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神様のサウナ ~神様修行がてらサウナ満喫生活始めました~  作者: イタズ


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30/182

大工の街ボルン

護岸工事を指示してからおよそ三週間が過ぎていた。

護岸工事もいよいよ大詰めを迎えている。

万能鉱石でコンクリートを使って作るのもありだが、マーク達に完全に任せていたのでそれは行わなかった。

大小様々な岩や石を積み上げて、簡単な船着き場が出来つつあった。

凄い労力なのだが、やはりこいつ等は頼もしい。


船の横腹が傷つかないように、ゴムをタイヤ状にした物を『合成』で護岸に張り付けていく。

歩きやすいように『合成』をおこない、石の隙間を無くしていく、どうしても塞がらないところはモルタルで埋めていった。

最後に船が着岸した際にロープを括りつける用に準備しておいた。

キノコの様な形の鉄の塊を『合成』で二か所設置した。

これにて完成と相なった。


「お疲れさん、お前達」


「ありがとうございます!」


「いやあ、早く大工の街に行きたかったんで、気合入れてやりましたよ。これで故郷に凱旋出来るな」

ランドが自慢げに言った。

なんとも頼もしい。

早速船を着岸することにした。


「ロンメル、船を着岸してみてくれ」


「了解!」

ロンメルが船を帆の角度を調整しゆっくりと船を進めて行く。


「もうちょっとだ」


「そろそろロープを準備してくれ」

指示に従いレケとギルがロープを取りに行った。

あと一メールぐらいで着岸しそうだ。


「そろそろいいんじゃないか?」


「分かった」

船頭からレケがロープをこちらに投げた。

ロープを受け取りキノコ状の鉄の塊に括りつける。

船尾ではロープを持ったギルがマークにロープを投げていた。

マークがこれも同じ様に鉄の塊に括りつけている。


「よし、着岸完了!」

ロンメルが宣言した。


「「よっしゃー!」」

レケとギルが騒いでいる。

俺達は拍手で迎えた。

初めての着岸に皆が沸いていた。


うん、いいじゃないか、これで船の劣化も抑えられるだろう。

それにしてもこれだけの建造物を一ヶ月も掛からずに造るなんて、マークとランドには感謝だな。

ありがたいことです。

ということで今晩は宴会だな。

多分レケがまた何かしらやらかすだろう。


「よし、じゃあ風呂でも行くか」


「そうしましょう」


「サウナで整いましょう」

皆で風呂に向かった。




『魔力回復薬』もその後何度も打ち合わせを行い、全体的な概要が決まりつつある。

概ね当初の計画道りといった処か。


計画の実行予定日はゴンとリンちゃんが卒業してからの為、まだ先のこと。

但し前さばきは必要であるし、後になってバタバタしたくは無い。

なので出来る限りのことを前倒しに行う様に、打ち合わせを重ねているのである。


ゴンとリンちゃんとルイ君は、今はメッサーラの方で何かと準備に奔走しているようだ。

これはこれで楽しみである。


これが実行されると島野商事にまたたくさんの利益をもたらすことになるが、唯一心配なのは人手不足だった。

この島の暮らしのコンセプトの一つとして、ゆとりのある生活を送ることを掲げている。

それは何も金銭的なゆとりだけのことでは無く、時間のゆとりも重要な要素である。

それが脅かされているのだ。


今回の件は需要があり過ぎることが予想されるので、そこを考えると、最低でも三人は従業員が欲しいと考えている。

どこかに信頼のおける者がいないだろうか?

実は考えている人選がいるにはいるが、こちらから声を掛けるのはちょっとどうなのか?という相手の為、今は静観している。

まあ、なんとかなるだろう。

人との出会いは縁の問題だからな。

然るべきタイミングで人が集まってくるだろう。

そうあって欲しいものだ。




大工の街に向かうことが決定した。

大工の街は『温泉街ゴロウ』から、空路で二日程かかるのではとのことだった。

広大な高原を抜ける必要があるらしい。


そこで俺はズルをすることにした。

目に見える景色に『転移』で移動する、これを何度か繰り返すことで距離と時間を稼ぐことにした。

要は『瞬間移動』を何度も繰り返すということ。


ランドとマークは転移酔いと言えばいいのだろうか、車酔いのような状態になり何度か休憩を挟みながらの移動になった。

これによりものの半日で『大工の街ボルン』に到着した。

メンバーは俺とギル、マークとランドの四人だ。


街が見えてからは歩いて移動した。

さすがに大っぴらに能力を見せるのは良くないと考えたからだ。

歩きながら『大工の街ボルン』を眺めてみると、タイロンやメッサーラと違い、大きな石垣の門は無く、簡単な木の柵が設けてあるだけの入口だった。

よく見ると所々に獣よけの先の尖った木のある箇所もあり、ある程度の安全は担保されている様に伺える。


街の入口でチェックが入る。

マークとランドが先に入口に向かった。

警備員がどうやらマーク達の知り合いだったようだ。


「マーク久しぶりだな、お前ハンターは続けてるのか?」


「おお、久しぶり、いや今はハンターは辞めたよ」


「そうか、おお!ランドも居やがるじゃないか?」


「ああ、久しぶりだな」


「相変わらずでかいな」


「そりゃあ身長は変わらんだろ?」


「間違いねえ」


「街の皆は元気か?」


「ああ、たいして変わったことも特に無いな」


「そうか、またよろしく頼むな」


「こっちこそ」

等と話していた。

当然の様に俺達は顔パスとなった。


入口を抜けボルンの街に入って行った。

中に入ると俺は目を奪われた。

見事としか言い表せない家の数々。

そしてこれはどんな家なのかを俺は知っている。

そう、日本にある家の造りだったのだ。


「これは宮造りか?」


「あれ?島野さん宮造りを知ってるんですか?」


「知ってるも何も俺の故郷の技術だぞ」


「そうなんですね」

釘を一本も使わない、木と瓦、そして畳で造られている家。

そして所々に意匠が凝らされている。

この家を見ると不思議と心が落ち着く。

なんでも宮大工は鉋一つとっても、何十種類も使うとか聞いたことがある。

でもここの神様の名前は、日本人の名前の響きとは違った筈・・・どういうことなんだろうか?

とにかく宮造りの立派な家が多い。

ほとんどが平屋だが、柱も太く家自体の存在感が重厚に感じる。


「どうします?飯にでもします?」


「そうだな、そろそろギルの腹の音がしそうだ、飯にしよう」

隣で歩いているギルを見た。


「そうそう、そろそろ鳴るよ」

お腹を擦りギルがお道化ている。


「「ハハハ!」」

お茶目な奴だ。


マークに促されるが儘に後を付いていった。

屋根がからぶき屋根の家の前に来た。

どうやら食堂らしい。


食堂に入り奥に行くと畳の部屋があった。

久しぶりの畳の匂いに癒された。

メニュー表を見ると、どうやらここは蕎麦屋のようだった。


「マーク、この街には蕎麦があるんだな」


「ええ、結構いけますよ、頼んでみます?」


「ああ、そうしよう」


「じゃあ、僕もそれで」


「では俺も」

久しぶりの蕎麦、勿論ザルを選択。

流石に麺つゆは無かったので塩で頂く。

うん、これはこれでいいな。


ギルが十五枚も平らげていた。

流石は島野一家のフードファイターだ。

食事を終え俺達は神様の所に向うことにした。




大工の神ランドールはこれぞ親方という感じではまったく無かった。

細身の偉丈夫といった感じだが、顔立ちは西洋人のそれであり、彫が深い。

そして瞳の色は青かった。

髪の色も金髪で長髪を後ろで束ねている。

いわゆるイケメンだ。

否、超イケメンだ。

そこらじゅうから、黄色い声が上がっている。

その声を片手を挙げて受け止めている。

恰好は大工の格好で靴も足袋を履いていた。

超イケメンの大工ってなんだよ・・・羨ましいじゃないか・・・それに黄色い歓声が凄いな。


マークに紹介された、

「ランドール様、お久しぶりです。マークです、紹介させてください。俺とランドが今お世話になっている。島野さんです」


「おお、マークにランド、久しぶりだな。そして島野さんだったね、始めまして」

右手を指し出してきた。

握り返して握手を交わした。

握手しただけで分かるこの手の質感、武骨な職人の手だ、間違いなく仕事が出来る人の手だ。

堅くてごつごつしているが、包み込むような感触もある。


「どうも始めまして島野と申します。よろしくお願いいたします。そしてこちらが息子のギルです」

ギルの背中を押して前に出させる。


「始めましてギルです、よろしくお願いいたします」

ランドール様はフレンドリーな方のようだ、ギルとも握手を交わしていた。


「実は訳あって神様に会う旅をしています」


「ほう、その訳とは?」

興味があるのか、少し表情が変わった。

俺達は座ることを勧められ椅子に腰かけた。


「今は人化していますので人間に見えますが、ギルは神獣のドラゴンなんです」


「へえー、そうなのか?」

ギルをまじまじと見ている。


「はい、僕は今はドラゴンキッズですが、大きくなればドラゴンになります」

おっ!ちゃんとドラゴンキッズと言っているな、普段は言わない癖に。

どうしたんだ?


「ギルの為になるのではと、神様巡りをさせて頂いています、ドラゴンの役目とかを教えて貰えればなと思いまして」


「そうなのか、あまり力にはなれないかもしれないな」

ランドール様はすまなそうな表情をしていた。

でも協力的な神様のようだ。

ならば後でお地蔵さんの件もお願いしよう。


「と、いいますと?」


「現存する神様の中でも、私は若い方なんだよ、まだ神になって五十年も経ってないんだ、だからあまり神としての経験も知識も薄いほうでね」

ランドール様は頭を掻いていた。


「そうなんですね」

俺は『収納』からワインを三本取り出した。

先ずはご挨拶がてら、こちらの印象を良くしましょうかね。


「よかったらこれ、お近づきの標にどうぞ」


「おお!ワインか、久しぶりに見るな、ありがとう、遠慮なくいただくよ。私はワインが好きでね」

受け取ると後ろに控えていた弟子と思われる人に、ワインを渡していた。


「ギル君はドラゴンということだが、島野さんもドラゴンなのか?」


「いえ、俺は人間です」

驚いた様子。


「人間なのにドラゴンの親なのか?」


「はい、そうです。ギルを卵から孵したのは俺なので」


「えっ!人間がドラゴンの卵を孵したってのか?」

そうなんです、神気でちょちょっとね。


「はい、俺はその、ちょっと訳ありで・・・」


空気を読み取ってくれたのか、

「あまり立ち入らない方がいいようだね」

視線を外してくれた。


「そうして頂けると助かります」

それにしても、言葉遣いといい、丁寧な対応をしてくれる神様だな。

それでいて超イケメンって、文句のつけ処がないぞこの人。


「そういえば、気になってたんですが、この街の家は宮造りですよね?」


「そうだが」


「どう見てもランドール様は日本人には見えないんですが?」

ランドール様は目を見開いていた。


「日本人か・・・久しぶりに聞いたな、君は日本人なのか?」


「はい、そうです。転移者です」


「そうなのか・・・私は日本人ではないよ・・・日本人は私の師匠だった人だよ・・・死んでしまったけどね」

うつむき加減で表情ははっきりとは見えなかったが、悲しんでいるようだった。


「そうなんですね」


「ああ、本当は私が神になることは、無い筈だったんだよ」


「と、いいますと?」


「実は私の師匠はリョウイチ・カトウといって、日本人なんだよ」

加藤良一さんってところかな?亮一?僚一?まあいいや。

間違いなく日本人だな。


「リョウイチ・カトウって思いっきり日本人の名前ですね」


「ああ、そのリョウイチ・カトウがこの宮造りを私に教え、ボルンの街に広めた人なんだよ」


「なるほど」


「あの人は酒にだらしがない人で、とにかく酒を手離せない人だったんだ。酷い時は仕事中でもこっそりと飲んでたよ、でも大工としての腕は一流で、宮大工の技術はあの人が広めたんだ。本当はあの人が神になる筈だったんだが、あの人は俺は神になんかならねえ、死ねない身体なんていらねえとか言って、神になることを拒否したんですよ」

神になることを拒否したのか・・・なるほど・・・そんな選択肢もあるんだな。


「そんな人が居たんですね」


「ああ、結局酒の飲み過ぎで血を吐いて死んでしまったよ」

価値観はその人次第ということか。

これで転移者は俺が知っているのは自分含めて三名、全員日本人だ。

日本人多くないか?他の国の皆さんは何処へ?というより転移者は少ないと思うがどうなんだろう?


「あと、ランドール様、ちょっと聞きたいことがあるんですが?」


「どうしたんだい?」

ご協力いただきましょうかね。


「この世界の神気が薄くなっていることを知ってますか?」


「そうなのかい?」

あれ?知らない?


「そうなんです、どうやら百年前ぐらいから、徐々に減っていってるらしいんですよ」


「百年前か・・・そこまで前だと私には分からないな」

そうか、ランドール様は神になってまだ五十年ぐらいだって言ってたから、それより前の充分に神気に満ちている状態を知らないのか。


「でも逆に最近多少濃くなった様に私は感じてるけどね」


「はい、実はいろいろ神気不足に取り組んでまして、出来れば協力して欲しいことがあるんです」

俺は『収納』からお地蔵さんを取り出した。


「これなんですけど」

ランドール様の目の前にお地蔵さんを置いた。


「おお!凄いな、君は石膏大工なのか?」


「いえ、そういう訳ではありません」


「なんという仕上がり、この街にピッタリじゃないか」

お地蔵さんをまじまじと見つめている。

目の色が変わり大工のそれになっていた。

お地蔵さんに触れて肌触りを確認している。


「実はこのお地蔵さんを数体持ってまして、街角や街道筋に置いて貰えないかと・・・」


「本当か?ありがとう!それは素晴らしい!」

興奮冷めやらぬ様子で、両手を掴まれてブンブンと振られた。

協力どころか喜ばれてしまったよ、ハハハ。


「この街に教会はありますか?」


「教会?教会は無いけど神社には創造神様が祭ってあるよ」

へえ、神社ですか、いいですね。


「その像を改修させていただけませんかね?」


「おお!是非そうしてくれ、作業しているところを見学してもいいかい?」

目を輝かせていた。

職人魂に火がついてしまったのかな?


「どうぞ・・・あまり参考にはならないと思いますが・・・」


「何を謙虚にしているんだい?このお地蔵さんの仕上がりは、私が知る石膏大工の中でも一番の出来だよ、ハハハ」

褒めて貰ってなんですが、なんかすんません、一瞬で終わるんですけど・・・


「じゃあ取り敢えずお地蔵さんを五体寄贈させていただきます」

『収納』から残り四体のお地蔵さんを取り出した。


「島野さんは面白い人だね」

顔をぐいっと寄せられた。

なんだかいい匂いがしたのは気のせいか?

ていうか、顔近くない?


「いやいや、それほどでも」


「いや、島野さんは本当に面白いですよ」

マークが横槍を入れる。


「間違いないね」

ランドもお済付きをする。


「ハハハ、そうだろう、そうだろう」

やっと顔が離れた。

ふう、近くでみても超イケメンだな。

女の子ならドキッとしたんだろうな。

あらやだ、なんつって。


「俺の事は置いといて、このお地蔵さんに祈りを捧げると、神気が放出されるんですよ『聖者の祈り』と言うんですが」


「そうなのか?」


「はい、神社に神主様はいらっしゃいますか?」


「ああ、居るよ」


「では神主様に後で祈って貰いましょう」


「分かった」

ランドール様は立ち上がった。


「じゃあさっそく、神社に向かいますか?島野さん」

マークが尋ねてくる。


「ランドール様がよろしければ」

俺も立ち上がる。


「行こう行こう、早く見て見たいものだ」


「では」

マークが誘導する。


神社に向かうまでの途中でもランドール様への黄色い声は止まらなかった。

どこにいてもこの超イケメンに女性陣はメロメロになっている。

いやはやこんな神様も居たんだね、やれやれ。


俺の若い頃は・・・特に何もなかったな・・・でも童貞ではないよ、決して・・・嘘じゃありません、三十歳の時には結婚を考えた方もいましたからね・・・結婚出来なかったけど・・・

等とどうでもいいことを考えていると神社に到着した。


これまた立派な宮造りの神社だった。

歴史的文化財レベルだ。

所々に施されている意匠が巧の技がなせるものだった。

境内に植わっている樹木も太く年季を感じさせる。

とても落ち着く雰囲気だ。

ここにいるだけで神気を取り込めるような気分になる。

やっぱり日本人には教会よりも神社の方がしっくりくる様だ。


早速ご神体として祭られている、創造神様の石像へと向かった。

途中でランドール様が神主様を連れて来ていた。

石像の状態は、今まで見てみた物の中ではまだ益しな方だった。

ただ益しというだけで、全然創造神様とは似ていない、顔の造りが荒く経年劣化の所為か所々ぼやけていた。


「それじゃあ、改修してよろしいですか?」


「頼むよ、道具は使わないのかい?」

職人の目で見つめられている。


「ええ、必要無いです」

では、さっそく。

『加工』の能力で石像を改修した。


「な!どういうことだ?」


「なな、なんと!」

ランドール様と神主様がビックリしている。


「島野さん・・・君は何をしたんだ?」

怪訝そうな顔をしていた。


「俺の能力で石像を改修しました」


「能力?」

隣で神主様が石像を拝みだした。


「ええ、それよりも」

神主様と石像に目を向けた。


「おいおい!本当に神気を放出してるじゃないか!」

まだ驚きは止まらないようだ。


「そういうことです、お地蔵さんでも同じことが起こりますよ」


「そうなのか?これは・・・何とも凄いな。私達神にとってはありがたいことだ」


「これで少しでも神気不足を補えればと、皆さんに感謝です」

ボルンの街の皆様、ご協力お願いします。


「そうだな、皆に感謝だな」


「おお!創造神様に見守られているようです。ああ・・・」

神主さんは周りの目を憚ることも無く泣いていた。

隣に控える巫女さんも感動して泣き出してしまった。


「それにしても、島野さんは神じゃないのかい?」

ランドール様の片方の眉が挙がっている。


「厳密には人間です、ただ・・・訳ありで」


「・・・そうだったね、詮索はし無いよ」


「そう言ってくださると助かります」


「でも先程の能力だが、あれはいったい何なんだい?」

やっぱり食いついてきたな。


「あれは俺の能力の一つで『加工』という能力です」


「『加工』?」


「はい、そうです。頭の中でイメージした通りに加工出来る能力です」

ランドール様は難しい顔をしている。


「イメージか・・・」

ちょっと踏み込んでみるか。


「はい、ランドール様は大工の神様なんですよね?」


「ああ、そうだよ」


「大工の能力を持っているということですよね?」


「そうだ、だが島野さんが行ったような能力とはちょっと違うな」


「どう違うんですか?」


「私の能力は、大工作業と製図や測量等に特化している。大工作業については道具を使うことは出来るし、木材を運んだりも出来る」

概ね俺の想像道りだな。


「であれば開発出来るんじゃないでしょうか?」


「開発?」

やはり能力を開発しようと考える神様は少ないようだ。


「ええ、能力の開発です」


「能力の開発なんてできるのか?」

にしても食いつきが半端ないな。


「可能と俺は考えています、現に俺は様々な能力を開発してますし」


「それはどうやって開発するんだい?」

これは本当は自分で考えて欲しいけど、ヒントは与えておこう。


「俺の場合はイメージを固めて、神気を流してみたりと、いろいろ試行錯誤して行っていますが、ランドール様なら、先程俺が行った『加工』なんかは類似性があるから、案外出来るんじゃないでしょうか?」


「類似性か・・・なるほど」

顎のあたりを撫でながら考え込んでいる。


神様の昇進メカニズムについての俺の意見は言わないことにした。

違う可能性もあるので安易な発言は控えたい。

そんな会話をしていると後ろに気配を感じ、振り向いたら、神主様が何を勘違いしたのか、俺を拝もうとし出したので早々に退散した。

メタンだけで充分ですって。

足りてますから。

本当に充分です、勘弁してください。

はあ、まったく。




ランドール様とは別れ、俺達は温泉に向かった。

その温泉は受付と脱衣所、トイレと温泉といった、大変質素なものだった。

俺は受付で料金を支払った、一人銀貨二十枚掛かった。

ちょっとお高くありません?

脱衣所へ向かう。

衣服を脱ぎ、いざ温泉にゴー!

洗い場が無かった為、掛け湯をしてから温泉に入った。

ちょっと複雑な気分。

うう、体が洗いたい。

湯舟の汚れは大丈夫なのか?

気にせず入ろう、郷に入ればなんとやらだ。

意を決して温泉に入った。


「ふうー」

思わず声が漏れる。

先程までの気分は吹き飛んでいた。

温泉って不思議だね。


「いやー、久しぶりにここの温泉に入りましたよ。気持ちいいですね」

ランドが話しかけて来た。


「よくこの温泉には入りに来てたのか?」


「いやいや、本当に時たまですよ、なにせ家族五人で金貨一枚は庶民には高いですよ」


「そうだよな、ちょっと高いよな」


「まあでも、ここの売上がこの街の公共事業に使われる資金になってますので、今となっては文句はいいませんがね」


「なるほどな」


「でもここに住んでた頃は高い高いって、文句ばかり言ってましたけどね」


「そうか、今じゃあサウナ島では毎日タダで入れるから、大助かりだな」


「ほんとです、サウナ島の暮らしは俺やマーク達にとっては夢のような生活です」


「言い過ぎだって」


「島野さんは言い過ぎだってよく言いますけど、本心から俺達は想ってますからね」

そう言って貰えると嬉しくなるじゃないか、ハハハ。


「そういやあ、ランドール様は凄いな」

話を振ってみた。


「何がですか?」

不思議そうな表情のランド。


「超イケメンで、丁寧な対応で、人気もあって、仕事も出来るって、パーフェクト超人だな」


「パーフェクト超人ってのはよく分かりませんが、確かに仕事は出来て、尊敬できる人ですがね、こっちの方が・・・」

ランドは小指を立てていた。


「もう酷いもんですよあれは、節操がないです」

あらー、それは残念ですねえ、それは如何なもんでしょう・・・けどちょっと良かったと思う俺は小市民だな。

人の欠点を知ってそう思うなんて・・・まだまだ神への道は遠いですな、ハハハ。


「島野さん、ちょっといいですか?」

マークが割り込んできた。


「どうしたマーク?」


「少し長くなりますが、一週間ぐらいこの街に滞在してもいいですか?」


「ほう、それはどうしてだ?」


「今日訪れた神社なんですか、サウナ島に建ててみたいなと思いまして」


「サウナ島に神社をか?」


「はい、そうです」

これはまたメタンが発狂しそうな話だな。

大丈夫かな?


「俺としては構わんが、どうしてそう思うんだ?」


「ええ、サウナ島の俺達のコミュニティーは、規模は小さくとも既に村になっていると思うんです」


「そうだな、俺も村だと考えている」

現に村でしょ?違ったかな?規模小さい?


「であれば、神社の一つもあった方が良いんじゃないでしょうか?」

なるほどな、こういう考え方は好きだな、流石はマークだ。

またこいつらに任せてみようかな。


「そうだな、でもメタンが興奮して大変なことになるんじゃないか?」


「ハハハ、でしょうね。まあそれは気にせんでもいいでしょう。ハハハ!確かに!」

豪快に笑っている。


「それでせっかく造るなら、宮造りの格式あるものにしたいので、勉強したいと思いまして」

宮造りの神社か、五郎さんも驚くだろうな。

儂の温泉街にも造ってくれって言いそうだな。


「いいじゃないか、任せるよ、でも一週間で足りるのか?」


「取り敢えずは一週間頑張ってみます、もしかしたらもうちょっと掛かるかもしれませんが・・・」


「ああ、好きなだけ時間をかければいいさ、せっかく造るんだ、納得のいく物を造ろうじゃないか」


「ありがとうございます」


「島野さんならそう言ってくれると思ってましたよ」

こいつらは本当に頼れる奴らだな。

ありがたいのはこっちの方だよ、まったく。

隣を見るとギルが考えこんでいる様子だった。


「どうした?ギル」


「ん?ああ、ごめんパパ、これまでいろいろな神様に会ってきたけど、結局僕はまだ何をしたらいいか、分からないなと思って」

当然の疑問だろうな。

その気持ちは良く分かる。


「焦る必要はないさ、ゆっくりのんびりやっていこう」

そう、ゆっくりのんびりとね。


「そうだね、そうしよう」

ちょっとギルを真面目に育て過ぎたかな?

でもこれもこいつの良い所なんだよな。

このままのびのびと育って欲しいものです。


「そろそろ出るか?」


「そうしましょう」

俺達は温泉を後にした。




露天風呂を出て、晩飯を取ることにした。

ここもマークとランドにお任せした。


「島野さん、簡単な定食屋でどうでしょう?」


「ああ、任せるよ」

マーク達に着いて行く。

定食屋に入るとランドール様が居た。

二人の女性を引き連れて。

ランドール様は鼻の下を伸ばし、下卑た口元をしていた。

あれがあの超イケメンなのか?

引くほど下品な顔をしているぞ。

挨拶をしたが下心見え見えの表情を隠そうともしなかった。

これが彼の本当の姿なのかもしれないな・・・多分そうだろう。

おお、なんだか見てはいけない物を見てしまった気分だ。

話には聞いてはいたが、ランドール様の株が急降下してしまっているぞ。


椅子に腰かけメニュー表を見る。

「さて、何にしようかな?」


「俺は鮭定食で」

マークがさっそく決めている。


「お!鮭があるのか?」


「ええ、この時期に限りますが、街から少し降った川で捕れるんですよ」


「それはいいな、帰りに鮭を売っている所を教えてくれないか?」


「分かりました」


「じゃあ俺も鮭定食」


「僕も」


「じゃあ俺も」

よしよし、鮭が捕れるのならまた食の幅が広がるぞ。

何を作ろうかな?

楽しみだな。


鮭定食は切り身の鮭にお米とすまし汁だった。

お米とすまし汁の味が物足りないが、しょうがない。

サウナ島の食事に慣れ過ぎているからね。


「あ、そうそう、二人とも大工道具とか必要な物があったら買っておいてくれるか?勿論島野商事のお金でな」


「いいんですか?」

マークが答えた。


「ああ、後でお金は渡しておくよ、宮大工となると、今のサウナ島の道具だけでは無理だろう?それに個人で買うのも有りだけど、サウナ島の為の施設を造るんだからさ」


「ありがとうございます。確かに鉋だけでも何個か欲しいと思ってました」


「それにわざわざ道具を造るのもいいけど、買って済むならそれはそれでいいんじゃないか?」

面倒なだけなんですけどね。

まあ、時間の節約ということで勘弁してくださいな。


「そうですね」


「どれぐらい要りそうだ?」

俺は大工道具の値段は流石に分らんからね。


「ちょっと、検討が付かないですね」


「じゃあ、取り敢えず金貨百枚ほど渡しておくよ、足りなかったら悪いけど立て替えてくれるか?」

検討つかないか、ピンキリなんだろうな。


「分かりました」


「ちょっといいですか?」

ランドが間に入ってきた。


「どうした?」


「この街で手に入れるのもいいんですが、鍛冶の街ならもっといい物が手に入るかもしれないですよ」

鍛冶の街?なんか聞き覚えがあるような気がするな。


「そうなのか?」


「はい、やっぱり鍛冶仕事となると、ドワーフが造った物が丈夫で長持ちしますからね」

出ましたドワーフ!

酒好きのちっさいおじさん達だな。


「そうか、まあ取り敢えずここでしか手に入らない物もあるだろうから、そういった物を中心に購入しておいてくれ、鍛冶の街はまた後日行ってみよう」


「そうしましょう」


珍しいことにギルが話に割り込んできた、

「ねえパパ、話は変わるけど、さっきランドール様を見たけど、昼の時とは大違いの顔をしてたよ、何あれ?」


「もしかしたら、あれが彼の本当の姿かもしれないな」


「間違いないな」

ランドも賛成のようだ。


「ちょっとショックだよ、カッコいい神様だと思ったのに」

それであの丁寧な対応だった訳ね。


「まあ、そう言ってやるなよギル、あれでいて仕事の腕は本物なんだからさ」

マークがフォローしている。


「誰でもなにかしら欠点はあるもんなんだよ」


「そんなもんなのかな?」


「そんなもんだ」

やれやれ、憧れの先輩が実はただのスケベな兄ちゃんだったなんて、ショックだよな。

たのんますよ、ランドールパイセン。


その後鮭を十匹購入し、サウナ島に帰ることにした。

サウナ島の皆は、気に入ると同じ食事を催促されるので多めに購入した。

翌日の朝には鮭定食をお披露目した。

そこからは鮭メニューのオンパレードが続く、鮭のムニエル、鮭とシメジとバターの炊き込みご飯、鮭とキノコのガーリック醤油炒め、鮭の味噌マヨ蒸し、等々。

結局三日後には全ての鮭が無くなっていた。

また買いにいかないとね。

残念ながらいくらは無かった。

ちょっと時期が早すぎたのかな?


魚が苦手なノンもたくさん食べていた。

苦手な理由は簡単だ、骨があるからだ。

なんとも贅沢な話だ。

調理前に骨を丁寧に取ってくれた、料理番の皆さんに感謝しなさい。

ほんとにあいつは・・・


島に季節はないが、久しぶりの秋の味覚を堪能できました。

御馳走様でした。



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