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第82話「スタンピード3」

ギードがオーガの攻撃を食い止めているすきに、カリスが攻撃する。


が、オーガはそれを軽々と受け止めた。その時、オーガの表情が若干変化する。

カリスが(何だ?)と思い離れると、オーガの脇腹に小さい切り傷が出来ていた。気付かなかったがグエンが攻撃していたようだ。


「へへっ!3対1で卑怯とか言うなよ?これは魔物掃討作戦なんだろ?」

グエンがナイフをかざしてニヤリと笑う。


「おう、傷ついたな。これで有利だ。グエンのナイフは毒入りだ」


オーガは脇腹をしきりに気にしている。どうやら毒消し関連のアイテムは持っていないようで、回復出来ないらしい。



「俺がタンクだ!カリス、お前がアタッカー!グエンはチャンスを見つけてもっと毒を打ちこめ」

「「了解っ!」」




ギードが突っ込んでいく。まわりの冒険者や身体強化組も後ろの魔物へ突っ込む。乱戦が始まった。ハロルドタウンで教育を受けたとは言え、Cランク程度であればなんとかなるがBランクの魔物となると一筋縄では攻め切れない。善戦はしているものの、少しずつ劣勢になっていく。


怪我人が門前に運ばれ始め、数的優位が保てなくなってきた。が、そこにラミアーナがあった。

「怪我人は私のところへ運んでください。回復魔法を施します!」


ラミアーナは数人の兵士を周りに連れて戦場に赴いていた。執事や侍女に止められたが「ここで前線に立たなければ貴族としての矜持に関わります!」と強硬姿勢を取り、配下が折れたのだ。



次々と無詠唱で怪我が治っていく。その回復の手際と戦場まで来る胆力に美貌が上乗せされ「聖女様」と呼ばれ始める。




更にそこへギルド長であるフォルシオーネが現れた。

「よし!冒険者も参戦しているな!何とか50人!私も参戦するぞ!!!」


それを見た冒険者は歓喜する。

「おい!ギルド長だ!ギルド長も参戦するみたいだぞ!」

「おぉ……これで大丈夫だ!みんな!祝福の織手が来たぞ!反撃開始だ!!!」



後ろで聞いていたフォルシオーネはフッと笑う。

「なんだ、現役時代の二つ名を知ってるのか……精霊よ、今一たび私に力を貸してくれ……」


そう呟くと、フォルシオーネは両手を組み、祈り始める。

「風の精霊よ、空を裂きて我が声に応えよ。その羽根を我らに授け、疾き歩みを導かん。契約の名において、疾風の加護を!」


続けて祈る。

「揺るがぬ大地よ、我が足元に力を。地の精霊よ、その腕で我らを包み守れ。大地の抱擁、今ここに!」


フォルシオーネはエルフのみしか使うことができない精霊魔法をクォーターでありながら使うことが出来た。風と土の精霊魔法でスピードと防御力が大幅にアップする。フォルシオーネはこの補助魔法と弓の腕でAランクまで上り詰めた冒険者だった。



「お!おおおお!!初めて補助魔法受けたぜ!こりゃ良い!すいすい動ける!」

「ホントだ!祝福の織手の名前は伊達じゃない!」


冒険者がその力を噛みしめていると、太いこん棒を持ったトロルにガツンと殴られた。

「グアッ!痛ぇ!!!!……痛い?おい!トロルの一撃で死なないぞ!ただちょっと痛いくらいだ!これならいけるぞ!!!」





ギードはそのやり取りを横目にオーガの攻撃に必死に耐えていた。防御力が上がったとは言え、重さに変化はない。一撃で死にはしなくなっただろうが、まともに数発くらえばすぐ動けなくなるだろう。グエンの毒が効き始めるまでもう少し時間がかかる。


(なんとかもう少し耐えなければ。グエンは……かなり警戒されているな。くそ……)


ギードが厳しい顔をしていた矢先、オーガの右目に矢が突き刺さる。

「ぎゃうおぉぉおおおお!」


激しい痛みでオーガが数歩後ろに下がった。

「何だ!?」

とギードが左を向くが、誰も弓を放ったものがいない。(どこから?)とキョロキョロすると、門近くに矢を放ったフォルシオーネの姿があった。フォルシオーネとギードとオーガは、直線的な位置にあったが、矢は左から飛んできた。(いったいどうゆう……)と思った時、今度は左わき腹に矢が突き刺さる。矢が同じものだ。明らかにフォルシオーネが打ったと思われた。


「ははは!Aランクとはこういう強さということだな!心強い!!!カリス!グエン!たたみ込むぞ!!!」

「「おう」」



グエンが毒ナイフを3撃叩き込む。何とか立っている状態だったが崩れ始めた。重さはさして変わらない攻撃をギードが何とか受けて踏みとどまる。カリスが足技を駆使し、オーガの体力を削っていく。


だがギードの武器が限界を迎える。何度もオーガの攻撃を受け続けていたため、大きな斧が砕け散った。

(まずい!)と思った瞬間、オーガの攻撃がきた。グエンは後方にいる。フォルシオーネが気づいたが、間に合いそうにない。カリスは足技を出した直後で対応できない。


(ここまでか……)ギースが笑いながらグエンを見つめた。グエンが手を伸ばし、何とかギースを引き寄せようとするが全く届かない。





カリスはラクスとの迷宮探索の後、少し話す機会があった。カリスの今後の戦闘スタイルについてだ。

「カリス、自分では分かっていないかもしれないけど、手の魔力管が開きつつある。何かのタイミングで完全に開くと良いんだけど」


「手……手か。確かに野球する時、手に力を込めることがあるな。瞬発的なものではあるけど。あぁでもたまに速い球投げたり、強い打球で打てる時があったな……」


「瞬発的か。なるほど。でもそれで良い。もし完全に開いたら、カリスの戦闘スタイルは………」





ギースにオーガが迫る。足技は出せないが手は出せる。(俺の目の前では絶対に殺らせない!)極限の中でカリスは今までにない集中を見せた。オーガの攻撃に自身の拳をぶつけるとき、魔力が自然と動いて拳に集まっていく。それは一瞬だけの輝きであり、また瞬時に足に魔力が戻ってしまう。


だがそれで十分だった。オーガの攻撃は弾かれた。大きくノックバックした体制にフォルシオーネの渾身の一撃が左目に突き刺さる。前のめりにしゃがみ込んだところで、カリスのライジングシュートが後頭部に炸裂。オーガは首の骨が折れ、動かなくなった。



カリスは右手をにぎにぎして、ぐっと握ると「そうか、この感覚か……」と呟き、次の魔物へと向かう。ギースは武器がなくなってしまい「グエンに一旦引き返すぞ」と門前に帰還。周りの目もあり、やせ我慢をしていたが相当体に負荷がかかっていたようで、門前に着くや否や倒れこんでしまう。精も根も尽き果てていた。



バフがかかり状況が一変した。乱戦は徐々に人が押し始める。怪我人も次々と回復して前線へ帰って来る。スピードが圧倒的になり、魔物の攻撃を数発程度くらっても問題なくなった。魔物を倒すと他の冒険者や身体強化組と協力しあう。フォルシオーネの弓矢が面白いように魔物の足や腕、目に当たる。オーガ以外は強力な魔物もおらず、人間がその場を制圧していった。








リリーは落とし穴が良く見える高台にいた。数百程度の魔物が1箇所からワラワラとこちらに来るが、すり鉢状の場所に入り、底にたまる水を避けて這い上がる寸前で大量の水が上から降って来る。その水量が圧倒的で蟻地獄のようになり、まったく前に進むことができない。もう少しですり鉢の縁に届きそうと思った途端、底に吸い込まれていく。吸い込まれた先は、落とし穴だった。


「うーん……たまに横からすり抜けていくやつがいるけど、お兄ちゃんがほっとけって言うからいいよね。それにしても暇だなぁ。向こうの方が気になるなぁ。お兄ちゃんの魔法はやっぱり凄いや!ブワーってなって、ボボーってなって、ズガガガーン!てなったなぁ。はぁ……リリーも同じ魔法使いたいなぁ。リリーは水ばっかりだもんなぁ」


リリーはボヤキながらもラクスの言いつけ通り、繰り返し水洗便所作戦を続けていく。

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