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9話【これ?面白い余興だったよ。】

翌日の朝、私は心を決めて手紙を持ち、王城の門へ向かった。門番に手紙を渡すと、彼は興味深そうにそれを受け取り、厳重な検査を行った後、王城の内部へと手紙を届けてくれるよう約束した。

しばらくして、王城の門の前に、左目の近くに傷を持つ軍服を身にまとったイケオジが姿を現した。彼の黒髪は風に揺れ、緑色の目は鋭く輝いていた。その容姿からは、彼が何か重要な役割を果たす人物であることがうかがえた。

「君が大主教様の養子となった殺人人形か。丁度良い。こっちへ来い。」

イケオジが厳しい声で告げると、彼は一歩前に踏み出し、静かな足取りで門の内側へと歩みを進めた。その後ろ姿は、不敵な雰囲気を纏っていた。

イケオジが厳しい視線で私を見つめながら、「何者かが、一夜にしてケイロス帝国を滅ぼしたと報告が入っている。お前の仕業か」と問いかけた。私の体はコクリと頷くだけだった。

「こんな子供がか。」と、イケオジは吐き捨てるような声で言った。その言葉には、不信感や軽蔑が滲んでいた。


しばらくの道のりを進んだ後、私たちは闘技場のような建物に辿り着いた。その建物からは熱気と喧騒が漂っており、何かの大会が開かれていることが伺えた。闘技場の入り口では人々が行き交い、期待に胸を膨らませているようだった。

私の無感情そうな体も興味深そうに周囲をキョロキョロと見回していた。

「今日は軍と騎士団と魔法士団の入団試験を混ぜた模擬試合がある。お前にはその優勝者と戦ってもらう」イケオジの言葉が重々しく響く。

私の体が首を傾げると、イケオジは厳しい表情で答えた。

「お前はあの一夜で帝国を滅ぼしたと噂されている。今、お前の能力を試す時だ。その力を試す良い機会だ」私の心はざわめき始めた。

『無ーーー理ーーーー!!確かにこの体は絶対にやり遂げてしまうだろうけど、強そうな人と戦うんでしょう!?無理だよ。それにコントロールが効かないし!!殺しちゃったらどうしよう!!もう血は見たくないの!!もうグロテスクは嫌ーーー!!ヤバイヤバイ、人を殺さないように祈らなきゃ…。でもメロウト王国の人は殺さないって本能にインプットされてる気がする。なーんだ大丈夫じゃん!』


特別な観客席に案内され、私とイケオジは試合を見守る。その場には軍、騎士団、そして魔法士団のタマゴたちが揃っている。彼らの緊張感が会場に漂い、空気は緊張と期待で充ち満ちている。

試合場にアビスが登場すると、私は驚きを隠せない。彼は見習い服を身に纏い、凛々しい表情で会場を見渡す。そして、私の姿に気づくと、彼は微笑みを浮かべた。

『何してんのアビスーーーー!!!!』


アビスは王城に到着した直後、「用事があるから先に行ってろ」と告げた。しかし、私はまさか彼が入団試験を受けようとしていたとは思いもしなかった。

アビスが試合に挑む姿を見て、私は心配になった。彼が無事であることを願いながら、試合の行方を注視した。



私が突然、「魔法の気配がします」と口にした。その言葉に自分でも驚きを隠せなかった。私は自らの魔法の感知能力に驚き、同時に自虐的に笑ってしまった。私の本能の魔法感知能力は他の人々よりも敏感なのだろうか、それともただの錯覚なのか。周囲にはまったく魔法の気配が感じられないのだから、おそらく本能が勘違いしているに違いない。

「当たり前だ、どれだけ傷を負っても死なないように大掛かりな魔法結界が施されている。」とイケオジ。結界が施されているというのは、少なくともこの試合で命を失うことはないということだ。不安な心が少し和らいだ。


試合が開始され、私の心配など知らずに、アビスの右手は気の抜けたようなふざけた剣の持ち方をして相手の出方を待っていた。

周囲の見学者たちも、彼の様子に戸惑いを覚えていた。その姿勢はまるで冗談めいているかのようだった。「かかってこいよ」と挑発までしている始末だ。

アビスの言葉に、相手は一瞬ためらいを見せたが、やがてその不敵な笑みに応じるかのように、剣を構えて応じた。

アビスは淡々と、「目に見えているものが全てではない」と言って剣を持っていない方の手でくるりと指をふり、風の魔法で相手をとらえた。その瞬間、会場は驚きと歓声に包まれた。

アビスは優雅な笑みを浮かべながら、相手に対し挑発的な言葉を投げかけた。「どうする?まだ続ける?動けないだろうけど」と、面白半分に語った。その言葉に、闘技場の観客たちは興奮し、興味津々の視線を注いだ。

相手は顔を真っ赤にして怒りながらも、どうにも動けず、ガクリと頭を垂れて降参した。アビスの魔法によって圧倒され、敗北を認めざるを得なかったのだ。闘技場の観客たちは、驚嘆と称賛の声を上げた。


試合は淡々と進行した。力強く振るわれる剣、巧みな魔法の使い手、それぞれが自らの技を駆使して闘った。観客席からは緊張感が漂い、息を飲むような瞬間もあった。


そんな中、アビスはその独特の戦闘スタイルで注目を集めた。剣を構えて魔法を使うかと思えば、魔法を使わずに見事な剣術で相手を圧倒し、また剣に魔法を込めてみせたかと思えば、体術のみで相手を倒すなど、多彩な戦闘スタイルで観客を魅了していた。


イケオジが腕を組み、重厚な表情で私を見つめた。

「お前の対戦相手はアレだな」と彼は静かに告げた。

その一言で、私の心はざわめき始めた。



アビスが見事優勝すると、イケオジが立ち上がり、私の服を掴んで思いっきり場内へと投げた。

私は衣服が風になびく中で身を起こし着地した。周囲の観客がざわめき、驚いた声が響き渡る中、私は落ち着きを取り戻そうと試みた。



アビスは凛とした表情で私を指し示し、「これが、一夜にしてケイロス帝国を滅ぼした殺人人形だ」と紹介した。その言葉に、会場内にざわめきが走った。私は驚きと緊張が入り混じった空気を感じた。優勝者であるアビスが、殺人人形との戦いに挑むことを告げると、観客席からは興奮と緊張が交錯するざわめきが立ち上がった。


『待ってください!!一夜で滅ぼしてません!!結構な日数かけてました!!なんせ夜にはしっかり寝て食事もちゃっかりとってたんですーー!!それに!!ケイロス帝王目の前にいるんですけどーー!!!』

私の叫び声が会場に響き渡る事はなかった。心の中で息を切らせながら、私は事実を訴えるように心の声を張り上げた。唯一アビスだけが私の声を聞き、うるさそうに片耳を塞いでいた。


アビスは興奮したような笑みを浮かべながら「面白い展開になってきたな」と口にした。


色々とツッコミを入れたかったが、無慈悲にも試合開始の鐘の音が鳴り響く。


試合開始の鐘の音が響き渡る中、私は色々とツッコミを入れたい衝動に駆られたが、その瞬間、アビスとの対戦が始まることを思い出し、口を閉ざした。



試合が始まると、まずは体術からの攻防が繰り広げられた。私とアビスの間で交わされる格闘は互角の戦いであり、力と技術が拮抗し合う様子が会場に響き渡っていた。

アビスは体術では勝機を見出せないと悟ったのか、剣を鞘から抜き、本気で私を打ち倒そうと迫ってきた。しかし、私は彼の全ての攻撃を見切り、巧みに回避し続けた。

アビスは激しい剣捌きを見せたかと思えば、突如として剣を捨て、両手に風と水の魔法を宿し、私の動きを封じようとした。

それすらも体術で回避した私は、聖なる力で内側から破裂する魔法を使おうとしたが、アビスが「やめておけ」と呟いた。私の体は何故かアビスの言う事を聞いてしまうようで、再び体術を使って攻撃を繰り広げ続ける事となった。

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