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第64話「本性」

ラクスはいつもの朝と同じように、家の前に出て筋トレをする。従者の1人が朝早く起きてきたラクスを見て驚いていたが、「気にしないで」と言い、黙々とトレーニングを開始した。



あの事件後、辺境伯様にしこたま怒られた後に「私に合った良い武器はないでしょうか?」と尋ねたところ

「お前は本当に反省しているのか……はぁ」と言われながらも、何か嬉しそうに武器を見繕ってくれていた。そういえばこの人武器マニアだった。


「これはどうだ?お前の体型にも合ったミスリルで出来たロングダガーだ。こいつはいいぞぉ……なんといっても……」


「なんと言っても」の後なんと言っていたか全く覚えていないが、良い武器らしい。確かに切れ味抜群な上に刃こぼれもせず、手になじみやすい。ミスリルと言っていたように、魔力を通しやすかった。「体型に合った」と言うように、刃渡り40cm程度だ。ダガーとしては長めではあるが扱いやすかった。これをもらってから1日たりとも素振りを怠ったことはない。



武器マニアに「ミスリル以外に素材はあるんですか?」と聞くと、「あぁ、あるぞ。だがなかなか手に入らん。アダマンタイト製なら数本持っているが、オリハルコンは王以外持っている者をしらん。あれは欲しい……オリハルコンというのはだな……」と話が長くなりそうなので「そうですか」と言って帰ってきた。「おい!まだ話しは終わっていないぞ!」と激おこだったが、無視してきた。武器マニアの取り扱いも上手くなってきたなと自負する。




素振りもだが、この筋トレを数年続けてきて随分と変わったことがある。もちろん筋肉がついてきたのもあるが、魔王拳の反動が以前より少なくなってきた。予想でしかないが、魔王拳使用時、魔力管を強制的に広げることができる。解除したときの魔力管の収縮があまりにも速いため、魔力管を支える筋肉が追い付けていなかったのではないかと思っている。答えは分からないが、いずれにしても魔王拳は最大8倍まで出力を上げられるようになった。水魔法の回復がもっと上手ければ10数倍にしても大丈夫だろうが……。


(ま、出来ないことを頑張っても仕方ない。出来ることを伸ばすことが大事だ)



自分に言い聞かせてトレーニングに励む。一通り終わらせ、町中をランニングしていると数人の顔見知りに合い「昨日は楽しかった」だの「花火教えて」だの「奥さん可愛いね」だの、ランニングどころではなくなったため、町の外壁を走ることにした。魔物も常に討伐されていたため、安全である。



朝日が昇ってきたので別荘へ帰る。従者や侍女たちが洗濯や朝食の準備に忙しそうに動いていた。


ラクスは風呂場へ行き、服を脱いで水魔法で体をきれいにした後、温風魔法で髪を乾かしながら部屋へ戻ろうとすると、虚ろな表情のラミアーナがラクスの部屋の前で立ち尽くしていた。

「ラァクスさまぁ……ガッコに行く時間ですわよぉ………わたくしもご一緒したく…ぞんじまふぅ……」


完全に寝ぼけている。

「はいはい、ラミア、自分の部屋に戻ろうね」

「いやでふぅ、わたくしはラクス様とぉいっしょにぃ」


「……はいはい、じゃあ俺のベッドで寝てな」

「ぁい」





椅子でラミアの様子を見ながらくつろいでいると、廊下から「姫様が!姫様が!!」と侍女たちが騒ぎ出す声が聞こえる。


「ラクス様!ラクス様!!ラミアーナ姫様がっ!部屋におられません!」


ラクスはドアを開け「ラミアならここにいるよー」と返答する。侍女長が「!?」と血相を変えて部屋に入ってきた。「おいおい、そんな急に……」


「ラクス様!もしやお手付をっ!?」

「おてつ……いやいや、朝トレーニングから帰ってきたらラミアが俺の部屋の前で寝ぼけてて、俺の部屋で寝たいって言うから寝かせてただけだよ」


「本当でしょうね!?噓偽りはございませんかっ!?」

「本当だって。誰か従者に聞けば良いよ。俺はさっき帰ってきたばっかりだから」


「分かりました。信じます。ラミアーナ様っ!ラミアーナ様!!ここは殿方のお部屋ですよっ!いくら寝ぼけてたからって、そんなことではダメですっ!」

「……ふぁああ……もう、うるさいなぁ……あぁラクス様の匂いがするー。いい匂いぃ!ラクス様のいい匂いぃ!ラクス様の匂いで起きれてわたしくは幸せ者……」



侍女長とラクスがジーっとラミアーナを見つめていた。



「きゃぁぁあああ!!!なんで!?なんでわたくしはラクス様の部屋にいるの!?なんでここで寝ているのっ?………きゃぁぁあああ!ラクス様、わたくしを見ないでくださいませ!」

「え?なんで?」


「女性には好きな男性から見られなくない部分もございます。申し訳ございませんがラクス様、リビングでお待ちください」

「あぁ、はぁ……」






30分ほど待っていただろうか。ラミアーナがお淑やかにリビングまで歩いてきた。

「お、おはようございます。ラクス様。せ、先日は婚約式典とても楽しかったですわね」

(先ほどのことはなかったことになっているのだろうか……)


「そうだね。もうすぐ朝食ができるみたいだよ。一緒に食べようか」

「はい!」


「あのぅ……先ほどの件で……」

「ラクス様!本日はどのようにいたしましょうか!?もう本日から迷宮を探索されるんですかっ?」


(あぁ、触れない方が良さそうだ)



「いや、今日は事前打ち合わせをする予定だよ。探索は明日からだね。ちょっとリリーにも声かけてみようと思ってるんだ。何かカリカリしてたし」

「そ、そうですわね。素敵なお兄様が知らない女性に取られたとお思いになられたのかもしれませんね…」


「そんなことはないよ。さ、ご飯食べよう。ラミアは今日どうする?」

「そうですわね、一度ラクス様のご両親とゆっくりお話ししたいですので、ご実家を訪ねてみようかと思っております」


「じゃあご飯食べたら一緒に行こうか」

「はい!」






朝ごはんを食べた後、少しして実家へ向かった。


「あ!父さーん!おはよー」

「おう!ラクスか。昨日はすごかったなぁ。町の皆から凄い息子だって褒められて父さん嬉しかったぞ」


「そっか。それは俺も嬉しいよ」

「おぉ!そこにいるのはラクスにはもったいないほど可愛いラミアーナ姫様じゃないか!いらっしゃい」


「ふふっ、お父様ったら朝から嬉しいお言葉、ありがとうございます」

「何がもったいないだよ、俺も頑張ってるよ」


「はは、そうだったな!おーい、母さん!ラクスとラミアーナ姫様が来たぞー」

「はーい!ちょっと待ってもらってー。少し片づけるわ」



嫁さんが来ると少しでも部屋をきれいにしておきたいんだろうなぁ。



「ラクス様のご実家も……レンガ?作りなんですね。素敵ですわ」

「あぁ、ラクスが何年か前に作ってくれたんだよ。確か8歳?くらい?」


「そんな前からラクス様は……やはりその才能には嫉妬してしまいますわ……」

「いつか皆できるようになるさ。別荘だってこの町人の魔法で作られたんだから」




そんな話しをしていると、「もう良いわよー」と聞こえてきた。

(さて、リリーの件、母さんがどう反応するか……リリーを連れて行った方が親とラミアとの関係も深まりそうだし。これ終わったらカリスとドナーにもパーティーメンバーの話ししないとな)


考えをめぐらしながら実家へ入っていくラクスだった。



お読み頂き、ありがとうございます。


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