スーパー銭湯オープンその1
俺は何故ここにいるのだろう・・・
いまいちよく分かっていない・・・
何だかふわふわとしている。
足取りがおぼつかない。
どういうことだ?何だろうか?
俺の左手には紅白の花に象った紙のテープが握られており、今まさに掛け声と同時に右手に握られたハサミでこれをカットすることになっている。
異世界でまさかのテープカット。
どうしてだ?
これは必要なのだろうか・・・
それに神様達から送られてきたたくさんの花輪。
これは全て五郎さんの粋な計らいであろうことは間違いない。
この世界でこういった風習があるとは思えない。
五郎さんは粋なおじさんだ。
やってくれる。
勿論ありがたく頂戴した。
本日やっとスーパー銭湯のグランドオープンを迎える。
この世界に来て凡そ二年ぐらいだろうか、まさか異世界に来てスーパー銭湯を造り、そして運営することになろうとは・・・人生とは不思議なものである。
ただのサウナ好きな定年を迎えた男性が、神様の能力を使えるようになり、たくさんの家族や仲間が出来、こうして晴れの日を迎えている。
これから先、一体何が待ち受けているのだろうか?神様の修業はまだまだ続きそうだ。
およそ一ヶ月前、
職員の採用者を決定しメルラドの街の掲示板で発表が行われた。
採用に歓喜する者、不採用に漠然とする者、その光景はまるで大学受験の合格者発表を見ているかの様だった。
中には数名がどうしても納得がいかなかったのか、俺達を見つけると何がいけなかったのか、不採用の理由は何なのかと言い寄る者達もいたが、これはまともに受け答え出来ることでは無い為、平謝りするしかなかった。
本当に申し訳ない。
ここまでのやる気をみせてくれるのはありがたいが、こちらとしても厳正な判断で採用者を決めたとしか言いようがない。
何とか受け入れて欲しいものだが・・・
幸い騒ぎを聞きつけたリチャードさんが間に割って入ってくれて、事なきを得ることが出来た。
本当は全員を雇ってあげたいがそこまでする理由は今の所見当たらない。
本当に申し訳ないと思う。
またのご縁を期待したい。
さて、採用した者達をメルラドの王城の一室に集めて、簡単な今後の流れを説明することにした。
「えーと、採用おめでとうございます!」
会場は拍手に沸いている。
鳴り止む雰囲気が無かったので俺はそれを手で制した。
「これから先のことを皆さんに話しておきたいと思う」
全員を見渡す。
一瞬にして全員の眼つきが変わった。
流石は倍率二十倍を勝ち残った猛者達だ、切り替えが早い。
「先ずは明日から一週間、サウナ島で自由に暮らして貰うことにします」
「「「おおー!」」」
「やった!」
「よっしゃー!」
反応は上々だ。
「その意図はこれから働くサウナ島に慣れて貰うことと、これから先に訪れるであろうお客様の気持ちを知って貰う為だ、決して遊ばせているつもりは俺にはない!」
最後の一言が効いたのか身を正す者が多かった。
ここまでは順調だ。
「接客を担当する者達だけでなく、厨房で働く者であっても、お客様からサウナ島のことを尋ねられた時に、私には分かりませんとは言って欲しくない、その為の一週間だ。心して欲しい。既にサウナ島には寮が完備している為、そこで寝泊りして貰っても構わないし、通いが希望であれば遠慮なく伝えて欲しい、ここまではいいかな?」
全員が首を縦に振っていた。
まだ緊張感が漂っている。
良い傾向だ。
「では今日は準備があるだろうから、明日の朝一番にここに集合すること、そこでサウナ島に出発することになる、以上で解散とするが質問がある者はこの場に残って欲しい。では解散!お疲れ様!」
ぞろぞろと解散しだした。
数名が残っている、何かしらの質問があるということなんだろう。
「あれ?お前達、何か質問があるのか?」
ジョシュア達元船員の面々が残っていた。
「いえ、質問はありませんが、俺達は直接島野さんにお礼を言いたくて」
「なんだ、そんなことか気にするな、戦力としてお前達には期待しているからな」
「はい、期待を裏切らないように粉骨砕身頑張ります。よろしくお願いします!」
粉骨砕身って気合い入ってますなあ。
「「よろしくお願します!」」
ジョシュア達は頭を下げた。
実際こいつらの働きを俺はよく知っているから、採用するのは当たり前のことだ。
決して知っている顔だから採用したということでは無く、俺は彼らの人となりや仕事振りを知っている。
応募してくれたのはこちらとしても大助かりなのだよ。
「お前達も準備があるんだろう?早く行けよ!」
「はい!」
「ありがとうございます!」
「恩にきます!」
「明日から、またよろしくお願いします!」
等と言って立ち去っていった。
そして一人の女性が残っていた。
「島野様、質問をよろしいでしょうか?」
「ええと、確かスーザンさんでしたよね、どうしましたか?」
スーザンさんは下向き加減である。
「あの・・・どうして私を採用してくださったのでしょうか?」
どうやら自分が何故採用されたのか知りたいようだった。
「スーザンさんの能力と、やる気を買わせて貰いましたよ」
「でも・・・私には小さな子供が二人もいて、仕事に差し支えるかもしれません・・・」
スーザンさんは旦那さんに先立たれ、小さな子供を二人持つシングルマザーだ。
ただ、この人を採用したのはそういった環境の施しとは一切考えていない。
彼女の経歴は結婚するまでは王城に勤めていたこともあり、風紀を正すだけの物腰を持っていると考えたからだ。
実際、肝っ玉母ちゃんのような雰囲気を持っている。
「ああ、そのことですが、実はスーザンさんに任せようとしている仕事は、寮母さんを任せようと思っています」
「寮母ですか?」
「はい、分かりやすく言えば寮の管理人です。寮の掃除や、場合によっては寮に住む従業員達の相談に乗って貰ったり、寮の規則を正す様な役割を担ってもらう多岐に渡る仕事です」
「はあ・・・」
「それで、スーザンさんの子供達も一緒に寮に住んでみてはどうかと考えています」
「えっ!いいのですか?」
「はい、そうして貰ったほうが助かります」
訝し気な表情になったスーザンさん。
「それはどうしてでしょうか?」
「先程お話した通り寮母さんは仕事が多岐に渡る為、何時にこれをするといったことに縛られない仕事です」
「はい」
「であることから、ある意味、四六時中寮にいて欲しい仕事なんですよ」
「なるほど、だから子供と一緒に寮に住むようにということですね?」
「その通りです」
理解が早くて助かります。
「分かりました、ではその様にさせて頂きます」
笑顔に戻ったスーザンさんは俺の元を去っていった。
サウナ島に戻ると仕事が立て込んでいた。
先ずは入島受付室、迎賓館、スーパー銭湯の建物の引き渡しを受けることになった。
想像以上の出来栄えと成っていた。
とは言っても俺も建設に携わっていたこともある為、実は自画自賛だったりもする。
そこは見逃して欲しい。
細かく全ての施設を隈なくチェックしていく。
不備があるとしたらここで是正して貰わなければならない。
「島野さん、どうかな?」
「ランドールさん、良い感じですね」
ランドールさんとは今回の建設を通じて随分と親しくなった。
そこで、
「いい加減様呼びは止めて貰えないか」
と言われてしまった。
それ以降俺はランドールさんと呼ぶようになった。
五郎さんとのズブズブの関係とまではいかないが、ランドールさんとは胸襟を開いて話せる仲になったとは思う。
実際話し口調はお互い砕けた物になっている。
「いいにはいいですが、何かが足りない気もするんですよね、何だろう?」
「何がかが物足りないと?」
「ええ、満足はしているんですが、何だろう・・・」
すると突然マリアさんが現れた。
「げ!マリア!」
恐れ慄くランドールさん。
「守ちゃん、その物足りなさ、分かるわよ・・・」
あれ?いつもなら一目散にランドールさんを追いかけるのに、いつもと雰囲気が違うような・・・
因みにマリアさんも俺の呼び方が、島野ちゃんから守ちゃんに変わっている。
これはオリビアさんの影響だと思う。
「どう分かるんですか?」
「芸術が足りないわ」
「芸術ですか?」
「そうよ、あなた何となく気づいてるんでしょ?」
「確かに何かが足りないとは思うんですが・・・芸術ですか?」
「いいから守ちゃん、見てなさい!」
マリアさんが彫刻刀を持ち出した。
「ランドール、あなたも見てなさい、お手本よ」
柱の一つを彫刻刀で掘り出した。
みるみる柱が姿を変えていく。
「おお!おおお!」
あっという間に柱に絶世の美女が現れた。
んん?
「あれ?これはオリビアさん?」
「そうよ、芸術には遊び心が必要よ」
「そうか!何か足りないと思ったら、遊びが足りなかったんだ!」
「守ちゃん、私の手で遊びという名の芸術を、披露してもいいかしら?」
これは嬉しい申し入れだった。
それにしても芸術の神様という名は伊達ではない。
恐ろしい完成度と迫力だ、木造が動き出さんかの如く、躍動感に満ちている。
「是非、お願いします!」
「任せてよね!ムフ!」
次々にマリアさんが様々な装飾や意匠を施していった。
柱に神様達の似顔絵が削られていく。
これで完成度がぐっと増す。
ランドールさんも真剣にマリアさんの仕事を見ていた。
普段からこういう関係ならいいのに・・・
それにしても神様という生き物はオンオフが激しい。
それだけ精神力が強いということなんだろうか?
一先ず引き渡しは終了した。
何だかな・・・疲れるよ。
次に向かったのは調理場だ。
さっそく俺の能力全開でなんちゃって業務用冷蔵庫をいくつも作っていく。
そしてたくさんの調理道具や調理器具を作製する。
これだけで二日を有してしまった。
ただこれで完成ではない。
お皿や、フォーク、スプーンといった食器類を大量に作成した。
これでさらに二日を有した。
いい加減働き過ぎだがここで手は抜けない。
迎賓館にも厨房がある為、同様の作業に追われた。
ここでも二日間掛かった。
そろそろ一息着こうと俺は日本に帰ってきた。
二日間に渡り休日を取ることにした。
無論朝からおでんの湯に行き鋭気を養う。
日本の神気は本当に美味しい。
美味である。
神力満タンだ。
この二日間は何も考えず、ただただ体を休めることに集中した。
やはり休日は大事だと実感した。
翌日からはすっきりとした頭と体で業務に挑むことが出来た。
ここからは俺だけではなく皆と力を合わせる必要がある。
まずは入島受付室からだ。
ここの責任者にはランドを指名した。
サポートにはメタンだ。
ランドには入島受付室の新たな従業員達の教育を任せることにした。
ランドには受付といった華やかな部署は適任ではないと思う節もあったが、バスケットボールチームを纏め上げた実績を見てきた俺としては、問題ないと判断した。
ただし物足りなさはある為ここはメタンがサポートする事になる。
次に迎賓館の責任者はマークを指名した。
ここでのサポート役はロンメルだ。
一見マークは迎賓館の様な格式ばった所は似合わないとも思えるが、マークはあれでいてどこでもやって行ける引き出しの多い男だ。
それにロンメルは情報収集の達人だ。
こいつのサポートはどうしても必要となる。
迎賓館には実は裏の側面がある。
それは各国の情報収集の役割がある。
これが意味する処は、この世界のどこで何が行われているかを把握するという事にある。
そこから神気減少問題のきっかけを得られればとの考えがある。
これは誰にも明かしてはいない。
知るのは俺とロンメルのみである。
次はメルルだ。
勿論彼女には料理長を任せることになる。
副料理長はエル。
彼女達にはスーパー銭湯と迎賓館の調理場両方を見て貰うのだが、迎賓館での食事はサンドイッチ程度しか出さない為、ほとんどがスーパー銭湯の調理場での作業になると思う。
ある意味一番大変な部署だと思うががんばって欲しい。
スーパー銭湯の館長は俺が行うことになるが、サポートにはギルとジョシュアが付いている。
ジョシュアに関しては異例の抜擢と言ってもいい。
一部の新入社員達からは既にねたむ声も上がっている様だが、そんなことを気に掛けてはいられない。
家は実力主義なんでね。
文句があるなら実力を示して欲しい。
ジョシュアには主にホールと受付、ギルには風呂場周りとサウナの管理という割り振りだ。
特に温度管理は重要な要素となる為ギルに任せることにした。
今回は風呂やシャワーなどの温度管理は、魔石や魔法道具でおこなうことにした。
もちろん魔石の購入先はメッサーラだ。
幸いにも新入社員達はメルラドの人間ということもあり、魔力量が高い者達が多い。
この世界には温度計が無い為、日本で大量に購入した。
温度計の側は木製の物なのでこちらの世界でも違和感はないだろう。
手作りで出来なくはないが面倒な作業はしたくない。
ご勘弁願おう。
今回のスーパー銭湯の唯一の悩みは炭酸泉だ。
やはりゴンガス様の所だけでは二酸化炭素を貯めきることは難しい。
そこで新たに考えたのはサウナ室に設置するという、灯台元暮らしの解決策だった。
何故にそこに思案が及ばなかったのかと自分で自分を残念に思えた。
どうやらやらかし体質は治らないらしい。
その後、サウナストーブの脇には二酸化炭素吸収用のボンベが随時設置されるようになった。
これにより二日に一度は炭酸泉を提供できるようになった。
やれやれである。
最後に畑部門の責任者は当然アイリスさんだ。
今回の件で今後は午前中に畑作業を行うことが難しくなると予想した為、農作業の社員を二十人採用した。
実家が農家という者が多い、実は今回の応募の一番人気の高かった部署はこの畑部門だっだ。
既にアイリスさんはメルラドでは知らない者がいないぐらいの超有名人で、凄腕の作物の専門家としても知られている。
彼女の下で働きたいという者達が多いのはある意味当然と言える。
だが、メルラドの人達はアイリスさんの本当の姿を知らない。
今後も知られないで欲しいと思うが・・・どっかで自分から正体を明かすような気がする・・・
取り越し苦労であることを祈ろう。
スムーズに新入社員研修は進んでいった。
このサウナ島で一週間のフリータイムを味わった新入社員のほとんどは、既にこの島の虜になっていると報告を受けている。
一番の好反応なのは食事だ、胃袋を掴んだと言ってもいいだろう。
次にサウナと風呂が好まれているが、そこは現在のお風呂渋滞現象が解消されれば、もっと受け入れられると思う。
今のお風呂設備では最大三十人程度が限界で、知らぬ間にお風呂シフトなる、時間に応じて使う人数を制限するシステムが出来上がっていた。
まあスーパー銭湯の風呂とサウナが直に完成する為、この問題は解消されるのだが。
そして多くの新入社員達は自ら意思で畑の作業を手伝っていた。
ありがたいことである。
新入社員を受け入れてから十日が経ち、いいよ本格的な作業が開始された。
最初におこなったのは火災訓練だった。
各自配置につき新入社員以外の者達はお客さんに扮して火災訓練を行った。
これは定期的に行っていきたい。
もしこれが日本であった場合、まずスーパー銭湯は防火対象物の建物になる為、防火対象物の点検報告を市町村が管理する消防庁、または消防署長に報告する義務がある。
ここは異世界の為そんな義務はないが、火を取り扱う施設である為、火災訓練はやらなければならない。
『拡声魔法』で大声になった俺がアナウンスを始める。
今日のどの時間で訓練を始めるのかは敢えて社員達には教えていない。
「訓練火災!訓練火災!速やかに作業を行ってください!」
サウナ島にアナウンスが響き渡る。
「出火元はスーパー銭湯調理場!繰り返す!出火元はスーパー銭湯調理場!」
新入社員達が慌ただしく動き出した。
お客様の誘導を担う者、要救助者を運び出す者、魔道具で消火活動を行う者。
全員てきぱきと自分の役割に応じた動きを見せていた。
判定員のメルルとゴンが隈なく全員の動きを観察している。
ゴンから終了の合図が送られてきた。
「終了します!全社員スーパー銭湯の大食堂に集まってください!」
俺は大食堂に移動した。
少し待つと全員が集まった。
「みんなお疲れ様、先ずは座ってくれ、では判定員のメルルとゴンから意見をどうぞ」
メルルが前に出た、
「大体は上手く出来ていたと思うけど、急のことであたふたしている人を何人か見かけたわ、火災も突然起こる物だから、今回の様にアナウンスは流れないものとして考えて欲しいわね」
うん、素晴らしい意見だ。
ゴンが立ち上がった。
「メルルの言った通り、本番はもっと大変なことになると思って欲しいです、特にお客様が多くいる時では、今日の様には上手くは行かないし、火災の煙で視界が悪くなっていたりする事もあると考えておいてください」
こちらも素晴らしい意見だ。
「貴重な意見を二人ともありがとう、二人に拍手だ」
拍手に二人は照れていた。
「さて、今日ここからの時間は五人一組になって、今行った訓練の振り返りと、実際の火災の時にどうすればいいのかを話し合って欲しい。実際に各自の現場に行ってもらっても構わない。以上とする、始め!」
指示を出して二時間ほど、火災訓練の重要性や火災が起きた時にどうするのかを各自で考えて貰った。
各自でチームを作って考えてもらったのは、こういう処からもチームワークが生れるのではないかとの考えだ。
チームワークが生れれば仕事がより楽しくなるだろう。
翌日は新入社員を除く全社員がお客様となってのロープレが開始された。
ギルと俺は神様役だ。
実際ギルは神様なんだが・・・
ギルと俺で別れて各自お客様に扮する。
俺は大工の街ボルンで、ノンとレケ、メタン、マーク、アイリスさんを連れてスタートする。
「じゃあ行くか、俺達がお客様第一号だ、思いっきり楽しもう!」
「第一号か、良い響きだな」
「しかし、俺達でよかったんですか?」
「ああ、俺達が初風呂、初サウナを味わうべきだろう?」
「そうだそうだ!」
ノンもハイテンションだ。
「じゃあ、行くぞ!」
俺は転移扉を開いた。
転移扉を開くと、
「いらっしゃいませ、サウナ島にようこそ!」
爽やかな掛け声に迎えられた。
「おお!ここがサウナ島か?」
ノンがお客様ごっこを楽しんでいるみたいだ。
なら俺も、
「やあ、私はランドール、大工の神様だよ、お嬢さん方」
と言うと。
「ギャハハハ!島野さん似てないって」
「はあ?何だそれボス。全然似てねえぞ!」
散々の言われようだった。
駄目だったか・・・自信あったのにな。
とほほ。
気を取り直して、
「六名様ですね。こちらに必要事項をご記入ください」
五枚の紙と魔法筆を渡された。
これでOK!神様には必要事項の記入は不要である。
各自用紙に記入をしていく。
もし文字が読めない者や文字が書けない者は、口頭で伝え受付の者が代筆することになっている。
記入内容は島に来た目的を記入すること。
スーパー銭湯の使用、迎賓館の使用(商談込)他の国や街への移動、観光及び視察、その他となる。
目的に応じて〇印を記入して、名前と来た国や街の名前を記入する。
ここで他の国や村への移動以外の場合は、入島料を頂くことになる。
十五歳以上は銀貨五枚、十四歳以下は銀貨二枚、五歳以下は無料となる。
実はまだ神様達には話してはいないが、ここで得た金額の半分を月末締めにして渡そうと考えている。
これは転移扉を開けるという作業に対する報酬だ。
ただ転移扉を開けるだけとは言っても時間の調整や、自分の抱える仕事を一旦中止して行わなければならないという裏事情を考えての物だった。
神様達は慈悲深いからお願いされると断れない質の方々が多い。
無償でとは到底考えられない。
何故公表していないかというと、単にサウナ島の実力を計ってみたいからだ。
居ないとは思うが、報酬目当てにたくさんの人を送り込んでくる神様もいるかもしれない。
まあゴンガス様は怪しいが・・・
初月だけはどれぐらいの入島があるのか純粋に知りたいのだ。
俺としてはサウナ島の真の実力を知っておきたい。
そして大変なのは他の国や街への移動の場合だ。
この場合には転移する行先によって、頂く金額を変えている。
どういうことかというと、距離的に本来掛かる時間を買うことになる為、その分の料金は頂きますよということ。
例えば温泉街ゴロウからメルラドに行くには本来陸路と海路で一ヶ月以上がかかる。
どれだけ上手くやりくりしても一日に銀貨十枚は、食費や移動費で掛かる為、一ヶ月分となると金貨三枚となる。
その金貨三枚は受付で納めなければならないということだ。
使用者のメリットとしては時間と安全の担保といった処になる。
本来の移動では獣や魔獣が出る森を抜けなければならないし、メルラドに関しては海路もある、だから実際には金貨三枚は格安である。
という様に実際の陸路や海路にかかる金額を受付で支払うといった内容になる。
ここでも頂いた金額の半分は神様にキックバックする予定だ。
なので他の街へと繋がる転移扉も神様達が空けないといけないことにしている。
そうした場合たいして時間は掛からないものの、時間的拘束が生れるから報酬は払って当たり前と考えているし、神力に対しての報酬とも言える。
仕事を抜けてまで来ているとしたら、なおのこと報酬を受け取る権利はあるということになる。
受付の業務はこういった全ての利用者を適切に誘導しつつ、記録をちゃんとつけなければならないという、重要な作業になっている。
まあ多少食い違いがあっても文句を言う神様は居ないだろうが、こういう処は手を抜いてはならない。
後はやはりこのサウナ島の顔となる為、むっつり顔では困るという事だ。
スマイルゼロ円とまでは言わないが、愛想の一つも添えて欲しいと思う。
随時六名がこの受付に立ち、待たせること無くスムーズに業務を行わなければならない。
とても重要な仕事だ。
今日はランドはお客様役の為、受付内にはいないが、本来であればここで彼が目を光らせるという役目もある。
得に気にかけているのは武器の持ち込み禁止という点だ、身体検査とまではいかないが、怪しいと思われる者はボディーチェックを行わせてもらうこともある。
神様達が前もって武器の持ち込みは禁止なのは伝えてはくれてはいるが、念の為の処置は必要である。
ランドの迫力であれば大抵の者は文句は言うまい。
ただ、ランドには常ににこやかにしていろよとは伝えてある。
奴なら上手く熟してくれるだろう。
今日はロープレ初日の為、本来であれば来島の目的を全員違う物にして、受付の職員の力を試すべきだが、全員の目的をスーパー銭湯にした。
実際にお金のやり取りもしてサウナ島の入口に誘導される。
「ちゃんと、後で返してくれよ」
レケが凄んでいた。
「レケ、ちゃんと返すから安心しろ」
こら!受付のスタッフがビックリしてるじゃないか、まったく。
入口の扉を開きサウナ島に入島した。
やはり入口を高い所にしたのは正解だった。
島の景観が素晴らしい。
ナイスビュー!
「さて、迎賓館でコーヒーとサンドイッチだな」
「またお金立て替えるのかよ」
「レケ、お前そんなにお金ないのか?」
「そんなことはないけど・・・」
何とも困った奴だ。
迎賓館に入るとスタッフに声を掛けられる。
「何名様でしょうか?」
「六人です」
「畏まりました、こちらへどうぞ」
席へと誘われる。
スタッフの服装は男性はバトラー風の衣装で、女性はメイド風だ。
建物の雰囲気からいくとこれがいいだろうと思われた。
服飾はメルラドで購入した。
俺は知らなかったがメルラドでは服飾が特産品らしい。
これはオリビアさんが教えてくれた。
「ご注文は如何なさいますか?」
バトラー風の衣装を身に纏った男性スタッフが注文を取りに来た。
「俺はアイスコーヒーとミックスサンド」
「私も同じ物をお願いできますかな」
「俺も同じで」
「私も同じで」
「僕はバナナジュースとタマゴサンド」
「俺はアイスティーとツナサンドだな」
「畏まりました、しばらくお待ちください」
スタッフが厨房に消えていく。
ここまでは順調、ホールに立つ他のスタッフも物腰柔らかく控えている。
「マーク、ここまでは順調だな」
「はい、ここのスタッフはしっかりとした者達が多いですよ、礼儀や言葉遣いなんか俺よりもしっかりしてますしね」
「そうかそうか、期待できるな」
「ええ」
実際に執事やメイドの経験者を数名雇っている為、信頼度は高い。
メルラドは人材の宝庫だと言っても過言ではなかった。
実力のある者がまだまだ野に居るということだ。
数分後、注文した品物が運ばれてきた。
今度は女性のスタッフだ。
一度お盆ごとテーブルの上に置き、そこから注文道りに分配されていく。
丁寧な対応だ、グッジョブです。
「では、頂こうか」
「「「いただきます!」」」
味はいつものミックスサンドだが、迎賓館で食べるミックスサンドは上品な味がすると感じた。
おかしなものである、環境によって味が違うと感じるとは。
アイスコーヒーもよく冷えている。
食事を堪能し会計を終えてスーパー銭湯へと向かった。
スーパー銭湯に入ると、
「「いらっしゃいませ!」」
元気な掛け声で迎えられた。
「こちらは土足厳禁となっておりますので、靴はあちらのロッカーに保管して下さい」
ジョシュアが声をかけている。
「ジョシュア、板に付いてるな」
「ありがとうございます!」
ジョシュアは軽く一礼した。
ロッカーキーを持って受付に持参する。
「大人一名様ですので、銀貨五枚になります」
受付でスタッフに言われた。
「残念、今日の俺は神様役だから無料だよ」
「あ、そうでした。申し訳ありません」
「いやいや、次から気をつける様に」
「ではロッカーキーをお渡しください」
俺はロッカーキーを手渡す。
そして新たなロッカーキーを受け取る。
「こちらが脱衣所のロッカーキーになります、帰りにまた受付にお戻し下さい」
「はい」
これは現在の入館数を把握する為の仕組みだ。
想定の収容人数は最大で四百人を予定している。
無いとは思うが、それ以上になった時に入館規制を行わなければならない。
「じゃあ初風呂と初サウナを楽しむか?」
「そうしましょう」
「やっと入れるのかよ」
「楽しみですな!」
皆で脱衣所に向かった。
これまでのサウナ島と違って、風呂や露天風呂、サウナの全てが男女別々になっている。
すなわちマッパで入るということである。
慣れていない所為かマークとメタンがもぞもぞとしていた。
ノンは通常運転で普通にぶらぶらさせていた。
「マークもメタンも恥ずかしいなら、タオルで隠せばいいじゃないか?」
「ああ、その手がありましたね」
「なるほどですな」
二人はタオルを腰に巻いていた。
さて、先ずはシャワーで全身を洗う。
水圧よし、満足の出来る水圧だ。
引き渡し時にどれだけ同時に使ったら、水圧が落ちるのかを試してみたが、七割近くが同時に使うと水圧が落ちた。
そこで利用者が多い場合には、水道管に風魔法が付与してある魔石を埋め込んでいる為、利用者の数によって使用するようにギルには教えてある。
最初に内風呂に入る。
この内風呂は最大で二十人が入れる広さだ。
今回の風呂すべてが、お湯は常にかけ流しの状態にすることと、風呂の水位と同じ高さに排水溝を見えない様に作ってある。
これはお湯に浮いた髪の毛やゴミが自動的に流れていく仕組みとなっている。
とはいっても、全てのゴミが自動的に流れる訳では無いから定期的にスタッフがチェックを行い、必要に応じて髪の毛などを綺麗に掬い挙げなければならない。
ここは異世界ということもあって、特に獣人の方々は髪の量が多い、身体全体を髪で覆っている人もいる。
小まめな清掃は肝腎要である。
因みにこれまで俺達が使っていた風呂は、今後は風呂は子供風呂、家族風呂として提供する予定だ。
泳げる水風呂はプールとして使用することにしている。
残念ながらスーパー銭湯の風呂の年齢制限は設ける必要がある。
これは俺の経験則からそうさせて貰った。
過去に何度か小さな子供が風呂の中でおもらしをしてしまい、風呂に入れなかったことがあったのだ。
こればかりはしょうがないことだ。
ここではそれを避ける為この様にさせて貰うことにした。
その為五歳以下はスーパー銭湯の風呂には入れないことにする予定だ。
そしてこの内風呂の角には電気風呂がある。
微弱の雷魔法が込められている魔石を設置してある。
「メタン、すまないが魔石に魔力を込めてくれないか?」
「畏まりました」
メタンが魔石に魔力を込めた。
「おお!これは効くな」
腰と背中にピリピリと電気を感じる。
マッサージ効果だ。
「おお!こんなに気持ち良いとは・・・」
隣でマークも電気風呂を堪能している。
「島野さんこれは発明ですね、実に気持ちいいです、始めはちょっとチクっとしますが慣れると心地よくなってきますよ」
「だろ?これが電気風呂だ」
俺は多分どや顔をしているだろうな。
でも本当に気持ちいい。
解れるなー。
電気風呂を堪能し外風呂に向かう。
そして温泉に浸かる。
温度帯は四十一度前後、俺は魔力が無いので魔力の回復効果は分からないが、温泉特有の匂いがたまらない。
この温泉は十五人ぐらいが入れる広さだ。
その後は炭酸泉だ。
温度帯は三十九度、低めの温度帯で長く入れる様にしてある。
ものの数分で体が赤くなってきている。
本当は一番この炭酸泉を広く作りたかったが、二酸化炭素が上手く集めれないので、ここは最大で十人しか入れない。
二酸化炭素問題が解決したら拡張しようと思う。
その時は来るのだろうか・・・
そしてこの外風呂の最大の良さはその景色にある。
二階であることと、海に向けて景色が広がる造りになっている為、サウナ島の海が一望できる。
太陽の角度によっては海が光って見える。
最高の眺めだ。
「島野様、素晴らしい景色ですな」
「ああ、この景色を見にくるだけでもここに来る価値があるな」
「さようですな」
俺達は炭酸泉を堪能した。
「さて、そろそろ行こうか?」
「ええ、行きましょう」
俺達は先ずは塩サウナ室に向かった。
塩サウナ室は外風呂の隣にある。
「おおー、良い湿度だ」
「ですね」
ここはじっくりと全身が湿り気を纏うまで我慢する。
「よし、そろそろだな」
部屋の中心にある塩のタワーから塩を片手いっぱいに掴む。
全身を隈なくマッサージしながら塩を擦り込んでいく。
全身を塩で纏ってからじっくりと間を置く。
塩のマッサージよってピーリング効果を肌が感じている。
お肌つるつるだな。
外に出て塩を流す専用のシャワーを浴びる。
身体に着いた塩を隈なく落としていく。
その後は外気浴で少し体の火照りを冷ます。
「ああ、もう整いそうだ・・・」
思わず声が漏れる。
身体が冷えたのを感じ、いよいよサウナ室へと向かう。
拘りぬいたサウナ、サウナストーブは五台設置してある。
席は十段あり各段五人が座れる広さを確保してある。
今回もオートロウリュウ機能がある。
このオートロウリュウには魔石を使用している。
ギルとゴンが試行錯誤して造った誉れ高き一品だ。
ギルが苦労したのはオート機能だった。
自動で三十分毎に熱風と水が流れるということが難しく、時間を意識して魔石に魔法を付与することに手間取っていたが、ギルの努力によって何とか完成した。
流石は俺の息子と言っておこう。
温度帯は八十五度、俺が一番好きな温度帯だ。
そして今回のサウナでは、オートロウリュウだけでは無く、セルフロウリュウも行うことができる。
これは実は意外な盲点ともいえる。
日本のサウナではオートロウリュウ機能のあるサウナには、セルフロウリュウを行うことを禁止しているお店がほとんどだ。
その理由としてはガスストーブを使用している為、という処なのだろう。
これは個人的な感想でもあるが、オートロウリュウの問題点は、その時間に合わせてサウナに入る時間を考えなければならないことにある。
そして時間合わせを行っている俺以外の客も当然おり、サウナ渋滞が生じることが時々ある。
サウナ渋滞は俺としてはストレスでしかない。
オートロウリュウとセルフロウリュウの両方出来るサウナは何処にあるのかと、真剣に探したこともあるぐらいだ。
そういった経験もあり今回は両方できるサウナにしたという拘りだ。
サウナ室は湿度も程よく熱を全身に感じる出来だった。
勿論俺は最上段に位置を取る。
マークとメタンが隣にやってきた。
「良いサウナだな」
「ですね、広くてもこの温度を保てる物なんですね」
「ああ、サウナストーブ五台の出力は半端ないな」
「そうですね」
「でも、これが客が多いと温度が落ちるから、その時にどうするかなんだよな」
「扉が二枚あっても温度が落ちるんもんなんですね」
温度の下降を防ぐ為にサウナ室の扉は二枚ある。一枚目の扉を開けるとサウナマットが取れるようになっている。サウナマットを取った後に更に奥にある扉を開けるとサウナ室に入るという構造になっている。
「そうなんだ、俺の経験則では間違いなくそうなるな」
「なるほど」
「これはオートロウリュウ後に、スタッフがサウナストーブに加熱をする様にするしかないな」
「ひと手間要るということですね」
「サウナは温度が命だからな」
十分ほどサウナを堪能し、掛け水をした後に超冷水風呂にダイブした。
キリッと身体が引きしまる。
温度帯は七度前後。
最高に気持ちいい。
直ぐに超冷水風呂を出て体を拭いて外気浴を行う。
勿論インフィニティーチェアーを使用する。
インフィニティーチェアーは十台あるが、これもまた奪い合いになるかもしれない。
インフィニティーチェアーは人を駄目にする椅子と言われているが、サウナ愛好家にとっては倍率の高い整いの椅子として有名である。
これの気持ちよさに目覚めたら最後、もう味あわずにはいられなくなる。
最強の椅子である。
「ふうー」
「ああー」
「・・・」
もう何も言うまい。
俺は遠慮なく『黄金の整い』を味わった。
これまでにない満足感のある整いだった。
この整いは達成感を感じる整いだった。
その後二セット行い、俺はこれまでとは違う格別の整いを得たのだった。
更衣室に戻り着替えを行う。
備品として綿棒があり、それで耳の中を掃除する。
更衣室には大きな鏡があり、ここで風魔法を付与したなんちゃってドライヤーがある。
持ち帰って貰っては困るとちゃんと鎖で繋げてある。
俺は残念ながらこれを使用することは出来ないが、好評を得ることは間違いないだろう。
俺達は大食堂に向かった。
手を挙げてスタッフを呼び込む、
「生ビールを三つで」
「かしこまりました」
元気よく受け答えをするスタッフ。
スタッフは全員島野標の入った法被を着ている。
即座に生ビールが給仕される。
「では、乾杯!」
「「乾杯!!」」
ゴクゴクと喉を潤す生ビールが腹に落ちてくる。
「ああ、上手い!」
「最高ですな!」
「これが飲みたかった!」
生ビールのほとんどを飲み干していた。
再度スタッフを呼びこむ。
「生ビールをもう一杯と俺はカツカレー、お前達はどうする?」
「俺も生ビールをもう一杯と、カツカレーで」
「私も生ビールをもう一杯と、親子丼を」
「畏まりました!」
スタッフの元気な声が木霊する。
提供する食事のメニューについては、喧々諤々メルルとエル、ギルと会議を重ねた。
メニュー決定の問題点は獣の肉の安定供給が出来る保証がないという点だった。
ノンが狩ってくる獣の種類は、その日によって違う、肉の種類を統一することはできない。
カツカレーのカツも今日はジャイアントピッグだが、その日によってはボアやラット、ブルに変わる。
その為、安定的に供給できるメニューとなると野菜に限定される。
親子丼も一日に限定五十食となっている。
その為、安定的に提供できるメニューといえばマルゲリータピザとポテトフライ、ペペロンチーノ、ミックスサラダと野菜炒めぐらいとなる。
とは言ってもマルゲリータピザは大人気なので、これだけでも事足りるという意見もあったが、俺としてはそれではなにか物足りない。
そこでその日にある食材で刺身やから揚げなどを中心とした、日替わり定食も提供することにした。
常に二種類ぐらいは提供出来るように努めていきたい。
それにしても日本はほとんどの食材が安定的に供給できている。
現代の日本は飽食の国だと改めて知ってしまった。
飲み物に関しては種類は多く量も充分に足りている。
生ビール、ワイン、日本酒、トウモロコシ酒がアルコール。
ノンアルコールはお茶、コーヒー、紅茶、ジュース各種。
水は無料で提供される。
他には魔力回復薬と体力回復薬もある。
そしてロープレという名のサウナ満喫を行った一同は、反省会を行うことにした。
何処がよくで何が足りないのか?
様々な意見が出され検討されていく。
中には俺が気にかけていない事柄が提案されたりもする。
特に女性陣の意見が参考になった。
例えば女子のトイレには汚物入れを置いた方がいいという意見だ。
女性特有の課題点と言える。
当然意見に賛同し汚物入れを全ての女子トイレに加えることにした。
こうやってオープン前からロープレを行って、改善を繰り返していくことは重要であると言える。
その後、全スタッフにも交代しながら施設を利用させて、一人一つ以上は意見や感想を纏める様にさせた。
施設の使用後に用紙に記入し、翌朝纏まった用紙が俺に届けられる。
それに目を通し、検討を重ねていく。
こんなことを一週間近く行った。
これからはプレオープンを一週間行い、ブラッシュアップさせていく。
プレオープンには参加できる全ての神様に、お客を連れて来てもらう予定だ。
さて、どうなることか・・・
グランドオープンの一週間前、プレオープンを開始した。
神様達には五名前後のお客を連れてきて欲しい、とお願いしてある。
営業時間は十五時から二十時の時短営業。
プレープン後は各班に分かれて反省会をする為だ。
今日はプレオープン初日の為、俺も入島受付室に控えている。
まだ一五時には早い。
ガチャ!
不意に転移扉が開かれた。
「お前さん来てやったぞ!」
万遍の笑みを浮かべたゴンガス様が、弟子達を連れてやってきた。
「ゴンガス様、早くないですか?」
「はあ?丁度の時間だと思うがの?」
んん?そうか、時差だ!これは営業時間の修正が必要になるかもしれない。
「多分時差ですね」
「おお、そういうことかの」
「まあ、それは良いとして、いらっしゃいませ!」
「「いらっしゃいませ!」」
スタッフ達が続く。
プレオープン初日が始まった。
この後も続々と神様達に率いられたお客様が来る予定だ。
プレオープンに関しては全ての料金を半額としている。
神様に関しては全て無料としている。
但し全員にアンケートに答えるという条件を付け加えている。
この意見を参考に更にブラッシュアップしていくつもりだ。
社員達の意見も参考になったが、やはりダイレクトにお客様の意見を聞きたい。
忖度無しの意見が欲しい。
この後も繋がっている全ての神様達がお客を率いてサウナ島に来てくれた。
順調にプレオープンが進んでいった。




