第14話「試験と認知」
翌朝、村の討伐隊が出発したもののすぐに戻ってきた。
ボアは森に入ってすぐの草むらで息絶えており、頭蓋が巨岩や大きなハンマーのような凶器で砕かれていたという。
(瀕死の状態だったんだ……それでも森の入り口まで行ってたなんて、生命力が半端ない)
討伐隊はすぐに村長に報告し、そのまま帰宅した。畑にいた僕は村長のもとへ呼び出され、詳細を問い詰められた。
「ラクス、お前は何を見たんじゃ? 何をした?」
僕はある程度正直に話した。
・父さんと一緒に森で狩りがしたくて、魔法の練習を続けていたこと
・ボアが不意に森から現れ、柵を壊して突進してきたため、やむなく練習中の魔法を放ったこと
・それが当たったかどうかは分からない。転がったボアがどこかで頭をぶつけたのかもしれない
・ボアはヨロヨロしながらも逃げて行ったこと
村長をはじめ数人の老人は口々に言った。
「攻撃魔法というのは、本来は軍人か冒険者しか扱えんはずでは?」
王国はには学校があるらしく、そこでは魔法の呪文を学べるらしい。卒業後は軍人か冒険者になる者が多いという。
(なにそれ、行ってみたい…)
「冒険者から習ったのか?」
と問われたが、首を横に振るしかなかった。冒険者なんて、見たこともない。村長は僕の魔法を確かめたいと言い、僕には拒否する権利がなかった。
村のはずれ、大きな木の前に、村長や老人、父さんを含む討伐隊の数人が集まった。
「さあ、ボアを退けた時の魔法を見せてくれんか」
僕は木に向かいながら考えた。
(反動が厄介だ…そうだ!肘と背中からも出せば反動が分散できるんじゃ…)
思いつくままに肘と背中からも軽く風魔法を試す。
──ブワッ!!
軽くだしたつもりでも、真後ろに立っていた老人が杖を握りしめ、必死に耐えていた。
「何をしとるんじゃ!!」
と激怒された。
「あはは…すいません、ちょっと制御が甘くて」
周囲は皆、危険を察して斜め後ろに下がり始めた。
(よし、手から5、肘から2、背中から1くらいの配分で……)
木を狙い、僕は右手を突き出す。
「じゃあ、いきます!」
(ボアのときの半分の魔力量で……いけ!!空気砲!!!)
「ハッ!」
──ドンッ!! ドガッ!!!!
空気砲は木の皮をえぐり、幹の3分の1ほどを抉り取った。その衝撃にも、反動はほとんど感じなかった。
「おおぉ!! 成功だ!!」
僕は声を震わせながらガッツポーズをする。周囲は沈黙に包まれ、全員が口をぽかんと開けていた。
やがて、村長が低く呟いた。
「こりゃあ…もしかすると……」
次の言葉を待つ間、僕の胸は高鳴っていた。