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第77話「源流」

「私はこのハロルドタウンギルドのギルド長をしている、フォルシオーネよ」

「あ、はい。ラクスと申します」


フォルシオーネが手を差し出す。ラクスも応えて握手した。美魔女だ。それも相当の。40歳くらいだろうか。整いすぎてて逆にちょっと引いてしまう。


(もしかしてこれってエルフ?的な?でも耳はとんがってないな……)



マジマジと顔や耳に目が行っていたのだろう。フォルシオーネは少し笑って話しかけた。


「私の顔に何かついているかな?」

「あ、ああ…いや、ギルド長がとても美人なもので…」


「それはありがとう。でもエルフみたいに耳がとがってない、って?」

「……え……あの……はい」



「君は正直だね。別に隠すこともないけど、私はエルフと人間のクオーターだよ。おばあ様がエルフでね。エルフって普通は森からほぼ出ないんだけど、ちょっと変わった人でたぶん今もどこかで旅していると思う。もう私も結構年でね。今年で100……いやだわ、初対面なのに年齢まで言いそうになっちゃった」

「は…はは……すごくお若く見えますよ」


「あら本当?ふふっ、おばさん喜ばしても何も出ないわよ。ところでそうそう、あなたに会いたかったのはね、あなたのおかげでギルド長になれたようなものなの。2年前にね、大きな怪我をしちゃって冒険者を引退したんだけど、しばらく抜け殻みたいになっちゃっててね……。そんな時にこのすごく成長しているハロルドタウンにギルドが新設されるってことになって、王都ギルドから話しが来たの。ギルド長やってみないかって。そこから研修とかいっぱい受けてね。で、ギルド長になったってわけ。ここが発展したのはラクスのおかげじゃない?だから本人に会ってみたかったってわけ」


「あぁ、それで……光栄ですが、村の皆が頑張ってくれたのでここまで発展したんですよ。私だけの力じゃありません」

「そういう謙虚なところ好きよ」





ギルド長とラクスのやり取りを聞いていたギードだったが、そろそろ……という感じでラクスにアイコンタクトを取ってきた。ラクスが頷く。



「あー……ラクス、ギルド長に概要は話したが、詳細をお前の口から説明してほしい」

ギードは既に軽く話しをしているようだったので、詳細を伝える。






「なるほど……そんな水が存在するのか。南の迷宮も7階層までは行ったことがあるんだけど、大量の魔物がいる部屋があってそこから先へ進まなかったんだ。と言うか逃げてきたんだけどね。9階層10階層か……そんな深くまで……」



ギルド長も水の存在は知らなかった。ギルド長はかなり強かったらしいが、やはりこの世界の魔法は研究が進んでいないようだ。迷宮はおそらくどこも突破されていないのではないか。そうなると各迷宮を突破して旅をするのも楽しそうだ。




「それでなんですが、今から9階層、10階層まで行ってみようと思っています。水のサンプルがなくなってしまいましたし」



「そうか……私も一緒に行ってみたいけど、書類整理が多くてね。研究はラクスも任せるよ。水についての情報は冒険者ギルドを通して世界中に発信しよう。研究が進んだらまた報告に来てほしい。判別方法は特に重要だから。お願いね」


「はい」




「今のハロルドを見てると良く分かるけど、町の成長も人の成長も著しい。いずれ10階層にまで行ける冒険者が増えると思う。そうなる前で本当に良かった」




そこでラクスは1つ思い出した。

「あ!それで1つご提案というか、お願いがありまして……」

「なんだい?ラクスのお願いならなんでも聞くよ?」


「なんでもって……前回迷宮に潜ったときに、トラップを含めたマップを作図したんです。それで……」

「何だと!?」

ギルド長よりもギードが強く反応した。


「トラップも含めたと言ったか?トラップを全部確かめて行ったのか?」

「いえ、ちょっとした魔法の一種でトラップが見えるんです」


「そ、そんなことが……」

「で、全てのトラップ……ちょっとどんなトラップかまでは調べてませんが、位置を描いたものを作ってます。これってギルドで権利?を買い取ってもらえませんか?」


帰ってきて、研究の合間に描いていた各階層のマップをマジックバックから取り出す。



「おぉ……すごいね……これはすごい。これさえあれば私も10階層まで行けるかも……あぁでも魔物がいっぱいいる部屋は……あぁここだ。あれはトラウマものだったわ……うわ!この部屋こんなにトラップあったの!?行かなくて正解だったわ」


「こりゃ良い!ラクス!これ売ってくれないか!?300万でどうだ!?」


「ギード、流石に私の前でそれはないよ。これはギルドに対してのマップ権利売買契約だろう?これだけのマップだ。最低でも500万はする代物だ。それに念のためギルドでトラップを確認しないといけない。どこまで信頼できるかだが……いや、ラクス。これは間違いないんだよね?」


「もちろんです。漏れなく記しています」



「そうか……では私の名において、このマップ完全なものとする。500万ルクで販売だ。南の迷宮完全マップは一式売れる毎に400万ルクをラクスに支払おう。残りはギルドの作成費用、それから販売者手数料だ。各階層ごとに売れた場合も同じ割合とする。それで良い?」


「信頼いただいて嬉しいです。でもそんなにいただいていいんですか?そちらが良いなら良いんですが」


「普通のマップはね、トラップの位置なんて描いてないの。マップ自体各階層毎に売られるものだし。ここまで詳細で完全なマップなんて見たことないわ。普通の作図だと権利としては3~4割程度だけど、ラクスのは8割が妥当でしょうね。後で契約書を作っておくからまた来てね。契約期間はその日から10年よ」


「分かりました。よろしくお願いいたします」




ギルド長との話しも終わったのでお礼を言って別れた。ギードにはお礼も含めてただであげようと思ったラクスだった。


(これは他の迷宮もマッピングして売ったら相当な金が……うへ、うへへへ。魔法による目の進化がゆきわたるまでが勝負だな。10年ってのは丁度いい区切りだ)







そんな腹黒いことを考えつつ、南の迷宮へ向かう。10階層へ行き、水が湧き出る場所へ急いだ。そして水を汲もうとした時だった。


(え?なにこれ?)


透き通った水だったが、底の方からどす黒い魔力の塊が水面に浮かび上がってくる。



「どういうこと?」


何かおかしいと感じ少し離れて様子を見ていると、黒い物が徐々に形を成していき、魔物となった。



(うお!マジか!あの水は魔物を生み出しているのか!?まさか……ハッ!そう言えば火竜が魔物が駆け抜けていくと言っていた……魔物はこの水から生まれているのか?)




魔物が5匹生まれ、階段を使って上へ歩いていった。少し見守っていたがそれ以降は何も出てこない。いつものように透き通った水に戻っており、準備してきた瓶に水を注いだ。


「だいたいこの水はどこから来てるんだろう?どうにかして大元を……魔力を糸のように細くしてみるか?」



ラクスは指先から魔力を放出し、細く細くしていく。意志を持ったようにクネクネと動き始め、水の中に入っていく。数十m、数百m潜ってもまだ先がある。それでも何か情報になればと、グングン先へ進んでいく。いくつも分岐しているようだが、水量が多そうな方へ進む。3㎞ほど進んだあたりだろうか。


「お?なんだ?何か固いものに当たる……岩盤?石?いや?なんだ?これ?………木?」


その瞬間、魔力糸を伝って恐ろしい勢いで何かがこちらへ向かってくる。3㎞先から一瞬ですぐそこまで来ていると感じた。



「うお!やばっ!」


すぐに魔力糸を切ると後方へ逃げた。



ボコッ……ボコボコボコボコボコ……


黒い魔力の塊が水の底から湧き上がって来る。魔力は少しずつ形成されていく。




「こりゃヤバイのに目をつけられたかも……」



目の前には邪悪な魔力を放つ人の形をした3mほどの木の魔物がいた。

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