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第75話「報告2」

「竜と話した?」

「そうです」


「魔物が喋るのか?」

「はい、その火竜は喋りました」


「クリス、そのような話しや文献を見たことはあるか?」

「いえ、ありません」



「そもそも階層主?というのか?それを倒すと根源が出て、根源で世界中を転移できるという話しもかなり怪しいものだが、それがもし本当なら世界にとってかなり危険な物となるぞ」

「それについてはもっと調査が必要だと思います。同じ場所に再度行きましたが、階層主は出ませんでした。別の者が行って調べてみないといけませんが、二度と出ない可能性が高いです」


「そうか、それで根源は今はラクスのみしか持っていないのだな?」

「はい」


「ならばそれはお前のみ使用しろ。他の者への使用は許可しない。これは命令だ。パーティーを組んでの使用も禁止する。いいか?」

「……はい。それはかまいませんが、私は良いのですか?」


「良い。ただし根源のことは誰にも話すな、渡すな。王にもだ。もし既に喋った者がいれば、根源の力は使用回数に制限があったようで、もう使えない。とでも言え」

「兄上、しかしラクスだけとは言え、このような物を使うのは危険ではないでしょうか?」

「危険だろうが……これほど利用価値の高い物はない。しかもラクス以上に強い者はおらんからな。奪われる心配はないだろう。使える物は使う」



領主様は迷宮の根源と転移陣にものすごい反応を示した。

(いや、これからが本番だよ)



「それで続きですが……良いですか?」

「あぁそうだったな。なんだ?」


ラクスは水について説明を始める。領主様の顔がどんどん険しくなっていく。説明が終わるとクリストフ様の方が話してきた。



「兄上、これは……これは例の……」

「間違いないな。ランドアナ……いやこれはローズミール教が元凶か」

「兄上!まだその情報はまだ……」


クリストフ様がこちらを見て領主様を再度見た。



「良い」

マルクウェルがクリストフを制止する。



「ラクス、お前も既に世界の流れの1つだ。この情報は一部の者しか知らんが、お前も知っておいた方が良い。世の中にはこの世界を操ろうとする者たちがいる。その者たちは魔物を操り、人間を操り、村を町を領を、そして国を操ろうとしている。心の弱い者を次々と引き入れ、既に巨大な組織となってしまった。神聖ローズミール教国だ」


「ローズミール教国?宗教の国があるんですか?」


「そうだ。宗教自体の国として存在している。その教えは教会で祈りを捧げると貰える水を飲み続けること。飲み続けないと体の中の魔が溢れ出してしまうそうだ」


「え?その水ってもしかして」


「その可能性が高い。水を飲むと病や怪我が回復するそうだ。普段は特に何事もなく生活を送るらしいのだが、一たび戦争が起こると兵士でもない老若男女が狂ったように戦い始めると聞く」


「火竜と一緒だ……そんなことが……許さない!」



火竜は自分の意志で戦おうというものではなかった。もっと対話をしたかったのだが、あの水が原因で会話が不可能となったことや、その水を利用して人を操ろうとすることに、何故かは分からなかったが自分でも信じられないくらい吐き気がしてムカついていた。



「そうだな。そして問題はここからだ。ローズミール教が少しずつではあるが徐々に広がりを見せている。世界で一斉に起きたスタンピードが原因だ。ローズミール教の教えを守れば、魔物から身を守れるという噂から信徒が増加している」


「そんな!それは嘘だって言え……」


「嘘だと言ったところで理解されない。人の心は弱いのだ。救いがある方へ自然と傾いていく」


「じゃあどうすれば……」


「ラクス、あの水を持ち帰ったと言ったな。その水は普通の水と判別はつかないか?」


「そうか!なるほど!それが分かれば!!」


「そうだ、危険な水と区別できれば良い」


「分かりました!ではさっそく帰ってあの水の研究を開始します」


「そうだな、よろしく頼む」




勢いよく出ていくラクス。部屋にはマルクウェルとクリストフだけになった。


「兄上、良かったんでしょうか?いえ、話しの流れから結論的には良かったとは思いますが、もしラクスが近づきすぎて取り込まれた場合、最悪あの2000年前の……」


「それは分からない。あの禁書に書かれていたことが本当かどうか真偽を確かめることもできないからな。だが当人が危機を知らずに進んではダメだ。あいつはもしかすると生まれ変わりかもしれないから」


「まぁそういう気持ちになるのも分かる気はします。だからこそ同じことにならないと良いんですけど」


「真偽は分からんと言っただろう?」


「そうですね。でもとにかく守ってあげなければ」


「そうだな」


2人のみの打ち合わせはこの後も数時間に及んだ。








北の迷宮の上空まで来た。また兵士に止められるのも面倒だと、迷宮の入り口を監視して、人が少なくなった瞬間を狙い、迷宮に入り込んだ。


(よし、誰もいない)



転移陣に入り、50階層へ。そこから南の迷宮10階層に移動し、1階層へと転移。


「やっぱ便利だな。でも俺1人しか使えないのか。うーん、まぁ命令だし仕方ない」


迷宮を出ると「お!帰ってきたな。1人だったから心配してたぞ」と言われた。「ご心配をおかけしました」と挨拶し、ハロルドへ急ぐ。



(水……水の判別か……さてどうやるか?リトマス紙とかあればできるかなぁ。でもあれアルカリ性か酸性かの判別だよなぁ。やはり魔法でどうにかするしかないか。どうにかしなきゃ)





ハロルドに到着し、カリスとドナーを見つける。魔力感知すると一緒にいるみたいだった。どうやら飲食店にいるらしい。


(ハロルドに飲食店なんてあったのか。いつの間にか発展したもんだな)


カランコロンと扉を開けると、すぐに見つかった。


(お?誰かと一緒に……ってあれ昨日の……)



「おぉ!誰かと思えばホワイトフェザーのリーダー、ラスクじゃねぇか!」

「あら、ラクスも来たのね。1人?」

「おぉ!俺の命の恩人の内の1人!!」

「………」


カリスはぐったりしている。

(なんだ?酒飲んだのか?未成年だろ!?……あぁ日本じゃなかったんだった)



「こんにちは。昼間っぱらから酒ですか?」

「いやいや、この前のお礼におごるぞって言ってな。飲み物はジュースがいいか?って言ってんだけど、なんか「なめんな」とか言い出して、一口エール飲んだらこんなだ」

「無理して飲むからよ。飲めないくせに」


カリスは下戸らしい。この世界はお酒飲んでいいのは何歳からだろう?そんな法律あんのかな?



「ちょっと2人に話があって、今帰ってきたんだ」

「おぅ?野暮用か?席を外そうか?」


ギードは気が利くタイプの人間のようだ。


「いえ、大丈夫です。むしろ聞いていただきたい」

「おぉ、何だ何だ?」

「お前ら兄妹のいう事だったらなんでも聞くぜ!」


弟のグエンも話しを聞いてくれるらしい。



「助かります。実は今回、南の迷宮に行ったのは調査のためでした」

「調査?なんの?」

「以前起こったスタンピードの原因が分かればと思ってのことです。二度と起こらないようどうにかできないかと考え、調査しつつ最下層まで行きました」


「おぉ、聞いてるぞ。お前らのパーティーはやっぱり凄いな。南は初めて潜ったらしいじゃねーか。で、いきなり最下層まで行ってしまうなんてよ!やはり只者じゃねーぜ」



「いえいえ……それで大事なのはここからの話しなんですが……」

1人を除き、3人は食い入るようにラクスの話しに耳を傾けた。

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