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第85話「アルザリオン」

光が収縮してラクスの目の前にはラクスよりも大きい身長の女性の姿があった。左腕は再生したようだ。何とも妖艶な顔つき体つきで、真っ裸だった。


ブーーーーーッ


「おい!主、どうした。大丈夫か?誰からも攻撃はされておらぬぞ?鼻血が大量に出ておる。任せろ、回復もできるぞ」


その真っ裸の女性に頭を抱えられ、回復魔法をかけられる。ふと気づくと巨大な2つの物体が顔に押し付けられている。フガフガと手で押しのけ顔を上げると、やはり妖艶な女性が優しくこちらに微笑みかけてくる。必死で鼻血が出ないように後ろを向き、ラクスが着ていたマントを差し出した。


「これを羽織れば良いのか?」


ラクスはコクコク頷いて、布がこすれる音がしなくなると、ゆっくり女性の方を向いた。なんとかギリギリ隠れているが、主張の激しい胸とスラリと伸びた足の付け根がマントがヒラヒラなるたびにチラチラと見える。


(これはこれでチラリズムをそそられる……)


「なんじゃ主。主はオスなのか?人間のメスの姿に興奮していると?契約時に主が望むままに変身するようにと考えただろう?この姿は契約時に主の思い浮かべた希望通りの姿だぞ。己の欲望のために契約に変身するよう入れるなど……主はやはり神ではなかったか」



「違う違う。まさか本当になるとは思ってなくて。前世の海外ナイスバディ映画女優を一瞬思い浮かべちゃった。そうだな、もっと小さくならないかな?動物とか……」


「あぁ、問題ないぞ。頭の中で思い浮かべてくれ。その姿になる」



ラクスが自然と思い浮かべたのは鳥だった。大空を舞う鳥。大空の支配者。アルザリオンが光り輝き、マントがはらりと落ちてワシの姿になった。


「アル、その姿でも喋れるか?」


「アル?………フッ……あぁ、問題ないぞ。声色は先ほどの人間のメスをそのままでよいな?と言うか、支配下に置かれた我輩とは念話ができる。離れていても頭の中で会話が可能だ」



「その声で構わない。念話って便利だな。ちょっといろいろ話しをしたいところだが、あと数百ほど魔物が残っている。殲滅しなければ」



後ろを振り返り魔物の残党を指さす。


「主、命令してくれれば我輩がやってくるぞ」


「お!できるのか?よし、では魔物残党を殲滅してこい。俺もアルの戦いぶりを空から見よう」


「了解した。では行くぞ」



アルとラクスは魔物殲滅に飛び立った。









【迷宮避難所】

迷宮の兵長は避難所から出るべきかどうか迷っていた。外からは魔物が出ているような音はしない。が、あの巨大な魔物がまだその辺りをうろついているかもしれないと考えただけで頭がおかしくなりそうだった。


ミゲルはそんな兵長を横目に、隙間から外を確認した。

「兵長、もう何もいません。全ての魔物は移動したようです」


「ミゲル……あぁそうか。そうか……。我々だけが生き残ったのか。町も国も、もしかしたら今頃……」


兵長は頭を抱えて屈みこんでしまった。



「兵長……我々は確認して報告しなければなりません。たとえ報告先がなくても、この厄災を誰かに伝えなければ」


「そうだな、ミゲルのいう通りだ。よし、私がまず外に出て確認しよう。問題なければ声をかける。出てきてくれ」

副兵長がそう言うと、重い扉を少しだけ開き外へ出て行った。


するとすぐに声がかかる。

「おーい!おーい!出てきてくれ!もう大丈夫だ、魔物は1匹もいない。兵長が見た巨大な何かもいないぞ!」


兵士たちは顔を見合わせ、我先にと外に出た。兵長も深刻な顔をしながらも外へ向かう。迷宮の外にあったのは、無数の魔物の足跡と、巨大な何かの足跡。それと地面に大きな穴が開いており、ここで戦いがあったかのようだった。また、ハロルドタウンに向かって直線状に地面が溶けており、高熱源の攻撃があったことが確認された。


(やはり……あれは人間を滅ぼす魔物だったのか?いや、だが……)


あの巨大な何かは酷くゆっくりと移動していた。あの速度で移動していたら、まだ視認できる距離までしか行っていないはずだが、見渡す限りいない。2キロ先くらいに数百の魔物が見えるくらいだ。あれほどいた魔物はその数百以外全く見えない。


「おかしい、移動速度が速すぎる。何か……何かがあったのかもしれない。そうか!!!ラクス!ラクス準男爵がハロルドタウンに来ていた。もしかしたら……」



そう考えながら魔物の群れを遠くから見ていた兵長だったが、信じられない光景が目に入って来る。


空から一筋の光が魔物の群れに伸びていき、ズドーーーーーンと大きな爆発を起こした。








【リリー】

リリーは結構疲れていた。初めて魔王拳を使いつつ、超広範囲でタイダルウェーブを放ったためだ。だがその効果は絶大で、ほとんどの魔物を倒すことができた。けどタイダルウェーブの範囲外にいた魔物があと数百ほどいる。1匹1匹は相手にもならないが、魔力が少なくなった時の戦い方を知らないため、どうせなら集まってこちらへ来ないかなと考えていた。


「うーん、結構魔力使っちゃった。ん?あれ?でっかい竜がいなくなった!?なんで!?」


そう思っていると、2つの大きな魔力が空からこちらへ飛んで来ている。1つは兄だ。もう1つは分からないが、兄と一緒に飛んでいるため敵ではないと思われる。上空で止まった。ズームアイで確認すると、鳥のようだ。ワシか鷹っぽい。兄が鳥に何か話しかけているように見える。ついに兄は鳥とも喋れるようになったのかと感心していた。



すると鳥が魔力をため始めた。魔力の波動が、でっかい竜と同じだった。(竜が鳥になった?)と思いつつ、じっと見つめていると、一筋の光が魔物へ向かう。



ズドーーーーーン!


猛烈な爆風がリリーに襲い掛かる。瞬時に水の壁を展開し、爆風を防いだ。


「あっぶな!なんだあいつ!!!」


魔物は蒸発したようで、跡形もない。リリーは怒り心頭だったが、魔物が消えたことで(面倒くさい魔物狩りがなくなってラッキー)とも思っていた。







【ラクス】

「おー!やっぱり凄いな!この威力、アルはやっぱり強い!空間魔法でもなかなか曲げれなかったくらいだったからな」


「これくらいは当然。そうだ、主。その空間魔法とは何なのだ?我輩の左腕を攻撃したのも空間魔法なのだろう?」


「ああ、そうだ。あんな広範囲で使ったのは初めてだったんだが………」



アルザリオンに空間魔法の定義について少し話しをする。アルザリオンは時折頭を傾けながらラクスの話しに聞き入っていた。




「なるほど、そう言う事象を転生前に知っていたということだな?」


「ま、そうだな。事象自体詳しいことは良く知らないし、正直どうなるかも分からなかったんだけど、魔力で調整はできると確信してたからな」



「そうか。それと主、あそこにいるのが主の妹なのか?魔力が主よりあるとは思えんが……」


「ああそうだよ。この地面の水の量からすると、超広範囲で極大魔法を使ったんだろう。かなり消耗しているはずだ。普段はあんなもんじゃない」


「あちらにも魔物の残党が数百いるが、あれはどうする?」


「そうだな、リリーを回収して倒しに行くか。アルも来るだろう?」


「当然」




ラクスは何故か怒ってるリリーを回収しに行き、このワシはなんで巨大竜の魔力と波動が一緒なのかとひと悶着あったが、ラクスの背中に乗せて空中を飛んだら怒っていたことを忘れたようではしゃいでいた。



ハロルドタウンに着くと、2人とは前線に着陸。ラクスは魔力消費を抑えつつ、ミスリルダガーで辺りの魔物を瞬殺。疲れていたリリーも魔力消費を抑えるように、人差し指を弾いて水の弾丸を出し、次々に魔物を倒す。アルザリオンは魔物の間を通り抜けるだけで魔物が切り刻まれていった。



圧倒的な強さに驚いていた町民や冒険者だったが、強力な助っ人が来たことで安心していた。





全ての魔物を倒したことを確認すると、アルザリオンがラクスの肩に乗ってきた。


「主よ、これは警告だが、恐らく主はユグドラシルに目をつけられていると思う」


「え?何それ?」


聞きなれない言葉に「?」となるラクスだった。

第3章 完


また書きためて更新します。

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