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第69話「モンスターハウス」

カリスにアドバイスをすると、かなり意識した魔力の使い方をし始めた。まだぎこちないが、先ほどとは比べものにならない動きで魔物を倒していく。慣れるまでに相当な努力が必要だが、この迷宮を突破する頃には別人のように成長するだろう。



(あとは上半身の使い方だな。魔力管が開きつつある。上半身を防御に専念させて、下半身で攻めるスタイルが確立すれば、カリスは相当な使い手になるはずだ。将来は格闘ゲームの人気女性キャラのような、両手にトゲ付きの腕輪をはめ、蹴りの弾幕を張るような技や、逆さになり足を広げて回転しながら敵を倒すような技ができるようになる!はずだ)



階段を見つける。6階層をほぼ1人で突破できた。まぁトラップの位置を教えているし、数が多い時もサポートしたので、多少のアドバンテージはあるだろうが。






「次の階はドナーだな」


「私魔法使いよ。魔物に近づかれたら終わっちゃうわ」



ドナーは基本的に前衛が魔物を食い止めている間に魔法攻撃をするスタイルだ。魔物が近づくと何もできないらしい。それだと陣形が崩された場合、非常に危ない。




「ドナーは近・中・遠距離で魔法を使い分けてる?」


「え……いいえ、基本的にはフレイムアロ―で対応しているわ。一番イメージしやすい魔法だし」



(飛んで行く攻撃と言うのは、この世界だと弓矢が一般的だからなぁ。ま、見せてあげればイメージできるはずだ)



「必ず3段階に分けなくてもいい。近・中距離と遠距離でもOKだ。近・中距離として有効なのはフレイムカッターだな。切断面が焼けるから、回復もしにくくなる。こんな感じで……」


ラクスが手刀を振ると、炎のカッターが飛んで行く。

ズズズズズズズズズズバシュ!



「……手の動きが速すぎて見えなかったけど、すごい数の魔法が遠くまで飛んでいったわね」


(ありゃ、魔力強すぎたかな……めっちゃ遠くまで飛んでった)



「まぁ魔力を込めたらこんなこともある。基本は近・中距離専用だ」


「はぁ……よっ!ほっ!」

ドナーも手刀を振って、イメージをしていく。



「で、遠距離だとフレイムボムとかかな」


ラクスが手をかざし、手のひらに魔力を込める。

ボンッ!と放たれた火の玉が飛んで、地面に落ちるとドッカーン!と爆発した。爆心地付近は火の海である。



「こんな風に、中心に魔力を込めた球を作って飛ばすんだ。魔物に当たると爆発してその周辺が燃え上がる。範囲攻撃にもなる」



「分かった、次やってみるわ」



「それと超近距離まで近づかれた場合、これも覚えとくと良い。ファイヤーウォール!」


ラクスが手をかざすと、目の前に巨大な炎の壁が出来る。熱い。


「これを使えば魔物はなかなか近づけない。その間にフレイムカッターで攻撃する」



「二重魔法か……出来るかな。いや、やってみる!今の私なら出来るかもしれない」




一通りドナーに教え、階段を下りる。7階層へ着いた。


(お!……おおぉぉぉおお!これは!モンスターハウスだ!)



「えーっと、ちょっとどれくらい先かはっきりしないけど、モンスターハウスがある」

「え?なにそれお兄ちゃん」



「広くなっている場所に魔物がひしめき合ってるんだ。数は……いっぱいだな。7階層は担当ドナーだからな、よろしく」



「え?嘘でしょ?」



ラクスとカリスはニヤッと返す。それを見てリリーもニヤッとした。



「ホントなの!?えー、ちょっとヤバいって思う前にちゃんと助けなさいよ!分かった?」


「「「はいはい」」」


「ホントだからね!?」




正直ドナーはビビりすぎだ。実力を出しきれてない。魔力も多い。もっと多彩に炎を操れるはずだ。



モンスターハウスがある階層はその場所まで魔物がいない。嵐の前の静けさのようだった。




(さて、ゲームでは部屋に入るまで魔物は寝てるが……動きはない。これは寝てるのかもな)




ドナーを先頭に、トラップがないか後方から確認しながら進む。道が極端に狭くなってきた。モンスターハウスはこの先だ。



(不思議のダンジョンみたく、1方向からしか魔物が来ない仕組みか?)



ぼんやり明るいはずの迷宮たが、先が見えなくなった。



(これは来るな……)



「ドナー、すぐそこだ」


そう言うとドナーが頷き、手をかざしながら少しずつ前へ進んだ。



開けた場所が見えたと同時に魔物が一斉にこちらを向いた。


「モンスターハウスだ!!!」



「ファイヤーウォール!」

ドナーがついさっき教えた魔法を使う。



(やや弱い、これだと魔物が抜けてくるぞ)


ドナーはそれを感じることが出来ない。二重魔法を使おうとしていた。魔法を使う前にファイヤーウォールから魔物が顔を出してきた。



「え?」


ドナーが驚いて魔物を見た瞬間、ドシュッ……と、魔物の首が落ちた。ラクスが魔円斬でフォローしていた。


「任せろ、ドナーは前だけ」

「は、はいっ」


ドナーは後ろから巨大で分厚い圧力を感じるが、今はそれが安心出来る。



「フレイムカッター!」

シュバッ!

「出たっ!!」


「両方もっと魔力を込めろ!」

「はいっ!」


「うぅ……フレイムカッター!!!」

シュバッ!!!1番近い魔物を両断し、後ろの魔物に食い込んで激しく燃える。ファイヤーウォールも立て直した。



「今!フレイムボム!」


「う………フレイム、ボムッ!!」

ボンッ!!!

ズドーンッ!フレイムボムが炸裂し、炎を撒き散らす。中・遠距離の魔物が炎に包まれ苦しげに転げ回っている。



「威力が弱い!中距離魔法じゃないぞ!」

「は…はいっ!」


「近距離をカッターで一掃!」

「フレイムカッター!!」

ズバッ!


「足りない!連続で出せっ!」

「はぁぁああああ!!!」

ズズズズバッ!



(よし、威力が上がってきた。もうちょいだ)


「ドナー!ファイヤーウォールを奥側へ押し出せるか?壁を押す感じだ」


「やってみる!くっ……ぅうゔー!」

ゴゴゴゴゴ……炎の壁が奥へ移動する。魔物が戸惑うように後退して行った。



「よし!集まってきた。今度は魔力を間違えるな!フレイムボム!」


「フレイムボムッ!!!」

ボンッ!…………スガーーン!!メラメラメラメラ…




「いいぞ、ドナー。残りはアローでトドメだ。ただ単発で出すな。複数同時か連射だ」


「連射しますッ!フレイムアロー!!はぁあああああっ!!」

ズドドドドッ!次々と魔物に突き刺さり、内側から肉が焼けていく。どんどん迷宮に消えていき、最後の1匹も消えた。



「やったな!ドナー!」


「……もぉ!!ラクス、私にだけ厳しくない?」

「ドナーの場合、自分の力を抑えて魔法を使う傾向がある。一撃で倒せるのに、だ。基本的に対魔物ではオーバーキル気味にした方がいい。魔法使いは特に。近距離と反撃に弱いからな」



「……うん、何か分かった気がする。最初のファイヤーウォールの時点で気づくべきだった。ごめん。ありがとう、ラクス」


「いいさ、気づきがある事が大事だ。この少しの時間でドナーは強くなれたと思う。後一つ言うなら、魔力をためて出すまでのレスポンスを早くしろ。コンマ何秒が明暗を分けることもある」



「はい……やっぱりラクスは的確で分かりやすいわ。自己流だと小手先ばかりになっちゃうし」



前回のカリスや、今回のドナーとのやりとりを後ろで見ながらブツブツ言ってるリリーだった。

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