第55話「式典」
こっちの世界に来て初めて見る料理の数々が目に映る。
(おおっ!ザ・立食パーティー!!おほほー!うまほー)
案内された部屋には次々と人が入ってくる。皆(何だ?この子どもは?)と眉をひそめこっちを見てくる。(何だこんにゃろう?なめんな)とガンを飛ばしてみる。(変な子どもだ)と思われるのか、その後俺の存在は空気だった。国王様に紹介されるまで。
国王も会場入りし、挨拶が始まる
「諸君、良く集まってくれた。昨年の各地域で起こったスタンピードは一旦終息したようだ。諸君も周知の通り、世界中で一斉に起こった災害だが、我が国は幸いにして甚大な被害は出なかった。諸君らが奮闘してくれたおかげだ!」
パチパチパチパチ!!!
(甚大な被害が無かっただと?村は壊滅したし、ハロルドタウンもリリーがいなければ相当な被害だったはずだ……国からしたら大事の前の小事ということか。村など些細なことだと……)
「近隣諸国をみると、各国数十万人規模での被害が出ているようだ。おそらく数百万という命が今回の災害で亡くなったと思われる。今日はその命の追悼と諸君らの慰労を兼ねた式典である」
(あ、そういう事か。フランクド王国は5万人程度の被害だったと聞いている。少ない方ではあったと言う事か。しかも世界中の命への追悼か……まぁ慰労も兼ねてだけど。……え?なんでこの式典のタイミングで俺王都に来たの?……野球試合の観戦ってもしかして……)
ラクスが思い返すと、王都に行かせようとする様々動きがあったような気がする。
「王都で素晴らしい演劇があるとのことですが、2か月後のこの日、一緒にラクス殿はいかれませんか?」
「王都にすごく美味しいレストランが開店したらしいわ、ラクス様2か月後のこの日に連れて行って!」
「ラクス殿、ワシは肺の病にかかっておりまして、王都にその薬が入荷されるらしく、2か月後のこの日に買ってきてくれんか?」
「次の試合勝ったら優勝だから、是非観戦しにきてほしい。2か月後のこの日だ」
(あれはこういう事だったのか!?なんで気づかなかったんだ……くそぅ、俺は馬鹿か)
「そして、我が国の今後を左右する、重要な人材を諸君らに紹介したい。ラクス!前へ」
(え!?ええええええええええええ!?聞いてない!とかっても無駄なんだろうなぁ……こういう事だったのか……くそぅ、みんなグルだったのか)
「はぁ…………はいっ!」
会場がざわつく。どこにいるんだ?と覗き込むような人も多数。近くにいた貴族は、ラクスが返事したのを聞いて(エサを待たせれた時の犬のようなやつか?こんなやつが?)と驚いた顔をしていた。
ラクスが国王のもとに着く。
「この者の名はラクスという。先ほども申した通り、この国の今後を左右する少年だ。一つ先に事実を言おう。先ほどこの少年と戦ってみた」
「「「おおっ!」」」
(ん?なんだこの反応?想像以上に皆ビックリしてる…?)
「ワシとこのラクス少年だが、力の差はほぼないと思う」
「「「何ですと!?王とその少年が!?」」」
驚く内容も同じようで、同じ言葉をぴったり合わせて驚いている。
(力の差がほぼない?ご冗談を……まぁそういう事にしとかないといけないのかな)
「ラクスは現在バルクロイド卿の下、領都学校の教育長相談役として教育改革を行っている。バルクロイド領では徐々に成果が出始めている。先のスタンピードでバルクロイド領の被害が最も少なかったのもしかり。本日のフランクド王国野球大会においてバルクロイド野球部が優勝したのもしかり。おそらく近い将来、フランクド王国の教育指針はラクスの……何と言ったか?」
「カリキュラムマネジメント」
「カリキュラムマネジメントを取り入れることになるだろう。またスタンピードが起こらないとも限らん。詳細は追って伝える」
「「「おぉ!……」」」
カリキュラムマネジメントという聞きなれない意味も知らない言葉に、皆知ったかぶって驚いている様子だ。恥をかきたくないらしい。
「それでは諸君!しっかり英気を養ってほしい!乾杯!!」
「「「乾杯!!!」」」
その後はクリストフ様が会場に来ていた人、ほぼ全員の相手をさせられていた。ラクスはと言うと、ラミアーナと一緒に食事を楽しんだ。ラクスの方には誰も来なかった。数名の屈強な王国兵士がラクスへ近づく貴族を押し返していたようだ。
(こんな可愛い子と一緒に食事だなんて、サイコーだな↑↑お義父さま、頑張ってーー。あ、まだ結婚してなかった(*‘ω‘ *))
「ラミア!ラミア!このお肉の料理、美味しいよ!」
「まぁ!ラクス様、私もそれ目を付けてましたの!でも服が……服が苦しくてこれ以上入りません……」
「そうか↓↓……そうだ!じゃあ少し取り置きしてもらおうよ!俺が後で食べたいって言うから大丈夫!これ美味しいから絶対ラミアに食べてほしい」
「ハァウッ♡♡♡私のためにそんなに……ラクス様ぁ♡」
もう最高だった。初対面で丸一日もたたず、こんなにもイチャイチャできるとは思ってもなかった。国王が来るまでは。
「イチャイチャしているところすまんが、ラクス、ちょっと来い」
「あぁ……まだラミアといたい……」
「ラクス様ぁ……」
「今生の別れでもあるまいに。ちなみに貴族婦女に対し、婚約したからと言って結婚までは手を出しちゃいかんぞ。結婚が約束されたも同然だが、重大な規則違反となる。最悪お家取り潰しだ」
「手を出すだなんてそんなことしませんよ」
(やべぇ、今日にでもと思ってた)
ラクスは連れ出され、隣の小さな部屋に入った。何か不思議な感じだ。部屋のある境から魔力を阻害されると言うかなんというか……
「この部屋の中で喋っても声は外へ漏れん。外……と言うか、そこの兵がおる手前からだ。兵にも声は届かん。特殊な魔法が施されている部屋だ」
(パーティー会場の横ということは、何かしら秘密の会談に使われる部屋なのかな)
「ラクスよ、先ほど話したがヘラクレスという人物を知っているな?」
「はい、存じております」
「王家にしか知らされていない事実があるのだが、ヘラクレスの秘密をラクスは知っているか?」
「それは……どういった……」
「出自の話だ。当然生まれはバルクロイド領の僻地という記録だが……」
「ヘラクレスが『転生者』ということでしょうか」
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