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神様のサウナ ~神様修行がてらサウナ満喫生活始めました~  作者: イタズ


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47/182

神様達への報酬と大宴会

スーパー銭湯がオープンしてから一ヶ月以上が経過していた。

最近では客数も落ち着いて来てはいるものの、家のスタッフ達は皆な慌ただしくしている。

スーパー銭湯の一日の客数は大体四百人前後で、その日によって若干のばらつきがある程度だ。

ここ最近では迎賓館の使用者と他の街へ移動する者達が増えてきている。

それだけ転移扉が商売に根を張り出しているということだろう。

想定道りでなによりだ。

今後も利用者は増え続けるだろう。


特に移動手段として用いるケースは、安全な上に格安であると理解した商人がここぞとばかりに使用している。

ただ難点もある。

行きはよいのだが、帰りが上手くいかないというケースがあるということ。

行きは顔なじみの神様に送ってもらえるが、帰りは迎えに行くということまでは、どの神様も行ってはいない。

そこまで神様も暇ではないということだ。

それに連絡手段が無い。

通信用の魔道具ではせいぜい十キロ先までしか使えない。


その点を何とかして欲しいとの相談も受けたが、そこまで面倒をみる必要は感じなかったので、丁重にお断りした。

何でもかんでも頼られるのは、正直あまり気持ちの良いものではなかった。

自分で考えて欲しい物だ。

行く先の神様にどうしたら認められるかぐらい自分でも考えつくだろう、楽をしようという魂胆が透けて見えている。

俺から言わせて貰えば、そんな浅い考えならば片道だけでも充分でしょうが、というのが本音だ。

俺は何でも屋では無いってえの。

と語気を強めたくもなる。




さて月末を間近に迎える為、神様達への報酬を計算しなければならない。

プレオープンを含む今月の二十日までの来島者から得た入島料と、移動に掛かった通行料の半分を神様達に渡そうと思う。

その計算を俺は今、黙々と行っている。

金額に関しては金貨以下の物は全部繰り上げ計算としている。

さてどれぐらいになるのか興味は尽きない。

まだ神様達には報酬を渡すことは話していない為、どんな反応をするのだろうか?

大いに楽しみである。




先ず最初に五郎さんは金貨九十二枚、これは移動に掛かった交通料が一番多い結果だ。

主にタイロンやメッサーラから温泉街ゴロウに保養に来て、帰りに転移扉を使うというお客様が増えてきているようだ。

なかなか賢い利用方法と言える。

移動目的であれば一見さんでも転移扉は潜らせてもいいと五郎さんは判断したようで、見知らぬ人もいると言っていた。

ルールは各自の判断に任せることになっているから異論は勿論無い。

ただ五郎さんは結構こっそり鑑定を行うから、よほど間違いはないだろうとも考えている。

決して褒められた事では無いが、俺はそこには口を挟まないことにしている。

五郎さんの判断で行っていることを咎める理由もない。




ゴンガス様は金貨六十枚、金に執着のあるゴンガス様のことだから喜んでもらえることは間違いないだろう。

だいたいほぼ毎日スーパー銭湯に通っている。

ゴンガス様が連れてくるお客様は鍛冶職人とドワーフが多い、ドワーフに関してはトウモロコシ酒を水のようにガバガバと飲み、大食堂で宴会を始めてしまうのがたまに傷である。


因みにスーパー銭湯への飲食物は持ち込みOKとしている。

オーストラリアでいう処のBYO(手数用を払えばお酒を持参してもよい制度)だ、だけど手数料は頂かない。

というより貰う必要はないと考えている。

なのでゴンガス様は自分で作ったアルコールを持ち込んでよく飲んでいる。

俺は二度とゴンガス様の酒は飲まないと誓っている。

あんな高濃度のアルコールを飲んだらいつか肝臓が破裂してしまうと思う。

一度飲まされたスピリタスのことは俺は今でも忘れない。

あれはとんでもない代物だった。

一瞬で喉が焼かれたし、一口で酔っ払い、帰りは千鳥足になったことを覚えている。

やれやれだ。




ゴンズ様は金貨六十三枚。

ゴンズ様は二日に一度のペースでやってくるのだが、一気に八十人近く連れてくるので入島渋滞が起きてしまう。

とは言っても文句は言えないので、こちらとしてはてきぱきと働くしかない。

大事なお客様をお連れしてくれていることに変わりはないのだ。

お客様も事情は承知の為、渋滞しても文句は言わないので助かっている。

お客様の半分は漁師で、ゴンズキッチンで見かけた者達が多い。

ゴンズ様と漁師達は大食堂でレケと一緒に漏れなく酒盛りを行っている。

ドワーフ達と被った時の賑わいは半端なく、隣の人との会話もままならない時があるほどだ。

何とも困ったものだ。




ドラン様は金貨四十八枚。

とは言っても、牛乳とヨーグルトの販売で他にも収入は得ているし、スーパー銭湯で牛乳やチーズの仕入れを行っているからもっと利益は得ていると思う。

特に牛乳の仕入れ量は多い、アイスクリームが定番の売れ筋となっている為、切らすことは出来ないのだ。

サウナ島でも牛乳は取れるが量がまったく足りていない。

こちらとしても多いに助かってる。


ドラン様は販売ブースの管理もあり、ほぼ毎日顔を出している。

そして三日に一度はアグネスもやってくる。

アグネスはこれまで通りコロンの街で野菜の叩き売りを継続している。

もはや彼女のライフワークとなっている。

これまで通り食事は無料で提供しているが、入島料と入泉料は半額だが支払わせている。

これまでのサウナ島とは違い、神様だらけのサウナ島の現状にアグネスは終始ビビッている。

偉そうな態度を取られるよりは増しなので、俺達は放置している。

このままずっとビビッてくれてたら楽なのだが。

どうせアグネスのことだ、慣れたら偉そうになるに決まっている。

あれは治らんもんかね?

まぁ治らんな。




レイモンド様は金貨三十一枚。

カナンの村は人口数が少ない為これでも多いと思う。

カナンのお客様はリピーターが多く、既に何度も見かける人達が多い。

何よりもレイモンド様がサウナにド嵌りしており、サウナジャンキーのデカいプーさんとなっている。


カナンのハチミツも販売は好調のようで良く売れるとレイモンド様は喜んでいた。

商売目的にやってくる商人も、カナンのハチミツを仕入れたい者達が多く、商談に訪れる商人が多い。

商談にはレイモンド様は立ち会わず、お付きのカナンの商人が行っているようだ。

レイモンド様には毎回会う度にお礼を言われるのだが、俺としてはそろそろ止めて欲しいが、言っても治らないだろうから言わないことにした。

未だに俺のことを神様と思っているようだから、言っても治らないのは間違いないだろう。




マリアさんは金貨五十二枚。

俺の一言が効いたのか風呂場やサウナでのジロ見事件は収まったが、それ以外の所では相変わらずの暴れっぷりだ。

ランドールさんを見つけては追いかけ回しているし、しょっちゅう、

「エクセレントよ!」

と騒いでいる。


そしてルイ君が週に一度は同行してくるようになった。

まだ魔獣の森については話をしていないが、そろそろ話した方が良いのかもしれない。

現在ではタイロンの肉卸業者が頑張ってくれており、一時的に肉問題は解消している。

だがこれも時間の問題と俺は見ている。

ルイ君には折を見て話をしようと思う。


少し話は脱線するが『魔力回復薬』は既に落ち着きつつあり、今ではリンちゃん達の納品も三日に一度で収まっている。

学校用の資金も集まりつつあるらしく、早ければ半年後に一校目の着工が出来るかもしれないと言っていた。

メッサーラは着実に進化を遂げているようでなによりだ。

学校が出来上がればまた国としても大きく変わっていくのだろうし、国民からの期待は高い。


ランドールさんは金貨五十五枚。

サウナ島の魅力を知った大工達が、ほぼ毎日といっていいほどスーパー銭湯に来ている。

彼らはここの建設に携わったという誇りもあるのだろう、たまに他のお客様にここの柱は俺が立てた等と自慢しているのを見かける。

ランドールさんはマリアさんを恐れて入島受付で帰ってしまうことがあるが、大体二日に一度はスーパー銭湯に入りに来ている。


俺がマリアさんを注意して以降、風呂やサウナの中ではおとなしくなったマリアさんには、風呂では追いかけられないと、彼は長湯を楽しんでいるようだ。

いい加減あの人達は普通に出来ないものなんだろうか・・・

口を挟むと巻き込まれかねないので、俺は何も言わないが・・・

最近はちょっとランドールさんが可哀そうに思えてきた。




オリビアさんだがなんと金貨九十二枚の最高額を叩きだした。

だが実はこれはオリビアさんが頑張ったというよりはアイリスさんが凄いのだ。

メルラドからの来島者はアイリスさんの畑の見学者が半数以上で、これは完全に他人の褌で相撲を取ったという典型だろう。


だが実際に転移扉を開けているのは間違いなくオリビアさんなので文句は言えない。

そしてお忍びで魔王メッリサさんもこっそりと来ては、アイリスさんと親しくしているようだ。

彼女にはもっと自由を謳歌して欲しいと思う。

メリッサさんは未だ両親には会えていないとオリビアさんが教えてくれた。

俺に何かを期待しているのかもしれないが内政干渉は控えたい。

まだまだ古い体質のあるメルラドだが、メッサーラと同じで大きく舵を切り出した感はある。

早く両親に会えるといいな。


アイリスさんが行った農業改革が凄いということなんだろう。

ハウス栽培も成功しており、リチャードさんとピコさんが二つ目に取り掛かりたいと言っていた。

またゴンガス様と打ち合わせしなければならない。

金の事になるとゴンガス様のにやけ顔が目に浮かびそうだ。

メルラドにはまだまだ問題が多いようだが頑張って欲しい。

前回の飢饉の教訓なのか、リチャードさんが勢力的に迎賓館で商談を行っている姿を見かける。

今年の冬は何とかなりそうだと安堵していたが、来年以降の仕込みに既に動いているのは外務大臣としての責務なのだろう、頭が下がる思いだ。




最後にエンゾさんだが金貨六十二枚となった。

俺の予想としてはエンゾさんが一番お客様を連れてくると思っていたが一番とはならなかった。


エンゾさん曰く、

「人選が難しい」

とのことだった。


責任感の強いエンゾさんは、間違っても変な輩を連れてくる訳にはいかないと考えてくれていたようで、こちらとしては心強いとも感じる。

基本的に上から女神のエンゾさんだが、実は細かいところにも気が回る人だと俺は分かっている。

やはりガードナーさんにも転移扉を渡しておくべきなんだろうか?


エンゾさんは生クリームとイチゴのパンケーキと、炭酸泉と塩サウナにド嵌りしているご様子、これなしではもう生きていけないと漏らしていた。

ちなみに気を利かせてくれたのか、マッチョのアホ国王はその後スーパー銭湯には現れていない。

個人的にはもう来てくれなくてもいいと思っているのだが・・・

たぶんそうはいかんよね?

普通に客として来てくれる分には構わないのだが。




さて、俺は神様達に話があると神様の面々を集めた。

場所は迎賓館の会議室だ。


先ずは全員集まったことを確認し話を始めた、

「皆さん、お集り頂きありがとうございます」

俺は一礼する。

それに応え数名の神様が軽く頭を下げた。


「それで、全員集めて何をするんだの?」

ゴンガス様が堪えきれず話し出す。


「だから、ゴンガスの親父はせっかちが過ぎるんだ、島野に任せときゃあいいんだって」

五郎さんがツッコむ。


「ああ、そうだった、そうだったの」

ゴンガス様が頭を掻いていた。

このやり取り何回目だ?


「今日のサウナ島の繁栄は皆様のご協力があってのものです、改めましてお礼申し上げます」

俺は改めて深く頭を下げた。


「先ずは皆さんにお渡しする物がありますので手渡しさせていただきます」

俺は人数分の革袋を取り出し、名前に照らし合わせて渡していく。

革袋を受け取ると神様達が中を確認し絶句する者、眉を潜める者と反応は様々だ。

そんな中ゴンガス様は一人にやけていた。


「どういうこと島野君?」

エンゾさんが説明を要求してくる。

まあ当たり前だよね。


「これは皆さんが連れてきてくださったお客様から頂いた、入島料金と移動料金の半額の合計です。期間はプレオープンから今月二十日までのものです」


「それで何でこれを私達に?」

ランドールさんは不思議がっていた。


「これは労働の対価です」


「労働の対価?」


「はい、転移扉を開けて貰った労働の対価です、これはお渡しして当然の物と俺は考えています」


「なるほどね」

エンゾさんは合点がいったようだ。


「皆さんがお客様を連れてきてくれなければ、このサウナ島に人は集まりませんし、連れてくる人の選別まで行って貰っています。中には自分の仕事の手を止めてまで転移扉を開いてくれる方もいたと俺は知っています、これぐらいは渡して当然ということです」


「島野、お前え粋なことしてくれるじゃねえか」


「儂はなんであれ金が貰えるならいくらでも貰ってやるぞ」


「ありがたく受け取らせて貰うわ」


「エクセレントよ、守ちゃん」

皆が騒ぎだした。

こうなると収集が付かなくなる。


「今後もこれは続けますので、よろしくお願いいたします」


と言うと、

「嬉しい小遣いだ」


「ありがとー」


「ガハハハ!」


「まあ、貰って当然よね」

騒がしさは止まらない。


「ちょっと皆さん、いいですか?」


「どうした?」


「なになに?」

場が閉まらなくなっている。

俺は注目を集める為に立ち上がった。

皆の注目が集まる。


「今日は宴会にしましょう!大食堂で二時間後に集合です。俺の奢りです!」


「「おお!」」


「宴会だ!」


「エクセレントよ!」


「今日は飲むわよ!」

早くもエンジン全開の神様ズ。

これは先が思いやられるな。

でも神様ズを労わる必要はあるからね。

俺達は連れ立ってスーパー銭湯に向かった。

どんな宴会になる事やら。




既にスーパー銭湯を使い慣れている神様ズは、各々の楽しみを堪能しているようだった。

俺は俺で自分の好きにスーパー銭湯を堪能した。


最近は外気浴とサウナの間に炭酸泉を挟むようにしている。

その理由はサウナでのパフォーマンスを上げる為だ。

身体が温まった状態からサウナを始めると、汗をかきだすまでが早くなる。

短時間で汗を沢山かくということだ。

この先の宴会だがどうなることやら・・・

全力で神様ズをもてなしてみましょうかね。


そろそろ時間となる為、俺は大食堂へと向かった。

既に何名かの神様ズが今か今かと他の神様ズの到着を待っていた。

直に全員が集まり宴会が雪崩式に始まっていく。

各々が好きに注文をし、飲み食いが開始された。

俺は一先ず生ビールを流し込む、サウナ明けの生ビールが喉に心地よい。


「プハア!」


「やっぱりサウナ明けは生ビールだな、島野!」

上機嫌の五郎さんだ。


「ですね、こればかりは止められない!」


「にしても島野、何で報酬の件は黙ってたんでえ?」


「それは単純にサウナ島にどれぐらい人が集まる実力があるか知りたかったんですよ」


「なるほどな」


「下手に話してしまうと一部の人が、張り切っちゃわないかと思いまして・・・」

俺はゴンガス様を見ると五郎さんもつられて見ていた。


「ああ、親父ならやりかねねえな」


当のゴンガス様は、

「儂はサウナ明けはキンキンに冷やしたワインが好きだの」

等とレイモンド様に語っていた。


「ぼくはー、生ビールー」

デカいプーさんが生ビールをジョッキで飲んでいた。

日本の少年少女達には決して見せられない姿だ。

プーさんがハチミツじゃなく生ビールをジョッキで飲んでるとこなんて見せられる訳がない。


「でも、まあ助かったぞ。ありがとうよ」


「いえいえ、当然の報酬ですよ」


「とは言ってもな、なかなか出来ることじゃああるめえ」


「そうですか?」


「この世界の者達にとっては金銭の価値は大きい、儂ら神だって一緒だ」


「そうなんですね」


「ああ、儂ら神は究極は食わんでも生きてはいけるが、腹は減るし、眠くもなる。寿命が無いってだけでたいして人間と変わりゃしねえんだ。金銭がなけりゃあひもじい想いもするってことよ」


「・・・」


「まあ、儂は詳しいことはしらんが、所詮そんなもんよ」

五郎さんは注文の為に手を挙げた。


「おい若いの、日本酒を持ってきてくれ、燗で頼むぞ!」


「畏まりました!」

スタッフが元気に受け答えする。


「そういえばずっと気になってたんですが、温泉街の客足はどうなんですか?」

ずっと気になってたことである、スーパー銭湯と温泉は別物だが似て非なる物である。

客がどちらかに偏ることは考えられるのだ。


「ああ、正直に言やあ、ちっとばかし減ってはいらあ、だがな島野、そんなことは気にするな。温泉街には温泉街の良さがある。スーパー銭湯とは似てはいるが別物だ。案外客も分かってるってなもんよ」

五郎さんならそう言うとは分かっていたが、多少の申し訳なさはある。


「それにあれだ、おめえがくれた塩サウナとサウナが好評でな、上手くいってる」

実は前に使っていた塩サウナとサウナを五郎さんに寄贈させて貰った、潰すのは心元無いと五郎さんに貰って欲しいことを伝えると喜んで引き受けてくれた。

愛着のある塩サウナとサウナだったから俺としてもとても嬉しかった。

今は五郎さんが大事に使ってくれている。

良かった、良かった。


「実はな儂もちと考え方を変えたんだ」


「と言いますと」


「ここサウナ島は温泉街ゴロウの別館と考えてるってことよ」


「別館ですか?」


「ああ、転移扉を開きゃあ違う風呂が楽しめるってな感じよ」

五郎さんらしい考え方だ、ここサウナ島は温泉街ゴロウの第二の温浴施設ということだ。

素晴らしい考えだ、天晴!


「それにあれだ、帰りは安全に帰れるって、転移扉の移動も好評だ、格安だってハンター達も言ってたぞ」

これに気づいた五郎さんの商才は本物だと思った。

もしかしたら安全に家路につくまでが温泉街の仕事と考えているかもしれないが・・・

遠足では無いけどね。


「あれ!五郎さん?」

ギルがサウナ明けなのかタオルを首に巻いて現れた、テリーとフィリップ、ルーベンも一緒だ。


「おお、ギル坊!こっちに来いや」

五郎さんがギルを呼び寄せる。


「何で神様達が集まってるの?」


「まあそれはいいとしてだ、もう飯は食ったのか?」


「まだだけど」


「じゃあ好きな物食っていいぞ、お前えらも食ってけ、今日は島野の奢りだ、ガハハハ!」

適当なことを言ってくれている。

ギルが本当にいいの?という視線を向けてくる。

いいも何も、お前達は福利厚生でそもそもタダだから別にどうでもいいのだが・・・


「ああ、俺の奢りだ、好きなだけ食え!」

五郎さんに乗っかっておいた。

やれやれだ。


俺は他の神様ズに話掛けることにした。

ランドールさんはマリアさんに捕まっており、灰色と化していた。

マリアさんはランドールさんを愛でており上機嫌だった。

流石に可哀そうなので声を掛けることにした。

折角の宴会なのだ、正直見ているこっちも嫌になる。

いい加減にして欲しい。


「マリアさん、いい加減止めて貰えないですかね。宴席ですよ?」

凄むマリアさん。


「いいじゃないのよ!好きにさせてよね!」

俺は引かずに睨み返す。


「あのですねマリアさん、はっきり言いますけど、見ているこっちも気分が悪くなりますよ。それによく見てやってくださいよ、ランドールさんが廃人になってるじゃないですか?そんな廃人になってるランドールさんを相手にして面白いですか?」

マリアさんが怯む。


「でしょ?いつものカッコいいランドールさんならともかく、もっと良くみてやってくださいよ。涎垂れてますよ」


「涎?」

マリアさんはランドールさんから飛びのいた。

相当嫌なご様子。

風呂明けに汚れるのは勘弁して欲しいですよね。


「ほらもっとよく見てくださいよ、こんなランドールさん見てられないですよ」


「確かに・・・」

マリアさんはランドールさんを覗き込むが、ランドールさんはピクリとも反応しない。

まるで魂が抜けているようだ。


「悪かったわ、守ちゃん・・・」


「いや、いいんですよ、今後はせめて時と場所を考えてくださいよ」


「分かったわよ・・・」

マリアさんは下を向いてオリビアさんのところに向かった。

俺はランドールさんの肩を掴み揺すった。


「ランドールさん、起きてますか?大丈夫ですか?」

まだランドールさんは廃人のままだ。

困ったな、どうしたもんか・・・

横を見るとエンゾさんが上機嫌でワインを飲んでいた。


「エンゾさん、ちょっといいですか?」


「ん?島野君、どうかしたの?」


「あの、ランドールさんに話掛けてもらえませんか?」


「いいけど、どうして?」


「見てくださいよ、放心状態から解放してやって欲しいんですよ」


「あらそう、じゃあ」


エンゾさんは手をランドールさんの手に添えて、

「ランドール、起きなさい!」

声を掛けた。

ビクッと体を震えさせたランドールさんは何事も無かったかの様に復活した。

おお!

流石はエロ神、女神の声なら届くんだな。


「エンゾさん?おはようございます」

よく見ると手を握り返していた。

どんだけ現金な奴なんだ。

ここぞとばかりに楽しんでやがる。

アホか・・・

まあいいや。


「ランドールさん、起きたようですね?」


「ああ、島野さん、すまない、最近ではマリアの隣にいる時は無意識に気絶する様になってしまってね」

なんだそれ?

心の自己防衛機能か?


「そうなんですね・・・」


「ランドール、そろそろ手を放してくれるかしら?」


「おっと失礼。エンゾさんの手はとても柔らかいのでつい」

下卑た顔をしたランドール。

エンゾさんは強引に手を引き離した。


「ふん!ランドールいい加減におし!」

エンゾさんは一喝する。

するといつもの顔に戻ったランドールさん。


「すいません、つい・・・」


「何がついなんですか?ランドールさん。まあいいとして、それで飲んでますか?」


「いや、全然、これから飲ませて貰うよ、島野さんありがとう」


「何を飲みますか?」


「では、ワインを貰おうかな」

俺は手を挙げてスタッフを呼んだ。


「エンゾさんもお替り要りますよね?」


「あら、気が利くじゃない」

スタッフが駆け寄ってきた。


「ワインを二杯貰えるかな?」


「かしこまりました!」

爽やかに受け答えするスタッフ。


「それにしても、二人にはたくさんのお客様を連れてきていただきありがとうございます」

俺は改めてお礼を言った。


「でもこうやって労ってもらえるなら、やりがいはあるわよ」


「そうです、こちらがお礼を言いたいぐらいですよ」

二人の優しさに感謝だ。


「それにしてもランドール、この島に連れてくる人選はどうしてるのよ?」


「それは、そもそも家の大工達はこの島の建設に携わっていますから大工連中は顔パスですね、後は街の者達も小さなころから知ってる者達ばかりですので、大体の者は安心して連れてこれますよ、エンゾさんは違うのですか?」


「私は人選が難しいのよね?」


「それはどうしてですか?」


「タイロンの国民を信じてはあげたいけど、サウナ島に行きたいという者の中には、初めて見る顔の者達も多いから、そんな者を連れてくる訳にはいかないでしょ?」


「それはそうですね、大国なりの悩みですね。私は街の者達はほとんど顔なじみですから」


「そうなのよね・・・どうしたらいい?島野君?」

いきなり話を振られてしまった。


「俺ですか?」


「そうよ、何かいい案はない?出来るだけたくさんの国民に娯楽は味わって欲しいと思ってはいるのよ」


「そうですね・・・まあ、娯楽に拘らなくても、エンゾさんなら商人の知り合いが多いでしょうから、迎賓館を沢山使って貰ったらいいのでは?」


「島野君、そんなことは分かってるわよ、その商人達の人選が一番難しいのよ、タイロンの商人は海千山千の猛者ばかりなのよ、中には無理難題を言い出す者達もいるわ」

確かにいたな、転移扉の移動の帰りのことを持ち出したのもタイロンの商人だったよな。


「実際言われましたよ・・・」

肩を落とすエンゾさん、ごめんと目で訴えてきた。


「気にしないでください、まともに相手しませんでしたから」


「ね?難しいでしょ?」

スタッフがワインを持ってきた。

丁度中座するにはいいタイミングだ。

二人に再度お礼を言って。

次の神様ズを労いにいくことにした。


ゴンズ様とドラン様がゲラゲラ笑っていた。

お!雰囲気がよさそうだ。

こういう所から混じろう。


「それにしても、ドランのところの牛乳は上手いな、ハハハ!」


「それを言うならゴンズの所の魚介類も最高だ、ガハハハ!」

おっと、お互い褒めちぎってるな。


「何を褒め合ってるですか?」


「おお島野、お前飲んでるか?」


「島野君、座ってくれよ」

ウエルカムな雰囲気で助かります。


「じゃあ遠慮なく」


「島野、ありがたく報酬は頂くぞ」


「ええ、そうしてください」


「私も遠慮なく頂くよ」


「どうぞどうぞ、それで何の話をしてたんですか?」


「今では転移扉を使って頻繁に街の行き来が出来るようになったからな、そんな話をしてたんだ」

笑ってはいたがビジネスモードだったのね。


「でもコロンとゴルゴラドはこれまでも交流はあったのでは?」


「確かに交流はあったが、食品のやり取りは鮮度の問題で出来ていなかったからね」

牛乳と魚介類となれば鮮度が命だから当然か。


「それが今ではどうだ、コロンの乳製品がゴルゴラドで販売され、ゴルゴラドの魚介類がコロンで販売される。ありがたいことだぞ」


「まったく、島野君には頭が上がらないよ」


「そうだな」


「いえいえ、これも全て神様達がこの島に人を連れて来てくれるからですよ」


「何言ってやがる。その仕組みを作ったのはお前だろうが」


「本当に何かやってくれるとは思っていたが、ここまでのことをやってくれるとは思わなかったよ、ハハハ!」

なんだか照れるな。

これは早々に退散した方がいいな。

褒め殺しは苦手なんだよな。

これは話を変えた方がいいな。


「ゴンズ様、今年もフードフェスはあるんですか?」


「どうだろうな、毎年のことだから今年もやると思うぞ。島野はまた屋台を出すのか?」


「どうですかね、今サウナ島を離れるのはちょっと難しいですよ。それこそドラン様が牛乳を使って何か出品したらいいんじゃないですか?」


「私がかね?」


「ええ、どうですか?」


「そうだな・・・考えてみるか・・・」

そろそろかな。

二人に改めてお礼を言ってその場を離れた。


さて次はゴンガス様とレイモンド様だな。

どんな会話をしていることやら。


「だからなお前さん。酒ってのはこうやって作るんだの」

ゴンガス様は酒作りについて語っていた。

あちゃー、これは長くなるぞ、上手く立ち回ろう。


「ゴンガス様、何を語ってるんですか?」


「ああ、お前さんか、いやな、レイモンドに酒作りについて話してた処だの」


「へえー、でレイモンド様は、話を理解出来たんですか?」


「わーかーらーなーいー」

ゴンガス様と俺はずっこけそうになった。


「そういえば、ハチミツを使ったお酒ってどうなんでしょうかね?」

確かハチミツ酒があったような・・・


「ほう、ハチミツを使った酒か・・・」


「おもしろいねー」

レイモンド様も乗っかってきた。


「ハチミツの甘さを使ってみれば、女性受けするお酒が出来るんじゃないでしょうか?」


「あーまーさーねー」


「なるほどの、レイモンドよ、そもそもハチミツはどうやって作っておる?」


「そーれーはーねー」


「もっと早くしゃべってくれ」

せっかちなゴンガス様らしいツッコミだ。

それに酔っているのか、レイモンド様はいつも以上に間延びしている。


「むーりー」

ありゃりゃ・・・

さて、退座しますか。

俺はここでも二人に改めてお礼を言って、この場から離れた。


後はオリビアさんだが、さて何処にいることやら・・・

あれ?オリビアさんとマリアさんが見当たらないが・・・

何処行った?

まあ、その内戻ってくるだろう。


等と考えていたら。

ステージから声がした。


「皆ー!今日も歌うわよー!」

いつの間にかオリビアさんがステージに立っていた。


「そして、私は踊るわよー!」

マリアさんもステージに立っている。


オリビアさんの掛け声に答えてお客が集まってきた。

皆なオリビアさんの歌が聞きたいのだろう。

始まってしまったか・・・こうなると埒が明かない。

どんちゃん騒ぎが加速する。

皆なオリビアさんの権能に支配されてしまう。

まあ楽しい気分になるのだからいいのだけどね。


歌が始まった。

いつにも増してノリノリのオリビアさん。

美声が大食堂に木霊する。

それに合わせて体を揺する者、手拍子を行う者、皆な楽しそうにしている。

オリビアさんの隣で何とも表現に困る踊りを披露しているマリアさん。

やたらと体をくねくねしている。


俺は大食堂の端に行き、皆の様子を眺めることにした。

最近は慣れてしまった所為か、オリビアさんの権能に俺は支配されなくなっていた。

皆の笑顔が微笑ましい。

次第にテンポが加速していく。

オリビアさんは踊りを交えながら歌い上げていく。

神様ズもノリノリだ。

皆が躍り出した。

各々好きに踊っている。

今日のオリビアさんは絶好調のようだ。

いつもよりも声量がある。

いよいよ大詰めだ。

会場のボルテージもマックス状態にある。

大拍手に迎えられてオリビアさんのステージが終了した。


こうして神様ズの大宴会は幕を下ろした。

来月はご遠慮願おう、とはいかないだろうな。

宴会のホストって正直疲れましたよ。



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