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第71話「水の魔物」

(リリーは俺の戦いを見せるだけでアドバイスはいらないみたいだ。勝手に吸収していくな)


リッチを倒し、その階層も危なげなくリリーが倒していく。パンなどの食料もアイテムとして落ちているが、流石に迷宮に落ちているパンなど食べたくもない。しかしなぜパンなのか?おにぎりでもいいじゃないか、などどうでも良いことを考えながら歩いていると階段を発見する。



「よし、じゃあまぁ次の階層は俺だな」


「はーい、お任せするわー」

ドナーの安心したような言葉が返ってきた。


「それからリリー、お前一番後ろ任せていいか?魔力感知しながら、特に後方に注意しててくれ。何かあったらすぐ報告すること」


「了解でありんす!」


(どこで覚えた、そんな言葉)



階段を落り、ラクス、ドナー、カリス、リリーで進む。特にこの階も何事もない。ただ魔物が現れたらラクスが瞬殺して$目になりながらお金を回収し、アイテムが落ちていると「これは良い物だ」とか奇妙な言葉を呟きながら回収した。まれに後方から敵が来るが、リリーが瞬殺。カリスとドナーは瞬殺兄妹と呼んだ。



階段を見つける。次が10階層だ。キリの良い階層。階段の近くにきれいな水が湧き出ていた。透き通った水だ。特に疲れていなかったが、休憩することとなり、その水を汲んで煮沸しようとした時だった。


『ダメだ!飲んではいけない!』

「ぐあっ!なんだ!?何か言ったか!?」


「?なんだ?どうしたラクス?誰も何も言ってないぞ?」



『飲むな!よく見ろ!』

「ぐぅううう……頭の中で声が……何だってんだよ?よく見ろって……」


「お兄ちゃん、どうしたの!?大丈夫!?」



『絶対飲むな!』

「くッ……(魔王拳!)」



「「「うわっ!」」」

いきなりラクスの体の周りに炎のように光る魔力が見えて、近づけないほどの魔力の圧を感じる。

「どうしたの!?ねぇ!お兄ちゃん!」



ラクスが目に魔力を込めた。

「な、なんだ!?これは!?」

「どうしたんだよ!?おい、ラクス!」


きれいで澄んでいる水だと思ったが、観察すると微生物のようなものが蠢いている。微生物がいるのは当たり前だと思うが、一つ一つに魔力がある。ラクスは魔王拳を解くと、3人は「はぁ~……」と脱力した


「ごめん、急に……」

「どうしたんだ?何があった?」


「いきなり頭痛がして、頭の中で「この水を飲むな。よく見ろ」って誰かが叫んだような気がしたんだ。で、きれいな水にしか見えないけど、目に集中して観察したらこの中に目に見えないほど小さな生物がいて、魔力を放っていた。魔物かもしれない」



「ええ!?頭に直接?何かしら……先祖の霊とかが危険信号を送ってきたとか?」

「霊って、そんなの信じてるのかよ?」

「スピリチュアルって話しよ!いちいち反論しないでよ」


「あーはいはい。で、ラクス、今声は聞こえないのか?頭痛もしない?」

「あぁ、今は全く。なんだったんだ、いったい」


「とりあえず、この水は飲まない方が良さそうね。リリーちゃん、お水出せる?」

「うん」



(何が起こったんだ?ただ何か聞き覚えがあるような声だったきもする。そういえばこの前も……いや、気のせいか……)




お茶を入れ一息つくと、ラクスも落ち着いた様子になり、3人もホッとしていた。


「気を取り直して、次は10階層だ。ここまで大した魔物も出てこなかったし、まだ深いのかもしれない。迷宮で野宿も考えてたけど、とりあえず今日はここまでで帰ろうか」


「まぁそうだな。結構アイテムもお金も回収できただろ」


カリスの言う通り、ここまで既に1,500万ルクを越える額を回収できていた。リッチから金貨2枚も出たのが驚きだった。リッチだけに……



10階層に到着する。魔力感知には1つのみ。

「わりと大きい魔力が1つ。この先100mほどだ。階層ボスかもしれない……が、カリスとドナーで対応してみるか?」


「お、俺は大丈夫だぜ」

「わ、私はちょっと自信ないかなぁ……」


「んー、じゃあ俺はサポートで入る。ピンチの時はすぐに補助する。リリーは一応魔力感知で他に敵がいないか確認。いたらそっちを攻撃してくれ。重要な任務だ」

「ラジャー!」


(ほんとどこで覚えてんだか)





真っ直ぐ道を進むと、大きな部屋に出た。


「なんだ、こいつか……あぁでも前のより随分でかいな。亜種じゃないのか?」


そこにはこちらを睨む地竜の姿があった。前の地竜は体高が5mほどだったが、今回のは10m近い。


(しかし飛んで見るのと地上から見るのでは全然違うな。何か威圧感がある)




「ここ、こんなデカい竜初めて見たんですけど……と言うか、竜自体初めてなんですけど」

ドナーが何か言っている。他の迷宮で竜くらいいるだろうに。


「不用意に近づくなよ?体がデカいってことはそれだけで物理的な攻撃力も防御力も高いってことだ」


「お、俺は何をすれば」


「カリスは陽動!近づきすぎるな!ドナーは中距離位置で最高魔力のフレイムカッターだ。距離が離れたらフレイムボムを叩きつけろ!」


「おう!」「はい!」




地竜が動き出す。動くごとに地面が揺れ動く。カリスに向かっていたが、急に振り返って尻尾を振り回してきた。カリスは足に魔力を込め、後方へジャンプし躱す。


(お!いいね、速い!)


鋭くステップし地竜の攻撃範囲内へ入るが、攻撃が来る瞬間にはもう届かない場所まで移動している。上手い陽動だ。ドナーは地竜の攻撃が空振った後に、魔力を込めたフレイムカッターを繰り出した。しかし土と火、相性があまり良くない。岩が幾つもくっついているような体をしているため「キンッ!」とはじかれてしまう。



(属性を無視するほどの高温魔法が使えれば良いんだが。それだとこっちもダメージを受けるか。あとは地竜がブレスを吐くときを狙うしか……おっ!?)


地竜が首元を光らせ、大技を出そうとしている。



「ドナー!ブレスが来るぞ!タイミング合わせて口の中にフレイムボム打ち込めないか!?」

「えぇっ!?そんな急に出来るわけ……いえ、やってみるわ!」




階段を降りるとき、ドナーに話していたことがあった。

「ドナー、お前は頭の回転が速いから、これは無理そうと考えると別の方法を考える癖がある。一度試してから無理だったら別の方法を考えれば良いんだ。まず試せ」

「……頭はそんなに回転速くないけど、自覚はあります。今度からやってみるわ……」





地竜の魔力が高まっていく。

(どこを狙ってる?カリスか?ドナーか?俺か?)


「来るぞ!気を付けろ!」



口を開くと、眩い閃光が光った。狙いはカリスだったようだが、カリスは常に動きながら、ブレスを避け、地竜の懐へ潜り込んだ。


「今!」


ドナーに合図を送ると、フレイムボムが発射された。まだ地竜の口からブレスは出ており、フレイムボムが接触すると口の周りで大爆発が起こる。ブレスが中断され、口の周りは大きく抉れており、プシューっと血が噴き出ていた。ダメージを受けた地竜は首を大きくのけ反らせた。



「(ここだ!!)カリス!」


「ライジングシュートォ!!!」

ズガンッ!!!!!


(野球部ちゃうんかいぃ!!!)



カリスの技は地竜の岩を砕き、首に大ダメージを負わせた。それでもなお生きている地竜は尻尾を振り回して回復を図っている。少しずつではあるが、傷が癒えていた。


(出来れば2人だけで倒してほしいが、尻尾が邪魔だな…)



「尻尾を切る!後は任せたぞ!」

「「了解っ」」



「魔円斬(中)」キュイーン

「いけっ!」ヴォン!!!



地竜の体の周りを舐めるように進み、後方へ行くと上から下へ尻尾を岩ごと切断する。

スパンッ!「ギャオオォォォオオオン!!!」



「フレイムカッター!!」

すかさずドナーの魔法が傷ついた首を直撃する。辛うじて繋がった部分めがけ、カリスが疾走した。


「パワーシュート!」

地竜の首が完全に切れたのだった。

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