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宿場町防衛戦

 夜気を切り裂いて、長剣ロングソードが振り下ろされた。呪いによって歩く死体に、それを避ける意思も能力もない。


 剣の一撃で、人の体は切れるのか。切れる、切れない、どちらともいえる。人の身体は頑強ではない。強い衝撃を受ければ皮膚は破れ血が流れる。骨は折れるし内臓もつぶれる。壊れる時はあっさり壊れる。


 しかし、筋肉、骨、血。これらが容易く切れるかと言えば否である。どれも複雑に絡み合っており、刃を通すことは容易ではない。何かしらに引っかかり、その勢いを削ぐのだ。一刀両断など、めったにできるものではない。


 しかし、それは成された。左の肩に吸い込まれた刃が、するりと右の脇腹まで抜けていったのだ。


「クヒュゥ……」


 死体の隙間から腐った空気が漏れ、その喉から抜ける。奇妙な断末魔を上げて、肉がずるりと滑り落ちた。


「次」


 それを成したのは、目を見張るほどに美しい少女だった。豊かな赤い髪を戦いの邪魔にならぬよう、頭の後ろで縛っている。青い瞳は戦場にあって曇らず、冷静に状況を見据えている。


 身に纏っているのは動きと守りを両立させた部分鎧。幾分か汚れがあるが、鋼は冷たい輝きを放っている。


 彼女の美貌も立ち姿も目を引くが、何よりも存在感を放つのはその長剣である。細すぎず、薄すぎず。しかして鋭利という言葉を体現した刃。隕鉄と神秘銀を混ぜ合わせ、ドワーフの名工の手によって打ち鍛えられた聖剣。


 聖ベルンハルトの長剣ドンダー。持ち主以外、誰も振るうことができなかったそれが今この場で威力を発揮していた。


「た、助けてくれぇ!」


 彼女の横で、悲鳴が上がる。街の衛兵が、死体に組み付かれていた。衛兵が弱い、というわけではない。日々訓練をして、山賊や怪物から街を守っている精鋭である。しかし、動く死体となると勝手が違う。


 死んでいるから多少殴ったり突いたりする程度では止まらない。保身という意識がないから、怪我など気にせず飛び込んでくる。衛兵が常日頃相手にしている諸々とは、何もかもが違う。手抜かりがあっても致し方がない。


 しかしだからと言って、敗北も死も許容できない。彼の後ろには無辜の民がいるのだ。ここ、バルタニア王国の主要街道沿いにある宿場町は現在、動く死体の群れによって襲撃を受けていた。


 死霊災厄が始まってからというもの、こういった事態は珍しくない。宿場町は魔物や盗賊への備えとして柵でぐるりと囲まれている。木製であるものの、手入れは十分にされている。容易に昇ったり破壊したりは不可能だ。


 死体たちは己の腕が壊れるのも躊躇わず、殴り続けているが今の所壊れる様子はない。故に攻防は入口で行われている。


「ふっ」


 鋭い呼吸。油断なく、躊躇いもない踏み込み。そしてそこから振り上げられる、聖剣の一刀。衛兵を掴んでいた死体の腕が一本、本体より切り離される。


「助かっ……たぁ! ありがとうございます、勇者公女様!」


 力が半分になれば、衛兵も自力で抜け出せた。全力の前蹴りで死体を押しやり、振り下ろした槍の一撃で頭を砕いた。


「油断なく参りましょう。夜は長く、敵は多いです」

「はい!」


 力強い返事。衛兵の戦意はたぎっていた。彼だけではない。ここを守る同僚の多くが、彼女と肩を並べられることに喜んでいた。


 死体の数は多い。それこそ、戦争かと見間違うほど。軽く百を超えているだろう。入口に集まっているだけでも二十以上だ。


「渦巻け、弾けよ、燃え上がれ! 爆発する火球!」


 その集まっていた死体たちの上に、一抱えもある炎の砲弾が落ちてきた。中央にいた一体に触れるや、それは勢いよく周囲に燃え広がった。


 人の死体は、中々燃えない。水分があるからだ。火傷することはあっても、薪のように燃え上がったりはしない。だが、魔法の炎となれば話は別だ。この世の理とは別の理屈によって生み出される現象。人の水分などに左右されたりはしない。


 死体が燃えていく。炎には浄化の力もある。死体を動かす呪いが消え失せれば、死体が動くことはなくなる。


「セシリアー! 火球はあと一発しか使えないからねー!」


 女の声が、頭上より振ってくる。弓兵と一緒に櫓にいるのは、紫のローブを身に纏った女魔導士だった。強い癖のある銀の髪を腰まで伸ばした美女。異性同性問わず、その美貌とスタイルの良さは人の視線を引き付ける。そんな彼女が、いくつもの護符を巻きつけたスタッフを振り回していた。


「分かったわー! ベルティナも気を付けて!」


 頼もしき仲間に声をかけながら、勇者公女セシリアは剣を構えた。魔力の炎によって動く死体は数を減らした。しかし未だ、油断の出来ぬ戦力差。宿場町一つ落とすには、十分な量が控えていた。


 これが人の軍であるならば、直接対峙する以外の手も打てた。よくあるのが、食料などの資源を狙い撃ちする作戦。人は食わねば生きていけない。空腹では戦えない。単純だが、有効な手立てだ。


 しかし当然の話だが、呪われた死体は生きていない。生命活動で活動していない。こういった手段が取れない。ついでにいえば休まないし、怯えもしない。ただただ、生者めがけて襲い掛かってくる。


 倒す手段は動けなくなるまで肉体を破損させるか、炎で焼くか。そしてもう一つ。


「法律神シュルティーサは世の理を定められた! 生きるもの、世に満ちるべし。死するもの、地に眠るべし。法に背きし者共よ、罰を受けるべし! 死者埋葬ターンアンデッド!」


 突き刺すような閃光が、セシリア達の背後より放たれた。一切の不正を暴く、法律神の輝きである。理から外れた不死者に抗うすべはない。わずかでも光に照らされた死体は、呪いを失い地に倒れ伏す。


 この宿場町を覆うのが、壁でなく囲いであるのが功を奏した。木枠の隙間は十分にあり、そこより通った聖光が死体たちを多く浄化した。ばたりばたりと、強風にあおられた雑草のように折れ曲がっていく。


 これを成したのもまた、少女だった。三人の中で最も若く、背も低い。細身の体を包むのは、旅の中でも清潔さを保てるよう加護を受けた白い僧衣。バルタニア王国のシュルティーサ神殿にその人ありと言われた、神に選ばれし聖女リーフェである。


 青みがかった銀の髪を三つ編みにして背に流し、手には聖女にのみ携えることを許された祭器たる錫杖。幾多の不死者を前にして、そのまなざしに怯えはない。


「今のうちに、態勢を整えてください。けが人は下がるように」

「はい、聖女様!」


 衛兵たちが、幼さを残す少女の指示に従う。その名声がこの宿場町にも届いている証拠だった。


 勇者公女セシリア、魔導士学院の才女ベルティナ、そして聖女リーフェ。王都エーデルンより旅立った、死霊災厄を払う希望。偶然居合わせて、街の防衛に参加していた。


「リーフェ、奇跡はあとどれくらい?」


 息を整えながら、セシリアが仲間に問う。


「余裕がある、とはいえません。しかし奮起できないわけでもありません」


 聖女は正面を見据えたまま、淡々と返答する。


「曖昧過ぎないかしら?」

「神より賜る奇跡の回数を推し量るのは不敬です」

「それは分かるけど……」

「二人ともー!」


 櫓の上から魔導士が声を投げかける。


「死体の群れが、移動してるー! やっぱり、あの音に引き寄せられているのかもー!」


 そう、音である。実を言えば戦いの間、ずっととある音が町中に響いていた。空気を引き裂く轟音が、一定間隔で。発生源はこことは真逆、すなわち宿場町のもう一つの出入り口である。


 それなりに離れているのに、会話の妨げになるような大きさで聞こえてくる。直近であるならば、その喧しさは相当だ。公女たちはそれをよく知っている。


「死霊は耳で音を聞くわけではないのですが……」


 呆れる聖女が思わずぼやく。セシリアは苦笑いを浮かべることしかできなかった。


 そんな会話がされているとはつゆ知らず。その騒音の発生源は、戦いを順調に進めていた。


 逆側の守りに付いているのは少数だ。たった5人しかいない。そのうち衛兵は4人。武器を構えているのは2人だ。そして、騒音を奏でているのは衛兵ではない。


 それは、奇妙な装いをした青年だった。グローブ、ブーツ、ジャケット。これらは丈夫な革製であり、一流の職人の技かと思わせる見事な作りだ。王都の職人でも作れるかどうかわからない、実用を重視した装い。


 しかし彼を奇妙と表現させるのは、身に着けている手甲と脚甲だ。一見すれば、金属製の防具である。しかし、その作りは複雑で一般のそれとは多くの点で違いがある。ただ身体を守るためのそれにしては、余分が多いのだ。


 このように、防具一つとっても珍しい。しかし武装はそれ以上だ。一抱えもある、金属の工業製品。引き金を引けば火薬が燃え、金属の弾を発射する。


 銃である。銃身は乳白色。弾倉は小箱のように大きく、給弾は銃身左側から。銃身上には近距離用の照準器。青年はその連射式の銃を木箱の上に乗せ、迫りくる死体を蹴散らしていた。


「ぞっとするな。呪詛風邪ってやつは、どれだけヤバかったんだ」


 風貌は、まともだった。ここいらでは珍しい、黒髪茶目。よく鍛えられた体躯、背丈も高すぎず低すぎもしない。そんな彼のつぶやきは、銃声でかき消される。


「何か言ったか!?」


 大声で問いかける衛兵に対して、青年は指を一本立てる。


「そろそろ、もう一杯おごってやって」

「一杯……ああ、これな! もっとわかりやすく言え!」


 年かさの衛兵は、手に持っていたそれを放り投げる。放物線を描いて飛ぶのは、薄焼きの小壺である。片手で何とか持てる程度のそれの先に転がっているのは、無数の死体たち。銃で撃たれて、身体を損壊しているがまだ動く。


 立ち上がれないそれらにぶつかれば、当然陶器は砕け散る。中身が漏れ出す。油だ。


「おっと残念、燃えている所に投げてほしかった」

「無理を言うな! こんなの練習していない!」

「だよな。まあ、どうにでもなる」


 夜の戦いである。当然かがり火が焚かれている。そこから薪を一本引っこ抜き、放り投げる。夜闇に、赤い輝きを引いて薪が舞う。


 着火。ゆっくりと、炎が広がる。当然ながら、手足が吹き飛んだ死体に抗うすべはない。悪臭を漂わせながら燃えてゆく。そんな死体が、こちら側にはいくつも積み上がっている。彼らの前方にはそのような、この世の終わりかと思える凄惨な光景が広がっていた。


「まだまだかかりそうだ。油、追加でとってきてもらえるか?」

「あ、ああ。おい、頼んだ」


 控えていた年若い衛兵が、近場の建物に走っていく。それを横目に、青年は再び引き金を引く。撃ち続けたりはしない。一体につき数発。弾をケチっていく。


 箱のような弾倉にはそれに見合うだけの弾が装填されているが、だからと言って無限ではない。青年はそれが分かっているからこそ慎重に戦っているが、衛兵たちはそうではない。


「まったく、すげえ銃だぜ。ドワーフ共も銃を使うって聞くが、一発ごとに時間がかかるって話だったのに」

「うちの地元も、大昔はそうだったって聞くぜ?」

「は。ドワーフよりもすごい銃を作れるってか。あんたの地元はスゲエ所なんだな。……所で、それ。戦いが終わったら売ってくれないか?」

「油」

「お、おう」


 今度の油壷は、程よい場所に当たった。燃え広がる。侵攻してくる死体たちはその上を歩くものだから、場合によっては衣服に燃え広がったりもしている。


「俺は、地元じゃ保安官……えーと、こっちで言う所の騎士みたいな仕事に付いているんだ」

「は!? お貴族様なのか!?」

「いやいや、そういう感じじゃない。でもまあ、強くて特別だ。で、これは国からの預かりものなんだよ。……そういうの、売っていいと思う?」

「……打ち首になりそうだ」


 ぶるり、と震える衛兵に苦笑を返す。そんな余裕があったのもここまでだった。火薬がはじける音が途絶えた。弾切れだ。


「くそ、ボックス三つ撃ち切っちまった。少しだけ頼む!」

「わかった! おい、おまえら!」


 手に槍を持った衛兵二名が、数歩前に出て敵を待ち構える。燻る死体の上を歩きながら、無数のアンデッドが迫りくる。彼らだけで倒しきれるものではない。近寄らせないようにするのも難しい。


 故に急ぐ。台座として使っていたそれとは別の木箱の上に並べていた装備を素早く身に着ける。まずはベルトだ。それには手のひらよりも大きな二つの平たい箱が装着されている。


 16発用ショットシェルホルダー。弾一つが親指のように大きいそれを保持しておくため、どうしても大きくなる。動きの邪魔にならないよう、それらを腰横に密着させる。


 それが終われば銃だ。長い銃身と、それに沿うマガジンチューブ。肩で発射時の衝撃を押さえるためのストック。近距離用の照準器。


 彼がショットガンを構える頃には、すでに衛兵と複数の死体がもみ合っていた。


「まだか!?」

「お待たせしました!」


 素早く側面に回り、射線を確保。トリガー右横の安全装置を解除して最初の一発。轟音が夜を震わせる。そしてその威力は確かなものだった。脇腹に直撃を受けた死体は、その周辺の骨肉を大きく損壊させた。バランスを崩して倒れこむ。


 青年は次の目標に素早く銃を向ける。鍛え、練習したことがわかる見事な立ち姿。衝撃に耐え、狙いを逸らさない。


 狙いは足。一体、二体、三体。音が響けば死体が転がる。血肉がはじけ飛ぶ。圧倒的な速さと攻撃力。衛兵たちに群がっていた死体が、瞬く間に掃除される。


「油っ!」

「お、おうよ! お前ら下がれ!」


 投擲される油壷と松明。燃え上がり、呪いが浄化されていく死体たち。危ない所を助けられた衛兵たちは胸をなでおろすが、青年の顔は険しいまま。


 彼は銃を上下逆さまにすると、腰にぶら下げたショットシェルホルダーに手を伸ばす。四つの弾丸を握り取ると、上向きになった給弾口に滑り込ませていく。手早く弾を送り込むと、銃を構え直す。


 狙って、撃つ。迷いのないその動きのおかげで、迫りくる死体の数はまた数を減らした。


「お、おお……すごいな。さすが騎士様だ」

「弾!」

「へ?」

「箱の上に、弾置いてあるから、二列にして並べて! こんなふうに!」


 彼は自分の腰にぶら下げたホルダーを指さし、再び弾をもぎ取った。


「そこまでするのか!?」


 言っている場合じゃないが、流石に不満が出る。防衛に協力してもらっているし、破格の戦力であることは理解している。だがこの壮年の衛兵は隊長だった。貴族ではないが、この街では多少なりとも高い地位にいる。それが従者のごとく使われれば不満の一つも出る。年下に命令されればなおさらだ。


「このままじゃまた弾切れだ! そろそろ半分使っちまう!」


 しかし、青年の余裕のない声を聞けばその気持ちもたちまちしぼむ。実際、彼の腰にあるホルダーの片方は、すでに弾がほとんどない。


 いたし方が無し、と不満を飲み込んで作業する。ちょうど、油壷の補充に行っていた若手も帰って来たので、手伝わせる。たちまち、赤い弾薬が二列に並べられていく。


 その作業の間も、侵攻は続く。死体の中には特別に強い呪いを蓄えた者もおり、その行動は思いもよらぬ動きを見せる。


 やおら、群れの中の一体が大きく跳躍した。大人を飛び越えるような、人体の限界を超えたジャンプ。放物線を描いた後の着地点は、まさに作業中の衛兵たち。


 青年はそれに気づいた。しかし、迎撃は間に合わない。銃口を向ける時間が足りない。


(畜生っ!)


 彼が、使うまいと思っていた切り札に手を伸ばした正にその瞬間だった。


「輝け、ドンダーッ!」


 空中にあったアンデッドの身体を、稲妻のごとき輝きが包み込んだ。空を裂くような一条の閃光。それが消え去った後には、灰だけが宙を舞っていた。青年は頬を釣り上げて笑う。


「助かったよ、セシリア!」

「ヒデオン、油断しないで! まだ終わったわけじゃないんだから!」


 駆け寄ってきたのは勇者公女。聖なる剣は、紫電を纏っていた。聖剣の力を解放し、窮地を救ったというわけである。


 青年は迎撃を続けながら、隣の彼女に声をかける。


「あっちを抜けて大丈夫なのか? あと、俺の名前はヒデオだって」

「音につられて大分こっちに流れてきてるから平気よ。あと、みんなも言ってるけど、ちょっと呼びづらいのよね」

「そうそう。一文字増えてお得じゃない」

「嬉しくないなあ……」


 などと言いつつ、ヒデオンと呼ばれた青年は余裕を取り戻していた。頭上から振ってきた無体な話にも反応するほどだ。


 ちらりと見上げれば、空に浮いているのは銀髪の魔導士。魔導の力で空を舞い、素早くこの場に駆け付けた。


 頼もしい援軍に、ヒデオンは頼ることにした。


「すまないけど、少しだけ前を任せる」

「任されたわ!」


 躊躇いも気負いもない、真っすぐな返事を返して聖剣を振るう。宿場町を端から端まで駆け抜けたというのに、その一閃に疲労の色は無い。伸びすぎた雑木を刈るかのように、動く死体が切り捨てられていく。


「それじゃあ、時間稼ぎに一発。唸れ、吠えよ、ぶっ飛べ! 野蛮なる一撃!」


 ベルティナの、呪文が衝撃波を発生させる。群がっていた者共がそれによって複数体、まとめて吹き飛ぶ。跳ね飛んだ先に別の者がおり、二次被害まで発生させる。二人の参戦により、状況は大きく改善された。


「ちなみに、リーフェは?」


 弾薬を補充しながらヒデオンが問いかければ、答えが頭上から振ってくる。


「今、走ってきてるわよー。体力オバケと一緒にしちゃダメね」

「ひどいっ! 普通よ、普通!」

「鍛え上げられた兵士レベルなんだよなぁ……」


 そもそも普通の婦女子は、動く死体を切りながら回答できない。そんな言葉を飲み込んで、ヒデオンはシェルホルダーに弾を詰め終えた。


 ショットガンの銃口を敵へと向ける。


「お待たせ。下がってお茶でも飲んでてくれ」

「私はまだまだ! 踊れますけど!」


 一声ごとに敵を倒す勇者の返答。


「それじゃあお言葉に甘えて、呪文は節約させてもらうわ」


 などと言いつつ、戦場を俯瞰できる場所から降りようとしない魔導士。


「ぜえ、はあ……お待たせ、しました。けが人は、いますか」


 息を切らせ汗を流し、しかし役目を果たさんとする聖女。


「まったく、たのもしいお嬢様たちだこと。……それじゃあ一緒に、踊りましょうか!」


 笑いながらヒデオンは、銃声を轟かせた。夜半まで続いた防衛戦は、勇者公女達の奮戦により勝利という形で幕を閉じた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 今更気づいたけど、アポカリプス・・・? あ、FALLOUT系か!ゾンビはファンタジーの方かよ!それは立ち悪い(理屈が通用しないため)
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