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神様のサウナ ~神様修行がてらサウナ満喫生活始めました~  作者: イタズ


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第一村人発見!

ボイルの港に転移した俺達は船旅を開始した。

先ずは俺がハンドルを握る。

方角は北西、風速はおよそ二キロメートル。

追い風が吹いている。

幸先良好だ。


俺は神石に神力を込めてクルーザーを走らせていく。

クルーザーが音を立てて進む。

ギルは穂先に立って海上を眺めていた。

ノンは絶賛お昼寝中。

エルは早くも台所に立って理料を始めている。

ゴンは読書に夢中になっていた。

皆リラックスしているみたいだ。

俺の運転に全幅の信頼を寄せているようである。


ならばと俺は速度を上げる。

クルーザーが壊れない程度に最高速度で走らせていった。

海中のスクリューが途轍もない音を立てていた。

たぶんこれぐらいなら問題ないだろうと安易な俺。


最悪壊れてもスペアは準備されているしね。

それに直ぐに造れるし。

海上の暴走族と化したクルーザーは、進路をグングン進んでいった。


潮風が気持ちよかった。

船旅は順調と言える。

二時間すると運転をノンにスイッチした。

こいつも遠慮なく速度を上げている。


その後、ギル、ゴン、エルの順に操縦者を変更する。

途中何度かカモメのような鳥が並行することがあった。

これぞ船旅と楽しくなってしまった。


さっそく暇になったので釣りでも行うことにした。

クルーザーの速度を時速二十キロぐらいに落として貰う。

今の操縦者はエルだ。


『探索』を行ってみたところ魚群があった為、釣りを開始した。

狙いの魚かどうかは釣ってみないと分からない。

今回は大物狙いではない。


俺としては俺以外の家族に釣りを経験させたかったのだ。

俺とエルを除くその他の家族達は釣り竿を垂らして、今か今かと当たりに集中している。


今回のエサは疑似餌を選択している。

海老で鯛を釣るにしようかとも考えたが、疑似餌を選択した。

だって、何度も同じ疑似餌で釣れた方がエコでしょ?

間違ってるかな?


疑似餌は一般的にタイラバと呼ばれている物で。

派手な装飾に触手の様なヒラヒラが付いた物だ。

ロッドはカーボン製の頑丈な一品だ。

仕掛けなどは赤レンガ工房で俺がせっせと造った。

糸やリールなども拘った使用になっている。


後日トローリングを行うつもりだが、先ずは前哨戦である。

家族の中で釣り初心者はノンとゴンだ。

エルとギルはロンメル達との漁で時々釣りを行っていたらしい。

ただ釣り竿等の仕掛けはここまで豪華な物ではなかったらしく。

これならばバラすことは無いだろうと鼻息は荒い。

俺はノンとゴンに釣りのやり方を教えてから、早速釣り糸を垂らすことにした。


釣り方は簡単で着底させてから巻くだけだ。

着底させたままだと根が掛かりしてしまう。

時々タックルと呼ばれる疑似餌を上下させる方法を取る。

さてどうなることやら・・・


真っ先に当たりがあったのはノンだ。

お!ビギナーズラックか?

本人が予想する以上の引きだったのか面食らっているノン。


「ノン、落ち着いて」


「んっ!」

明らかに力んでいる。


「ゆっくり巻きながら、時折竿を上に挙げるんだ。ゆっくりとだぞ」


「うん」

ノンはぎこちなくもリールを巻きながら、時々竿をしゃくっている。

俺は網を持ってノンに近づく。

魚影が見えてきた。


「お!真鯛か?」


「嘘!」


「いきなり!」

ギルとゴンも驚いていた。

俺は魚を網に捉えて引き上げる。

本命の真鯛をビギナーのノンが釣り上げていた。


「ノン!真鯛だぞ!やったな!」

疑似餌を外して鯛の口を掴んでノンに差し出した。


「いいよ、持たなくても・・・」

こいつ始めて釣れた感動は無いのか?

ていうか魚が苦手なのか?


「お前、持ってみろよ」


「いいよ、僕は食べ専なの!」

はあ?

よく分からんがこれ以上は止めておこう。

ノンの顔は忌避感満々だ。

こいつのことはよく分からん。


そうこうしているとギルとゴンの竿にも当たりがあったみたいだ。

俺はゴンのサポートに向かった。

何とかして釣り上げたゴン。

ゴンが釣り上げた魚はブリだった。


「ゴン、やったな!真鯛ではないけど立派なブリだぞ!」


「はい、やりました!釣りって楽しいですね!」

眼を輝かせているゴン。

釣れれば嬉しいよね。

今度はギルから声が挙がる。


「パパ、こっちも!」

網を持って駆け寄ると魚影が見えてきた。

今度はどの魚なんだ?


「よし!」

俺は魚を網で掬った。

平目だった。

高級魚だ!

これは今日は刺身パーティーだな。

豪勢でいいじゃないか。


「ギル、平目だ!やったな!」

平目の尻尾を持って渡すとギルは大事そうに平目を抱えていた。


「主!またこっち!」

ノンが叫んでいた。

網を持って駆け寄る俺。


結局俺は網役になってしまい、真面に釣りが出来なかった。

俺以外は全員入れ食いだった。

もう!

俺にも釣らせてくれよな!


この日の晩飯は豪華刺身の盛り合わせになった。

それにしても旨い!

最高だ!

普段は魚をあまり食べないノンだが、今日は自分で釣ったからか、たくさん刺身を食べていた。


ちくしょう!

明日は絶対に俺が釣るぞ!


晩飯を終え俺はクルーザーに『結界』を張って、念の為『探索』で海獣が居ないのを確認してから転移扉を開いた。

この転移扉は社長室に繋がっている。

だって入島受付にする理由は無いしね。


今日の見張り当番は俺とゴンの為、俺はゴンと二人で先にサウナ島に帰ってきた。

社長室にはマークがおり、疲労感たっぷりの顔をしていた。


「ただいま」


「あ、島野さんお帰りなさい」

マークが席から立ち上がって迎えてくれる。


「どうした?疲れた顔して?」

いきなりトラブルか?

大丈夫か?


「いえ、そうでもないです・・・」

マークの表情は変わらない。


「何かあったのか?」


「いえ、商人達の相手をして疲れただけです」

そういうことね。

洗礼を受けたって訳だな。


「相手が俺だからか無理難題を言われまして。困ったものです」


「そうか、そんな輩は遠慮なく追い出していいぞ」

無理難題を言う輩は追いだすに限る。

二度と敷居を跨ぐんじゃない!ってね。


「そう言われましても・・・」

ここはちょっと葉っぱをかけておこう。


「マーク、お前は俺の代理なんだぞ、お前が舐められるってことは、俺を舐めてるってことなんだぞ?お前それでいいのか?」

マークは顔を上げた。

その眼には炎が灯り出していた。


「そうですね、島野さんが舐められるのは許せませんね!」

拳を握っている。

これで大丈夫だろう。

マーク性格から考えて、自分より他者を優先する。

それが俺となれば血相を変えるだろうことは分かっている。


「じゃあ俺は風呂に行くけど一緒に行くか?」


「はい、お供します」

俺達は連れ立ってスーパー銭湯に向かった。

今日もスーパー銭湯は繁盛している。

未だ俺と一緒にサウナに入ろうとする者達がいた。

俺はもう気にしないことにした。

やれやれだ。




ゴンとクルーザーに戻り三人と交代した。

今日はこのまま俺とゴンはクルーザーの見張り番だ。

『結界』が張られているので安全は担保されている。

これと言って心配はないのだが放置って訳にはいかない。


俺は星空を眺めて見た。

満天の星空だった。

日本ではこうはいかない。

日本では星空を眺めるなんて無かったな。

センチな気分になりそうだ。


俺達は仮眠室で寝ることにした。

お休みなさい。

いい夢が見られますように。

ターラーラーラーラッタッター。




翌日。

転移扉を潜ってギル達がクルーザーに乗り込んできた。


「おはようさん」


「「おはよう」」


「おはようですの」

挨拶を終え朝食作りに取りかかる。

朝の散歩を行っていないのは久しぶりだ。

たまにはいいよね。


今日は久しぶりに俺が料理を作ることにした。

メニューはノンのリクエストがあり、味噌汁は外せないことになった。

どんだけ犬飯が好きなんだか・・・

昨日釣れた魚を焼いてお米を炊く。

焼き魚定食だ。

焼き揚がったブリが油を滴らせている。

旨そうだ。


「「「「「いただきます!」」」」」

久しぶりの島野一家の大合唱。


ノンが骨がめんどくさいと文句を言いながら食べていた。

好き嫌いは良くないですよ、ノン君。

ゴンは綺麗に魚を食べていた、骨のみが残っている。

お上手なことで。

ギルは骨ごとボリボリと食べていた。

まぁ豪快!

エルは大根おろしで食べていた。

なんとも皆さん個性的ですな。


朝食を終え本日も順番にクルーザーを走らせていく。

そして今日は念願のトローリングを行うことにした。

腕がなるぜ。

遂にこの時がきたな・・・


竿はクルーザーの床板に装備してある金具に装着してある。

これで竿が持っていかれることはないだろう。

こちらもエサは疑似餌だ。

昨日のタイラバよりも倍以上の大きさだ。


速度を時速三十キロぐらいに落として貰い、レッツフィッシュ!

俺は敢えて『探索』は行わなかった。

始めぐらいちゃんとトローリングを楽しみたい。

先ずはズル無しからだ。


竿先を眺めてみる。

軽く撓っているのが分かる。


一時間後。

当たりは全く無かった。

ただただ海面を眺めている。

自己催眠に入ってしまいそうだ。


昔テレビで見た、大物俳優がトローリングをする番組『世界を釣る』を思い出していた。

トローリングとはこんなものなのだろう。

半日近く経っても当たりが無いなんてことはざらの様だ。


そんなことを考えていると念願の当たりがあった。

ビッグヒット!

レッツファイト!


えぐい角度でロッドがしなっている。

俺は一度竿をしゃくって併せた。

これで獲物は掛かったはず。


その後も糸がグイグイと引かれていく。

クルーザーの速度を落として貰い、巻き上げを開始した。

巻いては引かれて巻いては引かれてを繰り返す。

無茶苦茶楽しい!

これがトローリングか?!


結局三十分間格闘し釣り上げることに成功した。

俺は『身体強化』等の能力は一切使わなかった。

純然とトローリングを楽しみたかったのだ。


釣り上げた獲物はカジキマグロだ。

二メートル越えのサイズだ。

良い戦闘バトルだった。

少し腕に疲労感を感じる。


「パパ凄えー!」


「主、やりましたね!」


「大きいですの!」

賛辞が続いた。


ノンは、

「へえー」

無感動だった。

こいつはほんと・・・マイペースが過ぎるな。


「僕もやりたい」

ギルの申し入れに答えることにした。

竿をギルに渡す。

俺はギルにトローリングのやり方を教えた。


気合の入ったギルがトローリングを開始した。

俺はカジキマグロを千貫してから『自然操作』の氷で凍らせて『収納』に保管しておいた。

今日の晩御飯はマグロ尽くしか?


でも昨日の夜も今日の朝も魚だったから辞めておこうかな?

するとギルの竿にいきなり当たりがあった。

恐ろしい程の引きだった。

ロッドのしなりが半端ない。

ボキッといってしまいそうだ。

リールも煙が立ちそうなぐらいだ。

猛烈な勢いで引かれている。


でもご安心ください。

糸はワイヤーと呼べるぐらい頑丈な物だし。

針も『合成』で張り付けてあるから切れることはまず無い。

そしてロッドとリールは実はミスリル製なのだ。

実に金貨五百枚掛かった装備なのだよ。

破壊の心配は不要なのです。

フフフ。


無駄使いと言いたければ言ってくれ。

最高の娯楽には、お金の糸目は付けてはいけないと、俺は学んだのだよ。

それにしても・・・引きが強すぎるような・・・

絶対カジキマグロでは無い・・・


俺は『探索』を発動した。

ん!・・・マジか?・・・


「おーい!皆手伝ってくれ!」

全員を集合させた。

ギルは必死に竿を引いている。


「どうやら海獣が掛かったみたいだ、全員で引くぞ!」


「嘘!」


「海獣?!」


「やるねー」

俺達は全員で竿を引きリールを巻くことになった。

ギル君やビギナーズラックが過ぎませんかね?

始めてのトローリングで海獣に当たるなんて・・・


結果、一時間の格闘の末シーサーペントを釣り上げることに成功したのだった。

あー、疲れた。

いや、ほんと。


「やったー!」


「疲れたー」


「釣れましたの!」

騒いでいるのはいいのだが、このシーサーペントどうしようか?

リリースする訳にはいかないしな。

にしても腕がパンパンだ。

明日は筋肉痛確定だな。

いや、今日の夜か?


俺は『自然操作』の氷で固めて『収納』に放り込んでおいた。

どうしたものか?

サウナ島に持って帰る?

ゴンズキッチンでもやって貰うか?

まぁいいや。

取り敢えず『収納』の中に塩漬けにしておこう。


その後も、途中でマリンスポーツを楽しみつつ北半球を目指した。

特に海上のホバーボードを皆なやりたがった。

船旅は実に楽しいものだった。

俺達は大いにエンジョイしたのだった。


そして分かったのは、小島が所々にあったがこれといった人が生息できるような島は無かったということ。

それにしても天候に恵まれたな。

一度だけ雨が降ったことがあったが、嵐に巻き込まれるようなことにはならなかった。

ありがたいことです。




そして遂に俺達は北半球にたどり着いていた。

やっと辿りついた。

実に六日間の船旅だった。

大半は遊んでいた様な気もするが・・・

まあ許してくださいな。


その海岸はサウナ島の海岸とは違い断崖絶壁の崖が連なっていた。

クルーザーを何処に接舷しようかな?・・・

接舷できなくてもいいか?

錨を降ろして沖にクルーザーを固定することにした。

念の為『結界』は張っておいた。

これで大丈夫だろう。


見張りを置こうかとも考えたが止めておいた。

やんちゃはされないと思う。

そんな不届き者は成敗してやるしね。


俺達はいつもの飛行スタイルで崖を登っていく。

そこには開けた広場があり、その先には森が広がっていた。

誰かに遭遇した時に怖がらせない様に、全員人化スタイルになった。

そして森に入ろうかと歩を進めたその時。


ガザッ!

という音がした。

一人の人?

魔物?が其処にはいた。


それは全身が薄緑色で貧相な体つきをしていた。

まるでユニセフの宣伝に出てくるような、恵まれない子供達の様な体躯。

ガリガリの身体にお腹だけがポッコリと飛び出している。

腰布を纏っただけの服装。

尖った耳と尖った鼻。

右手にはこん棒?

角材?

の様な木材を持っていた。


これは・・・

間違いない、異世界物の雑魚キャラの定番ゴブリンだ。

嘘だろ?!

ここに来てまさかのゴブリン?

第一村人がゴブリン?

オーマイガー!

世界観変わり過ぎじゃね?

北半球ってなんなの?

うーん差し詰めこいつはゴブリンのゴブオ君だな。

多分男性だろう。

胸が無いしね。


するとゴブオ君が言葉を発した。

「ダレ、ダべ?」

・・・

話せるんだ・・・

無茶苦茶たどたどしいぞ・・・

ダべって・・・

どうしよう・・・

知性はあるんだ・・・

ここでの正解が分からない・・・


そうだ!

ここは無害な神様アピールをしよう!

それなら怖がられることは無いだろう。

俺は身体に神気を纏って話し掛けた。


「やあ!始めまして!」

ゴブオ君は固まってしまった。

木材を落としている。

そして一目散に逃げだしてしまった。


「ビエエエエーーーー!」

叫んでどっかに行ってしまった。

ゴブオ君・・・何処え・・・

想定外の第一村人であった。


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