第81話「スタンピード2」
100程度の魔物が連弩の射程範囲に入る。
「うてーーーーー!!!」
ビュンビュビュビュン!ビュビュビュン!!
「第2射!構えぇ!!!てーーーーーー!!!」
ビュンビュビュビュン!ビュビュビュン!!
……
一斉に射られた弩は魔物の群れを襲う。5度の斉射で10匹程度は致命傷、30匹が動きが鈍くなった。矢はまだまだあるが、ここからは魔法組の出番だ。魔法教師が指揮を務める。
「魔法組!土魔法で大規模に土を柔らかくするぞ!深さは3m程度で行え!」
複数人の土魔法が得意な魔法組の生徒たちが一斉に土を耕す魔法を発動する。普段農地を耕している魔法なので簡単だ。おおよそ100m×300mもの広さとなる。
「次!水魔法で沼を作るぞ!やれ!!」
柔らかくなった土に水が勢いよく流れ込む。すぐに水はいっぱいになり、大きな水たまりのようなものができた。通常の魔物であれば避けたのかもしれないが、気がたっている状態だったためか次々と沼にはまっていく。頭だけを出す状態で何匹も抜け出そうと必死だ。流石に留まる魔物もおり、動ける魔物は残り20匹となった。
「連携魔法だ!風組!火組!あの火災旋風規模とは言わん!あれを模して作るぞ!」
遠くに見える火災旋風はラクスが作ったものだと魔法組は知っていた。連携魔法と言う聞きなれない言葉を教えてもらったとき、火+風の場合は、風で竜巻を起こしそれに炎を混ぜろと教わっていた。
あのラクスの魔法は正直どれくらいの大きさなのか見当もつかないが、それぞれ個別に練習していた魔法を今回ぶっつけ本番で行うこととなる。だが魔法はイメージだ。目の前に規模がデカ過ぎるが、良いイメージサンプルが出来た。魔法組はこれなら出来ると確信する。
「沼の向こうへ竜巻だ!風組!」「「「はいっ」」」
ヒュオォオオーーー!!
徐々に竜巻が出来てくる。10数名で作り出す竜巻は遠くで見えるものと比べ物にならないほど細く、弱弱しかったが、空までつながる竜巻が出来上がる。魔物は飛ばされないよう、必死に地面にしゃがみこんでいた。
「火組!燃やし尽くせ!!!」「「「はいっ」」」
やがて竜巻に炎が広がる。離れて魔法を放っている魔法組も熱いと感じるほどに高温となった火災旋風が魔物を焼き尽くしていく。しばらく魔物ののたうち回る声が聞こえていたが、すぐに消えてしまった。そこに残ったのは炭化した魔物の残骸のみだった。
あの先どうなっているんだろうか……今まで見たことも聞いたこともないほどの雷が天から次々と降り注ぎ、その激しい落雷音の振動にしゃがみこみたい思いだった。だが魔物とも対峙しなければならず、身をかがめながらも見張るしかなった。
どう言う理屈でこうなっているのか分からないが、数万以上いる魔物はなぜか数キロ先からはまばらになり、再度集結して近づいてきても100匹程度でしかない。それらを作業のように潰していくことが続いていた。
「ほらまた来たぞ!今度は80くらい。これが終わったら交代だ!頑張るぞ!!」
対魔物戦では、1対1では分が悪くても集団対集団になると圧倒的に人間が有利になる。魔物は統率して襲ってこないからだ。せいぜい集まるくらいである。ここまでバルクロイドの他の迷宮よりもランクが高い魔物を1組200人グループ程度で被害なく倒せているのは人の集団行動によるものだった。
ラクスが対魔長に伝えた作戦とは単純だった。身体強化組と魔法組300人、門兵連弩組100を2グループに分け、100匹程度の魔物を1グループが対応し、残り1グループは休憩するというものだった。交代するタイミングは任せるとのこと。戦いが始まってからの序盤は「本当に大丈夫か?」と思っていた者が大半だったが、幾度かの襲来を跳ね返したことで、安堵感が生まれる。
先ほどと同じように、連弩・沼で数をへらし、火災旋風で焼き尽くす。
「よし!交代だ!!次のグループは準備しろ!」
「俺ら身体強化組は今のところ役にたってないなぁ……」
「安全策を取ってるってことでしょ!最後の砦なんだから、気合入れててよね!」
カリスとドナーのグループも準備を始めた。ドナーが言うように、身体強化組は最後の砦だった。魔法組は近づかれ過ぎると同士討ちになる可能性も高く、集団戦の近距離では身体強化組に委ねるしかない。
「来たぞ!ちょっと数が多いな……150匹くらいだ!」
「私が数を減らします!連弩組はその後お願いします!」
「お!久しぶりにあの魔法を使うのか?獄炎のドナーだからな……」
散らばっていた魔物も集団になり、1つの塊となった。
ドナーが両こぶしを額の前に出し、目を閉じて集中する。両こぶしが赤く揺らめき始める。
「いくわよ!地獄の炎で燃え尽きろ!インフェルノ!!!」
魔物が通る地面が赤くドロドロに焼け始める。足元が溶岩のようになり、動きづらい上に熱さと痛みが容赦なく魔物を襲う。かなりの範囲攻撃だったが、即死するまではない。火傷を負いながらも溶岩から脱出した魔物は動きは遅いがそれでもこちらへ向かってきた。
(やっぱり……広範囲魔法ではこのランクの魔物じゃ致命傷にならないか……でも私は強くなったのよ!)
「はぁああああっ!フレイムボムッ!!!」
ボンッ!! ドッガーーーン!!!!
ようやく溶岩を抜けたと思った矢先に爆発魔法が飛んできた。抜け出た前方の魔物20匹が即死。間もなく抜け出そうな魔物も溶岩の中に倒れこんでしまい、悲鳴を上げている。
「よし!連弩組!今だ、放てーーーー!」
容赦なく降り注ぐ矢が次々と魔物を倒していく。が、1匹、一番後方にいた魔物は矢を避けて溶岩を飛び越えてきた。その魔物は勢いを殺さず、そのままドナーへ一直線に向かってくる。
「くッ!フレイムカッター!」ズバッ!ズバッ!ズバッ!!
炎の刃が魔物に飛んで行く。だがすんでのところで全て躱され、更に距離が縮まった。
(ヤバイ、死……)
目を閉じ、しゃがみこんだドナーはここで死んでしまうと思った。だが……
「おいおい!魔物と対峙して目を閉じてちゃ勝てるもんも勝てねーぞ!」
「カリスっ!」
カリスが攻撃を食い止め、ドナーの前に割って入る。
「ここからは俺の番だな。行くぞ!パワーシュートォ!!!」
ドゴォ!!!!
強烈な足技を繰り出し、魔物をドナーから大きく引き離す。自身も魔物へ特攻した。激しい肉弾戦が始まる。
「お、おい……あれってオーガってやつじゃないか?」
門兵は本でしか見たことのない魔物に驚愕した。
「ほんとだ、あんなの初めて見た。南の迷宮にはオーガも出るのか?Aランクだったろう?」
「あぁ、Aランクのはずだ。カリス、互角に戦ってないか?」
「……あんなに強かったんだな、知らなかった」
「いやまて、押され始めてるぞ」
(くッ、強すぎだろ!攻撃が重すぎる。足で防御してたら攻撃できねぇ……仕方ねぇ、チャンスを待つ)
オーガの攻撃はただ殴って来るだけだったが、オーガも身体強化されているため単純に魔力の差がでてしまう。
「ぐっ……ぐあっ……くそぉ!」
徐々に押され始めるカリス。ドナーが魔法を使いたいがカリスに当たる可能性があるため魔法をうてない。また、ハロルドタウンの身体強化組の中にはカリスほどの実力者がいないため、手を出せなかった。後方を見ると、溶岩から抜け出してきた魔物が近づいてくる。
その時、横を駆け抜ける影が見えた。
影がオーガの攻撃を受け止める。
「ぐぅおおお!何じゃこの重さは!!お前よくこんなのと1人でやってんな!助太刀するぞ!」
「ギード!」
「冒険者にも緊急クエストが来たぞ!今からハロルドタウンギルドも全力対応だ!」
ギルドとしては遅れはしたが、ギルド長の鶴の一声で緊急クエストが発令。50人を集めるのがやっとだったが、南門へ次々と冒険者が集まって来る。
ギードが叫ぶ。
「おう、お前ら!クエストクリアしたらがっぽりだぞ!1匹でも多く狩って稼いだら祝杯だぁあああ!!」
「「「うぉおおおおお!!!」」」
「ギード……頼もしいぜ!」
ギードに鼓舞され、冒険者と身体強化組が後ろからきた魔物へと向かっていく。




