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18話【本当にお前は最高の友人だよ】

王城の中庭には静寂が漂い、穏やかな風が木々の葉を揺らしながら、庭園を包み込んでいました。その一角にあるベンチにはアビスが横たわっており、彼の姿はどこか遠くを見つめるようにぼんやりとしていました。

深い呼吸を通じて、彼は内なる波を静め、心を落ち着かせる努力を惜しまずに続けました。しかし、その表情には深い考え事をしているような影がありました。


王城の中庭にひっそりとベンチに横たわるアビスのそばに、ひとりの姿が現れました。その姿は王子、ルティーでした。


ルティーは足早に近づき、アビスに声をかけました。「とっくに勤務時間を過ぎているぞ、アビス。」彼の声は優しくもあり、同時に規律を守る姿勢がにじみ出ていました。


アビスはゆっくりと体を起こし、ルティーの方を見上げました。


「もうそんな時間でしたか」と、アビスは心ここにあらずのような返事をします。その声には深い沈思が感じられ、まるで彼の心がどこか遠くに漂っているかのようでした。


ルイティー王子はアビスの隣に静かに座り、心配そうな表情で彼に問いかけました。「何があった?今日はお前について教えてくれると聞いて、楽しみで眠れなかったぞ。」


アビスは遠くを見つめたまま、重々しい口調で答えました。「それは、すまないことをしたよ。昨日話していた俺の愛しいリアが軍の任務でハイドシュバルツ領へ行っちゃったんだ。」


ルイティー王子はアビスの話に、呆れたような表情を浮かべました。彼の目からは、理解しがたい疑問と不満がにじみ出ています。それでも、彼は深く息を吐き、アビスに向き直ります。


「誰かにとられる不安でもあるのか?」


アビスは深い溜め息をつきながら、ルイティー王子の問いに答えました。

「その通りだ。だが、もう一つは…リアは戦闘を嫌っている。彼女の心が、それに耐えられるかどうか心配なんだ」

彼の声は穏やかでありながらも、深い心配と不安が滲み出ていました。


ルイティー王子は少し飽きれた口調で、アビスに対して提案しました。「とられる心配があるなら、婚約式でも開いたらどうだ。あれは魔法契約で誰かが不埒なことをしようとすると、電撃をくらわすことができるだろ?」彼の提案は冗談めかしているようにも聞こえましたが、その背後にはアビスの心配を解消するための一縷の光が見え隠れしていました。


「それができるならやってるさ。今の俺、身分が無いんだ。ただの平民のアビスがクラリアス辺境伯の娘と結婚できるわけがないだろ?教会は皆クラリアスの家の奴らだ。儀式を拒否されるに決まってる。


アビスは絶望したような声で、ルイティーに対してこう言いました。「それができるなら、やってるさ。今の俺、身分が無いんだ。ただの平民のアビスがクラリアス辺境伯の娘と結婚できるわけがないだろう?教会は皆クラリアスの家の奴らだ。儀式を拒否されるに決まってる。」彼の言葉には絶望と無力感が滲み出ており、彼の心情の苦悩がはっきりと伝わってきました。


ルイティーは少し考えた後、突然閃いたような顔をしてアビスに近づきました。彼の表情は、まるで新たなアイデアが心に浮かんだかのようでした。


「もし、君が生涯僕の味方であり続けるならば、父上に頼んで、君を僕の弟として戸籍に載せるのはどうだろう?」とルイティーが提案しました。


その言葉に、アビスは驚きを隠せませんでした。この提案が彼にとって思わぬ希望の光をもたらす可能性があることに気付いたのです。


アビスは深く考え込んだ後、重要な条件をルティーに伝えました。「生涯、君の味方でいることは構わない。ただし、アメリアを利用したり横取りしたりするようなことがあれば、それは縁を切ることになるだろう。それでもいいか?」彼の声には決意が込められており、アビスが自分の信念を曲げることはないことを示していました。


ルティーはアビスの条件を真剣に受け止め、頷きました。「分かった!魔法契約書に必ず記そう。お前との約束を決して破ることはない。」彼の声には誠実さと決意が感じられた。


「アメリア…」とアビスは力なく呟きながら、不安定な足取りで立ち上がりました。彼の顔には深い悲しみが浮かび、その表情は周囲の空気を重くさせました。


ルティーはアビスの様子に心底呆れた表情を浮かべながら、思わず口にした。


「本当に800歳なのか?」



中庭を後にしたルティーとアビスは、王城の壮大な廊下をゆっくりと歩いていきました。その足音は重々しく響き、廊下には古き良き時代の名残が漂っていました。


廊下で立ち止まったアビスは、心の内で葛藤が渦巻いています。彼はルティーに向かって、ふと口に出して言いました。


「やっぱり、やめようか。」


その言葉には、不安と迷いが込められており、彼の心情の複雑さが表れています。


廊下で立ち止まったルティーは、アビスに対して少し不機嫌そうな表情で問いかけました。


「ここまで来て、どうしたんだ?」


彼の声には少しのいら立ちが込められており、アビスに対する苛立ちが感じられる。ルティーはアビスの行動に戸惑いを隠せず、彼に理由を問いただした。


アビスは深い呟きを漏らし、ルティーに向かってその思いを説明しました。


「本当に、俺みたいな800歳の男が、若いアメリアの人生を奪ってしまって良いのだろうか…」


彼の声は静かで、内省的な雰囲気を漂わせながら、苦悩と疑問に満ちていました。



ルティーはアビスの言葉に対して、少し呆れた表情を浮かべながらも、丁寧に説明しました。


「婚約式くらい良いだろう。結婚は本人の気持ちを尊重してあげたらどうだ?放置していても、政治利用されるだけだよ。」


その言葉には、彼の冷静な判断と、アビスに対する心からのアドバイスが込められていました

彼はアビスの未来と幸福を願っており、そのためには決断が必要だと訴えていました。


アビスはルティーに向かって興味深げな視線を送り、軽い驚きを込めて尋ねました。


「ルティー、君は本当に11歳かい?」



そして、やがて彼らは王のいる玉座の間に到達しました。壁や柱には華麗な彫刻が施され、天井からは壮麗なシャンデリアが輝いていました。玉座はそびえ立つように中央に据えられていました。

玉座の前で立ち止まった彼らは、王の姿を見つめました。玉座は高くそびえ立ち、王の側には忠実な側近たちが控えていました。王の威厳ある姿は、間を透き通るような厳かな雰囲気を作り出していました。。


アビスとルティーは、王の前に進み出て一礼しました。王の目は彼らに向けられ、その厳かな雰囲気の中で、会話が始まる準備が整いました。


王の厳粛な声が玉座の間に響き渡りました。彼の目はルティーに向けられ、疑問と驚きがにじみ出ていました。


「面会の予約もとらず、どうしたのか、ルティー?」王の問いに、玉座の間は一瞬の静寂に包まれました。


王の問いに、ルティーは深く息を吐き、王の厳しい視線に堪えながらも、重大なことがあると告げました。


「陛下、折り入って国益につながるお願いがございます。お時間をいただきたいのですが、一度人を払っていただけないでしょうか?」彼の声は丁寧で、しかし懇願のような熱意も感じられました。


王はルティーの言葉に興味を示しましたが、同時に厳しい表情を浮かべました。


「人を下げろ!」王の命令に、側近たちが静かに玉座の間を後にします。彼らの姿が消えると、王の目はルティーに向けられ、彼の言葉を待ちました。

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