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第73話「vs火竜ドレイク」

『あれじゃよ、あのー…あれじゃ。なんじゃ?初めて殴られて、頭がくらくらするわい……あー、随分昔になるが、北の大陸にヘラクレスと言う人間が来ての。あそこはワシらの縄張りだったんじゃが、あいつ1人で乗り込んで来てな……そんでなんじゃったかのぅ……』



火竜ドレイクはギリギリ思い出せる感じで話し出した。ラクスに殴られて脳が揺さぶられたせいかもしれない。


(ヘラクレスが生きた時代は2000年前だ。まぁそんな前の記憶だから朧気なのも無理はないが……)



『何か知らんがひどく憔悴しきっておっての。ワシらの縄張りに入ってきたもんじゃから「人間風情が気高き竜族の地に何しに来た!?」ってなったんじゃ』


ラクスは魔王拳を解き、その場に座りこんで話しを聞くことにした。


「ほーほー、そんで?」


『……お前はワシの友ではないぞ……なんじゃその態度は?』

「いえ、ごめんなさいドレイクさん。話しが面白くて」



『そうじゃろうそうじゃろう。面白かろう。それでどこまで話したかの?……何か知らんがひどく憔悴しきって……』

「あ、そこ聞きました。人間風情が竜族の地に何しに来た?の続きを」



『あーそうじゃった。それで……なんじゃったかの……あぁそれで一斉にその……人間を襲いかかったんじゃ。そしたらあの……ら、ラークスが使ったさっきの魔力の凄いのを使って竜をちぎっては投げちぎっては投げ……あれは恐ろしい光景じゃった』


「ドレイクさんは戦わなかったんですか?」


『ワシはまだ若くピチピチの70歳くらいでの、物陰からコッソリ見ておったわ。当時のワシよりたぶん数百……数倍もの力を持つ竜王様があっという間に負けてしまって、これはいかんと、中央大陸へ逃げてきたというわけじゃ……いや、違う。逃げてきたんじゃなくて力をつけようと中央大陸へ来たんじゃった』


(ピチピチて……逃げてきたんだろう)



『ちょうどワシが入れそうな迷宮があっての、そこに入って力をつけようとしばらくおったんじゃが、何か知らん内にここにおってこの場所を守るようになった。そこから人間を見たのはお前が初めてじゃ』



「2000年もここにいるんですか!?暇じゃないんですか?」


『あぁ……そんなになるかのぅ。暇かと言われれば暇じゃが、たまーに知らん魔物が駆け抜けていくし、その時ちょろっと魔物食べれば特に腹は減らんしのぅ。普段はほとんど寝ておるし。あそこに水が湧き出ておるじゃろ?あの水飲むと不思議と元気になるんじゃ……はて、ここに来た時もそう言えば喉が渇いて水を飲んだの。そこから記憶が曖昧じゃなぁ』



「まさか!?ドレイクさん、ちょっとまた魔力あげます!ちょっと待っててください。魔王拳!」


『っくぅううう!ヘラスンスの魔力には劣るがなんちゅう魔力じゃ。恐ろしい人間にしか会わん……』



(これもだ!これも水のようだが魔物だ。これが体内に入ると元気になると言ったか?だが記憶が曖昧とも言った……これを飲むと体内で魔物が活性するのか?そしていずれ脳を侵食する、とか?寄生虫のようなものかもしれない。戦わなければいけない気がするとか言ってなかったか?操られてる可能性もある)



「ドレイクさん、体に不調はありませんか?」


『んん?いやないな、あるとすればさっきお前に殴られたところが痛いくらいじゃ』


「あぁ、それはすいません」


『痛い時はその水を飲めば回復できるからな……ちょっと飲むか……』

腰を下ろして話していたドレイクだったが、水の方へ歩き出した。



「ドレイクさん!ダメだ!これは飲んじゃいけない!これはおそらく……いや詳細は分からないが、これを飲むと元気になるかもしれないけど、脳を侵食される可能性があるぞ!」



『何を訳の分からないことを言っとるんじゃ。大丈夫じゃ、今までも何回も飲んできた』 

ラクスのいう事に聞く耳を持たず、体が熱すぎるので無理矢理にでも止めることもできず、ドレイクは水を飲み始めた。ゴキュッゴキュッ…とものすごい勢いで水を飲んでいる。



(……大丈夫なのか?……確かにさっき殴った跡が消えかけている。あ、消えた。確かに凄い回復効果だ)




『ほら、どうもないじゃろう?……むかしから……ワシ……の………』

「ドレイクさん!どうしたんですか!?ドレイクさん!!」



『グルルルル………グゥオオオオオオ!』


ドレイクの様子が明らかに変わった。筋肉が張り、体を纏う炎が強くなった。割れていた爪が鋭利な刃物のようになり、魔力が大幅に高まっている。



(これはやはり……仕方ない、上へ逃げるか。しばらく経てばまた元に戻るかもしれない。下への階段は見当たらない。ここが最下層、もしくはドレイクを倒さないと出てこないんだろう)



ラクスが高速で上り階段へ急ぐが、ドレイクが口から光線を吐いて階段箇所を破壊してしまった。




「あ!!くそぉ……やるしかないのか……もっと話しを聞きたかったんだが…………ドレイクさん!この水は飲んじゃダメって言ったでしょう!魔王拳3倍!!!」

『グァオォォォォォオオン!!』



ドレイクがまたブレスを吐いてきた。ラクスはブレスをものともせず突っ込んでいく。魔力を硬化させ、ブレスを弾くように進み全くダメージを受けない。


マズイと思ったのか、ドレイクはブレスをやめて巨大な前足の爪でラクスに殴りかかった。だがその前足はラクスに届かない。魔円斬で腕ごと切られていた。


ズドーンと落ちる前足。

『グゥルルル………』

前足の切断面の肉が収縮して、モコモコ再生しようとしている。



(チッ、どいつもこいつも竜種ってやつは……水の力も相まってるのか?)

「魔円斬(中)……」

そう唱えると、ラクスの周りに10個の大きな円盤が音を立てて現れる。



「ドレイクさん、俺が元に戻せたら良かったんだけど……ごめんな。あの世でヘラクレスとでも戦っててくれよ……いけ」

静かに指をドレイクに向けると、魔円斬が一斉に動き出す。いくつかの魔円斬を残った前足の爪で抑え込んでいたが、ドレイクはなすすべなく魔円斬に切り刻まれ、消えていった。



(迷宮で生まれた魔物でなくても迷宮へ消えた。いや、そもそも魔物自体がどこで生まれているのか分からないか……この迷宮には何か秘密がありそうだ。それにしてもあの水は……そうだ!バックに中身使い切った空き瓶があったな……よし、これは持ち帰って調べてみよう)



ドレイクを倒した場所を見ると、金貨とアイテムがポップしていた。金貨5枚、火竜のナイフ、火竜の涙、火竜の爪を回収。横にあった【中・35】階層の根源(50)も回収する。



「じゃあ、ドレイクさん。ゆっくり眠ってください」



ラクスは転移陣へ戻る。

『【中・35】階層の根源、50階層を確認。転移先を選んでください』

「【中・38】(10)へ」

『転移先を確認。転移します』






ラクスが転移して30分ほどたっていた。3人は遅いなぁと肩を落としつつ帰りを待っていた。すると転移陣がボワッと光り出す。


「あ!お兄ちゃん帰って来るかな?」

「そうかも!光ってるわね!」

「すぐ帰れなかったのか?」



予想通り、ラクスが転移してくる。


「お兄ちゃんお帰りー、遅かったね」

「ほんとよ、すぐ帰って来るかと思ったのに」

「もう帰っちまおうかと思ったとこだったぞ」

「「それはない!」」

「あー、ごめんごめん、嘘だ」



少し疲れた顔をしたラクスを3人は心配した様子で見守っていた。


「すまない、バルクロイド領の北の迷宮に飛んでいた。最悪飛んで帰れるかと思ってたんだが、向こうの階層ボスと少し話しこんでて……」


「階層ボスと話した!?」

「どういうことなの?」

「ん?魔物って話せるの?」



「そうだよな、びっくりするよな。ドレイクという火竜だった。普通に話していたんだが、例の水がそこにもあって、ドレイクが水を飲んだ途端急変してな。そこから火竜と戦っていた」


「1人で!?火竜と!?」


「そうだ。まぁ地竜とそんなに変わらないくらいの強さだったよ。それよりも問題は水だ。これはもしかすると脳を侵食して操り人形にする魔物かもしれない」



「「えぇ!?」」

「え?侵食ってなに?」



一旦帰ってから詳しい話しをするということになり、ラクス達は転生陣へ移動し1階層へと飛んだ。

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