能力開発
今日は能力の開発を行っている。
今取り組んでいるのは聖獣の皆が使っている火・水・土・風・氷・雷の所謂自然操作系についてだ。
俺は魔法が使えない、だが能力として獲得できれば、余りある神力で操作が出来ると考えている。
これらの能力を獲得出来れば様々なことができる。
火については言わずもがな。
サウナの火付けに始まり風呂の温度を上げること。
何より着火できなければ料理ができない。
今はノンにやってもらっているが、この先もこのままという訳にもいかないだろう。
出来れば火加減は自分で行いたい。
水は畑の水やりが楽になるのは当たり前だし、風呂にも使える。
土に関しては畑の拡張であったり、まだまだこの島を開発していく予定なので何かと使えると思う。
風は火の調整に使えるし、ここから派生して開発していきたい能力も多々ある。
氷は何よりも水風呂を冷やせる、あとは冷えたビールが飲める。
これは何が何でも欲しい能力だ。
キンキンに冷えたビールは是が非でも獲得したい。
雷は今は狩以外には特に思いつかないが、電力として考えれば何かとできることは広がるだろう。
どれも狩りにはあった方がいいのは当たり前の能力だし、獲得しないという選択肢は無い。
先ずは一番簡単そうに思えた風についての能力獲得を目指す事にした。
風は暖かい所から寒いところに向かって吹く、大事なのは温度差。
目の前にある空気に温度差があることをイメージする。
具体的には左の手の上に熱を感じるイメージ、温度は四十度ぐらい。
今度は右手に温度を感じるイメージで二十度ぐらい、まだ風は吹かない。
ここまでは想定通り。
もっと具体的にイメージを固める。
左手は炭酸泉に入っている時の温度のイメージ、右手はぬるめの水風呂に浸かっている時の温度のイメージ。
これが俺にとっては一番イメージしやすい。
そして仕上げに軽く両手に神気を流し込む。
すると左手から右手に向かって風が吹いた。
成功!
あれ?
ピンピロリーンは?
気を取り直して次は水、水は空気中に含まれている。
熱の境目に現れるイメージ、具体的には冷えたグラスに空気が触れグラスの表面に水が発生するイメージ。
これも先程と同様に右手の上に冷えたグラスをイメージし、左手から暖かい風が吹くイメージ。
グラスの表面に意識を集中して軽く神気を流し込む。すると手の平に水が発生した。
成功!
ん?
また無いなぁ、出来てるけど・・・
まぁいいでしょう。
次は簡単だ、氷だ。
先ほど発生した水に冷えた風を一気に吹きかける。
冷えた風のイメージとしては、一度行ったことがあるサウナの有名店のアイスサウナ。
凍える程に寒い風が室内に吹いていた。
直ぐに出来た。
おそらくイメージが俺にとっては簡単過ぎたんでしょうね、サウナ関連なら間違いないのでね。
次は土。
裸足になり足の裏に土を感じる。
一度軽くとんとんと足を動かしてみる。
足の裏全体で強く地面を感じる。
足の指で地面を掴んでいるかの様だ。
そしてイメージを固めていく。
イメージとしては自分の足の裏から無数の触手が伸びて地面の中に広がるイメージ。
無数に広がる触手全てが感触を帯びて大地と一体化するイメージを固める。
大地の中の鉱物を感じる、気体や液体も感じる、勿論土の感触も、粘土、岩、石、有機物までも・・・
足の裏に神気を込め大地がせり上がるイメージを加えた。
成功!
足元の土が数十センチほどせり上がっていた。
少しこれまでにないイメージの深みを感じた。
これはこれで違う能力の獲得に繋がりそうな気がした。
大地と繋がる・・・実にいい経験をした。
もっと繋がりたいとの衝動に駆られたがここは抑えておこう。
次に火だ。
一本の枯れた枝をイメージした。
その枯れた枝に先の尖った一本の硬い木をイメージする。
枯れた枝を横にし先の尖った硬い木を垂直に置く。
そしてその垂直に置いた木を高速で回転させる。
いわゆる火付けの作業、枝の接地面に意識を集中する。
設置面に高熱が発生するイメージを重ねる。
さらに空気中の酸素がどんどん接地面に吸い寄せられていくイメージを加えた。
仕上げにその設置面に意識を集中し神気を流し込む。
成功!
火が付いていた。
もうアナウンスはどうでもよくなっていた。
最後に雷だ。
風が発生し上空に雲が発生する所をイメージする。
そして雲の中で温度が急激に冷えるイメージを重ねる。
雲の中で冷えた水が氷となり、氷がぶつかり合って電荷が溜まっている様をイメージする。
最後に神気で身体を覆う。
そして雷が落ちる。
ドーン!!!
俺の目の前に雷が落ちた。
危っぶな!
成功!
ピンピロリーン!
おっ!やっとか。
ステータスを確認すると能力欄に『自然操作Lv1』が加わっていた。
なるほど、そういうことね。
一括りということみたいだ。
俺の『加工』もLv4になり、かなりの腕を上げたと思っている。
そんな腕を試したくなり、ちょっとした遊び心だった。
「ノン、ノンが抱えられるぐらいの大きな岩か、石を持ってきてくれるか?」
「分かったー、ちょっと待っててねー」
そう言ったノンは、海岸を北の方に駆けていった。
一時間後。
高さ一メートルぐらいの岩をノンが抱えてきた。
「でっかいなー、ノン凄いな!よく持ってこれたな」
ノンを褒めてやる。
「ノン凄いでしょー」
頭を撫でてやった、喜んでいる様子。
こいつはほんとに甘えん坊さんだな。
「ノン見てろよ」
『加工』の能力でノンの獣姿の石像が出来上がった。
我ながら上出来だ、躍動感に満ちた石像に仕上がった。
「わっ!わっ!わっ!凄い!凄い!」
大はしゃぎのノン。
ぴょんぴょん飛び回っている。
上機嫌のご様子。
せっかくだから家の前に飾ってやった。
こんなに喜ばれるとは思わなかったが、我ながら良い仕事をした。
その様子を見ていたのか、一時間後ゴンが八十センチぐらいの岩を抱えて持ってきた。
それも汗だくになりながら・・・
これは造るしかないな。
今度はゴンの獣姿の石像が完成した。
ゴンは嬉しそうにしながら照れていた。
これもゴンの家の前に飾ってやった。
そうなるとやっぱり岩を抱えたエルがいた。
当然エルの石像も作成しゴンとエルの家の前に飾った。
んー、何かが足りない気がした。
あっ!
「ノン、悪いがもう一度岩か石を持ってきてくれるか?こんなに大きくなくていいからさぁー」
度々で悪いがノンにお願いした。
「いいよー、行ってくるねー」
その後、高さ五十センチぐらいの岩をノンが運んできてくれた。
さて、気合をいれるか。
『加工』これまで以上にイメージを鮮明に描いてみた。
そして感謝の念を込める。
よし、出来た!
創造神様の石像が完成した。
なんかちょっと輝ってる?気のせいかな?
せっかくなので畑の傍に簡単な祭壇というか、石を並べただけ?の土台を作り、創造神様の石像を祭ってみた。
翌日、ちょうど野菜がたくさん収穫できたので、野菜と日本酒をお供えしてみた。
「創造神様、お陰様で衣食住に困ること無く、サウナ満喫生活を送っております、よろしかったらこちらをどうぞ、今後も温かく見守ってください」
するとお供えした野菜と日本酒が消えていた。
何じゃこりゃ?
数時間後、創造神様が島にやってきた。
「おーい、守よー、元気にやっとるかー!」
現金な爺ぃめ、お供えしたら来るんかよ!
「そうじゃぞ、あの日本酒とやらが旨かったから飲みに来たぞー」
あっ!心を読みやがったな。糞!
「しっかり聞こえとるぞー」
やれやれだ。
「で、晩飯も要りますか?」
「おー、すまんな、頼めるかのう?」
創造神様は椅子に腰かけた。
「了解、嫌いな食べ物とかありますか?」
俺はテーブルの上を片付けながら話し掛けた。
「何でも結構じゃ」
さてと、何にするか?簡単にステーキでも焼きましょうかね。
海藻サラダとご飯に味噌汁これは作り置き、肉はチキンステーキだな、ステーキソースは刻んだ玉ネギに醤油、味のアクセントに唐辛子とニンニクを少々。
焼き加減はよく焼きでと、さて出来上がり。
カリカリに焼けた表面が食欲をそそる。
中はジューシーになっているはず。
そろそろご飯にすると三人に声を掛けた。
「ノン、ゴン、エル、こちら創造神様、よろしくな、でこちら」
創造神様が遮って話しだした。
「あー知っておる、フェンリルのノンと九尾のゴンじゃな、あとはペガサスのエルじゃな」
ノンはいつも通りな感じだがゴンとエルは緊張で顔が引き攣っている。
「「よ、よろしくお願いいたします」」
ゴンとエルが何とか声を振り絞っていた。
「ノンだよー、よろしくねー!」
うーん、こちらは通常運転。
「では」
手を合わせて。
「「「「「いただきます!」」」」」
五人で合唱した。
「やはり万能種から作る野菜は格別じゃなー」
美味しいようでなによりです。
「何か万能種には秘密でも?」
分かってはいるが敢えて聞いてみた。
「いやー、特にはないのじゃが」
日本酒を創造神様のお猪口に注ぐ。
「そうですか、神気が関係しているのでは?」
「それはお主も理解しておろう?」
まぁ分かってはいましたよ。
「それで、神気って結局のところ何ですか?」
これには答えてくれるかな?
「うーん、本当に答えてよいのか?お主、自分で紐解く方が好きなんじゃないのか?答えてやることはできるが、自分で解明したいんじゃないのか?」
そうか、俺の性格まで丸分かりなんですね。
「確かに・・・」
「お主のことは目を付けてから何年も見てきておる、お主の性格は把握しておるんじゃ。だから説明も程々にこっちの世界に連れてきたんじゃがなぁ」
はぁ、やっぱりな。
そんなことだろうと思ってましたよ。
「まぁどうせそんな事だろうと思ってましたよ」
創造神様がクイっとお猪口を飲み干した。
「しかしこの酒は上手いのー」
「そんなに気に入ったんならお土産に何本かどうぞ」
お神酒には日本酒が定番なのでは?この世界では違うのかな?
「そうか、そうか、すまんのー」
「で、創造神様も忙しいんでしょ?そろそろ本題に入ってもらっても?」
「流石は守じゃ、察しが良いようじゃな」
創造神様がグイっと近づいてきた。
「実はな、お主も感じておるとは思うがのう、この世界の神気は薄くなってきておるのじゃ、日本とは違って薄く感じるじゃろ?」
「ええ、それは感じてました」
やはり薄かったのか、日本が濃い訳ではなさそうだ。
「それでのう、直ぐにってことでは無いのじゃが、このままこの世界から神気が消えて行ってしまうと、この世界が崩壊してしまうのじゃ」
この爺い平然と言うことかね?
いきなりふらっと立ち寄ってきてこれかい!
「で、崩壊まであと何年ですか?」
あと一年とか言われたら堪らんぞ。
「いや、はっきりとは言えん、じゃが数年で崩壊とはならんじゃろうて」
それは有難い、出来れば三十年以上はもって欲しい。
後三十年はサウナ満喫生活を続けたい。
「神の中にもそれを感じて動いておる奴らもおるようじゃしのう」
「原因はなんですか?」
これ重要なこと。
でも答えてくれるかな?
「悪いがそれは儂の口からは言えんのじゃ、神である以上直接関与する訳にはいかんのじゃ」
「でしょうね」
神様のルールってやつですね。
「後、すまんが、お主がやっとるあの『黄金の整い』じゃがな、あまりこの世界では広めんで欲しいのじゃ、あの方法は特別なのじゃ、あの方法が広がると一気に世界の崩壊につながる可能性があるんじゃよ」
そうなのか?俺達普通にやってるけど大丈夫なのか?
「そうですか・・・」
『黄金の整い』を止めた方がいいのかな?
「あー、気にせんでよい。お主らはこれまで通りにやってもらっても全然大丈夫じゃ」
よかったー!もう駄目とか言われたら発狂するところだった。
「助かります、ではこの先も遠慮なく整わせていただきます」
「さて、来て直ぐな気もするのじゃが、要件は伝えたのでそろそろ帰らせてもらうとするかのう」
横を見るとゴンが神妙な顔をしていた。
「バイバーイ」
ノンはマイペース。
「お達者ですの」
エルは未だに緊張している様子。
お達者、って久しぶりに聞いたわ。
食事を終えた後創造新様は帰っていった。
早いお帰りだったが、結局の所『黄金の整い』を広めるなということと、この世界の神気が薄いということを伝えたかったようだ。
そんなことなら呼び出してくれれば早く済んだのに。
と思っていたところ。
やられた!
あの爺い日本酒を樽ごと持っていきやがった。
ちっ!
ほんとは日本酒が欲しかったんかい!
神妙な面持ちで俺はゴンに尋ねた。
「ゴンちょっといいか?」
「何でしょう主?」
目の前で畏まっているゴン。
「ゴン正直に答えてくれ・・・飯に満足はしているか?」
えっ!と驚いた表情をしているゴン。
「はい、それは勿論!毎日の食事が楽しみで仕方がないです、上手いし、暖かくて最高です!」
笑顔の表情から本音を言っているのは分かる。
「そうか、実はな、俺は全く満足していないのだよ」
今度はゴンは信じられないといった顔になっていた。
「えっ!あんなに美味しいのにですか!」
「そうだ、決定的に足りない物が二つもあるんだ」
そう二つもあるんです。
「えっ!二つも!それで、足りない物とは・・・」
ゴンが唾を飲み込む、そうとう大事と捉えているらしい。
「鶏と牛だ!つまり卵と牛乳がないのだ!」
思わず後ずさるゴン。
「主!申し訳御座いません!」
「な、何故に謝る?」
土下座を始めたゴン。
「申し訳ございません!ご容赦ください!」
ん?何この急展開。
「な、な、何だ?」
「実は、その・・・鶏と牛なんですが、私の居た社で飼育しております!」
はあ?
ウッソー!やったー!
運が良すぎるー!
「う、うん!そういうことは早めに報告しなさい、ってお前何か月もここにいるけど大丈夫なのか?」
ちゃんと鶏と牛は生きてるのか?死んでないよな。
「はい時々夜に抜け出しては、エサをやりに行ってましたので」
何故に夜抜け出して・・・
「そうか、で、何で言わなかった?」
「いや、その、社の仕事に未練があると思われたくなくって・・・つい・・・」
ほんとにゴンは生真面目過ぎるな・・・まぁいい所でもあるけど。
そんなことで未練があるなんて普通は考えないもんだぞ。
「他には何か話しておきたいことはあるか?」
「特には無いです」
まあいいでしょう。
というか、やったー!
これで念願のピザが作れる!
それに料理の幅が何倍にも広がるぞ!
「まぁいい、以後気を付けるように」
心の動揺を隠し俺は偉そうにゴンを注意した。
翌日、
俺はさっそくエルに跨り鶏をお迎えに。
ノンとゴンは牛のお迎えに参りましたとさ。
勿論鶏小屋と牧場は建設しましたよ。
美味しい卵と牛乳をよろしくお願い致します。
今日も能力開発に励んでいる。ちなみに現在のステータスはこんな感じ
『鑑定』
名前:島野 守
種族:人間
職業:神様見習いLv5
神力:計測不能
体力:957
魔力:0
能力:加工Lv4 分離Lv4 神気操作Lv3 神気放出Lv3 合成Lv3 熟成Lv2 身体強化Lv2 両替Lv1 行動予測Lv1 自然操作Lv2 初心者パック
預金:3010万3174円
今開発中の能力は『結界』だ。
はっきり言って無茶無茶難しい、ここ三日間掛かりっきりだ。
『結界』を取得したい理由は一つの出来事に起因している。
いつも通りのサウナルーティーンを行い『黄金の整い』を行っていたところ。
「フ~ン、フ~ン」
俺の嫌いな音がした。
正体は蚊である。
気になったら無視できない性分で、又『黄金の整い』を邪魔されたことに腹が立ってしょうが無かった。
因みにノンとゴンとエルには『黄金の整い』の最中に話しかけることは厳禁というルールを徹底させている。
このタイミングではやめてくれという最たる出来事である。
さて、開発したい『結界』だが、経験していることや具体的な物や類似品がある場合はイメージがしやすい。
しかし結界となると地球には無い物だし、当然過去の経験も無い物である。
唯一のヒントとしてイメージできたのはエアーカーテンだ。
デパートの入口にたまにある風のカーテン。
だがそれだと空気は通さないことは分かるが物理的な物は簡単に通ってしまう。
どうしたものか、手詰まりか・・・
イメージを掴むことに手間取っている。
このままでは埒が明かないので気分転換に釣りをすることにした。
実は釣りのエサ問題が解消された。
虫を捕まえてエサとして使ってみたが駄目だった。
獣の肉もエサとして試してみたが此方も駄目だった。
ただこれはもしかしたら浅瀬で釣りをしているからかもしれない。
なぜならば一度だけ大きな当たりがあったが、残念ながらバレてしまったことがあるからだ。
ただその時の魚影は一メートル近くあったので肉食系の魚がいるのかもしれない。
しかし大きな魚が浅瀬にいることは稀だろうと思う。
次に試したのは野菜だ。
いろいろ試した結果、ニンニクがエサとして一番適していることが分かった。
匂いが強いのがいいのかな?
エサを付け釣りを始めた。
浮をぼんやりと眺めながら改めて結界について考えてみる。
結界とは何なのか?
物理的な物を通さない、勿論魔法も、但し空気は通したい。
何故なのか?
結界内で空気を通さ無いでは酸欠になってしまうからだ。
ただ単に物理的な防御のみであれば正直簡単だ。
イメージとしては強化ガラス、それも大統領の護送車に使われているようなものをイメージすればいい。
しかしこれで全方位覆ってしまっては酸欠状態になるのは必至、ではどうする・・・
ん?少し分かりかけてきたぞ、酸素が無くなる・・・なら生み出したらどうか・・・
どうやって生み出す?
結界の外側には十分に酸素があり、結界の外側表面には酸素が触れている・・・それを結界が吸収し内側に排出する!
いける!
イメージした。
より具体的に、更に結界に強度と共に柔軟性も加えてみた。
神気を身体に流し込む。
ピンピロリーン!
いけた!
能力欄に『結界Lv1』が加わった
遂にこの日が訪れた。
長いこと食していないあの食事が遂に作れる。
今日の為に俺は二日前から準備をしていた。
先ずはバットに強力粉と薄力粉を半々入れ、天然水を加える。
そこに『熟成』と『合成』を使いドゥを作成する。
よく混ぜた塊を球状に丸める、その表面にオリーブオイルを塗ってトレーに乗せる。
これを十個作成し寝かせる。
そして釜を作成する。
ここにはお金は掛けてもいいと考えている。
今後ハイルーティンで使用する事になるのは明らかだからだ。
万能鉱石にてレンガを大量に作成、釜を組んでいく。
釜の中央部分に大きな石が必要な為、ノンにお願いしてなるべく運べる大きな石か岩を探してくるようにお願いした。
ノンから、
「また石像造るのー?」
と言われたが、それはお楽しみだと答えておいた。
ごねんなノン・・・
今回は違うのだよ。
テンションが上がったのか、ノンが直系二メートルぐらいある岩を持ってきてくれた。
ノンありがとう・・・味噌汁ピザを作ってやるから簡便な。
その岩を『加工』し石の板を作成した。
釜の中央部分に石板を設置し、その上に半ドーム状にレンガを積み上げていく。
最後に全体に『合成』を使用して隙間を完全に無くす。
ピザ釜が完成した。
後はどれだけの熱を生み出せるか・・・
翌日
昨日仕込んだドゥを確認。
ところどころ空気を含んでいるドゥをもう一度球状に丸めて空気を抜き、表面にオリーブオイルを塗って再度寝かせる。
そして具材の確認をする。
まずは絶対に譲れないのがトマトソース。
ソース作成には牛を飼育しだしてから直ぐに取り掛かった。
詳細はまた後日報告させて頂くとしよう。
そしてホワイトソース。
牛乳と小麦を『合成』によって出来上がった一品。
まだまだ改良の余地あり。
そして変わり種として味噌ソース。
これはノンの為に作っていると言っても過言ではない。
更にサラミを中心にベーコン、ウインナー等の加工肉を『加工』の能力で作成。
ウィンナーの皮にはジャイアントボアの腸を使用した。
野菜に関しては確認の必要など無い、そしてバジルなどの香辛料を中心にチェックしていく。
そして一番重要なチーズ。
作成工程を紹介させて頂こう。
牛から絞った生乳を『分離』で不純物をとり除く。
次に『分離』にて水分を分離する。
ここから工程は二種類に分かれる。
チェダーチーズは塩を降り『合成』にて混ぜ合わせる。
自然操作の風で冷やして完成。
モッツァレラチーズは自然操作の火にて、慎重に水気を抜いた生乳を加熱する。
その後『分離』にて成形し塩水に漬けておく。
そうした工程を経て二種類のチーズを作成した。
まだまだ改善の余地ありだが、出せないレベルではないのでピザ作りを決行することにした。
いざ!神妙に!
俺は万能鉱石にて作成した大理石のテーブルの上に、小麦粉を散らしてドゥを伸ばしていく。
腰を入れ体重を乗せながらドゥを丸い形に成形していく。
丸い円盤状の生地が次第に出来上がってくる、丸い円形の生地の外周を抓るように摘み、小さな土手を作っていく。
最後に土手を両手で挟み、空気を抜いていく。
これで生地が完成した。
ここからはトッピングだ。
拘りのトマトソースを満遍なく贅沢に塗っていく、そこにモッツァレラチーズを散らしていく、出来るだけ大雑把に。
そしてバジルの葉を隙間に埋めていく。
ペッパーを散らして、ピザ釜専用に作成した丸い網に乗せ、ピザを釜に投入する。
ここからは集中力が大事な局面。
『身体強化』にてパフォーマンスと集中力を上げ、釜に入れたピザに集中する。
木炭を四隅に配置し温度調節に気を配る。
温度が一定になるように駆使してはいるが、焼きムラが出来るのは当たり前。出来ないにこしたことはないが、出来てしまってもこれはご愛敬。
この焼きムラがピザの醍醐味ともいえる。
三十秒ごとにピザの状態を確認する。
万能鉱石にて作成した丸いアルミの網を時計回りに回していく。
今だ!
ピザを取り出し直ぐにピザカッターにて切り分ける。
完成したピザを眺め満足感に浸る。
俺って天才!
「今日のピザは格別だぜ!」
決め台詞を吐いた俺の前にはノン・ゴン・エルが目を輝かせて待っていた。
「では手を合わせて」
「「「「いただきます!」」」」
取り分けて食べ始めた。
「これはなんという複雑なバランスの食事なんでしょうか・・・」
「まぁ、美味しいですの」
「主ー!最高!」
等と感想が響き渡る。
これが食べたかったのだ、俺の大好物のピザ、異世界でも美味しいです!
よーし、次はホワイトソースのピザだ!
三人は競い合ってピザを食べていた。
俺はその様を見て小さくガッツポーズをする。
この日以来、ピザは週一で振舞われることになった。
ノン用に作成した味噌汁ピザだが、思いの他上手くいった。
ピザ生地に薄めた味噌を塗り、チェダーチーズを撒く、そこに煮付けた大根とナスをトッピングした。
普通に旨い、ノンは大喜びだった。
でもよくよく考えてみると、米がピザ生地に変わっただけで、犬飯にチェダーチーズを掛けただけのような・・・ノンには言わないでおこう。
私しはペガサスのエル、名前を付けて頂いたのはつい最近のことですの。
この名前はお気に入りですの。
私しはコロンの街にある天使様の集落で育ち、日々を過ごしておりましたの。
集落での暮らしは毎日が楽しくはありましたが、少々物足りないと感じてもおりましたの。
何せご飯が美味しくないのです。
特に野菜が・・・
本来ペガサスにとって好物であるとされる人参ですら、美味しいと感じたことはありませんでしたの。
「上手いは正義です!」
少々はしたないことを言いましたの、ご勘弁を・・・
私しは飛ぶことが得意ですの。
というのも私しはユニコーンとのハーフですの。
なのでスピードには自信がありますの。
集落の中で私に適うペガサスや天使様はおりませんの。
「なにせぶっちぎりですので!ぶっちぎり!」
あっ、失礼致しました・・・
どうやら私しは時折言葉が乱れてしまう様ですの。
ある時いつも通り天使様達と飛行の訓練をを行っておりましたの。
すると森で光る何かを見つけましたの。
気になったので近づいてみましたの。
丸い黒い石でしたの。
自然の中でこんな丸い形とは珍しいと思いましたの、なので私しは少し興味を持ちましたの。
蹄で触ってみたところ、感触は普通の石よりも少し柔らかみを感じましたの。
すると突然、その石が目を開きましたの。
真っ赤な目でしたの。
その後の記憶はございませんの・・・
気が付くと私しは湖の畔で倒れておりましたの。
立ち上がってみたところ目の前に一人の男性がおりましたの。
その男性は水と人参を私しに用意してくださいましたの。
始めはぼんやりして状況が理解できませんでしたの。
でも目の前に差し出された水と人参から美味しそうな匂いがしましたの。
気が付くとむさぼりつくように食べておりましたの。
美味しいシャキッシャキの人参、これまで食べてきた人参がまるで別の野菜なのかと感じる程でしたの。
本来ペガサスの好物とされる人参は正にこれだと、体の奥底から感じましたの。
とても幸せでしたの。
お恥ずかしながらあっという間に食べてしまいましたの。
すると先程の男性が「お替わりいるか?」と尋ねてくださいましたの。
その時私は決めましたの。
一生このお方に着いて行くと。
そして今では美味しい食事と楽しい毎日を過ごしておりますの。
えっ!天使様の村に未練はないのか?
天使様に顔向け出来るのか?
何を仰ってますの?
「上手いは正義です!」
あっ!すいません、悪い癖が出ましたの。
それではご機嫌よう。
四人での朝食。
献立はご飯に味噌汁、卵焼きに、焼き魚。
「ゴンは焼き魚にだいぶ慣れたようだな」
「はい、お陰様で、美味しくいただいてます」
なんでもゴンは魚料理自体ほとんど食べたことが無かったらしい。
「ところでさ、前に鶏の回収に社に行ったことがあっただろ、それで気になってたんだけど、あの社を守ってたって言ってたよな?」
「はい、そうですが」
社は一見日本の神社のようだった。
「社の中に何かあるのか?」
「何かはあるようなんですが、実は何があるかは私は知らないのです」
下を向いてゴンが答えた。
「知らない?なのに警備させられてたのか?」
ゴンに役目を与えた中級神ってどうなのよ?
なんかムカつく。
「そうなんです、社の中に入ろうにも結界があって入れないんです。そもそも前に話した中級神様から社を守るように仰せつかった時に、何があるのか聞いたんですが教えて貰えませんでした」
相当な秘密主義者ってことなのか?確か名前すら教えて貰えなかったって言ってたよな。
「お前そんなんでよく百年も過ごせたよな?」
「正直、何度も放り出そうと思いましたが、よくよく考えてみたら、ここは島で、私は泳ぐことが出来ず、島から離れられないことに気づきまして・・・」
ああ、八方塞がりということね。
ほんと可哀そうに。
「そういうことね、逃げ出そうにも手段が無く、獣が多い島だから食うには困らんということだな」
「そうです、牛と鶏の世話もありましたので・・・」
律儀なやつだな。
真面目過ぎるなゴンは。
「結界か、気になるな。この際せっかくだから、今日みんなで社に行ってみるか?」
「やったー、お出かけだー」
ノンがはしゃいでいる。
「あら、お出かけですの?ウフフ」
なにやらエルも嬉しそうにしている。
話は脱線するけどこのエル、無茶苦茶美人さんなんだよな、お淑やかな感じっていうのかな?
初めて人型になったところを見た時はびっくりしたもんだよ。
着物っぽい服も着てたし。
ただなー。
この子普段はお淑やかに話すけど、時折男みたいな声で変なこといい出すんだよなー。
何だよあれは?
「上手いは正義!」
とか・・・
まぁいいけど、後、笑う時に歯茎まで剥き出しするのもどうかと思うけど・・・
さぁ、後片付けしましょうかね。