第67話「マッピング」
「リリーちゃんは水魔法が得意だったよね?どんな魔法が使える?」
「うーんとね、頭とか体をボンッて爆発できるよ!」
「へ、へー……」
(あーあれは近くで見るもんじゃないやつだ)
「あとは傷の……かいふく?魔法が使える。それからお父さんの二日酔いが治せる」
「!?リリー!本当か!?ディスペル使えるのか?」
「デスペルってなあに?」
「ディスペル。状態異常回復魔法だ……どの家庭も二日酔いの父親のおかげってことか……」
「状態異常?もしかして毒も?麻痺とか?」
「そうだな、どこまで効くのか分からないが、毒や麻痺は治る」
「リリーちゃん!すっごい万能じゃない!すごいわ!」
父さんが討伐後に必ず討伐隊を率いて飲むらしく、帰りは夜中らしい。毎回畑仕事出来ないほどに二日酔いが酷いみたいで、見かねたリリーが「お父さんの中の悪いの出てけー」と思いながら回復魔法を使っていたら、お父さんがビックリした顔で急に起きたので、リリーの方が逆にビックリしたらしい。
討伐後の朝は毎回「リリー……リリー……お父さん、死にそうだ……あぁ頭がズキズキする……頼む、頼むからあれを」とアンデッドのようにリリーに迫ってくるらしく、怖いと言っていた。
(この辺はシジミがないからなぁ。オルニチンか……キノコにも入ってたな。しめじとかこの世界あるのかな。今度キノコスープを教えるか。つーか飲み過ぎなきゃいいだけの話しなんだが……あー米食いたい)
迷宮があるという場所に来たが、でっかい壁があり、その前に建物があった。迷宮探索を管理する国から委託された領兵とのことで、30人くらいが常駐しているらしい。そちらへ向かう。
「すいません、迷宮調査にきたんですが……」
「調査?探索だろう?そっちの受付に行って、承諾書に名前と住所を書いてくれ」
「承諾書?」
「あぁ、1ヶ月以上戻らない場合は死亡とみなされて、書いた住所へ通知が行くようになってる」
「なるほど。分かりました」
4人のパーティー名を書く欄があった。「なんでも良いか?」と尋ねると「ラクスが決めてくれ」「お兄ちゃん決めていいよ」「何でもいい」と言われたので、『ホワイトフェザー』と書いた。続けてメンバーも書いていく。リリーも文字を書けるようになったみたいだ。
その時壁の向こうから焦っている声が聞こえた。
「……だ、やばい!急がないと!」
と引きずるような音をさせて近づいてくる。
「前をあけてくれ!けが人だ!誰か毒消しをもっていないかっ!?」
足に矢が刺さっている。どうやら毒矢をくらったようだ。千切れた布できつく縛っているようだが、既に布より上まで毒により変色していた。意識はあるようだが、かなり辛そうだ。
「リリー」
「はい」
リリーを連れて近づく。
「魔法で解毒できます、解毒してもいいですか?」
「なに!?必要なのは毒消しだっ、邪魔だどけ!!」
殴りかかって来る冒険者だったが、拳を受け止める。
「くっそ」
「落ち着いて。毒なら治ります。ただ先に矢を抜かないと……」
「本当だろうな」
「本当じゃなきゃこんなことしませんよ」
「……分かった、すまん」
毒に犯された冒険者の口元へそっと手を覆うと、冒険者は気絶した。
「おい!おいおい!何をした!?」
「気絶させました。矢を抜くためです」
矢と患部を水魔法で洗い流し、矢じりを風魔法で切り取る。そして一気に引き抜いた。
「リリー、ディスペルだ」
「デ、ディ、デスペル」
(……ま、デスペルでもいっか……イメージできてれば効果一緒だし)
一気に変色していた患部周辺が元に戻った。
「リリー、回復も」
「はーい。ん-ほいっと」
穴が収縮して閉じていく。
(おぉ……逆再生みたいでなんか気持ち悪い)
ラクスが再度口元を覆うと、冒険者が意識を取り戻した。
「えっ?なに?んん?足が痛くない!おぉ!足が痛くないぞ!どうしたんだ、俺!?」
「……はぁ、やれやれ。もう疲れたぜ。6階層のハナッから毒矢トラップ引っ掛かって、お前担いできたんだぞ。急に元気になりやがって」
「そりゃ分かってるよ、何度も悪いって謝ったじゃねーか、兄貴!はぁー死ぬかと思った」
弟の方が斥候で足場を確かめながらトラップの有無を確認していたらしいが、壁に手を置いた途端、毒矢が
出てきたそうで「そりゃないぜ~」と言いながら倒れこんだらしい。弟の運が悪い。壁にもトラップがあるってことが分かった。用心しよう。
「そこの人たちにお礼しろ!お前の命の恩人だ」
「え?そうなの?毒消し持ってたんだ!ありがとう!ホントに助かったよ!!」
「ちげーよ……いや、まぁいいか。説明が面倒くせぇ。坊主!お前とその嬢ちゃん、本当に助かった。俺はギード、冒険者やってる。こいつは弟のグエンだ。この恩は一生忘れねぇ。ありがとう、今後何かちゃんとお礼させてくれ」
「いえ、その言葉だけで良いですよ」
「そんなつれねぇこと言うなよ……お前と、そっちの嬢ちゃんの名前は?」
「俺はラクス、こっちはリリーです」
「ラクス……はて?どこかで聞いたような……まぁいいか。ラクス、リリーありがとうな」
兄弟冒険者と別れ、壁の中へ入っていく。建物も壁も以外と新しい。スタンピード対策として建てられたそうで、兵士の数も5人から30人と増やされたそうだ。ただ兵士さん曰く暇らしい。冒険者と話すことだけが暇つぶしなようで、早く配置転換を望む声が多いようだ。任期は1年らしい。頑張れ、兵士諸君。
壁を抜けると分厚い門が閉じられた。前方には大地の割れ目と言う感じの巨大な亀裂があり、穴の奥はぼんやり明るくなっているように見える。カリスに聞くと、どこの迷宮もどういう仕組みになっているか知らないが、ぼんやり明るいそうだ。
「よし!じゃあ迷宮はいるぞ」
「「「おー!」」」
何か気の抜ける返事を聞きつつ、隊列を組んで中へ入る。5階層まではトラップはないそうだが、念のため目も集中して歩く。怪しい場所は特にない。
(そうだ、1つ試したい強化があった。やってみるか……『脳内作図!』これでうまくいくと良いな。不思議なダンジョンみないなマッピングが理想……それなら千里眼的に……魔力感知をマッピングに載せるとどうなる?……)
「おぉ!敵が表示された!」
「え?何急に?」
「あぁごめんなさい。迷宮の進んだ位置を脳内で作図して、そこに魔力感知を載せたんだけど、うまくいってて」
「……ごめん、言ってる意味が良く分からない」
「迷宮の地図を頭の中で作ってるんだよ」
「へー、ふーん。そっか……頑張って……」
(ドナーには理解されていないな。普通迷宮って皆どうやって進むんだろう?)
「迷宮探索するときは地図ってどうするの?」
「あぁ、売ってあるわ。迷宮付近に商店があってね。ここの迷宮は5階層まではほとんど1本道らしいから地図はない。それより下層に行って、もし地図を描ければ権利化できるわね。権利は期間制限があって10年だけど。正直地図なんて作れないから、トラップに気を付けながら修行できればって思ってる」
「なるほど。じゃあ脳内地図は最下層まで続けてトラップの位置も記して書き出し、権利率を高くして売っちゃおう!」
「最下層まで行くつもりなの!?」
「当然」
ズンズン突き進むラクスの背中を見て、不安になったドナーだった。
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