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神様のサウナ ~神様修行がてらサウナ満喫生活始めました~  作者: イタズ


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無料開放

ひと騒動あったその後、風呂に入る者と食事をする者に分かれ、何とか全員をスーパー銭湯に入場させることができた。

それにしても騒がしい。

いつも以上に客で混雑している。

それにもういい加減遅い時間だ、閉店時間が迫ってきている。

そして問題となるのは明日だ。

言ってしまったからにはやらなければいけない。

言っちゃったからねえー。


明日はスーパー銭湯の無料開放だ。

間違いなく大人数が駆けつけるだろう。

入場制限は当たり前に起こるに決まっている。

それだけで終わる訳はないのだが・・・

選択を間違ってしまったか?

それにしても、そもそも俺は祝われる側であって、何で俺がサービスする側に周らなければいけないのか?

いっそのこと全員分の入場料をカインさんに請求してやろうか?

ふう・・・まあ皆が喜んでくれるのならいいか?

これは慈悲深いってことなのか?

たぶん違うと思うのだが・・・

まあいい、こうなったからにはやるまでだ。

俺はサービス精神の塊ということにしておこう。

これ以上の解釈を俺は出来そうもない。

それにしても今日はもう遅いからもう寝るか、明日は朝から大変だな。

やれやれだ。




翌朝。

いつも通りの朝の散歩に向かうと、多くの従業員から話し掛けられた。

海岸通りも心なしか人が多く感じる。


「島野さん、今日は無料開放ってほんとですか?」


「ああ、そうだ」


「今日は休みなんですが、手伝いますので指示してください」


「そうか・・・すまんな」


「島野さん、無料開放ってことは屋台とか出しますよね?」


「その予定だ」


「俺にやらせてください、前からやってみたかったんです」


「そうか、何の屋台をやるんだ?」


「ラーメンがいいかと思うんですが?どうでしょう?」


「いいが、メルルの許可をちゃんと取るんだぞ」


「分かりました、場所は何処にしましょうか?」


「そうだな、スーパー銭湯の入口付近しかないだろうな」


「ですよね」

よくできた従業員達で助かります。

皆が皆、自主的に考えて行動している。

なんとも逞しい限りである。


ランドからは、

「島野さん思い切りましたね。入島料と入泉料無料ですか?」


「まあな、そうでも言わんとあの場では納得してもらえなかっただろうしな、ギルにやられたよ」


「にしもギルの奴、好き放題やってましたね」

ほんとだよ。


「だな、これで気が済んだんじゃないか?」


「ですかね?ギルはまだまだやりそうな気がしますよ」


「おいおい勘弁してくれよ。ギルはいいとして、無料でもちゃんと受付業務は行ってくれよ。何かあった時には頼むぞ。あとエクスもちゃんと指導してくれよ。舐めたこといったら締め上げてくれな」

あいつには強めの指導が必要だからな。


「締めあげてくれって、俺に出来ますかね?」


「簡単なことだ、俺に言いつけるって言えばいいさ」


「それでいいなら楽勝です!」


「あいつはまだまだ子供だから、一から教育しないといけないからな」


「それは分かります」


「昨日でだいぶ分かったとは思うが・・・根が人を舐めている上に、お調子者だからな」


「そのようですね」


「困ったものだ」


「気苦労が絶えませんね島野さんは」


「全くだ」

俺達は散歩を終えて朝食を取る為に大食堂に向かった。

大食堂では既に多くの従業員が朝食を摂っていた。

いつもよりも多いな。

皆なありがたいことだ、今日の状況を理解している。


最近の朝食はバイキング形式となっている。

各自が好きな物を食べれるのが好評だ。

所謂ホテルの朝食ってやつだな。


「皆、食事しながらでいいから聞いてくれ!」

全員がこちらに注目している。


「今日は無料開放することになったのは聞いていると思う。悪いが休日の者で手伝うことが出来る者は出勤して欲しい。もちろん休日手当は支給させて貰う。あと、この場にいない従業員にも声を掛けてやってほしい。本来なら残業もさせないが、今日に限っては残業出来る者は残ってくれ、当然残業手当は支給する」

本当は休日出勤や残業は認めたくないのだが、今日ばかりはどうしようもない。

無念だ!


「やった!」


「よっしゃ!」


「やりますよ!」

こいつらはほんとうに働き者だな。

ありがたや、ありがたや。


「あと、テリーはいるか?」


「はい!ここです!」

テリーが手を挙げる。


「ちょっといいか?」


「はい、今向かいます」

テリーが席を並べる。


「テリー、おはようさん」


「おはようごいます」


「今日のキャンプ場はどんな感じだ?」


「夜の予約は既に満席です」


「昼は大丈夫だよな?」


「はい、特には。何かしますか?」


「たぶんお客で溢れるから、昼からバーベキューを行えるようにしておいてくれ。下手すると朝からかもしれん。飲み物と食べ物も多めに準備しておいてくれ」


「分かりました」


「頼んだぞ」


「了解です!」

うん、良い返事です。

にしてもテリーも頼れる存在になったもんだ。

俺としても誇らしいよ。

俺は朝食を終えて厨房に入った。

さっそくメルルを捕まえる。


「メルル、今いいか?」


「はい、屋台ですよね?」

話が早くて素晴らしいです。


「そうだ、何台いける?」


「四台ですかね?」


「そうか、内容は任せるがアルコール類も提供できるように手配してくれ」


「分かりました、いつから始めますか?」


「落ち着いてからでいいぞ、俺も手伝うから言ってくれ」


「否、それには及びません。それよりも来賓のお相手をしてください。島野さんにしか出来ませんよね?」

うう・・・メルルにはバレているようだ。

それが一番したくないんだよな。

流石に昼から飲まされることは無いとは思うが気は抜けないな。

その後俺は念のため各施設を巡ってみた。


至るところで、

「大丈夫です」


「手は足りてますから」


「ちゃんと分かってますから」

誰も取り合ってはくれなかった。

俺の存在意義って・・・

自分の仕事をやれということなんだろう。

うん、きっとそうだ。

要はお前は自分の仕事をしろと、手伝いと言う名目のサボりは許さんぞ、ということだな。

それが一番面倒臭いんだよね!

そうこうしていると『念話』が入った。


「マスター、聞こえるか?」


「ああ、エクスどうした?」


「マスター大変だ、もう入島受付がいっぱいなんだよ。どうすればいい?」

はあ?もう?

まだ八時前だぞ。

しょうがないか、開けるか。


「しょうがない、開けてくれ」


「分かった。じゃあ受付を開始するぞ!」


「頼んだ」

始まったか・・・激動の一日になりそうだ。




入島受付を解放してから僅か三十分後。

サウナ島は人で溢れていた。

嘘だろ?!

途轍もない数の人々が大挙して訪れていた。


早くもスーパー銭湯の入口には長蛇の列が並び、今か今かと入口の扉が開くのを待っていた。

それだけでは無い、入島受付からスーパー銭湯まで敷かれている石畳の両脇に設置を開始している屋台にまで列が作られている。

まだ屋台は建設中だというのに・・・


流石に見かねて俺も屋台の設置を手伝うことにした。

ありがたいことに数名のお客も作業を手伝ってくれた。

手数が多いお陰か僅か数十分で四台の屋台が完成した。


その後も手伝おうとしたのだが、

「もう大丈夫です」

俺は追いやられてしまった。

うう、やっぱり駄目か・・・


また『念話』が入る。

今度はギルだ。


「パパ、スーパー銭湯開けてもいいかな?」


「開けるしかないだろう」


「だよね、じゃあ開けるね」


「任せた」

スーパー銭湯も入場を開始した。

そしてものの三十分でお風呂の入場制限が行われていた。

入場制限が行われる最短記録である。

そして大食堂を覗くと既に満席となっていた。

それだけならまだしも朝から宴会を開始している客が多数いた。


これは・・・カオスだな・・・

手が付けられない・・・

そしてスーパー銭湯自体にも入場制限が行われていた。

無料開放恐るべしだ!


外を見に行くことにした。

案の定キャンプ場ではバーベキューが開始されていた。

テリー達もてんやわんやだ。

ここでも宴会が開かれていた。

どんだけ朝から飲みたいんだよ!こいつら!


一旦これは事務所に避難だな。

俺は事務所に行くとマリアさんとオリビアさんが俺を待ち受けていた。


「守さん、おはよ」


「守ちゃん、おはよう!ムフ!」


「お二方おはようございます、二人揃ってどうしたんですか?」

二人を社長室に通した。


「守ちゃん、お願いがあるのよ」

マリアさんが話し出す。


「お願いですか?」


「そうよ守ちゃん、歌劇場を造ってちょうだい!」


「歌劇場ですか?」


「いいでしょ?」

オリビアさんも追随する。

さては昨日のギルの一件で火がついたな。

でも、はいそうですかとはいかないな。


「歌劇場で何をする気なんですか?」


「ライブよ!」


「ミュージカルよ!」


「・・・」

揃ってませんがな・・・


「どっちもよね、マリア・・・」


「そう、そうねオリビア・・・」

なんだかな・・・


「あれですか?昨日のギルの熱弁で火が付いたんですか?」


「そうよ!ギルちゃんはエンターテイナーよ。あの子はもっと伸びるわ。私がプロデュースすればもっともっとよくなるわ!」

マリアさんは必死だ。


「それに私ももっといい環境で歌いたいのよ!」

オリビアさんも必死だ。

なんだかな・・・まあ別にいいけど・・・けどな・・・


「別にいいですけど、どれぐらいの規模で考えてるんですか?」


「そうね・・・五百人が入れるぐらいかしら?」


「駄目よ!そんなんじゃ、もっとよ!」


「ちょっと待ってください。適当に言わないで貰えますか?まさか何も考え無しにここに来てないですよね?」

二人は分かり易く下を向いていた。

おいおい、いい加減にせいよ。

丸投げは許さんぞ。


「あのですね、俺は何でも屋ではありませんよ、ただやりたいで何でも叶えるランプの魔人じゃありませんからね!」


「そ、そうよね」


「だよねー」

視線すら合わせない二人。


「ちゃんとそれなりに話を纏めてから来て貰えませんか?別に協力しないとは言わないですから、丸投げは止めてください!」


「う・・・」


「ムフ・・・」

ほんとにこの人達は・・・甘やかし過ぎたか?


「それにやるからにはちゃんと利益が出る構造にしないと続きませんから、そういった点もちゃんと考えてくださいね」


「利益って・・・」

絶望的な表情を浮かべるオリビアさん。


「そ、そうよね・・・」

考え込むマリアさん。


「歌劇場を造るのにいくらかかるのか?誰が管理して、どういった興行を行うのか?どうやって客を集めるのか?考えることは山程ありますよ、ほんとに分かってますか?」


「うう・・・」


「・・・」

二人は小さくなっていた。

実に分かり易い。


「せめてそれぐらいは考えを纏めてからにして下さい。俺に丸投げは絶対に無しです。特にオリビアさん!いいですね?」


「分かりました・・・」

二人は肩を落として帰っていった。

歌劇場か・・・大食堂のステージで充分だと思うのだが・・・物足りないということなのかな?

まぁいいや。




そういえばアンジェリっちが話があると言っていたことを思い出し、俺は美容室に行くことにした。

それにしても凄いことになっている。

島の至る所で宴会が開かれていた。


準備が良いと言うのかなんと言うのか、こうなることを見越していた者達が多いようだ。

なんと御座を敷いて宴会を行っている。

そこまでして朝から飲みたいのかね?

絶対にこいつらは努力の方向性を間違っている。

もっと違うことに頭を使ってくれよな!全く!


お店街では宴会を行っている者達は居なかった。

いたら追い出してやろうと思っていたが、それぐらいの配慮は有るみたいだ。

返って面倒だな。

何なんだよこいつら!!!


美容室に入るとアンジェリっちが、

「守っち、お帰り」

独特な歓迎を受けてしまった。

この人達のノリは独特だ。


メグさんとカナさんも、

「お帰りなさい」


「お帰り」

俺に挨拶を行っている。

俺の家ではないのだが・・・

でも何と無く悪い気はしない。

身内と感じてくれているということなんだろう。

であれば遠慮なく。


「ただいまアンジェリっち、前に話があるって言ってなかった?」


「そうそう、奥で待ってて」


「はいはい」

俺は奥の控室で待つことにした。

確かに俺はこの控室に慣れている。

お帰りなさいとは言いえて妙だな。


俺は『収納』からアイスコーヒーを取り出して、アンジェリっちを待つことにした。

それにしても今日はこの先どうなるんだろうか?

サウナ島は大宴会場と化している。

無料開放がここまでのインパクトになるとは思わなかった。

夜まで持つんだろうか?


幸い今のところお酌攻撃は始まってないが気は抜けないな。

どこでどう捕まるか分かったもんじゃない。

そういえばエルフの胃薬を貰ってなかったな。

後で貰いに行こう。

等と考えているとアンジェリっちが控室にやってきた。


「守っち、お待たせ」


「お疲れさん、で、話って?ああ待った!何か飲む?」


「ありがとう、同じ物を貰うわ」

俺は『収納』からアイスコーヒーを取り出して渡した。


「それで、今は大丈夫なの?」


「うん、丁度手が空いたから」


「それで?」


「あのね、こんなこと守っちに聞くことでも無いかもしれないけど、もしかしたら異世界の知識で何とかなるかも?と思っての相談なんだけどね」


「望み薄ってこと?」


「そう、でもせっかくだからする相談なんだけど、エルフの村全体、否、エルフ全体に関わる話なんだけどね、実はエルフって妊娠率が低いのよね」


「妊娠率?」


「そう、種族的なことなんだと思うんだけど、簡単にいうとエルフは妊娠しづらいのよ」


「へえー」


「それでもこれまで何とか血を絶やすことなく、種族を存続させてきたんだけど、最近は特に妊娠率の低下が著しくてね。どうにか出来ないかと思ってね」

これは俺にはどうにも出来ないな。

俺は産婦人科医では無いし、ましてや誰かを妊娠させたことすらない。

それに妊娠率を上げるような手立てはまったくもって思いつかない。

これは現代日本にとっても問題となっている課題だ。

正に少子化問題だ。

到底俺にどうにかできるとは思えない。

アンジェリっちには悪いが力になれるとは思えないな。


「すまないがこればかりはどうすることも出来ないな・・・」


「そうよね・・・」

ん?ちょっと待てよ?・・・でもこれでどうにか出来るのだろうか?

でも有ったに越したことはないのか?

どうなんだろう?

俺は『収納』からオットセイの牙を取り出した。


「よかったらこれをあげるけど、妊娠率を上げる効果があるかは分からないな」

オットセイの牙をアンジェリっちに手渡した。


「ちょっと・・・」

何故だかアンジェリっちは顔を真っ赤に染めていた。

ん?どういうこと?


「どうした?」


「・・・」

アンジェリっちはらしくも無く照れた表情をしていた。


「ん?」


「・・・守っち・・・知らなかったんだろうから、いいんだけどね・・・・」

アンジェリっちにしては歯切れが悪いな。


「何が?」


「・・・あのね・・・エルフの風習でね・・・オットセイの牙を男性が女性に渡すのはね・・・結婚してくださいってことなのよ・・・」

アンジェリっちは下を向いて話していた。

視線すら合わせようとしない。

えっ!・・・嘘でしょ!

いやいやいや!!!


「ちょっ!・・・そんなつもりは・・・ねえ?」


「分かってるわよ!・・・」

俺も顔が赤くなってきているのが分かる。

無茶苦茶恥ずかしい!

ちょっとちゃんと教えといてよ!

これはいかんよ。


「あの・・・何だかごめんなさい・・・」


「うん・・・ちょっとビックリした・・・」

あれ?満更でもない?

もしかしてアンジェリっち・・・いやいやいや!

勘違いは良くない。

俺としても嬉しいな・・・

駄目だ、俺は何を勘違いしている・・・

冷静になろう・・・そうだ複式呼吸だ。

鼻から吸って・・・口から吐く・・・鼻から吸って・・・口から吐く・・・

はあ・・・これは何とも・・・

ちっとも落ち着かない。

心臓がバクバクする。


「それでこのオットセイの牙で妊娠率は上がるのかな?」


「多分ね・・・」


「あといくつかあるけど・・・エルフの村に寄贈しようか?」


「そ・・・そうね・・・貰えるなら・・・」


「分かった・・・何だかごめん・・・」


「いいのよ・・・」

気まずい!

無茶苦茶気まずい!

逃げ出したい!


「じゃあここに置いておくね」

俺は三個オットセイの牙を置いておいた。


「ごめん・・・じゃあ行くわ・・・」


「うん・・・」

俺はそそくさと美容室を後にした。

ああ・・・まだ顔が赤くなっているのが分かる。

俺は年甲斐も無く何をやっているんだか・・・

この齢でアオハルかよ!

でも悪い気はしないな・・・

いやいや、何を考えているんだ。

その後エルフの薬ブースに立ち寄って、俺は胃薬を受け取った。




事務所に帰ると社長室でオズとガードナーが待っていた。


「島野さん、お祝いに来ました!」


「おめでとうございます!」

二人は既に一杯始めていた。

どうやらワインを持ち込んでいるみたいだ。

ワインの瓶が五本も置かれている。

どんだけ飲むつもりなんだ?こいつらは!

なんだか俺も飲みたくなってきた。

まだ気が動転しているみたいだ。

とにかく落ち着きたい。


「じゃあ俺も飲ませて貰おうかな?」


「勿論ですよ、ゴンすまないがグラスをもう一つ貰えるか?」

オズが受付に向かって話し掛ける。


「分かりました」

ゴンの返事が返ってくる。


「あれ?島野さん顔が赤くないですか?」


「そ、そうか?まだ飲んでないぞ・・・」

いやいやいや、オズそこはツッコまないでくれよ。


「にしてもお前達、朝からここに居ていいのか?」


「何を言ってるんですか?祝いに絶対に駆けつけるって言ったじゃないですか?」


「そうですよ島野さん、祝いなんですから、今日は仕事は無しです」

笑顔で答える二人。

そんなに祝いたいのか?

何でなんだ?


「なあ、何でそんなにこの世界の人達はダンジョンを踏破したことにそこまで興奮するんだ?俺にはちょっと分からんぞ」


「島野さん、ダンジョンの踏破は歴史的な快挙なんですよ。カイン様がダンジョンを踏破したのは、今より二百年以上も前なんです。それにカイン様が踏破したダンジョンは今のダンジョンとは違って、十階層までしか無かったということらしいです、現在のダンジョンを踏破するのは簡易モードであってもS級ハンターでも無理と言われていたんです。そりゃあ興奮するに決まってます。ましてや超ハードモードとなると真の勇者にしか踏破出来ないと言われてきたんですからね」

勇者って・・・これを聞いたらまたギルが何かやらかしかねないぞ。

あいつの中二病は治りそうもないからな。


「勇者ってさあ、いちいち大袈裟なんだってお前らはさ・・・」


「何を言ってるんですか?もっと誇ってくださいよ」


「とはいってもな・・・そもそも島野一家は過剰戦力なだけなんだって」


「それが良いんじゃないですか!私にとっては誇り以外の何物でもないですよ。だって友人二人とゴンがいるんですよ!これ以上に嬉しいことはないですよ!」

オズはギル並みに熱弁していた。

オズにしてみればそうなのかもしれないが、なんだかね・・・

ここでゴンがグラスを持ってやってきた。

グラスを受け取ると並々とワインが注がれる。


「ゴンは飲まないのか?」


「私は今日は止めておきます。先日飲み過ぎてやらかしましたので」


「そうか、じゃあまた飲もうな」


「はい」

オズとゴンは親し気にしていた。

こいつらは再会時にはいろいろとあったが今では良い関係性を保てているようでなによりだ。


「では、ダンジョン踏破おめでとうございます!乾杯!!!」


「「乾杯!!!」」

ワイングラスを持ち上げた。

グビグビと飲みだすオズとガードナー。

ちょっとペース早いって・・・

俺は一口ワインを舐めた。

朝から飲む罪悪感ったらありゃしないよ。


「そういえばゴン。ダンジョンを踏破して更に強くなったんじゃないか?」

オズは誇らしげだ。

オズにとってはゴンが強くなることが嬉しい様で、現在の強さに興味深々らしい。


確かにダンジョンを踏破してからステータスを確認してなかったな。

正直気にもかけて無かった。

そもそもこいつらのステータスを長い事確認していない。

ギルからは『熱弁』と『千両役者』を手に入れたとは聞いたけど。

俺はどうなっているのだろうか?

今は止めておこう。

到底そんな気分にはなれない。

気を抜くとアンジェリっちのことを考えてしまいそうだ。

たぶんダンジョン踏破でレベルが上がってはいるだろうけどね。

何度もアナウンス入ってたし。

でもゴンのステータスはちょっと気になるな。

せっかくだから見てみようかな?


「ゴン『鑑定』してもいいか?」


「いいですよ」


「そうか」


『鑑定』


名前:ゴン

種族:九尾の狐Lv23

職業:島野 守の眷属

神力:0

体力:2556

魔力:3457

能力:水魔法Lv23 土魔法Lv20 変化魔法Lv16 人語理解Lv9 人化Lv8 人語発音Lv8 念話Lv3 照明魔法Lv2 浄化魔法Lv2 契約魔法Lv2 付与魔法Lv2 空間収納魔法LV2


そこまで上がってないような・・・

まあ、そもそもこいつらはレベルが高いような気がする。

既にカンスト状態か?

これ以上はそうそう上がらないだろうな。

充分に強いしね。


水魔法が特出しているのは、一時期畑の水やりをゴンに任せていたからだろうか。

特にゴンは強さに拘っていないように思える。

こいつが今求めるのは生活魔法の類だろうし。

多分強さを求めているのはギルぐらいだろう、ノンに関してはよく分からん。

エルは・・・もっと分からん。

せっかくだから他のメンバーも見てみるか。


俺は『念話』でギルに社長室にノンとエルと集合する様に伝えた。

こいつらのステータスを見るのも久しぶりだな。

どうなっていることやら。


『鑑定』


名前:ノン

種族:フェンリルLv30

職業:島野 守の眷属

神力:0

体力:5448

魔力:4985

能力:火魔法Lv19 風魔法Lv22 雷魔法Lv25 人語理解Lv8 人化Lv7 人語発音Lv7 念話Lv3


ノンが一番レベルが高いな、しょっちゅう狩りをやっているからそんなもんか。

でもこいつも頭打ちっぽいな。


『鑑定』


名前:エル

種族:ペガサスLv21

職業:島野 守の眷属

神力:0

体力:3043

魔力:5002

能力:風魔法Lv23 浮遊魔法Lv18 氷魔法Lv19 雷魔法Lv18 治癒魔法Lv15 人語理解Lv8 人化Lv8 人語発音Lv7 念話Lv3


エルも強くなってるな。

でもエルも頭打ちのように感じるな。


『鑑定』


名前:ギル

種族:ドラゴンLV3

職業:島野 守の子供

神力:2843

体力:6504

魔力:5434

能力:人語理解Lv7 浮遊魔法Lv7 火魔法Lv18 風魔法Lv17 土魔法LV17 人語発言L18 人化魔法Lv7 神気操作LV4 念話Lv3 念話(神力)Lv3 神気解放Lv1 神気放出Lv2  熱弁Lv1 千両役者Lv1


おお!遂にギルがドラゴンに成ったぞ!

いよいよ大人の仲間入りか?


「ギル!遂にお前ドラゴンになったじゃないか!おめでとう!」


「おお、ギル君おめでとう!」


「「おめでとう!!!」」

ギルは照れていた。


「これで僕も大人の仲間入りさ!」

せっかくだから俺のステータスも見ることにした。


『鑑定』


名前:島野 守

種族:半人半神

職業:神様見習いLv51

神気:計測不能

体力:2404

魔力:0

能力:加工L7 分離Lv7 神気操作Lv7 神気放出Lv4 合成Lv6 熟成Lv5 身体強化Lv5 両替Lv2 行動予測Lv3 自然操作Lv7 結界Lv2 同調Lv2 変身Lv2 念話Lv3 探索Lv4 転移Lv5 透明化Lv3 浮遊Lv4 照明LV2 睡眠LV2 催眠LV3 複写LV4 未来予測LV2 限定LV2 神力贈呈Lv1 神力吸収Lv1 初心者パック

預金:6432万4355円


ああ・・・いよいよ俺は人では無くなったようだ・・・

さらば人類・・・さらば人間としての俺・・・

一気にレベルが上がったのはダンジョンを踏破したからなのか?

否、エアル街の再興に協力したからだろうな。

それなりに徳を積んだという事かな?

やれやれだ。


「なあ、遂に俺も人では無くなったみたいだ」


「「「「ええー!!!」」」」

全員が仰け反っていた。




その後酔っぱらったオズが俺への賛辞と感謝を語り出し。

隣にいるガードナーがそれを聞いて大号泣。

何とも言えない気持ちになっていたところに、なし崩し的に神様ズが現れて、結局会議室で宴会となってしまった。


今回もアホほど飲まされて、気がついたら会議室の机に突っ伏すようにして俺は寝てしまっていた。

起きるとさっそく頭痛と吐き気に襲われた。

息が酒臭い。

完全な二日酔いである。


ありがたい事にエルフの胃薬はとても良く効いた。

胸焼けが一瞬で治っていた。

でも当分の間はアルコールは控えたい。

あー、しんど。


周りを見ると地獄絵図となっていた。

床には裸にされたランドールさんが寝ており、よく見ると顔に落書きをされていた。

そのランドールさんに、後ろから抱きつくようにマリアさんが眠っており、そのマリアさんに後ろから抱きつくようにオリビアさんが寝ていた。

この人達はなにやってんだか・・・

机にはタイロンの三柱が突っ伏して寝ており、その足元ではゴンズ様が大鼾をかいて寝ている、そのゴンズ様を枕にレケが酒瓶を抱えて寝ていた。

社長室のソファーでは剣化したエクスを抱えて、ゴンガスの親父さんが鼾をかいて寝ており、その足元でカインさんが大の字を書いて寝ていた。

どうやら五郎さんとドラン様とデカいプーさんは帰っていったみたいだ。


そこら中に酒瓶が散らかっている。

俺はため息をつくしか無かった。

酒を抜こうとスーパー銭湯に行くと、エルフの薬ブースで顔見知りの店員に話し掛けられた。


「島野さん、ゾンビみたいな顔してますよ。大丈夫ですか?」


「いや、大丈夫じゃない。二日酔いで死にそうだ」

ほんとにしんどい・・・


「そんな感じですね。あっ!そうだ。これ飲んでください」

丸薬を手渡された。


「これは毒消しです。二日酔いにはこれですよ」

おお!そんな薬があったとは!

これは助かる!


「ありがとう!いくつかストックも貰えるか?」


「ええ、いいですよ。島野さんにはお世話になってますので」

更に丸薬を貰った。

俺は丸薬を口に入れ、自然操作の水を口にダイレクトに入れて飲み込んだ。

ものの数分後に頭痛が治っていた。

エルフの薬恐るべし!

エルフの伝統に感謝です!

でも当分の間はアルコールを控えたい。

肝臓君が心配でなりませんよ。


無料開放は相当なインパクトを残していた。

過去最高の客入りとなり、入場制限も常に行われることになっていた。

夕方に来島したお客がスーパー銭湯に入るのに、最大二時間待ちとなっていたらしい。

スーパー銭湯だが現場の判断で閉店時間が深夜二時まで延長された様だ。

当分の間俺は無料開放は行わないことを心に誓った。

というより二度とやりたくない。

本当にやれやれだ。



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