壁
後ろにいる車掌達に話しかけようと振り返ると、間に警官が立ちはだかった。
「一般の方は危険ですので車両に戻ってください」
すごい迫力で私を見てくる警官。
それを無視して車掌達に問いかけた。
「前の電車はあと何分でここに来ますか?」
「...どのくらいの速さを出しているか分かりませんが、10分前後かと」
思ったよりも時間がない。
こうしている間にも電車は迫ってきている。
「他の電車は?」
「各駅で停車してます!」
他の電車には連絡してあるから良しとして...
次にどう動くか考えていると腕を掴まれた。
「痛いんですが?」
「公務執行妨害になるぞ?」
「今はそれどころじゃないでしょ」
警官と睨み合う。
迫力はあるが、比にならない物と戦ってきた経験がある。
こんなの怖いうちに入らない。
「好きにしろ。だが、覚悟はしといた方がいい」
手が解放された。
全て終わったら私を取り調べるつもりなのだろう。
それも無事に生きて帰れたらの話だ。
息を吐き無線機に話しかける
「すいません、運転席にもブレーキありますよね。使えそうですか?」
『は、はい!壊されてはないです』
生きてるブレーキがあるなら勝算はある。
「車掌、もしかしたら電車を壊すかもしれませんがいいですか?」
無線機を置き、後ろを振り向く。
私の言葉で車掌も覚悟をしたようだ。
「構いません、乗客の命の方が大切です」
「作戦が出来ました。私に任せていただいていいですか?」
上手くいく保証はない、けど何もしなければ確実に多くの死者が出る。
幸いにも私には使える力がある。
この電車にはあの子も乗ってる、事故なんて起こさせない。
持てる力全てを使って阻止する。