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国が魔王に脅かされてる?そんなの+50円で豚汁に変えてやりますよ

作者: 御厨 火花

オプチャでもらったタイトルから作りました。ネタです

「よし、ピギーネ、今、国が魔王に脅かされてるからちょっくら魔王の嫁になってくんね?」


「お父様!?気でも狂ったのですか!?」


 これが、昨日の夜の出来事、そして今日の朝、つまり今、憂鬱な気持ちで起きた私はなんの前触れもなく前世の記憶を取り戻していた。


 私の名前はミソシール・クイタイネー・ピギーネ、クイタイネー伯爵家長女である。そんな私は今年で20歳、結婚適齢期が15歳のこの世界では完全な行き遅れだ。


 だから私に魔王の嫁の白羽の矢が当たってしまったのだろう。


「お父様もお父様ですわ!\\\٩(๑`^´๑)۶////」


 部屋の中でお父様の写真に向かってハゲだのゴマスリ野郎だの散々なことを言いまくった次の日にこれだ。


「思い……だした……私そいえば日本人だったわ」


 前世の私の名前は椀田わんだ みそね、31歳、豚汁が大好きなお一人様OLだった。それなのに今世では自由気ままにお一人様生活だひゃっほいなんてできる身分ではなく、貴族のお嬢様、なのにこの歳まで結婚してない、私、魂に結婚できない呪いでもかけられてんのかな?


 そして、私が前世の記憶を取り戻したことによって、今までのピギーネの中になかった感情が芽生え始めた。それは、そう。


「豚汁!!豚汁がッ!!飲みたいっっっ!!」


 私は前世、豚汁大好きウェイウェイな人だったのだ、食堂に行っても豚汁、店に行ってもサイドメニューの豚汁を頼み、得意料理は豚汁、豚汁大好き♡


 あ、そうだ、あとであのクソバカハゲ親父に豚汁飲めないな頼んでみよ、魔王のところへ行く前に飲みたいわ、どうせ死ぬだろうし(笑)少しくらいならわがまま言ってもバチ当たんないだろうしね、と私は思いながら着替えを済ませる。もうすぐ朝食の時間だ。早く行こっと。


 朝食の席に着くと、いつも通りクソ親父と我関せずといった感じの母とともに朝食を取る。ここくらいで一回頼んでみるか、と思いながら私は「お父様?少しお願いが……」と令嬢モードで聞く。


 だが、その声を掻き消すように大袈裟な声でクソ親父が、「ピギーネ、もう準備はできたのか?」と聞いてくる。はい?なんのことですか?


 私がそう思っているとクソ親父が、「ピギーネ、今日から会えなくなってしまうが、お父様とお母様はピギーネのことを愛していたと、覚えておいてくれ」と言ってくる。こいつ最後はいい感じで終わらそうとしてくるなよ、腹立つな。


 ていうか待てよ…….?今日限り?


「え、お父様?私が旅立つのって今日なのですか?」


「おおそうだぞ、迎えの馬車ももう来てるぞ」


「え!?早くないですか!?準備とか何もしてませんわよ!?」


 私が抗議すると、クソ親父が「何を言っておる」と言って私の後ろを指差した。すると、そこにあったのは大量の荷物、それも全部私の私物だ。


 荷物は今も次々と運ばれてくる。あのメイドたち仕事早すぎだろ……、と思っていると、近くにメイドが一人来ていた。


 私は令嬢モードのまま、「どうしましたの?」と聞く。メイドはメガネをキラーンと光らせ、「お嬢様!失礼します!」と言って、私の体を袋の中にスポーンと詰め込んだ。


「え!?なんで!?え!?」


 私が目を白黒させていると、クソ親父と母の声が聞こえてくる。


「結婚適齢期になっても結婚できなかったお前にもいい夫ができてよかったなー」

「まさか魔王とは想像もしませんでしたけれどね」


 クソ親父とクソババアがふふふ……と、とても苛つくほどに優雅に笑いながら話している。まるで売りに出される家畜、いや豚のように私は馬車にポーンと投げ捨てられた。


 これが本当に伯爵令嬢に対する扱い方ですか?


 私は状況を理解できないまま馬車に乗って魔王城へと向かっていった。


 *****


「貴様が俺の嫁か?あー、名をなんと申す?言ってみろ」


 馬車に揺られ、はや5時間、私は魔王城に辿り着き、夫となる相手である魔王に謁見していた。ちなみに使用人たちはみんな魔王城に着いた瞬間、私と荷物を下ろしてスタコラサッサと帰っていきやがりました。ふざけんな


 それで急に初対面の魔王に謁見することになったのだが……なんだろう、好みじゃない、うん、私の好みは低身長ぽっちゃりなのに、目の前にいるのは高身長スタイリッシュイケメンだ。なんだこの私の好みから全部外れてるのは?一般的にはイケメンかもしれんが私から見たらブサイクだ。


「私はクイタイネー伯爵の娘、ミソシール・クイタイネー・ピギーネと申します。ぜひピギーネとお呼びください」


 よし、初対面の挨拶は令嬢モードでなんとか乗り切ったぞ、私がそう思い、ふふん、と鼻を鳴らしていると、魔王が腹を抱えて笑い出しやがりました。どこに笑う要素あった?


「ははっ、ひひ、あははは、君、名前ミソシール・クイタイネー・ピギーネって言うの?ミソシールって、かずランド(この世界の日本)の味噌汁みたいだな、味噌汁食いたいねーって……はは、一家揃って笑かしに来てる?」


 やっぱそう思うよね?私も思った、けど私さ、そもそも前世の名前も味噌汁関連だったからさ、あんまし違和感ないかもしれん、うそ、結構違和感ある。


 ってかなんで和ってかいてかずって読むの?ワランドでよくない?


「こほん、まあ、いいだろう、君を嫁として迎え入れよう」

「いえ、私あなたとなんか結婚したくありません、タイプじゃないですし」


「へ?」


「いや私の好みは低身長ぽっちゃり系男子なんですよ、その逆をいきすぎてるあなたはなんか違うなーって思っちゃいまして……」

「思っちゃいまして!?え!?君ここまで結婚しに来たんだよね!?自分から決めてここに来たんだよね!?」


「いえ、クソ親父とクソババアに勝手に決められました、それに、こんな場所、好き好んで来る物好きなんてそうそういませんよ?ちなみに私は物好きではないです、早く帰りたいです」


「……とりあえず一回落ち着いて考えてみてくれ、僕と結婚することのメリットについて」


 魔王はそう言うと、スラスラと自分のことについた話し始めた。ここまで自分に酔いしれてる人ってそうそういないと思うしイタイなぁー、と思いながら私は聞き流した。


「はぁ……はぁ……どうだ……これでわかっただろ?俺の嫁になれば権力が……」

「権力なんていります?ぶっちゃけ私は豚汁さえ食べられればどうでもいいんですけど……」


 私が言い切ると、魔王は埒が開かないと思ったのか、「と……とりあえずご飯にしよう」と言って半ばげっそりしていた。そうだな、お腹も空いてきたし……私はそう思い、魔王とご飯を食べることになった。


 運ばれてきた料理は誰も見たことのないくらいの高級料理ばかりだった。だが、豚汁だけがない。


「あの……少しいいかしら?」


 近くを歩いていた執事に私は令嬢モードで話しかける。


「なぜ、豚汁がないのかしら?」

「ーーー!!」


 執事は雷に打たれたかのような衝撃的な表情をしたあと、「私共がお気に召さないものをお出しして申し訳ございませんでした、ですが……その……とんじる?というのは聞いたことのない食べものでして、差し支えなければ教えていただいてもよろしいでしょうか?」と、だらだら汗をかきながら言ってくる。


 いや私暴君じゃないよ?ただ豚汁が食べたいだけの一般人だよ?


 ……でも、豚汁の存在を知らないのか……はぁ……これじゃあこの執事に豚汁について説明しても作ってくれないだろうな……そもそもこの世界に豚汁ってあるのか……?


「はぁ……前の世界だったらたった+50円で豚汁買えたのにな……」


【能力:+50円を獲得しました】


 私は頭の中の機械音を聞いて察した、あ、これなんかの能力ゲットしたわ、と。こんなテンプレートみたいに能力って手に入れられるのかよ、もっとピンチな時に能力が覚醒するんじゃないんだ、てか、+50円ってなに?


 そう思いながら私は一つの結論に辿り着いた。それは、


「あ、これ+50円でつけられるものならなんでも出せる能力じゃない!?」


 私は嬉しくなって、つい大声を出してしまった、魔王たちからは奇々怪界な目を向けられる。だがそんなこと知ったことじゃない!


「すいません〜、豚汁出してくれません?+50円で」


 私がいうと、部屋中に「あいよ〜」というおっちゃんの声が鳴り響いた。魔王は「何事だ!?敵襲か!?」と驚いているが敵襲じゃないです、私が注文しただけです。


 そう思いながら私が食卓に目を向けると、そこには高級料理……ではなく高級料理があった場所に豚汁が配置されていた。どうやらこの能力の代償は他の物と入れ替えることのようだ、なんですか?ここは天国ですか?


「ひゃっほーい!よっしゃ!食うべ食うべ」


 私ははしゃぎながら豚汁を手に取る、美味しい!美味しいよ!私は目から涙が出ていた。感動……


「あ……あの……大丈夫ですか?」


 執事が心配そうにそう言ってくるが、うるさい、私は今豚汁を飲んでいるのだ。


「邪魔するなボケェーー!!!」


 私がそう言って箸を執事の方に向けると、執事は「ギャァァァァ!!」と叫びながら光り、光が薄れると、そこにあったのは超巨大豚汁だった。


「うそ……♡美味しそう……♡」


 この能力って生き物にも使えるのか、ほーん、ふーん、へぇー、あ、いいこと考えた。私は思いながら驚いて腰を抜かしている魔王を見つめる。


「私、あなたが豚汁になってくれれば愛せるような気がするの、だから♡大人しく豚汁になれぇぇぇ!!」

「ギャァァァァァァァァァァァァァァァァ」


 魔王は豚汁になった⭐︎


「oh、perfect TONJIRU♡トゥンク」


 私は言いながら魔王に抱きつく、熱々の豚汁はやっぱりいいですなぁ、と思いながら私は魔王(巨大豚汁)に恋をした。


 だが、その恋も、すぐに終わってしまう。


「あ……」


 体重をかけてしまったせいで、魔王(巨大豚汁)を倒してしまったのだ。


「私の豚汁がぁぁぁぁ!!」


「はは……僕は……嫁を手に入れるために魔王になったのに……こんな最後って……ないよ……」


「豚汁ぅぅぅぅ!!」


 最後まで豚汁呼びだったが、かくして、私は魔王討伐の栄誉を得た。ていうか嫁を手に入れるために魔王になったとか最後にほざいてたけどこいつそんなにモテないんか。


 そう思ったが、私は重大なことに気づいた。それは、


「魔王倒したんならもう帰ってよくね?」


 そうだそうだ、そうしよう!私は思いながら帰ろうとする、だがその前に、


「一応魔王軍全員豚汁に変えとくか!」


 この日から、魔王軍改め豚汁軍へと変貌を遂げたそうな……


 こうして、私、ピギーネは祖国に帰還した。国王に「魔王倒したよ」と言ったら私は国の英雄になり、一つ褒美を約束されたけど、私の欲しいものはすでに手に入っている。


 こうして、私は幸せな豚汁ライフを過ごしましたとさ、めでたしめでたし

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― 新着の感想 ―
豚汁ライフ…このままだと全て豚汁になってしまいそうですね。 読んでいたら、だんだん豚汁飲みたくなってしまいました。
転生豚汁のヒロインの脳が豚汁まみれな事に脱帽です
2025/07/06 10:01 甘口激辛カレーうどん
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