26話【実は肝を冷やした。】
光の輝きが消えると同時に、アメリアが目を開けると、彼女の目の前には以前とはまったく異なる姿のアビスが立っていました。背が高く伸び、髪は長く、大人の風格を纏っています。
驚きと喜びに満ちたアメリアの視線が、その姿を追っています。一方のアビスは、不安そうな表情を浮かべており、彼の瞳には緊張が滲んでいます。
『大人になってもイケメン・・・尊い・・・。』
アビスの目には、不安と緊張が滲んでいます。アメリアの反応を見るために、彼女の反応を注視しています。
「それは、この姿の俺でも良いという事か?」アビスの声は静かで、不安に震えていました。彼の心は、アメリアの受け入れを確かめるために揺れ動いています。
『うん、憧れてた転生ものに出てくるイケメン・・・。私の人生もしかしてアビスに全て捧げたら、勝ち組って奴んじゃ…。私!!完全生存ルートに入ってる!?』
アビスの顔には安堵の表情が浮かびました。彼はアメリアの訳のわからない言葉に救われたようで、深いため息をついて、安心したように微笑みました。
『わっ!ちょっ!?』
アメリアの身体が自然にアビスに抱き着きました。彼女の手が彼の胸にやさしく触れ、彼の温もりを求めています。その姿は、まるで彼女が心の底から彼を求めているかのようでした。
アビスは驚きながらも、彼女の身体が自分に抱き着くのを受け入れます。彼の腕が彼女の背中を包み込み、彼女を優しく抱きしめます。
「パパ…」
それは、アビスの心臓が跳ねるような瞬間でした。アメリアがそんな言葉を発したことに、彼は戸惑いを隠せませんでした。彼女が彼を「パパ」と呼んだ瞬間、彼の顔には驚きと焦りが交錯しました。
しかし、アビスは混乱に陥りませんでした。彼の心は騒ぎ立てることなく、むしろ冷静であり、慎重に次の行動を考える余裕を持っていました。彼は焦りつつも、アメリアの心の混乱に気づき、それを穏やかに受け止めることに決めました。
『何言ってるの!?もしかして記憶にないけど、私の父親って、こんな姿なの?』
アメリアの言葉が彼女の内なる葛藤を反映していることを理解したアビスは、彼女を安心させるために深呼吸をしてから、優しく彼女の手を取りました。「今の俺は大人だからな、本能が父親と錯覚したんだろうな。」彼の声は安定しており、穏やかな力を持っていました。
『そっか、本能だもんね。あーびっくりした。』
アビスの深い声がアメリアの耳に響き渡りました。「そんなことより、早く元に戻してくれ。」彼の言葉にアメリアは頷き、彼の腕の中で聖なる力を解放しました。光がアビスを包み込み、次第にその姿が若返っていきます。
彼の髪が短く、身長も縮んでいきます。不思議な魔法の力が部屋中に満ち、やがて光が収まり、元の11歳のアビスが彼女の前に立っています。
アビスはアメリアの顔を見つめながら、微笑みを浮かべますが、その微笑みの中には少しの呆れも混ざっています。彼は彼女の不思議な力について考え込んでいます。
「アメリア、お前の持つ聖属性の力は、俺が知る限り、どの文書にも載っていない不思議な能力だ。」
『えぇ!?そうなの!?まぁ、そうかも。私が読んできた聖女系の物語でも若返りなんて能力なかったし。』
アビスは、思索に耽りながら、アメリアの不思議な能力について推測を述べました。「これは俺の勝手な推測だが、聖女は稀に特殊な能力を持って生まれてくるとは書いてあった。強い願望を神が叶えた力とでも説明しておこうか。」
その言葉には、神秘的な要素が漂い、聖女としてのアメリアの存在が神の意志によって導かれていることを示唆しています。
『え、何それ。凄く恥ずかしいんですけど。私がショタが好きだっていう』
アビスは部屋の一角にあるベッドに横たわり、疲れた表情を浮かべながら深いため息をついた。
「今日はもう寝るぞ…」アビスの声は穏やかで、ほんのりと疲れがにじんでいた。
しかし、そんなアビスの言葉に対し、アメリアは驚きと不満を込めて反応しました。
『まだ夕方だよ!?ご飯も食べてないのに!』
「アメリア、隣に寝ろ。」アビスの声は穏やかで、しかし命令的なものが込められていました。 彼の言葉に従うことがアメリアにとって当然のように感じられ、彼女の体は素直にその指示に従いました。
『ちょ、ちょっと…。』
「安心しろ、魔法で眠らせてやる。 俺にもご褒美をくれても良いだろ」
アビスの言葉が室内に響き渡ると、彼の手が淡く光り輝きました。 その光はアメリアの身体を包み込み、やがて彼女のまぶたが重くなり、眠りに誘われるようになりました。
アビスはアメリアを抱きしめ、恍惚な表情を浮かべました。そして、その柔らかな髪に顔を埋めながら深く息を吸い込みました。 彼の胸には心地よい暖かさが広がり、彼の心は穏やかな幸福感に包まれました。アメリアの存在が彼にとって何よりも尊いものであることを感じながら、アビスは彼女の身体のそばで静かに眠りにつきました。
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王城内の華やかな廊下を歩くルティー王子の前に、上品なドレスに身を包んだ美しい少女が現れました。 彼女の髪はクリーム色に輝き、深い海のような瞳がどこか懐かしい雰囲気を纏っています。 口元はヒラヒラとした扇子で上品に隠されており、彼女の姿はまるで宝石のように輝いていました。
彼女の傍らには、控えめながらも気品あるメイドが二人付き添っており、彼女を支えるようにしていました。 その美しい少女こそが、王子の妹であり、王家の誇りである存在でした。
ルティー王子は妹の後ろに控えるメイドたちを一瞥し、突然足を止めました。 彼は不審そうな表情で、メイドたちをじっと見つめました。 その中でも特に目を引いたのは、一人のメイドでした。 彼女は以前とは異なる雰囲気を纏っており、ルティーはそれに気付きました。
「ティアンナ、またメイドを交代させたのか?」とルティー王子が問いかけると、ティアンナは優雅な笑みを浮かべて返事しました。 「あら、お兄様には関係ないことですわ。」
王子は深く眉をひそめ、ティアンナに厳しい視線を向けました。 「お前は王族としての責務を果たす覚悟が足りていないようだな。」彼の声には厳しさと悲しみが混ざり合っていました。
ティアンナはルティー王子の厳しい言葉に反論しました。 「突然なんですの?私のことなど、まるで興味がなかったではありませんか。 私が何をしてようと、どうでもいいんじゃないですか?」 彼女の声には苛立ちが滲み出ていました。
しかし、ルティーは深くため息をついて、「だからこそ、これからは変えていきたいと思っているんだ」と言いました。 彼はティアンナに対して本当の意味での兄としての役割を果たしたいという強い意志を示していました。
ティアンナはルティーの言葉に驚きを隠せず、「新しいお兄様とやらの影響ですの?」と尋ねました。 彼女の言葉には少し皮肉なニュアンスが含まれていました。
「さぁな。」と呟きながら、ルティーはその場を去って行きました。
ルティーが去った後、ティアンナは冷静な表情を保ちながらメイドに指示を出しました。 「新しく兄になる方のことを調べてちょうだい」と命じたのです。 彼女の声には、少しの興味と、同時に懐疑心が感じられました。
メイドたちは黙って頭を下げ、すぐに指示通りに動き出しました。 彼らの足音が廊下に響き渡りながら、ティアンナは静かに立ち尽くし、深く考え込んでいました。




