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6話【やっと出会えたね。】

帝都の掃除が終わり、リアは城の中心部にたどり着いた。


城門には門番すらおらず、人の気配は微塵もなかった。彼女は城内に入り、長い階段をペタペタと足音を鳴らしながら登っていくと、大きな扉の前にたどり着いた。力を込めて扉を開けると、そこには大きな玉座に深々と座り、眠りについている子供がいた。


彼女は驚きを隠せなかった。この子供が一体誰なのか、そしてなぜ玉座に座っているのか。疑問が頭をよぎる中、リアは静かに玉座の前に立ち尽くした。


近づくと、その玉座に座る美少年の姿が目に飛び込んできた。その容姿はまるで神々しく、見る者の心を奪うほどの美しさだった。リアは彼を見て、発狂しそうなほどの衝撃を受けた。この子だけは殺したくないという本能が彼女の心に湧き上がった。美しすぎる。まさに神の芸術品だ。彼のおかっぱに、白い肌に、装飾品。全てが完璧な調和を成しているかのようだった。


私の体も何故か殺さず、その子供を観察しているようだった。


「なんだ…。報告通り子供がきたのか。」


ゆっくりと開かれた瞳は、真っ赤なルビーのように美しく輝いていた。その深淵に満ちた瞳に、リアは自らの姿を映し出すかのように魅了されてしまった。



子供はゆっくりと体勢を整えて座り、その服装はまるでファッションショーのモデルのようだった。短パンが脚を引き立て、ガーターパンツとロングブーツが彼のスタイルを一層際立たせている。その姿はまるで萌えアニメから飛び出してきたような、尊みの極みを感じさせるものだった。リアは心の中で、もしこれを見ているのがショタ好きの読者だったら、絶対に共感していただけるだろうと確信した。


私の体は彼を殺そうと手を伸ばした。


『やめて!!お願い!!やめて!!絶対にやめて!!悪役ってところがまた乙なの!!こんなレアな悪役ショタ…滅多にお目に掛かれないんだから!!』


ピタリと手が止まった。


「ん?私を殺しに来たのではないのか?」

皇帝の問いかけに、私は一瞬固まった。その瞬間、彼の紅い瞳が私を貫くように見つめていた。


「ケイロス帝国は命令通り滅亡させました。ケイロス帝国の人口は1億7千万人です。私が命を刈り取った数は1億7千万人マイナス1です。民がいない国は国とは言えません。よって、任務は達成されました。」私は冷静に答えた。


皇帝は笑みを浮かべた。「ハッハッハッハッ!!全ての民草を刈り取ったというのか。しかし、不老不死の私は何度でも国を蘇らせる事が可能だ。何度でもだ!」


彼の笑い声は、冷たく響き渡る殺気に満ちていた。


「では…。」私は静かに祈った。神秘的な力が私の体を包み込み、その光が目の前の子供にも届いた。

彼の目は驚きに満ちていた。


「グローリア・アビス・ケイロス。汝の呪いを解呪します。」と、私は厳かな口調で唱えた。

皇帝は驚きの表情を浮かべた。「なんだと?」と問いかける彼の声は、驚きと不安が入り混じっていた。そして、光が消え去った。その時、何かが変わったように感じられた。


「なんてことを…! どうしてくれるのだ…私は、死ぬだろうが!!」皇帝はよろよろと立ち上がり、頭を抱えてヒステリックに叫んだ。


その声は、絶望と混乱が交じり合ったものだった。彼の内に生じた変化が、彼自身にとっても理解しがたいものであったことを示しているように思えた。

「殺せ!!私を殺せよ!!」皇帝は絶望の声を強く叫んだ。

しかし、リアの体は静かに、穏やかに、皇帝の方を見据え続けていた。


「何なんだよ・・・。どういうつもりで私の前に立っているんだ!!」皇帝は驚きと怒りを込めて尋ねた。

「戦利品です。」リアが静かに答えた。

「は?」皇帝はリアの言葉に困惑しながら問い返した。

「アナタは私の戦利品です。」リアは淡々と言葉を繰り返した。

「何だと?」皇帝の声には驚きと疑問が混ざり合っていた。


「失礼します。」リアがそっと呟き、皇帝を気絶させ、抱き上げる。その美しい少年を、まるで守るべき宝物のように、彼女はお姫様抱っこをして城を後にした。

『でかしたーーーー!!!私天才じゃん!!殺さずに持ち帰ったわ!!』リアは心の中で叫び、自らに称賛の声を送った。足を治癒させたことから、もしかしてと思い始めたが、案外、強い意志で望むことが実現するのかもしれないと信じた。なぜなら、それは彼女自身だからだ。


『さて、読者の皆さん。何が起こっているか分からない人が多いでしょう。謎多きまま終えてしまいましたが、暇な私が説明いたします。ケイロス帝国を滅亡させ、帝都に到着した私は人々を一掃し、無人となった城に入りました。恐らく、ケイロス帝国の帝王であるグローリア・アビス・ケイロスなる人物を気絶させてお姫様抱っこで拉致し、走って帰還途中です。

ドストライクな性癖ぶっささり美少年を殺さずに済んで大変嬉しく思っておりますが、帰ったらキルエルさんにぶっ殺されませんか?

そして、せめて走りじゃなくて馬にでも乗りませんか。足が痛くて痛くて頭がおかしくなりそう。ここずっと、心を壊さずよく生きてるなぁと自分で自分を褒めているところでございます。』


「馬・・・。」

馬と口にした事で魔法が解けつつあるのかもしれないと感じた。確かに、結構な日数が経っているから、いつ解けてもおかしくはないだろう。


私の体は周囲を見回して馬を見つけた。馬に近づき、美少年を前に乗せ、私は馬の背に軽々と跨った。馬を促して走り出した。

馬術の基礎をキルエルさんに教わったおかげで、なんとか乗りこなせているようだ。しかし、未熟な部分も多く、時折手綱が揺れたり、バランスを崩したりすることもある。


『美少年、絶対落とすんじゃねぇぞ!!私!!!』心の中で叫んで、廃墟と化したケイロス帝国を走り抜ける。


『でも…キルエルさん、怒っちゃうかなぁ。この美少年って絶対ケイロス帝王だよね。キルエルさん側の呪いって解けてるのかな?この少年を拉致する前に解呪したよね?1億人もの命を奪っておいて聖女って笑っちゃうけどね。』

帝国中の人々の顔が、私の心に深く刻み込まれていた。その顔は、恐怖に歪んでいるものばかりだった。あの惨劇の日々、血に染まった光景が私の記憶から消えることはない。子供の泣き声や叫び声が、いつまでも私の耳にこだまする。

体が震えるほどの恐怖に襲われる。私はその光景から逃れようとしても、常に私の心の奥底に潜んでいる。


「なんだ。何が恐い。」美少年が尋ねた。眠っていると思っていた少年が起きていて驚いた。そして、いつの間にか私の体は小刻みに震えていたようだ。私は首を傾げるだけで返事はできなかった。

彼の言葉は私の内なる戦慄に対して理解を示すものだろうか。

少年は何かに気付くかのように、「お前…意識を奪われているのか。いや、封印されているのか?」と問いかけた。

その言葉に、私は思わず心の中で叫んだ。『そうなのよ!えっ、やっぱり好き。私の事分かってくれるなんて好き!!あーショタ最高!!!』


しかし、口から出るのは静かで穏やかな一言だけだった。「好きです。」


『何言ってんのーーーー!!!馬鹿ーーーー!!本能コラー!!!言って良い事と悪い事があるだろうがー!!TPOって備わってます?』


「ふむ、なるほどな。その瞳の陣、呪いの類ではないな。自力で解くことは不可能か。」


私の心の中で声が響いた。『よくわかってくれてるじゃない!!でも帰ればキルエルさんが解いてくれるはず!キルエルさんを怒らせない為にもケイロス帝王っていう事を秘密にしておく必要があるけど、ちゃんと黙っておける?私の体様。』

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