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第80話「スタンピード1」

ビューーー



ラクスは上空にいた。南の迷宮から出てくる魔物は後を絶たない。どす黒い水から秒間で10~20ずつ生まれているようだ。平面一体を埋め尽くし、徐々にハロルドタウンへ向かってくる。


「いったいなぜスタンピードは起こるんだろう……あの木の魔人と何か関係があるのか?それとあの水はやはり……他の迷宮でも同じことが起こっているのか、これが片付いたら確かめなきゃ」



先頭の魔物と町との距離はおよそ10㎞というところか。

(あの辺りに落とし穴を作るか……長さは1㎞くらいかな。よし!)



町から魔物との距離5㎞ほどの場所に降り立つラクス。「ん~~~、うりゃあ!」と言うと幅10m、深さ20mほどの土が動き出す。土はそのまま魔物側に積み上げられると、落とし穴に向かってなだらかな上り坂となっていく。魔物側から見ると地続きになっているように見えるようにする。


「よし、横に広げていくぞ。フンぬりゃ!!!」



横幅約1㎞にわたり、落とし穴が出来ていく。途中500m地点に落とし穴がない場所を20mほど作り、また残りの500m程度を落とし穴にしていく。何かを生み出すわけではない魔法のため、落とし穴はかなり魔力燃費の良い罠だ。穴が完成すると、次の罠設置へ向かっていった。






罠一式を作り終えると、ラクスは一旦ハロルドタウンへ帰った。


「リリーは…えーと…あそこ!」


ビュンと向かうと、リリーが気づいた。



「あ!お兄ちゃん、大丈夫?」


「まだ戦ってない!罠を一通り設置したところだ。もう少ししたら魔物が罠にはまり始めるだろう。で、ちょっと指揮を取ってる人を探してるんだが……」


リリーはすぐに案内し、ラクスは対魔物統括長へ作戦を教え、皆にどう動いて欲しいか詳細を伝えた。対魔長は困惑しつつ、やや否定的な反応を示したが、準男爵という立場からの指示で従うしかなかった。ラクスはその様子を見て「大丈夫ですよ、どうにかしてみせます。お願いしますね!」と言い、リリーと迷宮側へ飛んで行った。



(町の戦力は身体強化組と魔法組を合わせて300。門兵が100程度。魔物を分断しなければ勝ち目はない。最初の穴に全部入ってくれれば楽なんだが、そう上手くいくか……)



魔物は何の疑問もなく坂道を上り、落ちていく。20mの高さから落ちても普通に生きているが、穴の形状をやや徳利とっくりのような形にしているため、登って来ることができない。徳利穴の土を利用して20mほどの高台を作り、こちらは絶対に登れないようにネズミ返しを施した。



「じゃ、リリー、とても危険だがお前しかできない役だ。この下の穴に水を入れれるか?底に大きい穴が開いているが、魔物がある程度入るまで留めておいてくれ。で、一気に流し込む」


ラクスは少量の水でデモンストレーションをする。リリーは「うんうん」と頷き、「簡単だね!」と言っていた。

「名付けて、水洗便所作戦だ!」

「すいせん?すいせんってなんだ?……便所って名前が入ってるからあんまカッコ良くないね」


(カッコよさなんて求めてないんだから!)ちょっとショックなラクスだった。




「も、もしピンチになったら空に向かって水を打ち上げろ。すぐに来る。大回りする魔物は気にするな。別の仕掛けがある」


「大丈夫だよ、お兄ちゃんが思ってるより強いんだから!」


(十分お前の強さは分かってるさ)



「お兄ちゃんはこの落とし穴の後ろから迷宮方面へ行く。じゃ、よろしくな!」

「うん!」



ラクスは飛び立つと、巨大落とし穴の先へと進む。



「よし……F5クラスの中に魔円斬を組み込む。中間地点を座標にして、そこから後方へ……」


ラクスが両手を広げた。




一匹の魔物は急に風が吹き始めたことに気づいた。だがちょっと強い風だ。特に気にしない。風は徐々に強くなっていくが、何故か特定の人間を捕まえなければならない衝動に体が動いてしまう。魔力の強い人間だということは周りの魔物も共通認識で持っているようだった。姿かたちが脳裏に浮かぶ。見つけて生け捕りにしなければ。



風が強い。前に進めないほど強くなってきた。それでも前に進まないと行けない気持ちが湧き出てくる。石が飛んで来ても、木が飛んで来てもも、それでも前に突き進んだ。更に風が強くなる。どういうことか、魔物まで飛んでくるほどに風が強くなった。



進まなければという気持ちとは裏腹に全く前に進めなくなってしまう。その時、自分の前の魔物の頭だけが後ろへ飛んで行った。「?風で?」と思った次の瞬間、自分も後ろへ吹き飛ばされてしまった。体を動かそうしても何もできない。地面と空がクルクルと回っていく。息が出来ず、声も出ず、目の前が暗くなっていく。一瞬だが脳裏に浮かんだ人間を上空に発見した。見つけたと思ったが、魔物は首と胴体が分かれたことに気づくことなく、死んでいった。






ハロルドタウンの門兵は遠くで恐ろしい現象をみた。それは今まで見たことのない光景だった。空と地面が極太の柱のように繋がっているようだった。「な、なんだあれ……」スタンピードと言い、この現象と言い、もう勘弁してくれという言葉が出そうになるが、今それをここで言う訳にはいかない。士気に関わる。



対魔長が叫ぶ。

「これは神のご加護だ!!我らも神の意志に従い、この厄災を乗り切るぞ!」

「「「おぉおおお!!!!」」」


そういう風に捉えないと、誰もが恐怖で気持ちを保てなかった。



徐々に聞こえてくる大群の足音。だが少しすると魔物が近づく箇所が1箇所になってように見える。そして前進スピードが極端に遅くなってるようだった。何が起こっているか分からなかったが、確実に進軍に手をこまねいているようだった。煙も見えてくる。確認したいが行けば確実に死ぬだけだ。ヤキモキしながら魔物が近づくのを待つ。




後方では先ほどの神の柱に火が付き、黒煙が立ち上り、巨大な黒雲が空いっぱいに広がっていく。その光景は、神が作り出す物以外に考えられてなかった。やがて黒雲の中で雷が鳴り始める。この世の終わりなのではないかと言う状況だった。




しかしそれでも徐々に見え始める魔物の群れ。だが最初に確認したほどの数ではないようだ。それでも100程度はいるだろうか。



対魔長はラクスから小規模の魔物の群れを幾つもつくるから、各個撃破するように言われていた。万を超える魔物の群れをどうやって小規模にするのかさっぱり分からなかったが、ラクスがそうすると言ったのであればそうなのであろう。リリーも凄いが、ラクスは別格な存在だ。あれほど神に祝福された人間はいないと思えるほどに。



対魔長から作戦を伝えられた門兵長が指揮を始める。

「やはり我々には神のご加護がついているぞ!100程度の群れだ、まず連弩隊で対応する!連弩隊前へ!次に魔法部隊!そちらの指揮は任せるぞ!!」



ハロルドタウンの決死の応戦が始まる。




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