第65話「家族会議」
「ラミアさん、いらっしゃい。どうぞ、中へ……ラクス!あなたがちゃんとエスコートしなさい」
「はいはい。分かってるよ母さん」
「ふふふっ、ありがとうございます」
中に入るとリリーもいた。
(お!机が超デカくなってる!奮発して新調したな……リリー、ツンツンしてんな)
「ラミア、こっちに」
「はい、ありがとうございます」
皆が椅子に座る。
「昨日は婚約式典ありがとう。こんな盛大にやってくれてとても嬉しいよ」
「当然だろう?貴族様と婚約なんてビックリしたけど、みみっちい式典なんて恰好がつかんって、町長が言い始めてな。町全体で盛り上げるんだって張り切ってよぅ!じじいのくせに。がはははは」
(父さん口わるぅ)
「ちょっと、あなたっ!ラミアさんがいるんだから、ちゃんと丁寧に喋りなさい!ねぇ?ごめんなさいね、ラミアさん、口が悪くてビックリするでしょう?」
「いえいえ、貴族同士の話しの方がドロドロして嫌味なことばかりですので、お父様のお言葉は真っ直ぐ素直なお気持ちを仰られてると感じますよ」
「あら、そう?じゃあ私も普段通りに話そうかしら?丁寧な言葉の練習してて疲れちゃったわ」
「ふふふ……はい、そうしてください。何もお気を使われなくて大丈夫ですよ」
(はぁ、ラミアが良い子でえがったえがった)
「ところでさ、話しは変わるんだけど、町の人たちが南の迷宮探索してるって聞いたんだけど本当?」
「あぁそうだな。あの一件以来、数人のパーティを組んで迷宮探索している。しかしこれが中々難儀でな」
(ん?敵が強いのか?)
「5階層あたりまでは問題なくいけるみたいなんだが、それより深い階層はトラップが多すぎて先へ進めないみたいなんだ。かなりの冒険者も挑戦したようだが6階層以下が攻略できない。果たしてどれだけ深いかすら分からない。極端に狭くなってるところもあるみたいで、大規模調査もできないみたいだ」
「そっか……今回俺がここに来たのはもちろん婚約報告を前提に来ているんだけど、迷宮の調査をしようと思っててね。以前のようなことがまた起こらないとも限らない」
「それは……そうか。いやしかし危険じゃないか?町の人間や冒険者の迷宮探索で、結構けが人もでている。それに婚約したばかりだろう?お前の力を信じない訳じゃないが、結婚もせず未亡人は流石に……」
「なんで死ぬ前提なんだよ……そのあたりはかなり慎重に進めるつもりだよ。トラップ対策も問題ない。それで、なんだけど。実は俺を含めて4人パーティで行くつもりなんだ。俺、カリス、ドナー。そして……リリー」
「!行く!リリーも行く!お兄ちゃんと一緒に冒険したい!!!」
「ダメよ!ラクス何言ってるの?やめてよ!大体あなたが行くことにも反対だわ!」
「でもまた次に同じことが起こったら?今度は前回と違うかもしれない。北や西の迷宮からは10,000近い魔物が出ている。世界中で起こったことなんだ。世界で数百万人が犠牲になったらしい」
「それは……でも、でもラクスがやらなきゃいけないことじゃないじゃない。国や領の兵士さんがするべき仕事でしょう?」
「誰がやるべきか、じゃないだ。俺だからやるんだよ、母さん。俺にしかできないんだ、きっと」
「そんな……そんなこと……あなたが強いのは知っているわ。昔からちょっと変わってるとは思っていたけど……まさか…こんな……」
(ちょっと変わってるってなんじゃい、俺は普通of普通だったはずだが……違うか)
「お母さまのご心配は本当に分かります。わたくしもラクス様の御身が一番大切です。ラクス様がいない世界では私の生きている価値はないと思っております。ですのでラクス様が出来ること、やりたいことを応援したり万全の体制を作ることがわたくしの役割だと感じております。今回の迷宮探索はラクス様がやるべきだと仰られました。パーティーもラクス様が、この方々なら大丈夫と決められたメンバーです。本来ならわたくしも一緒に行きたいですが、ラクス様の足手まといににはなりたくありません。わたくしはラクス様を信じて待つのみです」
「……ラクス……リリーを連れていく理由を教えて」
「そうだね。リリー、前回のスタンピード……魔物がいっぱい来た時、負けちゃうと思ったか?特に……そうだな、お兄ちゃんを掴んでいた魔物、あれは強かったか?」
「全然。魔物弱かったよ。お兄ちゃんを掴んでた魔物は、良く分かんない。頭をボンッってしたから強かったのかどうか分かんない。リリーはもっと強くなりたいんだ。お兄ちゃんみたいにみんなを守るために」
「父さん、母さん、リリーが気にも留めずに倒したのはAランクのオーガだ」
「ええっ!?オーガとは……あの、あのオーガなのですか?リリーさんが!?1人でですか?報告ではラクス様が倒された、と……」
「軍に報告したときにね、姿形からオーガで間違いないそうだ。あの日、魔力切れを起こしてね。死ぬ寸前だったんだけど、リリーが助けてくれたんだ。オーガを倒し、俺を死の淵から生還させてくれた。この件は……ラミア、もう少し秘密にしといてくれ。リリーのためだ」
「……あぁ……なるほど。そういう事でしたのね。分かりました。リリーさんがパーティーメンバーなのにも納得がいきます」
「そうだな、そうだ。リリーが1人で倒した。何が起こったか分からないほど早かった。一瞬だったんだ。「お兄ちゃんをいじめるなっ」て言った瞬間、頭が爆発した。あれはオーガという魔物だったのか」
「リリーはたぶん、俺と同等かそれ以上に強い。天才なんだ。攻撃魔法も、防御魔法も、身体強化魔法も使える。後は想像力次第なんだと思う。魔法は想像力が大事だからね。まぁその部分で俺の方が勝ってるから、今のところは俺の方が強いかも」
「……私は反対よ、誰が何と言おうと反対します。でもラクスとリリーが行きたいのなら……行くのなら絶対帰って来ないと許さないんだから」
そう言うと母さんは泣き始めた。ラミアがそっと横にいって肩を抱き、母さんを慰めてくれた。母さんの気持ちが痛いほど良く分かるようだった。母さんはラミアの手を握り、またしばらく泣いていた。
「いつもこの子達は私のいう事を聞いてくれないの。いつだって私は泣かされるわ」
「お母さま、それが子どもの成長というものです。親の思う通りにはいかないものですよ。大丈夫です。ラクス様もリリーさんも立派にお育ちになられています。家族を、町を守りたい一心なのです。ひいては領を、国を守ることと同義です。お父様とお母さまのご教育の賜物だと思います」
「教育だなんて……私たちは何も……どちらが大人なのか分からないわね。ラミアさん凄いわ。あたなならラクスを託せる」
(託せるって、託児所行きのガキんちょじゃないんだから!)
「いえ、わたくしもまだまだです。それでわたくしはお父様やお母さまに……その……ラクス様の以前の様子や、お好きな食べ物など聞けたらと思っておりまして……」
「あら!そうなの!?リリーもちっとも女の子っぽくなくて、お料理のこととか話さないし、普段の生活のことも話さないから嬉しいわ!ラクスったら変な子だったのよ!」
「ふふっ、そう言うのが聞きたいですわ。好きな方の事をいっぱい知りたいですので」
「リリーはそんなの興味ないもん」
「もう、母さん。変な子ってのやめてよ。普通……じゃなかったとは思うけど」
「あのね、あのね!聞いてラミアさん!!ラクスが生まれた時ね、この子ったらビックリした様子だったの!「この世界は何だ!?」みないに驚いていたわ。あんまり泣かない子でね、すごく心配した思い出があるわ……リオン…あ、リオンは夫の名前ね。リオンに聞いても「そんなもんなんじゃないか」なんて言うし、でも普通違うでしょう?」
「そうですわね。赤ん坊なんて一日中泣いているイメージしかないですわ。ラクス様は珍しい子だったんですね。生まれた時に驚いたなんて、なかなかない反応だと思います」
「そうでしょう?そう思うわよね、普通。でねでね………」
母さんのマシンガントークに花が咲く。家族では誰もついていけないのに、ラミアは問題なくついて行けるようだ。すごい。完全に2人の世界に入り、午前中ずっと話しをしていたようだった。
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