのたくさんついたヘッドドレス、ストンとした黒のワンピースに、胸元にだけレースのついたロングエプロンです。バッジは胸元にピンク色の手のひらのマーク。


「まぁ、私はリネットさんのおまけですね。男性が女性には話しにくい内容を主に担当しています。私にできるのは話を聞いて、まあ、適度なアドバイスぐらいですがね」


 男性カウンセラーのハイアーチさんは、無表情で淡々と言います。お年は四十代かしら、ちょっとくたびれていらっしゃる。この方もスクエア型のメガネをかけています。白いシャツに黒のベストとズボン、蝶ネクタイで腰エプロン。

 バッジは青い手のひらのマークです。


「またハイアーチさんは、そんなことおっしゃって。いつも言ってるでしょう、自己評価が低すぎると」


 リネットさんが眉をひそめて言います。


「低すぎはしません。こんなものです」


 またそんなこと言って、とリネットさんが繰り返すので、ここでさよならをしました。


 メイド育成チームのリーダーは、シンシアさんです。青い星形のクリップを三角巾につけています。

 記録チームは、メイド業務のすべてを記録するチームです。二階に仕事場があり、みんな机に向かってペンを動かしています。


「…………新人さんね。君のことは、すでに記録済だよ。僕はマッシーニ。この城で起きたこと、全部書くのさ」


 前髪の長い陰気そうな、三十半ばの男性です。笑い方がククク、です。怖い。なのにフリフリのエプロンにロングワンピース。

 バッジは万年筆で、シャワーキャップのような、ふんわりした帽子につけています。


「冠婚葬祭、宗教儀式、あらゆるお祝い、あらゆる弔問、私たちが支援します。なるべくお祝いごとの方がいいわぁ。あたし、お葬式は嫌いだから、人間は死なない生き物になればいいなぁって思うの」


 いきなり不死希望を語る、催事支援チームの女性チャペルさん。

 金髪で大きな瞳はブルー、まぶたはピンク色でラメできらきら、ショッキングピンクの口紅。腰まであるウェーブした金髪と、見た目がとっても派手です。ロングスカートはパニエでふくらませ、裾にたっぷりフリルがついたエプロンです。バッジは虹。


「おいしいお茶と甘いお菓子はいかが?

 ティータイムに命をかけてます、シュガーです。その日の疲れは、その日のうちに、ティータイムで癒すのですっ。人間は、ほっと一息つかなきゃ死んじゃうっ」


 お砂糖のように色白の少女が、緑色の瞳をキラキラさせて力説します。

 パニエで膨らんだ膝下のスカートに、腰で結んだリボンの大きなフリルエプロン。胸元にも大きなリボンをつけています。

 バッジはティーカップ。耳の下で栗色の髪を結び、レースのヘッドドレスです。


 さて、ここからは特別なチームです。

 メイドの花形、女王支援チーム。もっとも人数が多いです。


 さて、ここからは特別なチームです。

 メイドの花形、女王支援チーム。もっとも人数が多いです。


「よくきたね。残念ながら女王支援チームは、手が足りてしまっているんだ。仲間として歓迎するよ」


 リーダーのモニカさんは、黒い肌にアフロヘアです。目元の涼しい長身の女性で、シンプルなメイド服。胸元には真っ赤なバラのバッジです。


「ねぇ、モニカ。私、太ったかも。なんかこのズボン、お腹苦しい」


 白いシャツのボタンを三つぐらい開けて、お腹をおさえながらアイラ女王が現れました。きゃっ、突然のセクシーと太った発言、やめてください。


「ちょっとぉ、また女王はそんな格好でドアまで出てくる。それに、そういうのはデリケートなことだろ。みんなが動揺するから、二人っきりの時にしてくれよ」


 モニカさんが叱ります。


「え、ちゃんと服着てるし。それに、ちょっと太ったぐらい、別に構わないじゃない。あ、でも新しい服を買うのがムダか。よし、わかった。痩せるために運動しないと」


 アイラ女王が「よし」と言って、その場でスクワットを始めました。ダイエット、即実行。


「ねー、アレサ、ミーナ。なんかいいダイエット方法ない?」


 服がムダだから痩せたい節約女王が、私たちに呼びかけます。


「菓子を食うな。お茶に砂糖入れるな。飯食うな」


 アレサの無茶苦茶な答えに、アイラ女王は笑いました。


「ま、ご覧の通りさ」


 モニカさんは肩をすくめました。


 お次も派手なチームです。

 宮廷道化師支援チーム。アイラ女王が嫉妬深く、女性を近づかせたくないので、全員、男性です。みんな忙しく、宮廷道化師の仕事部屋を出入りしています。


「また会ったな。ここにはあまり近づかない方がいいぞ。おまえたちは、ライモの面倒くささがわかっただろう。面倒な目に遭いたくなければ来るな。シンシアさん、お仕事お疲れさまです」


 ダニエルさんが腰に手を当て、淡々と言います。

 ダニエルさんは、胸元に黄色の星のバッジをつけています。


「なんで僕、こんなに資料集めたんだろう…………一度読めば覚えられるのに、こんなにも溜め込んでしまった。ダニエルぅ、疲れたよー」


 ライモ様が白い衣装をひらひらさせて部屋から出てきて、ダニエルさんの肩に顎をのせます。


「アレサとミーナ、いつでも遊びにきていいよ。シンシアさん、お疲れさま」


 ライモ様がにこにこ笑う。

 うん、この笑顔の誘惑には勝てないですね。でも来たら、ダニエルさんに怒られそう。


「甘えるな。みんな頑張って、おまえのめちゃくちゃに集めた資料を整理している。さっさとやれ」


「はーい」


 ダニエル様に言われて、ライモ様は部屋に戻ります。

 私たちは、二階の一番奥の小部屋に行きました。


「やぁ、新人メイドさんたち。初めまして、私は元王のエドワード。ここで政務後見しています。よろしく」


 老師様と呼ばれる元王は、五十代半ばで、まだお若いです。

 優しげな目と大きな鷲鼻で、どっしりとした品格があるお方です。


「私たちは老師様の支援をしています。身の回りのお世話や、政務の手助けです。ここは静かでしょう? 慣れないこともたくさんあって大変だけど、頑張ってくださいね」


 老師支援チームのリーダー、メイさんは、華奢でおっとりとした四十代ぐらいの女性です。胸元には三日月のバッジです。


 そしてまた派手な、三官女支援チームです。

 執務室では、リディア様が熱心にノラ様とエルサ様に語りかけています。三人とも立って、机の上を見ながら議論しています。


「私は名ばかりのリーダー。三官女の仕事補佐は、他のみんながやってる。私はそれを観察しているだけだ。私は、この国を研究している魔術師だ」


 リーダーのサニーさんは、紫色の瞳にストレートの金髪。少しアイラ女王に似ている美少女です。耳の上の両側にリボンがついたヘッドドレスに、大きな襟の黒いワンピース。バッジは太陽です。


「アレサとミーナね。所属希望のチームは決まった?」


 リディア様が声をかけてくださいました。


「そうですね、えっと、私は迷ってます」


「私は伝達チームで、手紙を届ける仕事がいい。私は走るのが得意だ」


 アレサ、もう決めていたのね。確かにアレサは、いつも叱られる前に逃げていたものね。


「あなたたちが、この城で楽しく働けることを願っているわ。それじゃあ、またね」


 リディア様、いつも凛々しくて素敵です。今日は桃色のロリータコーデ。ヒールの高いピンクのパンプスが、よくお似合いで。


 音楽娯楽チームのリーダーは、ピアノを弾いていた方でした。

 彼女は、身体は男性ですが、心は女性です。


「いつでも演奏を聴きにきてくださいね。楽器初心者さんも、歓迎いたしますわ」


 優雅に微笑むピアノ担当のビクトリアさんは、音符のバッジをつけています。


 二階から一階に移動して、最後にできたメイドチームさんとの顔合わせです。

 狭いメイド詰所の真ん中で、ブツブツ独り言を言っている人がいます。


「インクは風蘭堂が質が高い。便箋は菜の花書店。魔石は、えーっと、魔術マーケットの…………」


「失礼します。新しいメイドの紹介に参りました」


 シンシアさんが声をかけると、女性が振り返りました。長く細い足でミニスカートがよく似合う彼女は、白い頭巾をかぶっています。オレンジ色の巻き毛の房、澄んだ青い瞳に小さな鼻と唇。裾にフリルのついたショートエプロンの胸元に、りんごのバッジをつけています。


「ん、そうか。ここはおかいものチーム。私はリーダーのセイラだ。いいか、ただのおつかいじゃない。私たちは、頼まれたものを、より高品質で、的確な値段設定の物を買う。店の情報、原価、値上がりなど、すべて把握することだ。さて、そろそろ夕方のタイムセールが始まるから、行ってくるぞっ。またな!」


 セイラさんは籠を持ち、颯爽と歩いて行きました。


「これで、すべてのチームの紹介は終わりです。アレサは、もう希望が決まったのね。伝達チームに伝えておきます。ミーナさんは、アイラ女王支援チームと宮廷道化師支援チーム以外で、気になるところから体験されると良いでしょう。おつかれさまでした」


「はい、ご案内ありがとうございました。お疲れさまでした」


 私は、シンシアさんにお辞儀をする。

 さて、どこにしましょう。私って、何が得意かしら、と考えます。

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