第59話「爵位」
また2日間軟禁された。放置プレイは慣れたものだが、もう少しかまってくれても良いと思う。
「はぁ……本も全部読んだ。暇だ。鳥さん鳥さん、私はあなたのような自由な鳥になりたい。この籠から私を連れだして!」
「私が連れ出してあげようか」
「うわっ!ビックリしたー、急に入ってこないで下さいよ!クリストフ様!」
「なんだか最近、私に対しての態度が雑じゃないかい?仮にも君の義理父だよ」
「お義父様、ノックもなしだと驚くでありんす」
「あり?んす?……はぁ…どれだけ君のために頑張ったかも知らないでさぁ」
「存じ上げておりんす、お義父様。その節は私とラミアと絆を引き裂かないよう動いていただき……恐悦至極に存じます」
ラクスは華麗にお辞儀をする。
「何か変な本でも読んだの?ちょっと君変だよ」
確かに本は読んだ。昨日そんな言葉を使う物語を読んだ覚えがある。
「それで本日は、どのようなご用件でございましょうか、お義父様」
「お義父様はもういいよ。もうホント疲れるから」
「はい、クリストフ様」
「ん。それにしても王太子様から直々の側近任命依願とは……君は本当に……」
「断ってくれました?」
「簡単に断れるわけないだろう?」
「陛下も諦めたのに、殿下の依頼だと断れないんですか?」
(そりゃないぜ)
「国王の件にしても強制的にできないこともなかったんだよ。国王は絶対だからね。でも規律を優先してくれた。バルクロイド領と敵対したくないからだ。王太子様の方は「依願」だ。お願いされて「嫌です」って断ったらバルクロイド領は王家と敵対するのか?と逆にこっちが悪者になってしまう」
(ふーん、貴族ってのはめんどくさい生き物だな)
「なんだ?めんどくさいって思ってないかい?」
「そんな訳ないですぅ」
「まぁいい。これは落としどころの話しだ。ラクスはバルクロイド領で教育長相談役で研究員だ。給金も与えられている。王太子様側としては常にラクスがそばにいてくれる必要はないが、とにかく身体強化のコツを教えてほしい。給金も出すそうだ。だから落としどころとしては2か月に1度、1週間ほど王都に行って、王太子の教育係をする。給金は王太子様の指導が終わる都度、支払われる。ちなみに1週間で白金貨1枚だそうだ。どうかしてるよ」
「白金貨?1億!?2か月にたった1週間で!?」
「そうだね。1億ルクだ。それほどの価値を君に見出している証拠だよ。毎月と言われたが、さすがにそれは断った。3か月に1回と提案したが断られた。中をとって2か月に1回。1週間」
「まぁ、もう決められることには慣れましたので、それでいいです」
「まだあるよ」
「まだあるんですかぁ…」
「うん。君は準男爵の爵位を与えられる。王妃様を救った褒章だ。まぁ爵位としては一番下の下だから、貴族の規則とかそういうのはあまり気にしないで良い。授与式もないしね。肩書が増えるだけだ。王太子教育係、兼バルクロイド領教育長相談役、兼バルクロイド領都学校研究員、兼準男爵の、将来的にラクス・フォン・バルクロイド…子爵、あたりかな」
「あぁ、はい。分かりましたー」
「なんだよ、投げやりな返答だな」
「なんとなくこれだけじゃ終わらない気がしていたもので。でも爵位はあまりいただきたくありませんでしたね」
「なぜ?」
「目立つからです。王妃様の件はもしかすると……誰かの謀の可能性もあります」
「なにっ!?」
「分かりません、可能性の話しです。ただタイミング的にスタンピードが発生した時期と重なるという話しです。王家がどのように考えれられているか分かりませんが。王妃様を助けた者が爵位を授かったとなると特定されやすくなっちゃいますから」
「王妃様が病に伏せっていると聞いていたが、確かにそのタイミングで他国が……いやあのタイミングで他国にこのようなことをする余力があっただろうか……もしや……」
「クリストフ様?」
「あぁいや、こっちの話だ。まぁ目立つのは仕方ないよ。ラクスだもの」
「えぇ?人間だものみたいに言わないでくださいよ」
「なにそれ?」
「あぁ、いえこちらの話です。極力目立ちたくないですよ」
「もう無理だね。国内の貴族にはお目通りした。国王と戦って互角。王妃様を救った準男爵。今後は王家に入り込み、王太子の教育係をする。こんな目立つことはない」
「あぁもぅ。なんでこうなった!」
「君自身が行ってきたことだろう」
(そっか……楽しく、時には必死に生きてきただけなんだけどなぁ)
「明日出立するよ。バルクロイド領へ帰る。君はどうする?飛んで帰る?」
「いえ、ラミアと一緒に帰ろうかと。約束しておりましたので」
「あぁ、はいはい。聞いたかもしれないけど結婚までは手をつけたらダメだよ。まぁバレなければ問題ないけど。夜は2人きりにしてあげようか?」
「いえいえ、やめてください。仮にもラミアの父上でしょう?」
「本当の父親だよ」
「あ、いえ。そうではなくて、実の娘さんのことが心配じゃないんですか?」
「あぁ心配だとも。できるだけ早くラクスに嫁いでもらいたい。君は人気がありすぎるから婚約破棄になってしまっては娘が悲しむじゃないか。第二婦人・第三婦人を娶る時は、ラミアに男児が生まれてからにしてくれ」
「そんな……私は1人しか愛せませんよ」
「それは世の中が許してくれないだろうけどな」
(何という社会。時代が違うとこうも考えが違うのか)
翌日、王都を出発した。馬車で2週間の旅だ。長い。しかしラミアが一緒だと苦にならなかった。メンコイ子が近くにいるだけでラクスの頭の中はお花畑だった。
途中、当然のように盗賊や魔物が襲ってくるのだが、ラクスがニコニコしながら全てを封殺。別の場所で躓いて足を痛めた馬を瞬時に回復。通常2週間かかると言うのは、こういったイベント、いやトラブルを全て加味した上での期間だ。
バルクロイド領都が見えたのは10日目という驚異の速さで帰還した。
到着すると、クリストフ様が「ラクス、来てくれ」と言うのでバルクロイド城内へ入る。領主様への報告にラクスもいた方が良いだろうという判断のようだ。
「ただいま戻りました」
「早かったな」
「ラクスが盗賊やら魔物やら一瞬で片づけるので、止まることなく進めました」
「そうか。で、報告を聞こう」
「はい…ではまず……」
クリストフ様は時系列で全てを報告した。
・バルクロイド領野球部の優勝
・フランクド国王との面会
・国王との模擬戦
・式典(会食)での国内貴族へのラクスの紹介
・王妃様の病気及びラクスが治療したこと
・王太子様の側近依願とその調整について
話しが超うまい。領主様は時折眉毛をぴくぴくさせながら聞き入っていた。
「ラミアーナと婚約させたのは好手だったな。だが王との模擬戦は……悪手だな」
「はい、国王直々のお言葉でして。宰相殿も頭を抱えておりました」
「まぁ事が起こった後で何を言っても仕方ない。今後どう進めるかだ。王太子の件は問題ない。いずれこうなることは分かっていた。私も竜王化が……いや、私の場合は鬼人化だが、出来てしまったのだから。追われる者は追う者よりも苦しいからな。藁にも縋る思いだろう」
(名前なんてなんでも良いよね。竜王化って言葉は流石にダメだろうけど)
「王妃についてはまだ情報が集まっておらんが、確かに疑問は残る。タイミングが良すぎるしな。今後注視だな」
「ラクス……準男爵よ」
「はい」
「1週間後に婚約披露式典を行う。式典が終わり次第、20日間の休暇を与える」
「え?」
「家族に報告してこい」
クリストフ様もニッコリ笑っている。
「……はい、はい!ありがとうございます!」
超優秀な上司達に恵まれて、ラクスは感動していた。
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