第63話「婚約記念式典」
使用人に12日程度ここに留まること、また、数日後より迷宮調査に赴くことを伝えた。彼らは「承りました。では滞在中、不備のないよう努めさせていただきます」と言い、建物内へ散っていった。
マリーはラクス達のお世話をする気満々だったが、使用人の動きを見て(レベルが違う……)としばらく委縮していまう。ただ負けん気が強かったため、その技を盗んでやろうと使用人たちとコミュニケーションを図り、一部の仕事を任せられていた。頑張り屋さんだ。
案内された部屋は個室だった。良かった。2人部屋だったらどうしよう?と思っていたら、「2人部屋もございますが、どうされますか?」と聞かれ「いやいや、まだ結婚したわけじゃないので」とそのまま個室になった。300㎞程度の道を舗装しながら突き進んできたため、少し疲れていたラクスは、ふかふかのベッドに横になるとスッと寝てしまった。
隣の部屋ではラミアーナが、侍女たちと衣装替えに化粧直しに大忙しだった。
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『この……は飲ん……ダメだ………目……使…、すぐ……る。……菌が……に……り、…ける……化す』
『…を……つけろ……お……は…………ジ………に狙…れ……る』
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「……ハッ!何だ?今のは夢?良く分からない夢だった。なんか聞いたことある声……」
コンコン
「ラクス様、よろしいでしょうか?」
「あっ、はい。どうぞ」
従者が入ってきた。
「ラクス様、町の者より準備が出来たと連絡がございました」
「はい、分かりました。ラミアは準備できていますか?」
「はい、既にリビングルームでお待ちでございます」
「すぐに行きます」
リビングに行くと、ラミアーナがソファに座っていた。ラクスに気づいたのか、立ち上がって振り返る。
「うわぁ……可愛いぃ……ドレスとても似合ってる」
思わず口に出てしまうほど、ドレスに身を包んだラミアーナは可愛く可憐だった。
「ふふっ、光栄ですわ」
侍女長がすかさず口を挟む。
「あらラミアーナ様、ラクス様からどう思われるかしら?このドレスよりあっちのドレスが良いかしら?って仰ってらしたんだから、もう少しお喜びになってもよろしいのではないですか?」
「そうですよ。ラクス様に褒められて内心とても嬉しいでしょうに……」
別の侍女も参加する。
「ハわわ………や、やめっ。せっかくクールにっ……」
顔が真っ赤になり、両手で顔を隠している。
「もう少しお気持ちを前面に出してもよろしいかと存じますよ、ラミアーナ様」
(いや~、ほんとラミアに会えて良かったよ)
「じゃあ行こうか!」
「はい!」
部屋を出ると、もう夕方だった。少しずつ日が陰り出す頃。町の至る所にかがり火が付けられ、町を幻想的に見せている。町の中央に広場が出来ていて、そこに大きな木が組まれている。魔法使いの1人がゆっくりと近づき、その木へ炎をともす。
(ん?よく見るとドナーか?)
勢いよく火が大きくなり、みんなの顔が良く見えた。
「「「「ラクス準男爵様!ラミアーナ姫、ご婚約おめでとうございます」」」」
町中から響き渡る祝福の声に、ラクスもラミアーナもビックリした。女の子がラミアーナへ花束をわたし、彼女も嬉しそうに微笑んでいる。そこへ近づいてくる2つの影。父さんと母さんだ。2人はラクスの前に来ると嬉しそうな、ちょっと悲しそうな顔をして片膝をつき跪拝をした。
「えっ?ちょっと何して……」
「この度は……」
「やめて!やめてよ父さん、母さん。俺はそんなことをされたいために帰ってきたんじゃない!立ってちゃんと顔を見て話してよ」
「……ほら、やっぱりそうだろう?ラクスはそんなの気にしてないって」
父さんが立ち上がりながら母さんに話しかける。
「でも……ラミアーナ姫様がいらっしゃるから、そうした方が良いかと思って……」
「お母さま、わたくしは何も気にいたしませんわ。わたくしはラクス様のいつものご家族とお話しがしたいです。それとわたくしのことは「ラミア」とお呼びくださいませ」
「え……、流石に呼び捨てはねぇ……じゃあラミア様って呼ぼうかしら?」
「様は距離を感じてしまいます……」
「んー……じゃあラミアさん?」
「はい、それで結構ですよ」
「いや、それにしてもラクス!お前やったな、おい!可愛い子を見つけろとは言ったが、お前こりゃ可愛すぎるだろう!」
「父さん……やめて。声がデカ過ぎるよ……」
「まぁ、お父様ったら」
「「「「「ハハハハハ!!!」」」」」
町中の笑い者だ。
「あーもぅ!お兄ちゃん!帰ってきたんなら、すぐお家に帰ってきてよね!リリー家で待ってたんだけど!」
(あ、やべぇ、リリー怒ってんな……)
「あー、父さん、母さん、リリー、改めて。こちらが俺の婚約者、ラミアーナだ」
「ラミアーナ・フォン・バルクロイドです。この度ラクス様と婚約させていただき、とても嬉しく思います。ご家族とも仲良くしていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします」
可憐にカーテシー(貴族女性の挨拶)をする。
「「ははぁ……」」
「リリー、あなたも頭下げなさい!」
「ふん、だ。あっ、やっ!お母さん……んもうっ」
無理矢理頭を下げられ、斜めに頭を下げるリリー。
みんなに飲み物が配られていく。ラクスにもマリーから配膳され「乾杯の挨拶お願いしますね」と伝えられた。
(これだよこれ、これが俺の家族だよ。いやー面白いわ。よし!)
「みなさん!今日は私たちのために、たくさんお集まりいただきありがとうございます!そして美味しそうな料理もこんなにいっぱい!2人とも、まだ若輩者ではありますが、村や町のため、領のため、国のために精一杯働いていきたいと思います!ほんとにありがとう!」
至る所から「おぉ!おめでとう!」「規模がでかい挨拶だ!」「頼もしいぞぉ」「羨ましいぞぉ」と言う声があがる。
「それでは!私自身のお祝いに、盛大に「花火」というものを打ち上げて乾杯をしたいと思います!結構大きな音が出ますので、驚かないでくださいねっ!!!」
(イメージを集中。花火の詳細は知らない。でも魔法で出来るはずだ。打ち上げて上空150mくらいに座標を設定。ここで弾けて中の色付き魔力が爆発するように……小さいのからいくか。大きいのは高さ座標を別設定で……)
「なんだなんだ?ハナビとか言ったか?なんだ?ハナビって?」
「知らない。何かビックリするものらしいけど……」
「いきます!ハッ!ハッ!!」
ヒューーーーーーーーーーーードンッ!!!……ドンッ!!!
「うわっ、ビックリしたぁ!」
「すごーーい!きれーーーー!!!」
「ワシを殺す気かぁ!」
「体の中まで振動が届くわぁ!」
「ラクス様、素敵ぃ!」
(……ん?ラミアってお淑やかなだけじゃないのか。そっちの方が好きだけどっ!)
「どんどんいきますよー!」
ヒューーヒューヒューヒューーーーーーズドーン!…バラバラバラ…ズドーン!…バラバ、ズドーン!…バラバラバラ……
「わぁー」「あーー」「きれーーー」「きゃー!ラクス様ーーー!好きーーー!!」
(結構はっちゃけるのな!俺も好きーーー!!!)
10分程度花火を打ち続けただろうか。
(そろそろ仕上げだ、派手なのいってみるか!)
「うぬぬぬぬ…………何尺玉か知らんが、これは超デカいぞぉ!いけぇ!!!おまけでも1つ!」
ずどーん!!!!!ずどーん!!!!!!!!!
「よっしゃぁああ!かんぱーーーーーい!!!」
「「「「「かんぱーーーーーい!!!」」」」」
その日上がった花火は伝説となった。花火のやり方を習いたい人が続出し、更にハロルドタウンへ来る人が増えた。毎年この日は「ラクスの婚約花火記念日」として制定され、受け継がれていくものとなる。
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